昨日、信州は安曇野に行って参りました。光太郎の朋友・荻原守衛(碌山)の忌日・碌山忌だったためです。
会場は安曇野市の碌山美術館さん。
昨年は雪だったことを思い出し、ヒヤヒヤしながらハンドルを握りましたが、今年は大丈夫でした。ただし、夕方にはやはり寒いと感じましたし、帰りの道中、八王子付近では土砂降りの雨に見舞われました。
先週の福島同様、まだ桜の花が残っていました。ヤマブキや連翹も花盛り。
こちらは館の庭にある光太郎の詩碑ですが、右上に連翹が写っているのがおわかりでしょうか。以前は気がつきませんでしたが、光太郎詩碑があるから連翹を植えて下さっていたとしたら、ありがたいことです。
午後3時頃、碌山美術館さんに到着。所館長、学芸員の武井氏、それから今年の連翹忌にご参加下さった五十嵐理事といった顔なじみの方々にお出迎えいただきました。
まずは碌山館で、今年1月と2月にテレビ東京系「美の巨人たち」で取り上げられた絶作の「女」をはじめ、1年ぶりに守衛の彫刻の数々を拝見しました。
第一展示棟では、光太郎ブロンズ。昨年、千葉市美術館他で開催された「生誕130年 彫刻家高村光太郎展」でお借りした「腕」、「園田孝吉胸像」、それから「十和田湖畔の裸婦群像のための中型試作」、「手」、さらに新しく購入した「倉田雲平胸像」。
第二展示棟では、企画展「小品彫刻の魅力ー動きの表現-」が昨日から始まり、ここにも光太郎の「裸婦坐像」が展示されていました。他には橋本平八、戸張孤雁など。
下の画像は館で販売しているポストカードです。
午後4時、例年通り車に分乗して、守衛の墓参。現地で荻原家当主の義重氏から興味深いお話を色々うかがえました。守衛の墓標は画塾・不同舎の先輩、中村不折の筆になるものですが、「故荻原守衛君之墓」と書かれた揮毫から、遺族が違和感を感じて「君」の字を除いたとのこと。その「君」の字だけ、荻原家に伝わっていたそうです。他にも荻原家が改宗して、戒名も変わった話など。
墓参の後、再び館に戻り、午後5時から学芸員の武井氏による研究発表会。
明治41年(1908)、欧米留学から帰る途中で立ち寄ったイタリア、ギリシャ、エジプトでの足取りと、その時に描かれたスケッチブックに関する考察でした。帰国時の守衛の足取りはまだ不明な点が多いそうです。ただ、スケッチブックにはギリシャのアクロポリスやエジプトのピラミッドも描かれているとのこと。
ちなみに光太郎は翌年帰国しましたが、ほとんど船中無一文だったため、寄港地のどこにも上陸しなかったそうです。
後述する「碌山を偲ぶ会」の席上でも、参会者の方からお話が出ましたが、守衛は日本郵船の因幡丸で明治41年(1908)の3月13日に日本に着いたらしいとのこと。
当方、一昨年、高村光太郎研究会の研究発表で、やはり欧米留学時の光太郎の船旅について発表した関係で、そうした船を巡る話は興味深いものがありました。
午後6時15分。館内のコテージふうの施設、グズベリーハウスにて、「碌山を偲ぶ会」。昨年に引き続き、お邪魔しました。
はじめに光太郎の詩「荻原守衛」(上記の詩碑に刻まれています)を参会者全員で朗読。光太郎にふれていただき、ありがたいかぎりでした。
その後は会食しつつ、いろいろな方のお話を聞いたり、当方もスピーチをしたり、ヤマハの文化財級のオルガン伴奏で「ふるさと」をみんなで歌ったりと愉しい時間を過ごしました。
午後8時過ぎ、散会。一路、千葉の自宅に帰りました。
碌山忌、今年で104回目だそうです。ということは、まだ58回の連翹忌と違い、もう守衛本人を知っている方はいらっしゃいません(連翹忌でも光太郎本人を知っている方はだいぶ少なくなりましたが)。それでも地元・安曇野の方々を中心に、守衛の魂を受け継いでいこうという気概が感じられます。末永く続けていって欲しいものです。
【今日は何の日・光太郎 補遺】 4月23日
平成20年(2008)の今日、故・小沢昭一さんのCD「昭一爺さんの唄う童謡・唱歌」がリリースされました。
光太郎作詞、飯田信夫作曲の戦時歌謡「歩く歌」が入っています。
以下、小沢さんが亡くなった一昨年のこのブログからコピペです。
この歌が作られたのは昭和15年(1940)、オリジナルのレコードとしては「侍ニツポン」「隣組」なども歌った徳山璉(たまき)によるものなどがビクターから発売され、ヒットしました。
また、曲と曲の合間には、小沢さんの語りによるそれぞれの曲の解説など。「歩くうた」に関しては「しつこい歌」とおっしゃっています。たしかに、全部で4番まであり、その中で「あるけ」という単語がなんと48回も出てきます。
しつこさに辟易したわけでもないのでしょうが、このCDでは1,2番のみが歌われています。
光太郎自身、しつこさに辟易したわけでもないのでしょうが、後に詩集『をぢさんの詩』に収録した際、歌としての3番をカットしています。