チューリップテレビ開局30周年記念「画壇の三筆」熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展
( )内は20人以上の団体料金
美術界の中で「書」もよくした三人の芸術家の、「書」を中心とした展覧会です。他にも「書」で有名な美術家は少なからず存在しますが、まぁ、とりあえずこの三人ということで。
1年半前にも書きましたが、展示すべき作品の選定、その貸借の交渉等に当方が協力させていただきました。最初に話があってから、足かけ3年程になるでしょうか。おかげさまで様々な機関や個人の方々にご協力いただき、本邦初公開を含む、いいものが集まりました。
しかし、苦労の連続でした。熊谷、中川の書は、大きい作品が中心ということで、光太郎もそうせざるを得ず、色紙等の小さなものはあまり出しません。そうなると、対象の絶対数が減ります。また、せっかくいいものをお持ちの団体さん等でも、他への貸し出しは行っていないとか、提示した貸借料で折り合いが付かなかったりとかで、借りられなかった作品が少なからずありました。また、昨年の段階では出品に応じていただける承諾を頂いていたのに、その後、所有者が手放してしまったという作品もあり、残念でした。
さらに云うなら、物理的に作品を運ぶ上で、所蔵先までの交通の問題で断念したケースもありました。作品の運搬には、ヤマト運輸さんの美専(美術品専門輸送)を使いますが、たった1点のために何百㌔㍍も距離を伸ばせない、ということで……。逆に、「××を貸して下さい」と交渉したところ、「こんなものも持ってますよ、一緒にお貸ししましょう」「おお、それは凄い、ありがたい!」というケースがありました。捨てる神あれば拾う神ありですね。こういう裏事情に詳しくなりますと、企画展もまた見る眼が変わってくるものです(笑)。
また、「書」以外にも、三人それぞれの「本業」、熊谷と中川に関しては絵画、光太郎は彫刻も出品されます。
これも一年半前に書きましたが、光太郎は新発見の「蝉」を含みます。他に、光太郎木彫の中で最も人気の高いうちの一つ、「白文鳥」なども。
会期が結構長いというのもありがたい点です。コロナ感染にはお気を付けつつ、ぜひ足をお運び下さい。
【折々のことば・光太郎】
デンキ会社関係の人三人来る、電燈布設の由にて請負の人と何課長とかいふ老人と世話人のやうな人となり。
蟄居生活を送っていた花巻郊外旧太田村の山小屋、光太郎が入居したのは昭和20年(1945)10月でしたが、3年以上ずーっと電気のない生活でした。山小屋が村の一番奥にあり、そこから先には一軒も民家が無かったせいもあります。で、この時期、光太郎を敬愛していた村人たちが、見るに見かねて電線を引いてあげようということになりました。
この年の光太郎日記は1月途中までしか現存が確認できておらず、残念ながら電気が通じた2月の記述が見られません。