まずは『毎日新聞』さん福島版の記事から。

県内入賞作品 福島・山形・秋田3県、入賞作など800点 20日開幕 /福島

 第72回毎日書道展東北山形展(毎日新聞社・毎日書道会主催)が20~24日、山形市大手町の山形美術館で開かれる。全国巡回の上位入賞作や福島、山形、秋田3県からの入賞、入選作など約800点が展示される。入場料は一般600円、大学生400円、高校生以下は無料。
 県内からは、公募と会友を対象とした最高賞の毎日賞に2点が選ばれたほか、秀作賞に7点、佳作賞に14点、U23奨励賞に1点が選ばれた。県内在住の同展参与会員と審査会員に、これらの作品を講評してもらった。

<秀作賞>近代詩文書 深倉光雪(福島市) 一見して、元気が飛び込んできた。自由闊達な筆さばきや構成、強さ、大きさ、広がりが印象的だ。テーマである「無窮(むきゅう)の生命をたたえろ 私は山だ、私は空だ」という高村光太郎の詩への共感、感動が伝わってくる。ご自分でも創作意欲を遺憾なく表現できたであろうと思われる。すばらしくスケールの大きい、余裕ある作品だ。
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他にも、光太郎詩文の一節を書かれて入選された方がいらっしゃるのかもしれませんが……。

009書かれているのは、光太郎詩「山」(大正2年=1913)の一節です。この年の夏、光太郎智恵子は信州上高地で一夏を過ごし、二人の間で結婚の約束が交わされました。

    
 
 山の重さが私を攻め囲んだ
 私は大地のそそり立つ力をこころに握りしめて
 山に向かつた
 
山はみじろぎもしない
 山は四方から森厳な静寂をこんこんと噴き出した
 たまらない恐怖に
 私の魂は満ちた
 ととつ、とつ、ととつ、とつ、と
 底の方から脈うち始めた私の全意識は
 忽ちまつぱだかの山脈に押し返した
 「無窮」の力をたたへろ
 「無窮」の生命をたたへろ
 私は山だ
 私は空だ

 又あの狂つた種牛だ
 又あの流れる水だ
 私の心は山脈のあらゆる隅隅をひたして
 其処に満ちた
 みちはじけた
 山はからだをのして波うち
 際限のない虚空の中へはるかに
 又ほがらかに
 ひびき渡つた
 秋の日光は一ぱいにかがやき
 私は耳に天空のカの勝鬨をきいた
 山にあふれた血と肉のよろこび!
 底にほほゑむ自然の慈愛!
 私はすべてを抱いた
 涙がながれた

婚約を果たした光太郎の高揚感が伝わってきますね。画像は大正末から昭和初めの頃の絵葉書です。

さて、書道展自体の情報を。

第72回毎日書道展東北山形展010

期 日 : 2021年10月20日(水)~10月24日(日)
会 場 : 山形美術館 山形県山形市大手町1-63
時 間 : 午前10時~午後5時/最終日は午後4時閉会
休 館 : 期間中無休
料 金 : 一般600円、大学生400円、高校生以下は無料

全国の書家の皆さん、「光太郎詩文を書いて××展に入選し、展覧会が開かれるよ」的な情報があれば、コメント欄等から御教示下さい。

【折々のことば・光太郎】

コタツにてあたたまり居り、 午后下の湯の方にいつてみる、階段多く息切れす。

昭和26年(1951)1月31日の日記より 光太郎69歳

湯治的に滞在していた、花巻南温泉峡・大沢温泉での記述です。「下の湯」は、名物の露天風呂「大沢の湯」。光太郎が泊まっていた山水閣からは距離も結構あり、最後に長めの階段があって、たしかに結核性の肋間神経痛に悩んでいた光太郎には、大変だったかも知れません。
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