先日、久しぶりに新刊書店に行きました。長距離の移動中、車内で読むための書籍を買うのが目的でした。
 
そういうための書籍としては、光太郎関連から離れた推理小説、時代小説、そして歴史小説を選びます。今回は歴史小説、北方謙三氏の『岳飛伝』第二巻を買いました。中国の通俗小説『水滸伝』を元にした北方氏の連作「大水滸伝シリーズ」の最新刊です。

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この連作は、90年代末に『小説すばる』で連載が始まった『水滸伝』全19巻、その続編の『楊令伝』全15巻、そしてその続編として『岳飛伝』が現在も連載中で、つい最近単行本の2巻目が発売されました。さらに言うなら、流行の言い方を使ってシーズンゼロ(メインの話の前史)的な『楊家将』全2巻、『血涙』全2巻もあり、膨大な量になっています。このシリーズが実に面白い。カビの生えた言い方ですが「血湧き肉躍る」という表現がぴったりします。
 
当方、その他の歴史小説としては、新選組もの、武田家や真田家に関するものなどが好きで、よく読んでいます。共通点としては、「群像ドラマ」であるということ。これがどういうことかというと、一人のカリスマ的なヒーローを描いたものではないということです。もちろん、中心になる人物はいるのですが、その周囲に実に多彩な人々が集まって、すごい人物相関図が出来上がっているというパターンが好きなのです。
 
新選組で言えば、局長・近藤勇の元に、土方歳三、山南敬助、沖田総司、永倉新八、斎藤一、井上源三郎、藤堂平助、原田左之助、島田魁、山崎蒸……武田家で言えば、武田信玄の元に、山本勘助、真田幸隆、真田昌幸、馬場信春、板垣信方、甘利虎泰、飯富虎昌、武田信繁、高坂昌信、武田勝頼…… 。
 
そうした意味での圧巻は北方氏の描く『水滸伝』の連作です。腐りきった北宋を倒すため、城塞・梁山泊に集まった108人の英雄、豪傑が描かれます。武術に長けた者、用兵を得意とする者、知略で勝負する者、諜報活動に命をかける者、その他一芸に秀でた者……。武に長けた者たちも、槍、剣、弓、棒、戟、体術、斧など、それぞれ得意とする武器が異なったり、一芸に秀でた者たちは、物流、造船、鍛冶、土木工事、医術、建築、馬の飼育、はては書や印鑑製作、料理など、実に多彩な分野でそれぞれの得意技を生かして活躍したりています。まさに多士済々ですね。
 
さて、長々こんな話を書いてきましたが、その意図はもうお判りでしょうか。当方が言いたいのは、「すぐれた人間の元には、すぐれた人間が集まる」ということで、これは光太郎の世界にも当てはまります。
 
光太郎がリーダーとか統領という訳ではありませんでしたが、光太郎の周囲にも、きら星の如く実に様々な分野の人々が集まりました(光太郎自身がマルチな才能の持ち主だったこともあるのですが)。
 
彫刻の荻原守衛・高田博厚、詩人の草野心平・宮澤賢治、画家の岸田劉生・梅原龍三郎、小説家では森鷗外・武者小路実篤、歌人では与謝野夫妻・石川啄木、脚本家に小山内薫・岸田国士、編集者の松下英麿・前田晁、美術史家である今泉篤男・奥平英雄、女優の花子・水谷八重子。その他にも版画彫師の伊上凡骨、チベット仏教の河口慧海、歌舞伎役者の市川左団次、舞踊家の藤間節子、大倉財閥の大倉喜八郎、歌手の関種子、建築家の谷口吉郎、青森県知事津島文治(太宰治の実兄)、朗読の照井瓔三、日本女子大を創設した成瀬仁蔵、バーナード・リーチや詩人の黄瀛(こうえい)など、外国人も。そういう意味では智恵子もそうですし、北川太一先生もそうです。『高村光太郎全集』の「人名索引」を眺めれば、さながら梁山泊の面々のようです。
 
かえりみるに、現在、連翹忌に関わっていただいている皆さんも多士済々。北川太一先生の元にやはりきら星の如く、色々な分野の方々に集まっていただいております。実は、連翹忌の参加者名簿を繙く都合がありまして、見てみたところ、そのように感じました。ここもさながら梁山泊だな、と思ったわけです。
 
しかし、まだまだ世の中には独自に光太郎・智恵子・光雲を追究してらっしゃる方もいらっしゃるでしょうし、これからこの世界に入りたいという方もいらっしゃるでしょう。そういう方々のネットワーク作りに貢献できれば、と思っております。