東京渋谷にある名画座系の映画館、シネマヴェーラ渋谷さんにて、今週土曜日から「日本のオジサマ 山村聰の世界」という特集が組まれます。

日本のオジサマ 山村聰の世界

俳優にして監督、総理大臣から情けないオジオジサンまで。
山村聰の全貌に迫る!
 
上映予定作品一覧(全18本)
 
 『女優須磨子の恋(16mm)』
 『流星(デジタル)』
 『お国と五平(35mm)』
 『蟹工船(35mm)』
 『黒い潮(16mm)』
 『智恵子抄(35mm)』 3月08日(土) 03月11日(火)
 『夜の蝶(35mm)』
 『穴(35mm)』
 『夜の配役(35mm)』
 『鹿島灘の女(35mm)』
 『闇を横切れ(35mm)』
 『河口(35mm)』
 『背徳のメス(35mm)』
 『家庭の事情(35mm)』
 『河のほとりで(35mm)』
 『からみ合い(35mm)』
 『あの人はいま(35mm)』
 『傷だらけの山河(35mm)』
 
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というわけで、昭和32年(1957)公開の熊谷久虎監督作品「智恵子抄」がラインナップに入っています。山村さんは光太郎役、智恵子役には原節子さんでした。
 
今年1月には、鎌倉の川喜多映画記念館さんで上映されました。その時は「~永遠の伝説~ 映画女優 原節子」というイベントがあって、その中での上映でした。
 
今回のシネマヴェーラ渋谷さんは、山村さんの出演作品の特集です。
 
山村さんというと、当方は子供の頃にテレビで見ていた初期「必殺シリーズ」での殺しの元締め役(「必殺仕掛人」・音羽屋半右衛門、「助け人走る」・清兵衛)のイメージが強いのですが、シネマヴェーラ渋谷さんのラインナップ解説を見ると、本当にいろいろな役柄をなさっていたんだな、という感じです。

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山村さんと光太郎の関連は、映画「智恵子抄」だけではありません。山村さんがまだ若手俳優だった戦前から戦時中、ラジオ放送で何度も光太郎詩の朗読をなさっていました。戦時中には「シンガポール陥落」「山道のをばさん」といった戦意昂揚の詩を朗読しています。他に尾崎喜八や野口米次郎、西条八十、坂本越郎、佐伯郁郎などの戦争詩の朗読もされていました。
 
そういう時代だったので、そのこと自体を云々するつもりはありません。
 
「智恵子抄」が映画化されたのは昭和32年(1957)。その前年には経済企画庁の経済白書「日本経済の成長と近代化」に、有名な「もはや戦後ではない」の語が記されました。そういう時期に、かつてその戦争詩を朗読した光太郎の役を演じられた山村さんの胸中はいかばかりであったのでしょうか。
 
【今日は何の日・光太郎 補遺】 3月3日

昭和21年(1946)の今日、『週刊朝日』に談話筆記「光太郎の言葉」が掲載されました。
 
「老詩人高村光太郎氏が傾倒する『ロダンの言葉』にならって、雪深き岩手なる『光太郎の言葉』を、彼を愛する人々に伝へよう。」という前書きが付されていました。