本日発売です。拙稿が載っています。

美術の窓 №458 2021年11月号004

2021年10月20日 生活の友社 定価1,524円+税

このパーツに夢中! 惹き込まれる女性像

色っぽいうなじ、肩のまるみ、なめらかな背中、ふっくらとした胸やお尻……女性の身体にはいつの時代も芸術家たちの創作意欲を搔き立てる、曲線的な造形美が溢れています。本特集では美術史家による名画のパーツごとの魅力の解説、現代作家の厳選グラビア、パーツにこだわる作家へのインタビューで女性の造形美の魅力を紹介。さらにアジアの女神や土偶の形にも注目し、「究極の女性像」を見比べるチャート&グラビアを収録。小誌でも人気の高い女性像特集、2021年版は女性像の造形の魅力を徹底的に掘り下げます!

巻頭特集は古今東西の裸婦像に関してですが、富山県水墨美術館さんで開催中の「チューリップテレビ開局30周年記念「画壇の三筆」熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展」に関し、記事が2本。

まず、同館館長であらせられる中川美彩緒氏が「和魂洋才-書画のススメ」というコーナーで、同展にて展示中の光太郎画帖「有機無機帖」について書かれています。題して「当展必見の一帖 高村光太郎「有機無機帖」より」。

「有機無機帖」は、最晩年の昭和29年(1954)、親しくしていた美術史家の奥平英雄に贈られた画帖で、現在は駒場の日本近代文学館さんに所蔵されています。
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そして、拙稿「五匹目の「蝉」 「画壇の三筆 熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展」」。こちらも同展で展示中、というか、本邦初公開となった、新発見の木彫「蝉」についてです。
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光太郎の木彫は、少年時代の習作を含め、20点余りしか現存が確認できていません。そこにさらに1点が加わり、しかも、代表作の一つに数えられる「蝉」の新たなバージョン、さらに言うなら、その最も新しい作例ということで、もっともっと注目されていい物なのです。しかし、どうもその価値があまり注目されていませんで、残念に思い、書いた次第です。

中川氏の玉稿と併せ、詳しくはご購入の上、お読み下さい。また、「有機無機帖」、「蝉」、もちろん他にも書と彫刻の優品が多数展示されています。ぜひ富山まで足をお運び下さり、現物を御覧頂きたく存じます。

ところで『美術の窓』さん、先月号でも紹介すべき記事がありました。巻頭特集の「耳にこだわる」。往古来今の美術作品で、「耳」がどのように表現されているかに注目したもので、興味深く拝読いたしました。その中で、光太郎の父・光雲の代表作の一つ「老猿」(国指定重要文化財)が取り上げられました。
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人間の耳とは明らかに異なり、上端が尖っている、と。光雲は、これを作るに際し、ニホンザルを観察し、詳細なスケッチをしていますので、実際に猿の耳はそうなっているのでしょう。
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さらに、光太郎の親友だった碌山荻原守衛の「北条虎吉像」の耳、それから、今月号の裸婦像特集では守衛の代表作「女」が取り上げられています。

また、先月号にはチューリップテレビ開局30周年記念「画壇の三筆」熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展」の案内も。
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今月号、先月号とも、オンラインで注文可。ぜひお買い求め下さい。

【折々のことば・光太郎】

二ツ堰にて岡田さん出迎へ、手橇に荷と余とのり三人にてひき又押す、岡田さん宅にて中食馳走になる。四時頃小屋着。


昭和26年(1951)2月7日の日記より 光太郎69歳

1月15日に成人式の講演のため、水沢町に出かけて以来、花巻温泉大沢温泉、花巻町の佐藤隆房宅などを転々とし、約3週間ぶりに太田村の山小屋に帰りました。

「二ツ堰」は、当時走っていた花巻電鉄の駅。ここから村人達が光太郎をソリに乗せて運んでくれたそうです。