新刊です。 

脳病院をめぐる人びと  帝都・東京の精神病理を探索する

近藤祐著 彩流社刊 定価2500円+税
 
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戦前の東京地図に散見し、しかし現在はその場所から消失した「脳病院」とは何か!?
 
芥川龍之介が神経衰弱の末に自殺した昭和二年以降、文学史にさまざまな狂気が連鎖する。辻潤は天狗となって二階窓からの飛翔を試み、太宰治はパビナール中毒で強制入院させられる。愛児を失った中原中也は忘我状態となり、高村智恵子は精神分裂病で生涯を終えた。わずか十年余りに連鎖するこれらの狂気には、何か共通因子があるのか。また彼らはどのような治療を施されたのか。明治・大正・昭和と帝都東京における脳病院の成立と変転を辿り、都市と人間、社会と個人の軋轢の精神史を探索する。
(帯より)
 
目次は以下の通りです。
 
プロローグ
第一部 
 第一章 初期癲狂院
 第二章 正系としての帝国大学医科大学・呉秀三・府立巣鴨病院
 第三章 脳病院の登場
 第四章 郊外へ
第二部
 第一章 芥川龍之介の小さな世界
 第二章 辻潤または飛翔するニヒリスト
 第三章 家族はどうしたのか ―高村光太郎と長沼智恵子―
 第四章 ここほ、かの、どんぞこの ―太宰治の分岐点―
 第五章 中原中也 暴走する精密装置
エピローグ
主要参考文献
年表
あとがき
 
昨日手元に届き、まだ光太郎智恵子に関する章しか読んでいませんが、それだけでもなかなかのものです。
 
著者の近藤氏はその道の専門家ではない、とのことですが、かえってそれだけに同じく専門家でない我々にわかりやすい書き方になっています。といって、門外漢が浅薄な知識で論じているものではなく、精神医学史についての調査は綿密に行き届いています。智恵子発病時に光太郎が短期間治療を依頼した諸岡存についての記述など、当方も知らなかったことがたくさんありました。
 
また、光太郎がなぜ智恵子の入院先として南品川のゼームス坂病院を選んだか、といった点の考察も、なるほど、と思わせるものでした。
 
惜しむらくは年代の記述で若干の事実誤認があるのですが……。
 
版元・彩流社さんのサイトへから注文可能です。

 
【今日は何の日・光太郎】 12月13日

平成4年(1992)の今日、日本テレビ系の教養番組「知ってるつもり?!」で、光太郎がメインで取り上げられました。
 
関口宏さんの司会で、比較的長寿の番組でしたので、ご記憶の方も多いでしょう。かつてはこういう番組がけっこうありましたが、最近、特に民放ではこの手の番組は減ってしまいましたね……。