既に始まってしまっていますが、光太郎の書作品が出ている展示即売会の情報です。
期 日 : 2022年3月3日(木)~3月12日(土)
会 場 : しぶや黒田陶苑京橋店 魯卿あん 東京都中央区京橋2-9-9 ASビルディング1F
時 間 : 11:00~18:00
料 金 : 無料
しぶや黒田陶苑では年間40回以上の展示会を開催しており、その大半は陶芸に関する展示会です。勿論、陶芸の優品を皆様にご紹介したいという思いは第一にございますが、同時に陶芸専門ではなく、美術商としてジャンルや分野を横断して様々な美術品を取り合わせることで、より魅力的な生活をご提案出来ればと常々考えております。
「書畫のあるくらし」。
絵画や書軸などの作品は小品であっても一点で大きく場の印象を変える事が出来ます。今回の展示会ではそんな書画と陶芸作品を取り合わせた展示を行っております。
主な出品作品(ご紹介しております中には、ご売約戴いている作品もございます)
徳岡神泉 水仙/TOKUOKA Shinsen Scroll“Narcissus”
北大路魯山人 唐津湯碗絵/KITAOJI Rosanjin “Karatsu Yunomi”, Framed
福田平八郎 「水」芥表紙絵/FUKUDA Heihachiro “Water”, Framed
石黒宗麿 画賛/ISHIGURO Munemaro Scroll, Painting with poem
松田正平 明恵上人歌/MATSUDA Shohei Calligraphy, a poem of Buddist Myoe
河井寛次郎 画賛/KAWAI Kanjiro Painting with poem, Framed
高村光太郎 平等施一切/TAKAMURA Kotaro Scroll, a word of Shandao, the Buddhist.
「書初」は、送りがなが省略されていまして「書き初め」です。蟄居生活を送っていた花巻郊外旧太田村の山小屋では(あるいは東京在住時からそうしていたのかも知れませんが)、毎年、1月2日に書き初めを行うのが光太郎のルーティーンでした。
「寺神戸氏」は寺神戸誠一、茨城出身の小説家です。前年の10月に、寺神戸から半切の紙を贈られたことも日記に記されていますし、この年の寺神戸宛書簡には、書を送ったことがしたためられています。どうもこの寺神戸に贈られた物が出て来たのかな、という感じです。
しぶや黒田陶苑さん、茶道具が中心ですが、茶掛けという意味もあるのでしょう、書画も広く扱われていて、平成26年(2014)にも光太郎の書を出されていました。
今回の「平等施一切」は、60万円とのこと。妥当な金額、いや、少しお買い得価格かな、という感じも。これが入札形式だと、最終落札価格はもっと上のように思えます。
収まるべき所に収まって欲しいものです。
【折々のことば・光太郎】
花巻温泉より鎌田専務来訪、酒二升、ビール3本、べん当等もらふ、用件は金田一氏の詩碑の英訳をしてくれとの事、ともかく承諾、
「金田一氏の詩碑」は、昭和25年(1950)、花巻温泉に建立された「金田一国士頌碑」。光太郎詩「金田一国士頌」が刻まれています。碑文の揮毫は光太郎ではありませんが。
主な出品作品(ご紹介しております中には、ご売約戴いている作品もございます)
徳岡神泉 水仙/TOKUOKA Shinsen Scroll“Narcissus”
北大路魯山人 唐津湯碗絵/KITAOJI Rosanjin “Karatsu Yunomi”, Framed
福田平八郎 「水」芥表紙絵/FUKUDA Heihachiro “Water”, Framed
石黒宗麿 画賛/ISHIGURO Munemaro Scroll, Painting with poem
松田正平 明恵上人歌/MATSUDA Shohei Calligraphy, a poem of Buddist Myoe
河井寛次郎 画賛/KAWAI Kanjiro Painting with poem, Framed
高村光太郎 平等施一切/TAKAMURA Kotaro Scroll, a word of Shandao, the Buddhist.
彫刻家、高村光太郎先生。教科書で『道程』『智恵子抄』などの詩作に親しんだという方も多いかも知れませんが、能書家としてもその名を知られています。一筆一筆、情緒に流されるのではなく、思慮深くその筆を進めています。彫刻家として書を造形作品と同等の強度を持ったものとして捉えていたのかもしれません。
願以此功徳 平等施一切 同発菩提心 往生安楽国 善導大師『観無量寿経疏』より
念仏の功徳を、すべての人々と平等に分かち合い、共に仏を求める心をおこし、極楽浄土へと生まれたい、という仏書からの言葉の一部を書いたもの。その実直な線は真摯に安寧を祈る姿を思い起させます。昭和廿二年(二十二年)とあることから1947年、先生が64歳の頃に書かれたものと分かります。
この書に関しては他に類例がなく、当方も初めて画像を拝見し、驚いたと同時にほれぼれしました。特に「等」の字。崩しのルールに則っているような、いないような……これは書けそうで、なかなか書けません。また、「施」と「切」との間の「一」の、長すぎず、短すぎずの実に微妙なバランス、それから「切」の字の「刀」の部分の左払いを始める位置、やはり長さなど、心憎いばかりです。
昭和22年(1947)1月2日の日記に、この書に関する記述があります。
午前午后書初を書いてゐる。寺神戸氏よりもらひし紙に「清浄光明」、「平等施一切」、二枚つつ書く、在家勤行集中の文句。
昭和22年(1947)1月2日の日記に、この書に関する記述があります。
午前午后書初を書いてゐる。寺神戸氏よりもらひし紙に「清浄光明」、「平等施一切」、二枚つつ書く、在家勤行集中の文句。
「書初」は、送りがなが省略されていまして「書き初め」です。蟄居生活を送っていた花巻郊外旧太田村の山小屋では(あるいは東京在住時からそうしていたのかも知れませんが)、毎年、1月2日に書き初めを行うのが光太郎のルーティーンでした。
「寺神戸氏」は寺神戸誠一、茨城出身の小説家です。前年の10月に、寺神戸から半切の紙を贈られたことも日記に記されていますし、この年の寺神戸宛書簡には、書を送ったことがしたためられています。どうもこの寺神戸に贈られた物が出て来たのかな、という感じです。
しぶや黒田陶苑さん、茶道具が中心ですが、茶掛けという意味もあるのでしょう、書画も広く扱われていて、平成26年(2014)にも光太郎の書を出されていました。
今回の「平等施一切」は、60万円とのこと。妥当な金額、いや、少しお買い得価格かな、という感じも。これが入札形式だと、最終落札価格はもっと上のように思えます。
収まるべき所に収まって欲しいものです。
【折々のことば・光太郎】
花巻温泉より鎌田専務来訪、酒二升、ビール3本、べん当等もらふ、用件は金田一氏の詩碑の英訳をしてくれとの事、ともかく承諾、
昭和27年(1952)6月12日の日記より 光太郎70歳
「金田一氏の詩碑」は、昭和25年(1950)、花巻温泉に建立された「金田一国士頌碑」。光太郎詩「金田一国士頌」が刻まれています。碑文の揮毫は光太郎ではありませんが。