PR誌というか文芸同人誌というか、不思議な雑誌の『とんぼ』。当会顧問であらせられた故・北川太一先生の御著書を多数刊行されている文治堂書店さんの発行です。

第14号が過日届きました。
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作曲家・仙道作三氏による北川先生の追悼文「人間の魂を愛し続けた人 北川太一」が掲載されています。仙道氏、平成元年(1989)に、北川先生監修、山本鉱太郎氏台本の「オペラ智恵子抄」を書かれ、都内や光太郎ゆかりの宮城県女川町などで上演されました。その話を根幹に、やはり北川先生が関係なさった「オペレッタ注文の多い料理店」(平成4年=1992初演。公式パンフレットに北川先生の「オペレッタ「注文の多い料理店」に寄せて」という一文)、「オペラ五重塔」(平成7年=1995初演。幸田露伴の『五重塔』を元に、北川先生が台本ご執筆)等についても言及されています。

それから、平成29年(2017)に亡くなった、版元の文治堂書店さん創業者・渡辺文治氏の追悼文「渡辺文治さんのこと」(佐藤博久氏ご執筆)も掲載されています。

ついでに言うなら、当方の連載「連翹忌通信」。前号までは、留学中にアメリカからイギリスへ向けて乗船した船ブロンズ彫刻「手」に関するものなど、新たに発見された光太郎文筆作品等について書いてきましたが、今号からは「もの」の発見に関わる内容で書くことにしました。そこでまず、花巻高村光太郎記念館さん所蔵の、イギリスの染色作家、エセル・メレ作のホームスパン毛布について。あと2年くらいはこの手のネタで攻めようと思っております(笑)。

ご入用の方、文治堂さんのサイトまで。頒価500円だとのことです。

【折々のことば・光太郎】

ひる頃藤島さん亀井勝一郎氏同道来訪、一時NHKの車にて放送会館、30分間対談放送、一月三日午前十一時半放送の由、(録音)、


昭和27年(1952)12月25日の日記より 光太郎70歳

NHKさんのラジオで放送された、光太郎と諸人物との対談は、この年3月の真壁仁とのもの、昭和30年(1955)の草野心平とのものの録音がNHKさんに残っており、それぞれそこから文字に起こして『高村光太郎全集』に載せてあります。また、平成17年頃、盛岡放送局のアナウンサー(氏名不詳)との対談(昭和24年=1949、何らかの事情で未放送)を録音したテープも見つかり、こちらも文字に起こして北川先生と当方の共編『光太郎遺珠2006』に掲載しました。

ところがこの日の亀井との対談は失われています。亀井側の資料等で、一部分でも文字起こししたものでもあれば、と思うのですが……。