「明治古典会七夕古書大入札会」。
 
昨年の今頃もこのブログに書きましたが、一種の年中行事です。7/5(金)~7/7(日)の3日間、神田の東京古書会館で、年に一度開かれる古書籍業界最大のイベントの一つです。
 
古代から現代までの希少価値の高い古書籍(肉筆ものも含みます)ばかり数千点が出品され、一般人は明治古典会に所属する古書店に入札を委託するというシステムです。毎年、いろいろな分野のものすごいものが出品され、話題を呼んでいます。
さて、今年の出品目録がネット上にアップロードされました。
 
光太郎関連も毎年のように肉筆原稿や書簡、署名入りの書籍などが出品されており、今年はどんなものが出ているかな、とわくわくしながら見てみました。
 
すると、詩集『道程』のカバーなしが1点、詩稿が3点(全て複数の詩が書かれたもの)、色紙が一点、葉書が10枚で1組(既に存在・内容を知られているもの)、そして一番驚いたのが識語署名入りの著書2冊です。
 
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すべて詩人の高祖保にあてたものです。一冊は随筆集『某月某日』(写真中央)、もう一冊は詩集『をぢさんの詩』(写真右)です。ともに昭和18年(1943)の刊行。画像はおそらく表紙裏の見返しの部分でしょう。
 
葉書も1枚ついています。官製葉書の様式や住所氏名のゴム印などから判断し、おそらく同じ時期のものです。今のところ高祖宛書簡は滋賀の彦根市立図書館に収蔵されている1通(「光太郎遺珠」⑦所収)しか確認できていませんので、文面は不明ながら新発見です。
 
高祖は『をぢさんの詩』の編集作業をやってくれた詩人で、光太郎が書いた同書の自序には高祖に対する謝意が述べられています。また、戦後になって高祖の追悼文(昭和20年=1945・戦病死)も光太郎は書いています。
 
このあたりについてはいずれまた項を改めて書きます。
 
そして今回出てきたのがその高祖に宛てた長い識語入りの『をぢさんの詩』。その識語もなかなか味のある文章です。
 
ところで最低入札価格ですが、「ナリユキ」となっています。今年の明治古典会七夕古書大入札会では、このように最低入札価格を設定していない出品物が結構あります。どのくらいの値がつくのか興味深いところですが、できればどこかの公共機関で手に入れ、自由に閲覧できるようにしてほしいものです。特に光太郎に興味があるわけでもなく幅広く集めていて、自分の蒐集品は絶対公開しない偏狭なコレクターの手に入り、死蔵されてしまうともうおしまいですから……。
 
【今日は何の日・光太郎】 6月25日

明治45年(1912)の今日、光太郎の手を離れた神田の画廊・琅玕洞(ろうかんどう)で、田村俊子と智恵子による「あねさまとうちわ絵」展が始まりました。
 
数年前、神奈川近代文学館に特別資料として寄贈された木下杢太郎関連の資料の中に、この展覧会の案内が印刷された木下宛の書簡(「光太郎遺珠」②所収)が含まれていました。これを見つけたときの驚きは、新資料発見の五指に入ります。
 
曰く、
    ◎『あねさま』と『うちわ絵』の展覧会
長沼ちゑの『うちわ絵』と田村としの『あねさま』の展覧会を来る二十五日から二十九日まで五日間琅玕洞で開催いたします
 ほんとうに両人のいたづらをお目にかける様なものなのです。
 極りのわるひ展覧会です。くだらないものと御承知で、見にいらしつて下さいまし。
(以下略)