当会顧問であらせられた故・北川太一先生の盟友だった、故・吉本隆明氏関連です。この国で初めて、まるまる一冊、光太郎を論じた評論集『高村光太郎』(昭和32年=1957 飯塚書店)を刊行した吉本、その後も折に触れ、光太郎を論じ続けました。そうした『高村光太郎』の補遺的な短文等が掲載された新刊を御紹介します。
吉本隆明 全質疑応答Ⅰ 1963~1971
2021年8月3日 吉本隆明著 論創社 定価2,200円+税テーマ別で編集された『吉本隆明質疑応答集』シリーズを刷新し、時系列で並べ直した『吉本隆明 全質疑応答』始動! 全5巻を予定し、新たに発見された前シリーズ未収録の「質疑応答」も収録。巻末に菅原則生による解説を付す。
それから、晶文社さんから刊行中の『吉本隆明全集』。平成26年(2014)発行の第5巻に、『高村光太郎』全文が収録されており、他に、、 、第12巻でも光太郎に触れられていましたが、このほど刊行された第26巻でも光太郎関連が。
月報は山崎哲さん(劇作家)、菅原則生さん(『続・最後の場所』)、ハルノ宵子さん(作家・漫画家)が執筆。
90年代の吉本、マスコミの需要もあったのでしょうが、芸能関係やサブカルチャー方面など、その論じる対象は本当に幅広くなっていたというのがよくわかります。そうした傾向を批判する向きがないでもありませんが、いわゆる「専門バカ」より良いと思いますし、吉本の場合、どんなに手を広げても、それぞれに深い洞察に基づいて論じられていて、単なる雑学好きが蘊蓄を傾けているといった趣にはなっていません。それだけに、語り継がれる存在なのでしょうが。
さて、それぞれ、ぜひお買い求め下さい。
【折々のことば・光太郎】
夜青年会の旗の図案をかく。
「青年会」は、蟄居生活を送っていた花巻郊外旧太田村山口地区の、山関青年会。この旗は現存します。
目次
【九州大学新聞主催】 1963年11月23日
情況が強いる切実な課題とは何か
【国際基督教大学ICU祭実行委員会主催】 1964年1月18日
芸術と疎外
【『コスモス』主催。日比谷図書館において】 1966年4月2日
高村光太郎について―鷗外をめぐる人々
【東京都立大学附属高等学校第18回記念祭において】 1966年10月22日
日本文学の現状
【関西大学学生有志主催】 1966年10月29日
知識人―その思想的課題
【大阪市立大学社会思想研究会・大阪市立大学新聞会共催】 1966年10月31 日
国家・家・大衆・知識人
【国学院大学学生(学部等不明)主催】 1966年11月21日
現代文学に何が必要か
【中央大学学生会館常任委員会主催】 1967年10月12 日
現代とマルクス
【早大独立左翼集団主催】 1967年10 月21日
ナショナリズム―国家論
【東京大学三鷹寮委員会主催】 1967年10月24日
詩人としての高村光太郎と夏目漱石
【明治大学駿台祭二部実行委員会主催】 1967年11月1日
調和への告発
【東京医科歯科大学新聞会主催】 1967年11月2日
個体・家族・共同性としての人間
【京都大学文学部学友会主催】 1967年11月12日
再度情況とはなにか
【国学院大学文芸部・国学院大学文化団体連合会共催】 1967年11月21日
人間にとって思想とは何か
―『言語にとって美とはなにか』および『共同幻想論』にふれて
―『言語にとって美とはなにか』および『共同幻想論』にふれて
【関西大学学生図書委員会主催】 1967年11月26日
幻想としての国家
【大学セミナーハウス(東京都八王子市)主催】 1971年5月30日
自己とは何か―ゼーレン・キルケゴールの思想を手がかりとして
【青山学院大学現代文化研究会主催】 1971年6月5日
思想的課題としての情況
【名古屋ウニタ書店主催】 1971年12月19日
国家・共同体の原理的位相
それから、晶文社さんから刊行中の『吉本隆明全集』。平成26年(2014)発行の第5巻に、『高村光太郎』全文が収録されており、他に、、 、第12巻でも光太郎に触れられていましたが、このほど刊行された第26巻でも光太郎関連が。
吉本隆明全集26[1991-1995]
2021年8月 吉本隆明著 晶文社 定価7,150円(本体6,500円)『ハイ・イメージ論』の続編「IV」ともいうべき『母型論』と中東湾岸戦争についての発言などを収める。単行本未収録6篇(「些事を読みとる」「鶴見さんのこと」「太宰治を思う」ほか)。第27回配本。
月報は山崎哲さん(劇作家)、菅原則生さん(『続・最後の場所』)、ハルノ宵子さん(作家・漫画家)が執筆。
【目次】
Ⅰ
母型論
母型論
序/母型論/連環論/大洋論/異常論/病気論Ⅰ/病気論Ⅱ/語母論/贈与論/定義論Ⅰ/定義論Ⅱ/起源論/脱音現象論/原了解論/あとがき/新版あとがき/
Ⅱ
中東の切迫/中東湾岸戦争私論――理念の戦場はどこにあるのか――/中東戦争と太平洋戦争/「芸」としてみた中東戦争/良寛書字――無意識のアンフォルメル――/濃密な圧力感を生命力とする映画――ベルイマン『牢獄』――/はじめの高村光太郎/気球の夢/「二十世紀末の日本文化を考える」/
些事を読みとる/思想を初源と根底から否定する――ニーチェ『偶像の黄昏/アンチクリスト』――/泥酔の思い出/健康への関心/海老原博幸の死/エロスに融ける良寛――瀬戸内寂聴『手毬』――/情況への発言――〈切実なもの〉とは何か――[一九九一年五月]/鶴見さんのこと/上野公園の冬/「父の像」/芸能人の話/土井社会党の失点/小川徹の死/衝撃の映像/こんどソ連で起こったこと/『海からの光』と出遇ったこと/老齢ということ/辰吉の試合と『愛される理由』/中島みゆきという意味/修羅場を知った編集者――安原顯著『「編集者」の仕事』を読んで――/ラフカディオ・ハーンとマルチニーク島/軍国青年の五十年/ちいさな熊本論/ビートたけしの映像/
Ⅲ
かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』論。/黒澤明『夢』『八月の狂詩曲』など。/大川隆法『太陽の法』論。/Mr.ホーキング、出番です。/つげ義春『無能の人』その他。/『日本語の真相』って何?/
『生死を超える』は面白い/『男流文学論』は女流ワイ談でしょう/上田紀行『スリランカの悪魔払い』『トランスフォーメーション・ワークブック』/テレビ的事件(1)――『原理講論』の世界――/『国境の南、太陽の西』の眺め/テレビ的事件(2)――象徴になった婚約――/『磯野家の謎』東京サザエさん学会編/大友克洋『AKIRA』1~6/『マディソン郡の橋』はどうか/岩井克人『貨幣論』/
Ⅳ
太宰治を思う/対談を終わって/『試行』第七〇号後記
解題(間宮幹彦)
90年代の吉本、マスコミの需要もあったのでしょうが、芸能関係やサブカルチャー方面など、その論じる対象は本当に幅広くなっていたというのがよくわかります。そうした傾向を批判する向きがないでもありませんが、いわゆる「専門バカ」より良いと思いますし、吉本の場合、どんなに手を広げても、それぞれに深い洞察に基づいて論じられていて、単なる雑学好きが蘊蓄を傾けているといった趣にはなっていません。それだけに、語り継がれる存在なのでしょうが。
さて、それぞれ、ぜひお買い求め下さい。
【折々のことば・光太郎】
夜青年会の旗の図案をかく。
昭和23年(1948)12月24日の日記より 光太郎66歳
「青年会」は、蟄居生活を送っていた花巻郊外旧太田村山口地区の、山関青年会。この旗は現存します。