先月リリースされたCDです。
万葉の恋歌 箏歌<KotoUta>をうたう
箏曲奏者・下野戸亜弓さんの新作です。昭和50年(1975)に、作曲家・小山清茂によって作られた光太郎詩「樹下の二人」が収録されています。
下野戸さんは山田流箏・三味線・歌、古典からオリジナルを含めた現代曲までさまざまな曲を演奏されているそうです。特に宮澤賢治の詩に曲を付けたものを多く手がけられているようです。
「樹下の二人」は下野戸さんの平成17年(2005)のライヴ録音CD「下野戸亜弓箏曲リサイタル2005」にも収録されており、当方、そちらも持っていますが、今回のものとは別テイクです。
先日のこのブログの「今日は何の日・光太郎」で、戦時中に箏曲奏者の今井慶松が光太郎の「真珠港特別攻撃隊」に曲を付け、演奏した旨書きましたが、光太郎作品が箏曲で取り上げられるケースが意外にたくさんあります。
CDや楽譜等も複数販売されており、明日はその辺りをご紹介します。
【今日は何の日・光太郎】 9月11日
大正3年(1914)の今日、日本女子大学校桜楓会の機関誌『家庭週報』に、智恵子の詩「無題録」が掲載されました。
無題録
いとほしい髪の一すじより
感情のはげしい瞬刻の閃光まで
私にとつては宝玉だ
抜きさしならない玉條だ
よろこびは朗らかに魂身に燃え
日輪は大なるひまはり草に祝福す
いのちは一切の生にとゞまる
抹殺と添削との卑穢な人間の想像こそは痛ましけれ
そのアツピアランスの魂こそは痛ましけれ
感情のはげしい瞬刻の閃光まで
私にとつては宝玉だ
抜きさしならない玉條だ
よろこびは朗らかに魂身に燃え
日輪は大なるひまはり草に祝福す
いのちは一切の生にとゞまる
抹殺と添削との卑穢な人間の想像こそは痛ましけれ
そのアツピアランスの魂こそは痛ましけれ
われを嘆けば
あまくいたきアマリリスの赤さ
直覚をすつるは
罪悪に値す
あまくいたきアマリリスの赤さ
直覚をすつるは
罪悪に値す
きりぎりす
すいつちよう
啼くはわれのみかは
君ゆゑに
あひたさゆゑに
つくづくし
すいつちよう
啼くはわれのみかは
君ゆゑに
あひたさゆゑに
つくづくし
うらの森にしぐれふる
青いしぐれ――
散る木の葉
青いしぐれ――
散る木の葉
現在確認できている智恵子の唯一の詩です。