新刊コミックスです。
72歳のミカコさんは夫を亡くしたばかり。今後は夫と暮らした家にこだわって一人暮らしをするつもり。心配な子や孫にスマホを持たされたところ、死んだおじいさんのアカウントと偶然繋がってしまい…。 読めば老後も悪くない、人生100年時代のおひとり様術(ライフハック)!
ミカコ72歳 1
2022年3月5日 新久千映著 株式会社コアミックス 定価580円+税72歳のミカコさんは夫を亡くしたばかり。今後は夫と暮らした家にこだわって一人暮らしをするつもり。心配な子や孫にスマホを持たされたところ、死んだおじいさんのアカウントと偶然繋がってしまい…。 読めば老後も悪くない、人生100年時代のおひとり様術(ライフハック)!
『コミックゼノン』という月刊青年漫画誌に、昨年から連載されているもので、第1話などはWeb上で無料公開されています。
上記解説文にもありますが、夫を亡くした広島在住ミカコさんがスマホデビュー。すると、亡き夫のLINEアカウントがまだ残っており、既読にならないことを承知で、日記代わりにいろいろ書き込みをするように……という展開です。
第5話「気づかなかった自分が情けないわ」が、『智恵子抄』がらみの内容になっています。
ミカコさん、亡夫の蔵書を処分しようと、古書店さんに来てもらいます。ミカコさん自身は、あまり読書に縁がないようで……。
『紙絵と詩 智恵子抄』(昭和40年=1965初版 伊藤信吉 北川太一 髙村規編 社会思想社現代教養文庫)。ミカコさん、あるページに釘付けになります。
そして……
そのココロは……
そこで、サブタイトルが「気づかなかった自分が情けないわ」。しかしミカコさん、これを機に、読書にも興味を持つように……。
その他にも、日々の何気ない出来事や、その時々の思いを、亡夫のアカウントに書き続けるミカコさん。それに気付き、はじめは認知症にでもなったかと心配していた娘や孫、職場(ミカコさんは医療事務の仕事をしています)の同僚たちも、「それもありか」と思うようになり、さらに少なからず影響を受けるようになり……という感じです。
ぜひお買い求めを。
【折々のことば・光太郎】
美校にて生徒に一言話す、校長や教員諸氏に今度の仕事の事を話し、十月東京行きを告げる、 うなぎ屋にて一同より御馳走になり、バスにて花巻、タキシにて小屋、
「美校」は岩手県立美術工芸学校。「校長」は森口多里、「教員諸氏」には深沢省三・紅子夫妻、舟越保武、佐々木一郎らがいました。「今度の仕事」は、生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」の制作です。
他の日の日記等でほとんど見かけたことがなく、おやっと思ったのが「バスにて花巻」の記述。当時、盛岡~花巻間の路線バスがあったのですね。
上記解説文にもありますが、夫を亡くした広島在住ミカコさんがスマホデビュー。すると、亡き夫のLINEアカウントがまだ残っており、既読にならないことを承知で、日記代わりにいろいろ書き込みをするように……という展開です。
第5話「気づかなかった自分が情けないわ」が、『智恵子抄』がらみの内容になっています。
ミカコさん、亡夫の蔵書を処分しようと、古書店さんに来てもらいます。ミカコさん自身は、あまり読書に縁がないようで……。
『紙絵と詩 智恵子抄』(昭和40年=1965初版 伊藤信吉 北川太一 髙村規編 社会思想社現代教養文庫)。ミカコさん、あるページに釘付けになります。
そして……
そのココロは……
おそらく半世紀程も前でしょう、ミカコさんが亡夫から貰った手紙の文面が、そのままそこに載っていたというわけで(笑)。
ちなみにそれは詩「人類の泉」(大正2年=1913)だったようです。
ちなみにそれは詩「人類の泉」(大正2年=1913)だったようです。
人類の泉
青い雨がまた降つて来ます
この雨の音が
むらがり起る生物のいのちのあらわれとなつて
いつも私を堪らなくおびやかすのです
そして私のいきり立つ魂は
私を乗り超え私を脱(のが)れて
づんづんと私を作つてゆくのです
いま死んで いま生れるのです
二時が三時になり
青葉のさきから又も若葉の萌え出すやうに
今日もこの魂の加速度を
自分ながら胸一ぱいに感じてゐました
そして極度の静寂をたもつて
ぢつと坐つてゐました
自然と涙が流れ
抱きしめる様にあなたを思ひつめてゐました
あなたは本当に私の半身です
あなたが一番たしかに私の信を握り
あなたこそ私の肉身の痛烈を奥底から分つのです
私にはあなたがある
あなたがある
私はかなり惨酷に人間の孤独を味つて来たのです
おそろしい自棄の境にまで飛び込んだのをあなたは知つて居ます
私の生(いのち)を根から見てくれるのは
私を全部に解してくれるのは
ただあなたです
私は自分のゆく道の開路者(ピオニエエ)です
私の正しさは草木の正しさです
ああ あなたは其を生きた眼で見てくれるのです
もとよりあなたはあなたのいのちを持つてゐます
あなたは海水の流動する力をもつてゐます
あなたが私にある事は
微笑が私にある事です
あなたによつて私の生(いのち)は複雑になり 豊富になります
そして孤独を知りつつ 孤独を感じないのです
私は今生きてゐる社会で
もう万人の通る通路から数歩自分の道に踏み込みました
もう共に手を取る友達はありません
ただ互に或る部分を了解し合ふ友達があるのみです
私はこの孤独を悲しまなくなりました
此は自然であり 又必然であるのですから
そしてこの孤独に満足さへしようとするのです
けれども
私にあなたが無いとしたら――
ああ それは想像も出来ません
想像するのも愚かです
私にはあなたがある
あなたがある
そしてあなたの内には大きな愛の世界があります
私は人から離れて孤独になりながら
あなたを通じて再び人類の生きた気息(きそく)に接します
ヒユウマニテイの中に活躍します
すべてから脱却して
ただあなたに向ふのです
深いとほい人類の泉に肌をひたすのです
あなたは私の為めに生れたのだ
私にはあなたがある
あなたがある あなたがある
そこで、サブタイトルが「気づかなかった自分が情けないわ」。しかしミカコさん、これを機に、読書にも興味を持つように……。
その他にも、日々の何気ない出来事や、その時々の思いを、亡夫のアカウントに書き続けるミカコさん。それに気付き、はじめは認知症にでもなったかと心配していた娘や孫、職場(ミカコさんは医療事務の仕事をしています)の同僚たちも、「それもありか」と思うようになり、さらに少なからず影響を受けるようになり……という感じです。
ぜひお買い求めを。
【折々のことば・光太郎】
美校にて生徒に一言話す、校長や教員諸氏に今度の仕事の事を話し、十月東京行きを告げる、 うなぎ屋にて一同より御馳走になり、バスにて花巻、タキシにて小屋、
昭和27年(1952)7月9日の日記より 光太郎70歳
「美校」は岩手県立美術工芸学校。「校長」は森口多里、「教員諸氏」には深沢省三・紅子夫妻、舟越保武、佐々木一郎らがいました。「今度の仕事」は、生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」の制作です。
他の日の日記等でほとんど見かけたことがなく、おやっと思ったのが「バスにて花巻」の記述。当時、盛岡~花巻間の路線バスがあったのですね。