まず、仙台に本社を置く『河北新報』さん、先週土曜日の記事です。

小学生に人気「守ろう! みんなの東北」完結 地域課題学ぶ漫画シリーズ

 東日本大震災からの復興、人口減少…。東北が抱える難題がモンスターになった―。漫画で地域を学ぶ「守ろう! みんなの東北」全4巻がこのほど完結した。東北の小学生の間で人気が高まっているシリーズはどのように生まれたのか。(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)
   主人公は岩手県遠野市に暮らす小学6年の石澤研治(ケンジ)。ある日、大きな地震により、異世界の東北に迷い込む。現実世界の東北の人たちの怒りや不満、不安から生まれたモンスター(「もんのけ」と呼ばれる)がケンジに東北の諸課題を突きつけ、対応を迫るというファンタジーアドベンチャーだ。
 巨大なこけしのもんのけは「なぜ人間は昔ほどこけしを買わぬ? 作らぬ?」「よいのか!? 東北の文化が消え去っても」と詰め寄る。ケンジがインターネットを活用した魅力発信など、自分たちにもできることを提示すると、もんのけは笑顔になって消える。
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 発行したマイクロマガジン社(東京)の第一編集部リーダー岡野信彦さん(53)は「これまで地域学習漫画は郷土の文化や特産品の紹介にとどまっていた。本作は社会問題に踏み込んでいるのが特徴だ」と話す。
 各巻のテーマは「自然と伝統文化」「復興と気候」「人口減少とお祭り」「東北の未来」。東京電力福島第1原発事故で国内外でいまだ残る風評被害をどう払拭するか。再生可能エネルギーの推進と自然環境の保護をどう両立するか。大人も明快な答えを出せない大きなテーマをあえて選び「視野を広げるきっかけにしてほしい」と狙いを語る。
 読者と想定するのは地域探究学習が始まる小学5、6年。2010、11年度に生まれた子どもだ。「東北の未来をつくるのは震災を経験していない世代。風化させず、まずは事実を知ってもらいたい」と岡野さん。
 1巻の冒頭、巨大地震に襲われたケンジが冷静に避難行動を取り「東北で育った子どもはみんな知っている。地震の恐ろしさや『防災』の大切さを!」と語る場面は印象的だ。復興をテーマにした2巻では、女川中(宮城県女川町)の卒業生らが津波の記憶を後世に伝えるため「女川いのちの石碑」を21基建立した取り組みを紹介する。
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 人口減を扱う3巻では「おぬしらも大人になれば東北を出て行くのだろう?」ともんのけに問われ、子どもたちの意見は分かれる。考えの違いを受け入れる大切さが込められており、岡野さんは「自分だったらこうしたい、こうした方が面白いという風に、ケンジたちと一緒に考えながら読んでほしい」と期待する。
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 昨年9月に1巻を発売。3カ月おきに続編を出し、今年6月の4巻で完結した。各巻の初版は8000部。図書館の蔵書検索サイト「カーリル」によると、東北の135館が所蔵する(7月現在)。21年度の青森県推奨図書に選ばれ、学級文庫にも多く採用されており、順番待ちができている学校もあるという。
 仙台市図書館で借りた市内の小学5年女子は「キャラクターがかわいくて、一気に読めた。東北の伝統工芸が危なくなっているのは初めて知った」と話した。
 A5判、全カラー。各巻1100円。東北の地域活性化のための調査研究などを行う公益財団法人「東北活性化研究センター」(仙台市)が監修した。

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[マイクロマガジン社]1984年設立。人気作「転生したらスライムだった件」に代表されるライトノベルや絵本を中心に出版。2007年に始まった「これでいいのか地域批評シリーズ」は全国各地の県民性や課題をまとめる。「まんが地域学習シリーズ」1作目の本作の舞台に東北を選んだのは「課題先進地」であることに加え「地域批評の反応、売れ行きが良かったから」だという。

『守ろう! みんなの東北』全4巻。第2巻の「復興と気候編」で、宮城県女川町に21基建てられた、津波からの避難のランドマーク「いのちの石碑」が紹介されています。同じ女川町の光太郎文学碑(平成3年=1991建立)に倣って、1,000万円といわれた設置費用を募金でまかなったというプロジェクトです。中心人物の一人、鈴木智博さんは、かつて複数回、光太郎を偲ぶ女川光太郎祭にご参加下さり、光太郎詩文の朗読をなさっていただきました。
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このシリーズの何巻目かに「いのちの石碑」が紹介されているという情報は得ていたのですが、何巻目だかがわからず、書店で探してもみたのですが見つからず、というわけで未入手でしたが、『河北新報』さんの記事で第2巻だったとわかり、早速Amazonさんで購入しました。

守ろう! みんなの東北 ②復興と気候編

2021年12月9日 原作 青木健生 漫画 藤原ちづる 監修 東北活性化研究センター
マイクロマガジン社 定価1,000円+税

もうひとつの東北を舞台に、子どもたちが現実の東北で起きているさまざまな社会問題を探究する、まんが地域学習シリーズ第二弾! 今回は、復興と気候編! 子どもたちは次々とおそいかかる『地域問題』をどう解決するのか? キミならどうする?

現実の東北とそっくりだけど東北とは違う不思議な世界、バケモノが暮らす「もうひとつの東北」に飛ばされた、岩手の少年・石澤研治、青森の少女・玉神むつみ、福島の少女・花咲ななえの3人は、現実の東北の怒り・不安・不満によって生み出された「もんのけ」が突きつけてきた難題を見事解決してみせた。だが、彼らの「もうひとつの東北」をめぐる冒険はまだまだ始まったばかり。舞台は岩手を飛び出し、宮城、そして山形へ!  

行く先々で研治たちの前に新たな「もんのけ」が立ちふさがる。彼らが突きつけるのは東北にまつわるまた別の難題。研治たちは「もんのけ」の怒りにどう向きあっていくのか? 宮城、山形、秋田から新たな仲間を加え、東北を救う冒険の第2章がいま、スタートする! 

様々な問題を考えながら、東北の未来を考えてみませんか! ?
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東北6県の抱える課題、そしてそれらを解決していこうという地道な取り組みなどがわかりやすく語られ、これは日本全国の子供たちに読んでほしいものだな、と感じました。

お子様、お孫さんをお持ちの方、ぜひどうぞ。また、学校関係、図書館関係の方々も、よろしくお願い申し上げます。

【折々のことば・光太郎】

来週金曜頃松方三郎氏くる由、


昭和28年(1953)6月20日の日記より 光太郎71歳

松方三郎氏」は、日本電報通信社(現・電通)取締役にして、登山家、ジャーナリストでもありました。父は明治の元勲・松方正義。かつて光雲・光太郎父子がその像を制作しています。実兄は松方幸次郎。上野の国立西洋美術館さんの礎となった「松方コレクション」を集めた人物です。

実際、翌週の金曜には、光太郎が起居していた中野の貸しアトリエに松方がやって来ましたが、その用件は光太郎日記には記されていませんでした。それにしても、光太郎人脈の広さの一端が垣間見えます。