新刊です。

マンガ 教科書に出てくる美術・建築物語 ② 日本の美術 下

2022年3月1日 芳賀靖彦編 学研プラス 定価3,600円+税

葛飾北斎《富嶽三十六景》、黒田清輝《湖畔》、東京駅など、日本の美術と建築を、オールカラーのマンガで紹介。作品の制作背景や込められた意味、作者の生涯を分かりやすく解説し、作品への感動が深まる。美術や社会の教科書に掲載の作品も、多数収録。


目次
 葛飾北斎「富嶽三十六景」  作画・糸貫律
 歌川広重「東海道五十三次」  作画・糸貫律
 高橋由一「鮭」  作画・灰木辰也
 辰野金吾「東京駅」  作画・雁川せゆ
 黒田清輝「湖畔」  作画・飯田要
 岸田劉生「麗子五歳之像(麗子像)」  作画・灰木辰也
 高村光雲「老猿」  作画・雛川まつり
 速見御舟「炎舞」  作画・大福もち子
 上村松園「序の舞」  作画・ノガミ陽
 岡本太郎「太陽の塔」  作画・灰木辰也
 コラム 日本美術史の流れ 江戸時代後半~現代
 コラム 浮世絵絵を楽しもう  
  
001
日本近現代の美術作品等10点を、それぞれ10ページから16ページの短編漫画(オールカラー)で紹介しています。

光太郎の父・光雲の「老猿」(12ページ)。昭和4年(1929)刊行の『光雲懐古談』を下敷きにし、光雲の生涯を追っていますが、色々小ネタもはさみ、感心させられました。

ちなみに語り手は光雲作の木彫「団扇に眠る猫」(昭和7年=1932)。
004
001
005
漫画ならではの技法ですね。

「マンガ 教科書に出てくる美術・建築物語」は全5巻、こちらは第2巻の扱いです。他の巻は、「① 日本の美術 上」(鳥獣戯画、俵屋宗達《風神雷神図屏風》、法隆寺五重塔など)、「③ 仏教の美術」(東大寺大仏・金剛力士像、興福寺阿修羅像、法隆寺釈迦三尊像ほか)、「④ 世界の美術」(モナ・リザ、ダヴィデ像、落ち穂拾い、星月夜、考える人、サグラダ・ファミリア)、「⑤ 聖書の美術」(最後の晩餐、受胎告知、ピエタetc)。いずれも小学校高学年を対象に、ということですが、第2巻を見た限り、大人でも十分鑑賞にたえます。

やばい、目次を見ていると、他の巻も欲しくなってきました(笑)。特に「④ 世界の美術」。光太郎ががっつり影響を受けたロダンの「考える人」が取り上げられてしまっていますので。

ちなみに同じ学研さん刊行で、光太郎の章もある「マンガ名詩・短歌・俳句物語」と同じ体裁です。

全国の学校さん等で、ぜひ揃えてほしいものですね。

【折々のことば・光太郎】

山口小学校運動会、1000円寄附、十一時出かける、午后二時小屋にかへる、

昭和27年(1952)5月8日の日記より 光太郎70歳

山口小学校」は、光太郎が蟄居生活を送っていた花巻郊外旧太田村の山小屋から1㌔㍍弱のところにあった小学校です。

日記が喪われている昭和25年(1950)の運動会では、光太郎、老人の部のビン釣り競走に出場しています(笑)。当時の校長・浅沼政規の回想『山口と高村光太郎先生』(平成7年=1995)より。

 午後の競技が開始。年長組の《びん釣り競争》となりました。この競技へ先生の参加をお願いすると、快く出場して下さいました。競技が始まりました。
 ひときわ会場が賑やかになり、拡声器の音も、先生への応援も大きくなりました。
 一等、二等とゴールしてきます。先生は少し手間取ったようでしたが、釣れたびんを手に、大股で走ってゴールインしました。一同からすごい拍手です。
 そして先生もみんなと一緒に会長席に向かい、会長から賞品を受け取られました。
 「しばらくぶりで走ってみましたが、にわかに走ったものですから、遅れてしまいました。でも、みんなと走れて愉快でしたよ。」と、おっしゃいました。
 この時の先生の姿に接した部落の人たちは、自分たちと親しく交わって下さろうとするお気持ちに、感謝の念を深くしました。