こういう雑誌が刊行されていることを存じませんでした。小学館さん発行の隔月刊誌『小学8年生』。「8年生? 何かの間違いじゃないのか?」と思ったのですが、「時計などに表示されるデジタル数字の「8」は、0~9のどんな数字にも変身します。つまり、2~6年生まで、すべての小学生が、学年にとらわれず楽しく学べる学習雑誌の名前にふさわしい数字なのです。」だそうで、かつて刊行されていた『小学二年生』から『小学六年生』までを統合したものようです(『小学一年生』は健在)。
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「文豪探偵の事件簿」という連載小説があり、現在店頭発売中の2021年10・11月号は、サブタイトルが「山の中の芸術家」。そう、光太郎です。
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全体で8ページ、最終ページが光太郎の人物紹介となっていますが、メインの7ページは、菊池良氏によるジュブナイルです。菊池氏、聞いた名前だな、と思って調べましたところ、ベストセラーになった『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(平成29年=2017 宝島社)のご著者でした。「なるほど」と合点がいきました。

ストーリーは、古今東西の文豪が住む架空の街「かきものシティ」で、文豪たちから寄せられた相談に乗る「探偵くん」の物語。今号の「文豪」は光太郎なのですが、例外的なパターンのようで、休日だった「探偵くん」が、自分から山中に住む光太郎を訪ねるという話になっています。

ジュブナイルと侮るなかれ。詩「道程」(大正3年=1914)、評論「緑色の太陽」(明治43年=1910)、そして再び詩の「山のともだち」(昭和27年=1952)を効果的に使い、光太郎の人となりを鮮やかに描き出しています。

   山のともだち003

 山に友だちがいつぱいいる。
 友だちは季節の流れに身をまかせて
 やつて来たり別れたり。
 カツコーも、ホトトギスも、ツツドリも
 もう“さようなら”をしてしまつた。
 セミはまだいる、
 トンボはこれから。
 変らないのはウグイス、キツツキ、
 トンビ、ハヤブサ、ハシブトガラス。
 兎と狐の常連のほか、
 このごろではマムシの家族。
 マムシはいい匂をさせながら
 小屋のまはりにわんさといて、
 わたしが踏んでも怒らない。sho8_2110-11_05
 栗がそろそろよくなると、
 ドングリひろいの熊さんが
 うしろの山から下りてくる。
 恥かしがりやの月の輪は
 つひにわたしを訪問しない。
 角の小さいカモシカは
 かわいそうにも毛皮となつて
 わたしの背中に冬はのる。

「山のともだち」は、雑誌『婦人の友』が初出で、この頃(昭和27年=1952)ともなると、拗音、促音の文字サイズを除き新仮名遣いです。草稿も初め旧仮名遣いで書かれていましたが、新仮名遣いを書き添えてあります。

イラストは徳永明子氏。ある意味、偏屈だった光太郎をかわいらしいおじいちゃんに描いて下さいました。ありがとうございます(笑)。この方、ブックデザインのお仕事をたくさんなさっており、お名前は寡聞にして存じ上げませんでしたが、「ああ、この本も」という感じでした。

特に小学生のお子さん、お孫さんのいる方(そうでない方も)、ぜひお買い求め下さい。

【折々のことば・光太郎】

風呂焚。夜に入りてより入浴、初めての風呂使用。月を見ながら湯にひたる。

昭和23年(1948)11月13日の日記より 光太郎66歳

花巻町の宮沢家や、花巻病院長・佐藤隆房、そして蟄居生活を送っていた花巻郊外旧太田村の村人たちの厚意で贈られた風呂が完成し、初の入浴。

この風呂桶は現存し、平成29年(2017)、花巻高村光太郎記念館さんでの企画展「光太郎と花巻の湯」で展示されました。しかし、せっかく造ってもらった風呂でしたが、薪を大量に消費せねばならず、結局、あまり使われませんでした。