今週いただいた新刊資料2冊を紹介します。奇しくも双方とも、今年亡くなった吉本隆明氏に関連するものです。
ご存知の方も多いかとは思いますが、氏は昭和三十年代から光太郎を論じはじめ、その論評が未だに我々研究者のバックボーンの一つとなっています。
資料集 永瀬清子の詩の世界
赤磐市教育委員会編 平成24年(2012)3月31日 赤磐市教育委員会熊山分室 非売品?
岡山県から届きました。光太郎と親交のあった詩人、赤磐市ゆかりの永瀬清子に関する資料です。以前、「遺珠」①にて永瀬宛光太郎書簡を御遺族の方を通じてご提供いただいたりしたご縁です。ありがたいことです。
光太郎の名は出て来ませんが、光太郎が序文を執筆した詩集『諸国の天女』に触れる部分等があります。
光太郎の名は出て来ませんが、光太郎が序文を執筆した詩集『諸国の天女』に触れる部分等があります。
目次を抄録します。
永瀬清子講演録「のびゆくひと」
永瀬清子の詩の世界-焔に薪を 石原武
永瀬清子の詩の世界-私は地球 吉本隆明
対談 感覚をもとめつつ労働する 井坂洋子 伊藤敏恵
永瀬清子の詩の世界-光っている窓 谷川俊太郎 山根基世
永瀬清子の詩の世界- 西本多喜江
永瀬清子の詩の世界-焔に薪を 石原武
永瀬清子の詩の世界-私は地球 吉本隆明
対談 感覚をもとめつつ労働する 井坂洋子 伊藤敏恵
永瀬清子の詩の世界-光っている窓 谷川俊太郎 山根基世
永瀬清子の詩の世界- 西本多喜江
吉本氏をはじめ、錚々たるメンバーです。吉本氏が永瀬清子にも目を向けていたというのは、当方、寡聞にして存じませんでした。
それにしても、地方の一教育委員会が、地元の詩人についてこのようにしっかりと顕彰事業を行っているというのが素晴らしいと思います。当方の持論で、あちこちで同じようなことを書いたり喋ったりしていますが、どんなにすぐれた芸術作品でも、後の時代の人間がその価値を正しく理解し、次の世代へと受けつぐ努力をしなければ、やがては歴史の波の中に埋もれてしまうものです(光太郎も例外ではありません)。そういった意味では、赤磐市の取り組みは、そうはさせまいという意気込みが伝わってきます。
雑誌『春秋』539号
春秋社 平成24年(2012)5月25日 定価71円
当会顧問・北川太一先生から頂きました。先生の玉稿「死なない吉本」が紙面を飾っています。
北川先生と吉本氏は戦争を挟んだ数年間、東京府立化学工業学校・東京工業大学で机を並べ、互いのお宅を行き来する仲だったとのこと。もちろんそこには「光太郎」という共通項があったわけです。
これまでに発表された追悼談話の数々は、氏を半ば神格化しつつあるかと思います。確かに当方などにとっては雲上人ですし、もう少し前の世代のある立場の人々にとっては、北川先生も引用なさっている通り「日本の英雄」的な扱いも無理からぬことです。しかし、それを「「よせやい!」という彼一流の苦笑いさえ見えるようだ。」と評するあたたかな北川先生の眼差しが感じられます。
さて、このブログを書いている今日、これから一寝入りして国会図書館経由で福島・二本松に向かいます。