昨日、東京は日暮里サニーホールにて、仙道作三氏作曲のひとりオペラ「与謝野晶子 みだれ髪」に行って参りました。
連翹忌ご常連で、オペラ「智恵子抄」も作られているの作曲家・仙道氏の作品で、5年ぶりの再演とのことでした。
当方、昼の部を拝聴しました。冒頭、晶子の令孫・元文部大臣の与謝野馨氏もいらしており、ご挨拶されました。ご存知の方も多いかと思いますが、氏は下咽頭がんのため喉頭を摘出、政界を引退されました。当初は声が出せなくなってしまいましたが、「気管食道シャント法」と呼ばれる手術を受けて、失った声を取り戻されたとのこと。昨日も、ゆっくりしたしゃべり方でしたが、きちんとご挨拶をなさっていました。
さて、演奏開始。狂言回し的な役割の(プログラムでは「朗読」)、矢島祐果さんの語りと、ソプラノ・山口佳子さんの歌で物語が進みます。晶子の代表的な短歌二十余首と、「君死に給ふことなかれ」や、智恵子がその表紙を描いた『青鞜』創刊号(明治44年=1911)に載った「山の動く日きたる」(「そぞろごと」)などの詩文六篇にそれぞれメロディーがつけられ、不思議な世界が展開されていました。
伴奏はピアノトリオにパーカッションが加わった四人。仙道氏自身の指揮でした。通常、オペラというと伴奏はオケで、合唱も入り、というイメージですが、こういう少人数でも立派に成り立つのだなと、感心しました。
短歌をオペラに、ということですが、東洋的・日本的な情緒をふんだんに盛り込んだ作曲で、ある意味、能を髣髴とさせられました。
光太郎智恵子夫妻にも通じる、鉄幹晶子夫妻の鮮烈な生の営みがうまく表現されていたと思います。
文学作品は文学作品としてのみ命脈を保ち続けられるか、というと、なかなかそうでもありません。こうした二次創作――音楽、演劇、映像作品、美術作品など、いわゆるオマージュ、そうしたことも大切なのだなと、あらためて感じさせられました。
【今日は何の日・光太郎 補遺】 6月8日
昭和4年(1929)の今日、有楽町のレストラン「モンパリ」で開催された尾形亀之助詩集『雨になる朝』出版記念会に出席、スピーチをしました。