講談社さんから刊行されているコミック誌に『月刊アフタヌーン』という雑誌があります。
現在、11月号が発売中。この号からの新連載ということで、清家雪子さん作「月に吠えらんねえ」が巻頭カラーで掲載されています。
サブタイトルが「近代詩歌俳句幻想譚」。最初に前書き的に以下の文言が。
近代詩歌俳句の
各作品から受けた印象を
キャラクター化したものです
各作家自身のエピソードも
含まれますが
それも印象を掬(すく)い取った
ものであって
実在の人物 団体等とは一切
関係ありません
過激な表現も多々含まれますが
作品世界に真摯に向き合った
結果であることを
ご理解くださいますよう
お願いするとともに
各作家の方々に
深く敬意を表します
「月に吠えらんねえ」という題名でおわかりでしょうが、主人公は萩原朔太郎です。
第一回のその他の登場人物は北原白秋、中原中也、三好達治、正岡子規、室生犀星、西脇順三郎、大手拓次、尾崎放哉、若山牧水、石川啄木、草野心平……。
この錚々たるメンバーが架空の都市「近代□(シカク=詩歌句)街」で織りなす幻想的な世界が描かれています。
一昔前に、近代文士をリアルに描いたコミックがいろいろありましたが(関川夏央/谷口ジロー『坊っちゃんの時代』シリーズ、古山寛/ほんまりう『事件簿』シリーズなど)、それらとは一線を画しています。
何しろ主人公の朔太郎は真性の屍体愛好者、中原中也は盗んだバイクで走り出し、草野心平にいたっては人間ではなく蛙です。
そして登場人物の台詞に光太郎智恵子の名が出、最後に光太郎詩「あなたはだんだんきれいになる」(昭和2年=1927)をバックに夜空に現れる全裸の巨大美女……。
前衛演劇を思わせる、シュールな世界です。しかし単なる悪ふざけでなく、「詩歌」と「小説」の間で揺れ動く犀星とか、引きこもりになった大手拓次とか、それぞれの登場人物についてさもありなんという設定がされています。
同誌は毎月25日発売だそうですので、もう次の号が出てしまいます。お早めに書店まで。
【今日は何の日・光太郎】 10月20日
明治43年(1910)の今日、上野精養軒で開かれた、美術新報社主催の新帰朝洋画家の会合に出席しました。