昨日、NHKさんのラジオ第1で全国放送されている「マイあさ!」という番組の5時台で、光太郎第二の故郷・岩手県花巻市の「光太郎ランチ」が取り上げられました。
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「マイあさだより」という、スタジオと全国のレポーターとを電話で繋ぎ、地域の話題を紹介してもらうコーナーで、花巻のローカルFM「えふえむ花巻」のパーソナリティーを務められている味園史湖さんのリポート。味園さん、先日、やはりNHKさんで岩手・宮城・福島三県を対象に放送されていた「ゴジだっちゃ!」という番組でも、「光太郎ランチ」をご紹介下さいましたが、今回は全国放送でした。

聞き手は田中孝宜アナウンサー、久保田明菜アナウンサーのお二人。
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田中 味園さん、今朝はどんな話題ですか?
味園 はい、あのー、今日はお弁当の話題なんですけど、暖かくなってきて、あのー、もう少ししたらお弁当持って出かけるというのもいい季節になってきますよね。
田中 そうですねー。
味園 今日は私の地元、岩手県内陸部、花巻の道の駅で販売されているユニークなお弁当の話題です。
田中 ほう。
味園 花巻にゆかりのある、詩人・彫刻家の名前がついたお弁当なんですけれども、花巻ゆかりといいますと、詩人で作家の宮沢賢治を思い浮かべるかもしれません。
田中 うん、うん。
味園 が、賢治ではありません。
久保田 はい。
味園 お弁当の名前は「光太郎ランチ」といいます。「光(ひかり)」に「太郎」です。あの、詩人で彫刻家の高村光太郎が食べていたものを再現して詰め合わせたお弁当なんですね。
田中 ほう。
久保田 へー、高村光太郎、花巻にゆかりがあるんですか?
味園 そうなんです。高村光太郎は終戦の前後に七年ほど、花巻に疎開していた時期がありました。で、地元の人々とも交流を持っていました。花巻には、当時、光太郎が住んでいた高村山荘ですとか、高村光太郎記念館があります。その光太郎ゆかりのエリアに、令和2年8月に「道の駅はなまき西南」が誕生しました。
田中 うん。
味園 そこで、月に一回販売されているのが「光太郎ランチ」というわけなんですね。
田中 ほう。
味園 光太郎が食べていたものを、日記に残していまして……
田中 はい、はい、はい。
味園 その日記を元に、光太郎が食べていたものを詰め合わせたお弁当なんです。
田中 なるほど。え、高村光太郎って、どんなものを食べていたんですか?
久保田 フフフ。
味園 気になりますよね?
久保田 うん、うん、うん。
味園 えー、例えば今月15日に販売されたメニューを見てみます。お写真、届いてますかね?
久保田 はい、番組のツイッターにも載せています。

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味園 はい。茶殻ご飯、そば粉のチーズ蒸しパン、焼き鮭、イカの煮つけ、粉ふき芋、きんぴらごぼう、白菜と葱の酢味噌和え……。まだあります。煮豆に塩麹入りの卵焼き……。
田中 ほうほう。
味園 おさつ芋餅、お新香。お総菜など11種類入って税込み800円で販売しています。
久保田 これは一日のメニューでなくて、いろいろ詰め合わせているんでしょうけど、お魚に野菜に、こう、調理方法もバラエティー豊かですね。
味園 そうですね、はい。毎月メニューは変わります。おかずの種類も多くて、彩りも鮮やか、でも、それだけではありません。お弁当を購入しますと、レジで素敵な箸袋とお品書きを渡されるんですね。
田中 ほう。
味園 添えられたA5の紙に、先ほどのお弁当の内容が書かれたお品書きと、光太郎の日記から抜粋された文などが掲載されています。
久保田 あ、今、写真にもそのA5サイズで添えられている、あの、紙も番組のツイッターに載せてあります。
味園 はい。例えば昭和21年3月13日、ちなみに3月13日、光太郎の誕生日なんですけれども、一部紹介しますと、「雪がちらつく」……「朝食、小豆のご飯を」ですね「粥にする」。
田中 ほー。
味園 「終日読み物、雑誌新聞類」……「今日、東京より来たりしチーズをはじめて開ける、オーストラリア製なり」。
田中 へー。
味園 ……ですとか、昭和23年の誕生日には「今朝霧が立ちこめ、春を思わしむ」、「良き小麦粉にてパンを蒸す、よく出来たり」など。こういうものを見ると、お弁当がさらに楽しめますよね。
久保田 うん、うん。
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田中 ほう……でも、何か、どんな天気だったかも分かりますし、それを食べた、何か状況が見えてくるような気がしますね。
味園 そうですね。何だか光太郎の当時の息遣いが感じられるような気がしますよね。
田中 そうそう、そうですね。
味園 戦後とは言っても、光太郎は色んな人との交流がありまして、珍しい食材を使っていたり、そば粉のパンケーキを自分で焼いたりと、日記やお弁当から、グルメな食事、自炊の様子が伝わってきます。添えられた箸袋や献立表からも、このランチに携わっている地元のスタッフの皆さんの温かい気持ちが感じられるんですが、ま、ちなみに箸袋と献立表は、地元で光太郎をこよなく愛するグループの皆さんがいらっしゃいまして、光太郎のことにとても詳しい方たちなんですが、ボランティアで協力して作ってくれているということなんですね。
久保田 ふーん。
味園 毎月15日のみ、限定10食、毎回売り切れる人気のお弁当ですが、事前に別途注文することも可能とのことです。
久保田 じゃあ、今も光太郎は地元で愛されているわけですね。
味園 そうですね。光太郎は地域の方たちとの交流を大切にしていたようですけれど、このランチを販売する「道の駅はなまき西南」も、いろんな形で地域の方々との交流を大事にしています。地元の農産物を購入出来る産直、飲食店、広いコミュニティースペースなどがありまして、人々が集える場所にもなっています。で、他にも大事な役割がありまして、地域の高齢者への食事の配達をしているんですね。
久保田 うん、うん、うん、うん。
味園 道の駅で地元の女性グループが日々、内容を変えたお弁当とお総菜を作って販売していまして、お弁当を希望する地元の高齢者に届けています。
田中 はー、道の駅になかなか行けない高齢者ともつながりを作っていると言うことなんですね?
味園 そうですね。お弁当を配達することで、会話を交わして元気で過ごしているか、「見守り」にもなっているというわけですね。
久保田 ふーん。
味園 この道の駅には地元の児童生徒が作った四季折々の飾り、絵などが飾られたり、秋には地域の方が作った案山子(かかし)がずらっと並んだりと、人々の交流の様子が、あちこちに感じられるんですけれども、もしかしたら、光太郎もこんな風に、岩手の四季の移り変わりを、地元の人たちと共に楽しんでいたかもしれません。
田中 そうですね、うん。
味園 あのー、地元ゆかりの光太郎ランチを地元産の食材で提供していることもありまして、この道の駅は、いろんな所の道の駅の一つではなくて、高村光太郎がこの地域に住んで、その息吹が感じられる道の駅にもなっているのではないかな、と感じます。
田中 はい。
久保田 そうですね。味園さん、ありがとうございました。
田中 ありがとうございました。
久保田 岩手県花巻市から、味園史湖さんでした。


話題となっている道の駅は、「道の駅はなまき西南(愛称・賢治と光太郎の郷)」さん。「光太郎ランチ」を販売しているのは、テナントの「ミレットキッチン花(フラワー)」さん。メニューの考案や、番組で紹介された光太郎日記抜粋などには「やつかの森LLC」さんが当たられています。本当に頭の下がる思いです。

この話題の際にはいつも書いていますが、「光太郎ランチ」、末永く愛されて欲しいものです。

ちなみに今回の放送分、4月6日(水)まで、NHKさんの聴き逃し配信「らじる★らじる」で聴取可能です。

【折々のことば・光太郎】

七時おきる、 猪熊氏と植村鷹千代氏の対談をきく、ラジオ、


昭和27年(1952)9月7日の日記より 光太郎70歳

光太郎もNHKさんのラジオ放送、よく聴いていました。「猪熊氏」は新制作派の画家・猪熊弦一郎でしょう。光太郎とは旧知の仲でした。「植村鷹千代」は美術評論家です。