【今日は何の日・光太郎】 9月27日
大正15年(1926)の今日、詩「秋を待つ」を書きました。
秋を待つ
もう一度水を浴びよう。
都会に居れば香水くさくなるし、
山にのぼれば霧くさくなるし、
たんぼにゆけばこやしくさくなる。
良心くさいのさへうれしくないのに、
ああ己はそこら中がべとべとだ。
太陽や神さまはいつでも軌道のそつちに居てくれ。
あの西南の空の隅から
秋がばさりとやがて来る日を
胸のすくほど奇麗になつて待つ為にも、
さあもう一度水をあびよう。
さうしてすつかり拭いた自分の体から、
円(まろ)い二の腕や乳の辺りからかすかに立つ
あの何とも言へない香ばしい、甘(うま)さうな、
生きものらしい自分自身の肌の匂をもう一度かがう。
都会に居れば香水くさくなるし、
山にのぼれば霧くさくなるし、
たんぼにゆけばこやしくさくなる。
良心くさいのさへうれしくないのに、
ああ己はそこら中がべとべとだ。
太陽や神さまはいつでも軌道のそつちに居てくれ。
あの西南の空の隅から
秋がばさりとやがて来る日を
胸のすくほど奇麗になつて待つ為にも、
さあもう一度水をあびよう。
さうしてすつかり拭いた自分の体から、
円(まろ)い二の腕や乳の辺りからかすかに立つ
あの何とも言へない香ばしい、甘(うま)さうな、
生きものらしい自分自身の肌の匂をもう一度かがう。
9月末としては少し季節外れの内容にも思えます。大正15年も残暑が厳しかったのでしょうか。
ちなみに右は現在の千葉県北東部の空です。気持ちよく晴れています。ただし、まだ裏山ではツクツクホーシとミンミンゼミが鳴いています(笑)
以前にも書きましたが、光太郎は生来、夏の暑さを苦手としていました。逆に冬の寒さは大好きで、冬を謳った詩は数多くあります。また、暑さが去る秋の訪れを懇願したり、喜んだりといった内容の詩もいくつかあります。
秋が来たんだ(部分)
すずしい秋がやつて来たんだ
星が一つ西の空に光り出して
天が今宵こそ木犀色に匂ひ
往来にさらさら風が流れて
誰でも両手をひろげて歩きたいほど身がひきしまる
さういふ秋がやつて来たんだ
……
すずしい秋がやつて来たんだ
こんないい空気が落ちて来る秋の夕方がやつて来たんだ
日本の秋(部分)
昔からこの島の住民は知つてゐる、
嵐のあとに天がもたらす
あの玉のやうに美しい秋の日和を。
風と雨とで一切を洗ひ出してしまつた朝、
塩でもいいからきりりと口を浄め、
水を一ぱいぐつとのんで、
からりと日の照る往来にとび出すのはいい。
あの日本の秋が又来たな、
秋はいいなと思ふのはいい。
それぞれその通りですね。
ただし、光太郎は昭和戦前には「秋」を「大和魂」と結びつけ、日中戦争から太平洋戦争に向かってゆく-というかゆかざるをえない-この国の姿を描いてもいます。明日はそのあたりを書いてみます。
「秋」といえば、宮城女川光太郎の会・佐々木英子様が秋の味覚の王様・女川特産のサンマを送って下さいまして、早速いただきました。脂がしっかりのっていて、美味。何より目を見張る大きさです。ありがたいことです。
ところで、パソコンのインターネットのブラウザで、YAHOO!JAPANのページを見ますと、一番下に「復興支援 東日本大震災」というリンクがあります。
その中にある「復興デパート」というリンクでは、東北の特産品などがネット販売されています。現在のイチオシはやはり三陸のサンマ。ぜひお買い求め下さい。
「復興支援」といえば、プロ野球パ・リーグでは東北楽天ゴールデンイーグルスがリーグ優勝を決めましたが、東北を元気づけるという意味でも、非常に喜ばしいことですね。CS、そして日本シリーズとさらに頑張ってほしいものです。