昨日は都内2箇所を廻っておりました。廻った順にレポートいたします。

まず、六本木の国立新美術館さん。
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こちらでは、第8回日本美術展覧会(通称・日展)が開催中。
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日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門に分かれており、そのうち第5科・書部門で、光太郎詩文を書いた作品が入選し、展示されているという情報を得まして、拝見に伺った次第です。

第5科は3階でした。
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確認した限り、3点、光太郎詩文を書いて下さった作品が。展示番号順にご紹介します。

まず、照井皓月さんという方の作品。光太郎詩「鯉を彫る」(昭和11年=1936)の一節です。
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この方、光太郎第二の故郷ともいうべき花巻ご在住だそうです。

続いて、篠原挙秋さんという方で、「智恵子の半生より」。『智恵子抄』にも収録された随筆「智恵子の半生」(昭和15年=1940)から。
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日展さんでは、こういう巻紙の形での出品がありなのですね。
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それから、冨本琇瑩さんという方。「新入選」とありました。初の入選ということでしょうか。作品題は「智恵子抄より」。
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こちらも巻紙で、「千鳥と遊ぶ智恵子」(昭和12年=1937)が書かれています。
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KIMG5458おそらく、光太郎詩文が書かれた作品は、この3点でした(もし見落としがあったらすみません)。

雅号では分かりにくいのですが、お三方とも女性の方でした(出品名簿に本名が書かれていました)。

「男性らしく雄渾壮大」、「女性らしく繊細優美」などと書くと、昨今は「ステレオタイプのとらえ方はジェンダー差別に他ならん!」とお叱りを受けそうですが、やはり厳然としてそういう部分はあると思いますし、3点の書からは、たおやかな女性らしさを感じました。

ところで、日展さん、入選者の名簿等に、作品名も併せて公開なさっています。これはいい試みだと存じます。「誰が」というのはもちろんですが、「何を」というのも重要な要素でしょう。当方など、光太郎詩文を書かれた作品が出ているので観に行こう、という気になりましたし。

同じことは、音楽の演奏会等(コンクール等も含め)にも言えるような気がします。やはり「誰(どの団体)が」は、もちろん必須ですが、「どんな曲を」も非常に大切だと思います。「この曲が演奏されるんなら、聴きに行こう」というニーズが結構あるような気がしますが、どうも主催者側はそう考えず、「誰(どの団体)」ばかり前面に出すケースが少なくありません。

閑話休題。日展さん、今月21日までの会期です。ぜひ足をお運びください。

007ちなみに会場の国立新美術館さん、「エヴァンゲリオン」シリーズなどで有名な庵野秀明氏の「庵野秀明展」も開催中で、混み合っています。ご注意下さい。

【折々のことば・光太郎】

随筆集校閲、朱筆入れ、

   昭和26年4月8日の日記より 光太郎69歳

「随筆集」は、この年6月に、『智恵子抄』と同じ龍星閣から刊行された『独居自炊』。若干の加筆訂正がありますが、ほぼほぼ戦時中の『美について』(昭和16年=1941)、『某月某日』(昭和18年=1943)からの再編です。