東京・府中市でのイベントです。
府中グリーンプラザ 名作映画会
~日本映画を芸術に昇華させた巨匠10人の監督特集~
映像の魔術師・市川 崑と文芸作品の映画化で評価の高い中村 登
「鍵」(1959年作品/107分/大映/カラー)
枕美派文学の巨匠・谷崎潤一郎が晩年に発表した同名小説を市川崑監督が映画化
監督:市川 崑 原作:谷崎潤一郎
出演:京 マチ子、叶 順子、仲代達矢、中村鴈治郎、北林谷栄、菅井一郎 ほか
監督:市川 崑 原作:谷崎潤一郎
出演:京 マチ子、叶 順子、仲代達矢、中村鴈治郎、北林谷栄、菅井一郎 ほか
「智恵子抄」(1967年/125分/松竹/カラー)
「東京には空がない」という智恵子 崩れ行くその妻を支えた詩人高村光太郎の愛の物語
監督:中村 登
出演:岩下志麻、丹波哲郎、平 幹二朗、中山 仁、南田洋子、岡田英次 ほか
監督:中村 登
出演:岩下志麻、丹波哲郎、平 幹二朗、中山 仁、南田洋子、岡田英次 ほか
日 時: 2014年3月13日(木)・14日(金)
「鍵」…9:30/14:00
「智恵子抄」…11:40/16:00
「鍵」…9:30/14:00
「智恵子抄」…11:40/16:00
会 場:府中グリーンプラザ 2階 けやきホール(府中市府中町1丁目1番地の1)
入場料: 一般 1,100円 (当日1,200円) シニア・高校生以下 900円 (当日1,000円)
入場料: 一般 1,100円 (当日1,200円) シニア・高校生以下 900円 (当日1,000円)
昭和42年(1967)公開の松竹映画「智恵子抄」が公開されます。岩下志麻さんの鬼気迫る演技が見どころです。
販売用の映像ソフト化がされていない作品ですので、こうした機会でもないと観られません。
ぜひ足をお運びください。
【今日は何の日・光太郎 補遺】 2月23日
昭和14年(1939)の今日、詩「レモン哀歌」を書きました。
レモン哀歌
そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白くあかるい死の床で
わたしの手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓(さんてん)でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう
智恵子の臨終は前年10月5日。
以前にも書きましたが、終わり2行の「写真の前に挿した桜の花かげに/すずしく光るレモンを今日も置かう」というのは、おそらくフィクションです。2月のこの時期に桜は咲いていませんので。雑誌『新女苑』の4月号に載るということで、桜がモチーフに使われているのです。
こういう点などをことさらにあげつらい、『智恵子抄』は虚構だ、と決めつける論もあります。また、この臨終の場面が「お涙ちょうだいのクサい芝居みたいだ」とこき下ろされることもあります。
しかし、どうでしょう。二人の生涯を俯瞰した時、それを「虚構」「クサい芝居」で片付けていいものでしょうか。それではいけない、というのが正直な感想です。そこには当事者にしかわからない、本当に数々のドラマの積み重ねがあったわけですから。といって、逆に「たぐいまれなる崇高な純愛のドラマ」と、諸手を挙げて肯定するのもどうかと思いますが。
おそらく雑誌『新女苑』が発行された4月には、実際に「写真の前に挿した桜の花かげに すずしく光るレモンを今日も置」いていたと考えたいものです。