京都精華大学ギャラリーさんで開催中のリニューアル記念展「越境ー収蔵作品とゲストアーティストがひらく視座」の展覧会評が、7月6日(水)、『毎日新聞』さんの大阪夕刊に載りました。
さまざまな角度から越境について考える展示を締めくくるのは、潘逸舟(はんいしゅ)(87年生まれ)によるユニークな作品だ。タイトルは「あなたと私の間にある重さ―京都」。円形に並べられたカラフルなはかりには食器が置かれ、箸やしゃもじで隣のはかりとつながれている。目盛りはそれぞれ数値を示しているが、果たしてそれは何のどの部分の重さなのか。
谷澤紗和子氏の「はいけいちえこさま」に関しては、以下もご覧下さい。
VOCA展2022 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─/「Emotionally Sweet Mood - 情緒本位な甘い気分 - 」。
都内レポートその2「VOCA展2022 現代美術の展望―新しい平面の作家たち―」。
京都精華大学さんでの展示は7月23日(土)まで。ぜひ足をお運びください。
【折々のことば・光太郎】
午后五時半千光園ほととぎす行、 青森県副知事、佐藤春夫夫妻、土方定一氏、小坂氏、藤島氏、草野心平氏、谷口吉郎氏集る、
「千光園ほととぎす」は、当時中野区にあった「黄檗流普茶料理」と掲げる料亭。現在、中野区産業振興センターのある場所です。
この日は、生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」の原型完成記念報告会が催されました。
今、11作家が問う「越境」 京都精華大ギャラリーでリニューアル記念展
人やモノが日常的に国境を越えるグローバル化社会の風景を、新型コロナウイルス禍は一変させた。ロシアによるウクライナ侵攻は、今この瞬間も新たな悲劇を生んでいる。人類の歴史の中で繰り返されてきた「越境」だが、個人の人生に目をやれば、解放や成長をもたらす行為でもある。誰もが経験し直面する「越境」をテーマに据えた展覧会が、京都精華大学(京都市左京区)で開かれている。
今年2月にリニューアルされた「ギャラリーTerra-S(テラス)」の開館記念展。大学が収蔵するコレクションの中から塩田千春ら6人のアーティストと、2000年代以降に活動を開始した若手ゲスト作家5人の作品を展示する。
前身の「フロール」から1・5倍の広さになったギャラリー中央のスペースには、「個と社会(ジェンダー/アイデンティティ/歴史/身体(からだ))」のサブテーマのもと、女性作家4人の作品が並ぶ。陶芸や切り紙のインスタレーションを手がける谷澤紗和子(1982年生まれ)による「はいけいちえこさま」(2021年)は、近年取り組んでいる高村智恵子へのオマージュ作だ。
高村光太郎の「智恵子抄」で知られる智恵子だが、谷澤は、夫の目を通した智恵子像ではなく、切り紙作家としての智恵子個人に光を当てる。「はいけい―」は谷澤の智恵子への手紙などを切り絵にした6枚の連作。智恵子作品のモチーフを取り入れた1枚は、中央部分に目や口が表現されている。谷澤が、自身の言葉で語る智恵子を想像したという。6枚とも、額には解体された家屋の建材を利用。「家」に縛られてきた女性にとっての越えがたい境界が浮かび上がってくるようだ。
谷澤紗和子「はいけいちえこさま」(2021年、部分)
さまざまな角度から越境について考える展示を締めくくるのは、潘逸舟(はんいしゅ)(87年生まれ)によるユニークな作品だ。タイトルは「あなたと私の間にある重さ―京都」。円形に並べられたカラフルなはかりには食器が置かれ、箸やしゃもじで隣のはかりとつながれている。目盛りはそれぞれ数値を示しているが、果たしてそれは何のどの部分の重さなのか。
上海出身で幼少期に青森に移住したというバックグラウンドを持つ潘は、体を使ったパフォーマンスで、社会と個の関係に感じた疑問や自身のアイデンティティーの揺らぎを表現してきた。今回もサブテーマ「身体/アイデンティティ」のコーナーに、自分と同じ重さの石をテーマにした映像作品「呼吸―蘇州号」(13年)が展示されている。「人間の重さは、自分だけの重さなのかと考えるようになった」。潘は同展の公開トークイベントで、「呼吸―」から「あなたと私の―」に至る数年の変化について語った。「自分の中には量れない重さ、どこかとつながっている部分がある。はかりが示しているのは、フィクションでもあると考えるようになった」
展覧会を企画したのは、芸術学部の吉岡恵美子教授とギャラリーの伊藤まゆみキュレーター。準備中にウクライナ侵攻が始まり、期せずして「越境」はさらなる注目を集めることになった。「人類にとって、良い意味でも悪い意味でも重要なテーマであり続けてきた。一方で、潘さんの作品からもわかるように、境界はあると思えばあるし、ないと思えばない、曖昧なものでもあると思う」と吉岡教授。
ギャラリーは同大明窓館3階。23日まで(075・702・5263)。日曜休館。入場無料。教員ら総勢22人が「『越境』を考えるためのおすすめ情報」として書籍や映画、音楽などを紹介する大学ならではの試みも。詳しくは展覧会特設サイト(https://gallery.kyoto−seika.ac.jp/exhibition/220617/)。
谷澤紗和子氏の「はいけいちえこさま」に関しては、以下もご覧下さい。
VOCA展2022 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─/「Emotionally Sweet Mood - 情緒本位な甘い気分 - 」。
都内レポートその2「VOCA展2022 現代美術の展望―新しい平面の作家たち―」。
京都精華大学さんでの展示は7月23日(土)まで。ぜひ足をお運びください。
【折々のことば・光太郎】
午后五時半千光園ほととぎす行、 青森県副知事、佐藤春夫夫妻、土方定一氏、小坂氏、藤島氏、草野心平氏、谷口吉郎氏集る、
昭和28年(1953)6月16日の日記より 光太郎71歳
「千光園ほととぎす」は、当時中野区にあった「黄檗流普茶料理」と掲げる料亭。現在、中野区産業振興センターのある場所です。
この日は、生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」の原型完成記念報告会が催されました。