昨日、光太郎の翻訳書『ロダンの言葉』に触れましたので、もう少し。
光太郎の著書、というか訳書ですが、『ロダンの言葉』正・続2冊があり、これは光太郎の代表的な業績を挙げる場合にはよく掲げられるものです。
正は大正5年11月に阿蘭陀書房から、続は同9年5月に叢文閣から上梓されました。光太郎が敬愛していたロダンが、折にふれて語った言葉などをまとめたものです。単行書としてまとめられる前は、『帝国文学』『アルス』『白樺』などに断続的に発表されています。
昭和30年代には新潮文庫に正続2冊、少し前までは岩波文庫に『ロダンの言葉抄』というラインナップがあったのですが、絶版となって久しい状態です。筑摩書房発行の『高村光太郎全集』第16巻に全文が収録されていますが、手軽に読みたい場合、最近のものとしては以下の書籍が刊行されています。
ロダンの言葉 覆刻
平成17年(2005)12月1日 沖積舎 定価6,800円+税
写真製版により、正続2冊をそのまま覆刻したものです。続の方はオリジナルからの覆刻のようですが、正の方は昭和4年(1929)刊行の普及版からの覆刻のようです。金原宏行氏の解説がついています。
平成19年(2007)5月10日 講談社文芸文庫 講談社 定価1,300円+税
正の方のみ収録されています。湯原かの子氏の解説、光太郎の略年譜、著書目録がついています。
前回も紹介しましたが、光太郎の弟で、鋳金家として人間国宝にもなった高村豊周の「光太郎回想」によれば、「兄がロダンの言葉を集めて、ああいう形式で本にまとめることをどこから思いついたか、考えてみると、少し唐突のようだが僕は「論語」ではないかと思っている」「文章の区切りが大変短い。どんなに長くても数頁にしか渉らないから、読んでいて疲れないし、理解しやすい。ことに本を読む習慣の少なかった美術学生にとって、これは有難かった。」とのことです。
是非ご一読を。