カテゴリ:音楽/演劇等 > 音楽

まず都内から演奏会情報です。

朝岡真木子歌曲コンサート 第7回

期 日 : 2024年3月20日(水・祝)
会 場 : 王子ホール 東京都中央区銀座4-7-5
時 間 : 14:00開演(13:30開場)
料 金 : 一般 4,500円 学生券2,000円(全席自由)

曲 目 
 「さくらの はなびら」 詩:まど・みちお 
 「風のこころ」 詩:大竹典子
 「影」「夢のわかれ」 詩:西岡光秋
 「冬が来た」 詩:高村光太郎
 「雪 詩」 詩:野原ゆき
 「わらううた」 詩:渡部千津子
 組曲「万葉の愛」 万葉集より
 組曲「きらめきの中へ」 詩:星乃ミミナ
 ソプラノとバリトンのための「薔薇の園」 詩:岡崎カズヱ
 他

出 演
 木内弘子(ソプラノ) 黒川京子(ソプラノ) 竹下裕来(ソプラノ)
 前澤悦子(ソプラノ) 清水邦子(メゾ・ソプラノ) 川出康平(テノール)
 馬場眞二(バリトン) 朝岡真木子(作曲・ピアノ)
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光太郎詩をテキストに「組曲 智惠子抄」を作曲なさった作曲家・朝岡真木子氏の作品集が演奏されるコンサートです。ピアノは朝岡氏ご自身。昨年の第6回もお邪魔しました。

今回は、昨秋開催された「福成紀美子ソプラノリサイタル~作曲家 朝岡真木子とともに~」で初演された「冬が来た」がプログラムに入っています。歌唱はバリトンの馬場眞二氏だそうです。

もう1件。こちらはサブタイトルに光太郎詩「あどけない話」由来の「ほんとうの空」の語を冠してくださっています。以前にも書きましたが、東日本大震災後、「ほんとうの空」の語が使われるようになりました。

第17回 声楽アンサンブルコンテスト全国大会 - 感動の歌声 響け、ほんとうの空に -

期 日 : 2024年3月21日(木)~3月24日(日)
      3月21日(木) 中学校部門 
      3月22日(金) 高等学校部門
      3月23日(土) 小学生・ジュニア部門、一般部門
      3月24日(日) 各部門金賞受賞団体による本選、表彰式
会 場 : ふくしん夢の音楽堂(福島市音楽堂) 福島県福島市入江町1-1
時 間 : 各日、開場9:30 開演10:00
料 金 : 各部門予選  前売り 2,000円 当日 2,500円 
      本選     前売り 2,500円 当日 3,000円
      4日間通し券 前売りのみ 8,000円

 声楽アンサンブルコンテスト全国大会は、音楽を創りあげるもっとも基礎となる要素「アンサンブル」 に焦点をあてた、2名から16名までの少人数編成の合唱グループによるコンテストです。
 全国の合唱レベルの向上を図るとともに、歌うことの楽しさを福島から全国に発信することを目的として、2008年(平成20年)から開催、今大会で第17回目を迎えました。
 本大会の特色として、伴奏楽器及び伴奏の形態が自由で多様な合唱音楽を追求、部門、年代を越えて演奏し合います。また、海外の合唱グループも公募し、音楽を通じて交流を図ります。
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ただ、苦言を呈させていただければ、毎年そうなのでもうしょうがないのかも知れませんが、出演団体は事前に公表されるものの、演奏曲目が公表されません。それを出すとまずいということもないと思いますし、「あの曲が演奏されるなら聴きに行こう」と考える向きもいらっしゃらないとは限りません。ぜひこの点、改善していただきたいところなのですが……。

ちなみに出演団体といえば、今年は智恵子の母校・福島高等女学校の後身である県立橘高校さんが出演なさいます。かつてこの大会や全日本合唱コンクール等でご常連でしたが、最近あまり聞かないな、と思っていたのですが。

それぞれぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

今日は大晦日でございますが此辺は旧暦の為め村の人も見えず、ひどく静かで、ただ雪が霏々と降つて居ります。小屋の周囲は三尺近くつもり、殆ど交通杜絶で郵便も自然遅れます。


昭和21年(1946)12月31日 三輪吉次郎宛書簡より 光太郎64歳

終戦直後の山村ではまだ旧暦でいろいろやっていたようですね。もっとも、現代でも年中行事等は旧暦で、というケースはまだ多いかも知れません。

またしても紹介すべき事項が山積して参りましたので複数件まとめてご紹介します。無理くりですが「オンライン系」というくくりで。

まずは動画投稿サイトYouTubeさんに今月初めにアップされた動画。名古屋ご在住の作曲家・野村朗氏作曲の「連作歌曲「智恵子抄」〜その愛と死と〜」です。


初演は平成25年(2013)ですから、もう10年以上経ちますね。その後、野村氏プロデュースで楽譜やCDが発売されたり、氏の地元・名古屋都内、智恵子の故郷・二本松などでの演奏会で取り上げられたりしました。さらにバリトン歌手の新井俊稀氏ドイツをはじめ各地で演奏なさったり、CD化されたりなさっています。

YouTube上ではこれまでも各曲ごとの動画はありましたが、今月、全曲まとめてのアップ。演奏は野村氏プロデュースの演奏会等でいつも担当されるお二人、森山孝光氏(バリトン)、康子氏(ピアノ)御夫妻です。

野村氏のお言葉。

 彫刻家で詩人の高村光太郎は、詩集「智恵子抄」で愛する妻、智恵子を詠い、「永遠の愛の姿」と賞賛されました。しかし、本当の愛は、智恵子を失った後に結実しました。
 智恵子を亡くした後の光太郎は、終戦後、岩手県花巻市郊外の山小屋にたった一人で篭って、7年もの間隠棲するのですが、心に智恵子を住まわせ、毎日智恵子に話しかける日々であったことが、詩「案内」に語られています。
 だんだんと智恵子の心が壊れていく様を悲しく見守る光太郎を表現した第1曲「千鳥と遊ぶ智恵子」、「東京に空がないと言う」という有名な詩句を含む第2曲「あどけない話」、智恵子が病没する瞬間を描いた悲痛な絶唱、第3曲「レモン哀歌」、その後の歳月を表現した短いピアノの第4曲「間奏曲」、心に住む智恵子に話しかける晩年の光太郎を描いた第5曲「案内」の5曲を、連作歌曲「智恵子抄」として皆様にお届けいたします。
 特に、「案内」の最後の場面で、「智恵さん」と2度、歌われる部分に、私は自分の全ての想いを託しました。1度目はもう手の届かない智恵子に、2度目は心に住む智恵子に、万感を込めて呼びかけるのです。
 私はある日、この作品の録音を持って、光太郎が暮らした山小屋「高村山荘」にでかけました。山荘の裏山を登ると、光太郎が「見晴し」と称した小高い展望台があり、まさに「案内」の中で「智恵さん」と呼びかける、その場所でした。静かな晩夏の真昼。「智恵さーん、智恵さーん」と歌われる呼びかけは山麓にこだまし、やがて天にのぼっていくように思われました。
 願わくば、この作品に出会われた皆様の心にも、なにものか熱いものが届かんことを! 切に!

もう1件、というか2件というか、美術系のオンライン講座です。

知っておきたい!日本の美術 ~高村光雲「老猿」/~高村光太郎「手」

主 催 : NHKカルチャー梅田教室
配 信 : 2024年2月6日(火)~4月7日(日)
時 間 : 90分
講 師 : 大阪国際大学教授 村田 隆志
料 金 : 2,750円(税込み)

 本講座は録画済の動画を視聴する講座です。 
 美しい自然と四季折々の美に恵まれた日本は、長い歴史の中で多くの美術品を伝えてきました。特に、大阪を中心とする関西圏は古来文化の中心地だったために、多くの作品が伝えられています。この講座では、日本が世界に誇る「これだけは知っておきたい」日本美術の名品をご紹介しながら、鑑賞ポイントもお知らせします。
 「感動」は心を若く保つ、最良の方法です。日本美術の名品に大いに感動してください。
 この講座は、自宅でパソコンやタブレット、スマホなどで受講していただくオンライン講座です。Zoomを使ったもので、ご受講に不安がある方は、お問い合わせ下さい。

光太郎の父・光雲作の「老猿」篇と、光太郎の代表作「手」篇で2件です。
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「手」篇、なぜかサムネイル画像が光太郎ではなく川合玉堂の絵になっているのですが……。

ご興味おありの方、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

「日本の山水」忝拝受しました。装幀が大変よいのと版画が美しいので、たのしく拝見いたしました。近頃もらつた本の中で一番美しい、注意の行届いた本と思ひました。

昭和21年(1946)9月22日 井上康文宛書簡より 光太郎64歳

『日本の山水』は冨岳本社から刊行された光太郎詩を含むアンソロジー。恩地孝四郎の装幀で、畦地梅太郎、前川千帆らの木版画が挿画として使われています。
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終戦から1年経ち、ようやくこうした出版も再び可能になったわけで、光太郎も喜んでいます。

今週、花巻に行って参りましたが、現地で仕入れたりした情報等を。

まず、コンサート系です。

VALENTINE CONCERT 朗読と音楽で楽しむお茶時間 高村光太郎『智恵子抄』より

期 日 : 2024年2月23日(金)
会 場 : 喫茶店 ココ・タベルバ・ラパン 岩手県花巻市若葉町3丁目14-30
時 間 : 13:00 開場 13:30 開演
料 金 : 1,500円(1ドリンク・お菓子付き)

出 演 : 朗読 牧野幹  フルート 牧野詩織  ピアノ 菅原千恵子

2/23(金祝)ココ・タベルバ・ラパンにて、VALENTINE CONCERTがあります💕

ラパンのレジ前でおなじみ!「やつかのもり」さんのお菓子や、とりあえずココ・クレバで読み聞かせをしてくださっている牧野幹さんも登場します✨

牧野詩織さんのフルートと菅原千恵子さんのピアノも楽しみです~🎶
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朗読をなさる牧野幹さんという方、「光太郎を知る会」のメンバーのお一人で、フライヤーを直接いただきました。フルートの牧野詩織さんという方は、お嬢さんだそうです。

もう1件、テレビ放映情報を。

又吉・せきしろのなにもしない散歩 #99

BSよしもと(無料) 2024年2月21日(水) 19:00~19:30

ピースの又吉直樹と作家のせきしろの二人が、五七五の定型にとらわれず自由な表現をする【自由律俳句】を生み出していく。東北各地を歩きながら様々な人やモノと出会う中で、二人のここでしか見られない独特のかけ合いや、新たな俳句を生み出す姿は必見です。

今回は岩手県花巻市をブラリ旅。果たしてどんな自由律俳句が生まれるのか!? マルカンビル大食堂、高村光太郎記念館 ほか

【出演者】又吉直樹(ピース)、せきしろ(構成作家) ほか
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盛岡の回だったかを1度拝見したことがあるのですが、毎回東北でロケが行われているというのは存じませんでした。

で、今回は花巻市。調べてみたところ、花巻は2回目だそうです。最初は昨年8月の第74回で、宮沢賢治記念館さん、光太郎もよく行ったやぶ屋さんなどを廻られたとのこと。気づきませんでした。
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で、今回は郊外旧太田村の高村光太郎記念館さん。
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それから隣接する高村山荘(光太郎が戦後の7年間、蟄居生活を送った山小屋)。
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そしてマルカンさん。
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マルカンさんはともかく、光太郎記念館はなかなか全国放映の番組で取り上げられることが少ないので、ぜひご覧下さい。

ところでこの番組、又吉直樹氏と構成作家のせきしろ氏が自由律俳句を詠むという文学的テイストの番組です。そこで文学館系もよくロケ地になっています。ということは、今後、二本松の智恵子生家/智恵子記念館さん、十和田湖畔の観光交流センターぷらっとさんなどにも行っていただきたいものです。

ぜひご覧下さい。

【折々のことば・光太郎】

小生もあなたのsituationの好転の一日も早く来るやうに此所で祈ります。意識せられなくともさういふ時こそあなたの内部を豊饒にし、逞しくする何事かがあなたに加へられてゐるのだと思ひます。


昭和21年(1946)9月18日 福永武彦宛書簡より 光太郎64歳

福永武彦は小説家・詩人・仏文学者。この頃、北海道帯広で英語教師をしていた福永は、結核に罹患したことが元で、最初の妻・原條あき子との間で不和が生じていました。そのあたりを愚痴ったと思われる福永からの書簡への返信の一節です。

ネット上で見つけたイベント情報を2件。

まずはオンライン講座です。

心に響くオンライン朗読サロン(3回)

期 日 : 2024年1月26日(金)、2月9日(金)、3月1日(金)
主 催 : NHKカルチャー西宮ガーデンズ教室
方 式 : Zoomによるオンライン
時 間 : 各回とも13:30~15:00
料 金 : 8,910円

講 師 : 朗読家・神戸女学院大学非常勤講師 川邊暁美

ご自宅で安心!マスクを外してのびのび楽しみましょう♪

世界でたった一つのあなたの音色である「声」の表現力に磨きをかけ、美しい日本語をあなた自身の声で味わう、心豊かなひとときをご一緒しませんか。呼吸・発声・発音・の基本から思いの伝わる表現技術まで、朗読スキルも学んでいただきながら、様々なジャンルの文章表現を楽しんでいただきます。初めての方も経験者の方も、伸びやかに声を響かせて思い思いの音色を奏でましょう。

【各回の内容】
1/26 作品の息遣いを声で伝える『智恵子の紙絵』高村光太郎
2/9 声の5要素を自在に使う 作品に合わせた表現方法 『十三年』山川方夫
3/1 好きな作品をもちより発表会、講師から個別アドバイス
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『智恵子抄』は詩だけでなく、散文や短歌も収録されており、今回テキストとされるのは散文の「智恵子の切抜絵」(昭和14年=1939)と思われます。案内では「智恵子の紙絵」となっっていますが、「智恵子の切抜絵」ではイメージが湧きにくいということでしょうか。

もう1件、音楽ライブ情報です。

黄昏に旅情歌を歌う

期 日 : 2024年1月26日(金)
会 場 : ヤナカフェ西東京 東京都西東京市柳沢2-13-9
時 間 : 16:00~17:00
料 金 : 2,000円(ワンドリンク付)

出 演 : 岡雅子(テイチクエンタテインメント) 


美味しく香り高い珈琲 紅茶をマスターがご用意してお待ちしています。終了後はそのままお食事お酒、お茶をヤナカフェでどうぞ。

セットリスト
宗谷岬 銀色の道〜北上夜曲 岬めぐり 智恵子抄 案山子 津軽海峡・冬景色
東京の灯よいつまでも 椰子の実 愛媛・瀬戸内始まりの「ふるさと」 昴
アンコール 高校三年生
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「智恵子抄」がラインナップに入っていますが、おそらく智恵子の故郷・二本松にほど近い小野町出身の丘灯至夫作詞・戸塚三博作曲で、二代目コロムビア・ローズさんが歌われた「智恵子抄」(昭和39年=1964)でしょう。リリースされてちょうど60周年ですね。

ただし、「ご予約満席」だそうです。それでもキャンセル等有るかもしれませんし、こういうイベントがあったという記録のためにもご紹介しておきます。

【折々のことば・光太郎】

たちまち雪が消えて春がいちめんに小屋のまはりにみちました。ゼンマイ、ワラビをはじめとして木の芽、草の芽、葉に先だつ木々の花、不思議な形態の美を持つ山草の花。目がまはるやうです。


昭和21年(1946)5月10日 鎌田敬止宛書簡より 光太郎64歳

昨日ご紹介した書簡と前後しますが、花巻郊外旧太田村にようやくやってきた遅い春を心から喜んでいます。都会生活が長かった分、山村の春は新鮮に感じられたことでしょう。

来年の話ではありますが、もう2週間足らず後ですので……。

モンデンモモ ニューイヤーコンサート2024

期 日 : 2024年1月5日(金)
会 場 : 紅葉丘文化センター 東京都府中市紅葉丘2丁目1番地
時 間 : 15:00頃
料 金 : 無料(当日午前中から整理券配付のようです)

歌い始めがどんなふう?ってすごくその年を表しますね 来年2024年の歌い初めはこんな風〜 いつもミュージカルやお芝居のお稽古にお世話になっている地元の文化センターからオファーいただきました 各ジャンルの作品精一杯お届けしてみますね

出演
 歌 お話 モンデンモモ   ピアノ おのゆみ

予定曲目
 愛の賛歌 アヴェマリア オペラ夕鶴より さよならのアリア みだれ髪 レモン哀歌
 百万本のバラ さよならはダンスの後に 天城越え ラ・クンパルシータ 私はマリア
 古代への旅 他 

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「智恵子抄」をはじめ、光太郎詩にオリジナルの曲を付けて歌われているシャンソン系歌手・モンデンモモさんのコンサートです。

「レモン哀歌」がプログラムに入っています。平成6年(1994)にリリースされたCD「REQUIEM」に収録されていた曲ですから、もう30年歌い継がれていることになりますね。

最近は鳥取やら島根やら、あちらの方での活動が中心となりつつあるようですが、ご自宅は東京都府中市で、そちらでの開催です。

お近くの方、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

砥石の凍結の危険のため彫刻も大工仕事も出来ないのが残念です。


昭和21年(1946)2月4日 宮崎稔宛書簡より 光太郎64歳

厳寒期にはマイナス20℃にもなる花巻郊外旧太田村の山小屋。砥石は水で濡らして使用するため、その水がしみ込んで凍結すると膨張し、砥石自体が割れてしまいます。

都内から演奏会情報です。

歌曲個展+5 ドイツロマン派の歌曲――残照の時――

期 日 : 2023年12月16日(土)
会 場 : やなか音楽ホール 東京都台東区谷中3-23-8
時 間 : 14:30開場 15:00開演
料 金 : 一般3,500円 学生2,000円 全席自由

曲 目 : 
 リヒャルト・シュトラウス
  4つの最後の歌 Vier Letzte Lieder
 フーゴ・ヴォルフ
  ミケランジェロの詩による3つの歌曲 Drei Lieder nach Michelangelo
 ヨハネス・ブラームス
  4つの厳粛な歌 作品121 Vier ernste Gesänge Op.121
 ロベルト・シューマン
  暁の歌 作品133 Gesänge der Frühe Op.133(ピアノ独奏)
 根本卓也
  組曲『智恵子抄』(新作初演)

出 演 :
 ソプラノ 坂口真由  バスバリトン 牧山亮  ピアノ 蓜島啓介

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当方は寡聞にして存じ上げませんが、根本卓也氏という作曲家の方による組曲「智恵子抄」がプログラムに入っています。氏のHPには「こちらは、以前《亡き人に》という題で発表した重唱曲に、ソプラノ・バスバリトン・ピアノそれぞれのソロ曲を一曲ずつ足す形で組曲にしました。詩は全て高村光太郎の『智恵子抄』から採っています。」とのこと。そういえば昨年でしたか、他の演奏会で正規のプログラムではなくアンコールで「亡き人に」が演奏された、的な記述をSNSで見たような気がしています。

それから「おやっ」と思ったのが、「ミケランジェロの詩による3つの歌曲」。ロダンと共に光太郎が終生敬愛し続けた、あのミケランジェロが詩を書いていたというのは存じませんでした。

ご興味のおありの方、ぜひどうぞ。残念ながら当方、この日は法事が入っておりまして伺えませんが。

【折々のことば・光太郎】

午後二時頃分教場に到着、今晩は分教場に宿泊、明日よりだんだんに小屋の整備にかかります。


昭和20年(1945)10月17日 佐藤隆房宛書簡より 光太郎63歳

約1ヶ月厄介になった、花巻病院長・佐藤隆房宅を出て、旧太田村山口地区に入りました。既に村民らの手で鉱山の飯場小屋が移設されていましたが、内部の造作等は未完成で、ここからまた1ヶ月は旧太田小学校山口分教場に寝泊まりしながら自分で大工仕事をしました。ちなみに光太郎に太田村移住を勧めたのは、山口分教場の教師・佐藤勝治でした。

ここから7年間に及ぶ太田村での暮らし。当初は若い頃からの夢だった北方の僻村での生活の実現、文化集落の建設といった無邪気な夢想の部分がありましたが、自らの戦争責任の省察が進むとともに、徐々に「自己流謫」(流謫=流罪)へと変容していきます。

昨日は千葉市に行っておりました。同市ご在住のジャズシンガー・潮見佳世乃佳世乃さんの「CD発売記念LIVE 歌物語✖️JAZZ」拝聴のためです。

会場は県庁近くの千葉アートサロンさん。ライヴハウス的なスペースと、他のフロアにはギャラリーもあるようで。昭和の香りが色濃く漂う外観で「おお」と思いました(笑)。
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潮見さんのライヴは過去3回拝聴しましたが、最後はやはり千葉市で令和3年(2021)6月でしたので約1年半ぶり。今回を含め、すべて潮見さんのレパートリーの一つ「歌物語 智恵子抄」がプログラムに入ったものでした。今回は「CD発売記念」ということでしたが、CDは「智恵子抄」ではなく、「歌物語 遠野物語」。最初のMCはその「盤宣」でした。
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潮見さん、他にも「歌物語」と銘打ったレパートリーをたくさんお持ちです。そのシリーズ、亡くなったお父さまの高岡良樹氏が始められたもので、お父さまもかつて「歌物語 智恵子抄」を演(や)られたそうです。そちらは当方聴けませんでしたが。

潮見さんの「歌物語 智恵子抄」、伴奏は平成27年(2015)に大田区大森で初めて拝聴した際はフォークギターとキーボード、令和3年(2021)の熱海での公演ではベードルのピアノ、直後の千葉市ではピアノプラス箏でした。今回はピアノに尺八。「不易と流行」と申しますが、変えない部分と変えていく部分と、しっかり考えられているようです。
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ピアノは熱海での公演と同じく沢村繁さん。尺八が大河内淳矢さん。
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やはり「和」のテイストが入ると「智恵子抄」の世界観がより鮮烈になる気がします。
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「智恵子抄」に入る前に、「智恵子抄」以外の光太郎詩の朗読がありました。季節柄、ということでしょう、「美しき落葉」(昭和19年=1944 戦時中にしては珍しく翼賛的な内容をほぼ含まない詩です)と「冬が来た」(大正2年=1913)。
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そして「智恵子抄」。基本的な構成はこれまでとおそらく同一でした。語りだけ、メロディー付きとバリエーションに富み、構成的にもドラマチックです。取り上げられた詩は以下の通り。

「樹下の二人」(大正12年=1923)
「あどけない話」(昭和3年=1928)
「千鳥と遊ぶ智恵子」(昭和12年=1937)
「風にのる智恵子」(昭和10年=1935)
「値ひがたき智恵子」(昭和12年=1937)
「山麓の二人」(昭和13年=1938)
「レモン哀歌」(昭和14年=1939)
「亡き人に」(同)

このうち、「千鳥……」と「風にのる……」は二つの詩の詩句を行ったり来たり。

第一部が「歌物語 智恵子抄」で、第二部はお召し物もがらっと変えて「レフト・アローン」などジャズのスタンダードナンバー等でした。潮見さん、「智恵子抄」とジャズはよく合う、とおっしゃって、毎回そうなさっていますが、確かにそうですね。
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インストで大河内さんと沢村さんによる「ルパン三世 PART2」オープニングテーマも。盛り上がりました。

やはり音楽はいいものですね。自分も趣味でやっていた音楽活動、いろいろ忙しくて止めてしまいましたが、また余裕が出来たら始めようかと思いました。

お三方、今後のさらなるご活躍を祈念いたします。

【折々のことば・光太郎】

本阿弥光悦は京都の鷹ヶ峯で当時の最高文化の部落を作りました。形は違ひますが、小生の企てもいく分似たところがあります。


昭和20年(1945)8月24日 椛沢ふみ子宛書簡より 光太郎63歳

花巻郊外太田村への移住について。この段階では、若い頃から北方の僻地で生活することを夢みていたことが実現できる喜びが大きかったようです。実際にその生活を始めてから、自らの戦争責任への省察が始まります。

紹介すべき事項がまだまだ溜まっておりまして、演奏会情報3件、一気に紹介させていただきます。

潮見佳世乃 CD発売記念LIVE 歌物語✖️JAZZ  1部「智恵子抄」 2部JAZZ

期 日 : 2023年11月26日(日)
会 場 : 千葉アートサロン 千葉市中央区市場町2-6
時 間 : 開場14:30 開演15:00
料 金 :  前売券 4,000円(1drink付) 当日券 4,500円(1drink付)

今月11月26日(日)歌物語「遠野物語」CD発売記念コンサートを千葉アートサロンにて開催いたします。歌物語アルバムリリースは、私にとって格別な思いです。感謝の思いを込めて、一部では、歌物語「智恵子抄」二部では、JAZZ LIVEをお届けします。メンバーは、ピアノ沢村繁さん。そして、尺八大河内淳矢さん。嬉しいことに、ご用意できるチケット少なくなっております。お申し込みの際は、お早めに❤️ あたたかい応援をよろしくお願い致します。
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JAZZシンガーの潮見佳世乃さん、お父さまの故・高岡良樹氏が始められた「歌物語」というジャンルを引き継がれています。様々な文芸作品等をそれぞれ数十分のステージで、歌や語りで紡ぐというものです。今回はCD「遠野物語」発売記念ということですが、なぜか「遠野物語」ではなく「智恵子抄」。

過去3回拝聴しました。
潮見佳世乃さん「歌物語コンサート「智恵子抄」」。
神奈川・静岡レポート その3 「潮見佳世乃起雲閣コンサート 歌物語×JAZZ」。
潮見佳世乃歌物語コンサート「智恵子抄・羽衣伝説」レポート。

毎回少しずつ変化(進化)が見え、またお邪魔いたしますが、楽しみにしております。

続いて都内から。

弓田真理子ソプラノ・リサイタル~歌声をあなたのもとに~

期 日 : 2023年11月29日(水)
会 場 : 渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール 東京都渋谷区桜丘町23-21
時 間 : 14:00開演(13:30開場)
料 金 : 全席自由 4,000円

出 演 : 弓田真理子(sp) 東由輝子(pf)
プログラム :
 Ⅰ.イタリアの風
  オペラ《リナルド》より Lascia ch'io pianga ヘンデル
  Il bacio アルディーティ
  Nella Fantasia モリコーネ
  Time To Say Goodbye サルトーリ
 Ⅱ.日本の四季
  さくら横ちょう 別宮貞雄
  ひぐらし 團伊玖磨
  霧と話した 中田喜直
  冬の朝のめざめ《智恵子抄》より 甲田潤
 Ⅲ.ピアノ・ソロ
  《バラード1番》ト短調 作品23 ショパン
 Ⅳ.木下牧子作品集
  湖上 竹とんぼに おんがく さびしいカシの木 ほんとに きれい
 Ⅴ.オペラ・アリア
  《魔笛》より 愛の喜びは露と消え モーツァルト
  《コジ・ファン・トゥッテ》より 私の愛する人、許しkてください モーツァルト
  《メリー・ウィドウ》より ヴィリアの歌 レハール

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甲田潤氏という方の作曲された「冬の朝のめざめ」がプログラムに入っています。「《智恵子抄》より」とあるので、組曲の中の一曲なのでしょうか。比較的新しい作品と思われますが、存じませんでした。

もう1件、何と、同じ会場です。ただ、ホールが複数あるのでそれは別ですが。

男声合唱のためのウルトラセブン」 楽譜出版記念コンサート

期 日 : 2023年12月4日(月)
会 場 : 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール 東京都渋谷区桜丘町23-21
時 間 : 14:30開場 15:00開演
料 金 : 全席指定 ¥4,000(税込)

「ウルトラ音楽の父」と呼ばれる冬木透氏の作品の中から、今回初めて「ウルトラセブン」が合唱譜「男声合唱のためのウルトラセブン」となって出版されることを記念したコンサートの開催が決定しました。
本邦初演の「男声合唱によるウルトラセブン」を冬木透作品の原点、蒔田尚昊の聖歌、歌曲と共にお楽しみください。

<第一部>
 ガリラヤの風かおる丘で きみの笑顔により添って Ave Maria Ave Maris Stella 
 『智惠子抄』より あどけない話  ほか(蒔田尚昊作品)
<第二部>
 ウルトラセブンの歌 ウルトラ警備隊 ゾフィーのバラード ウルトラ母のバラード
 ワンダバ・メドレー 怪獣のレクイエム ウルトラマン賛歌 希望の塔デュアダバダン
  ほか(冬木透作品)

冬木透氏。クラッシック系の作曲の際には「蒔田尚昊」、映画・テレビ関係での作曲では「冬木透」と、お名前を使い分けていらっしゃいます。

第一部が「蒔田尚昊」クレジットの作品群で「『智惠子抄』より あどけない話」がプログラムに入っています。歌唱はバリトンの加耒徹氏。たまたまでしょうが、加耒氏、他の作曲家の方々(加藤昌則氏松岡みち子氏)が光太郎詩に曲を付けた歌曲もあちこちで歌われています。

第二部は「冬木透」としてのウルトラ系。合唱での演奏のようです。ワクワクしますね(笑)。
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同様に「智恵子抄」と「ウルトラ」とのコラボのコンサート、一昨年にもあったのですが、コロナ禍真っ最中でオンライン配信でした。

それぞれ、ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

花巻は小さい町で、其処へ東京から疎開者が二千人も来てゐるさうで町は満員、空家もなく、物資も不足のやうです。今は静かな平和なところですが、程なく此処も戦場となるでせう。


昭和20年(1945)7月2日 椛澤ふみ子宛書簡より 光太郎63歳

疎開者が二千人」というのが本当だったとしたら、すごい数字ですね。終戦まであと1ヶ月半ですが「程なく此処も戦場となる」という予感は残念ながら的中してしまいます。

11月2日(木)、岩手花巻から帰りましたが、席の暖まる暇もなく吹っ飛び歩いております(笑)。このブログで紹介すべき事項が山積しておりまして、2件分、レポートいたします。

11月4日(土)、銀座王子ホールさんで「福成紀美子ソプラノリサイタル~作曲家 朝岡真木子とともに~」を拝聴。
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ソプラノ歌手・福成紀美子氏のリサイタルですが、プログラムはすべて朝岡真木子氏作曲の歌曲。
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ピアノ伴奏(最近は「伴奏」という言い方もあまりしなくなってきているのですが)もすべて朝岡氏。さらに第2部では福成氏が師とあがめるテノールの下野昇氏も加わられました。
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下野氏、何とおん歳87歳だそうでした。とてもそう思えない若々しい、しかし若造には出せない円熟味のあるお声での歌唱でした。

ほぼほぼ現代の詩人の皆さんの詩に曲をつけられたものでしたが、野上彰の詩や与謝野晶子の短歌もテキストに使われ、そして第1部のトリが光太郎の「冬が来た」(初演)。

つぱりと冬がた 八つ手の白い花もえ 公孫樹のも箒(はう)になつた」と、「き」を多用して冬の硬質な空気感を表現しようとした光太郎。朝岡氏の曲も僅か数秒のピアノの鋭い前奏でその感じがよく表されていましたし、その後の展開にも光太郎の世界観が滲み出ていました。ある種、行進曲風な部分などもあり、本郷区駒込林町団子坂上の木枯らし吹きすさぶ冬の街路を大股に闊歩する光太郎の姿が浮かんでくるような……。また、福成氏の歌唱も「きつぱり」感満載でした。

他の曲では、構成の妙を感じました。第1部だと「冬が来た」を含め、「四季折々」的に組んだ箇所、第2部では楽しい「食べ物シリーズ」。一人の詩人によるものでなくても充分にこういうことが可能なんだ、と思いました。

終演後。
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全て終わった後のホワイエ。
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今後も光太郎詩に曲を付け続けていっていただきたいものです。

ちなみに朝岡氏の組曲「智恵子抄」を歌われ、CD(手前味噌で恐縮ですが当方がライナーノートの一部を書かせていただきました)もリリースされた清水邦子氏もいらしていましたし、別宮貞雄氏作曲の歌曲集「智恵子抄」を、ご自身のリサイタルを含め複数の演奏会で積極的に演目に入れられたり、CDをリリースされたりなさっているテノールの紀野洋孝氏もいらっしゃいました。というか、何と当方のすぐ後のお席に座られていました。清水氏が気がつかれて、「紀野さんがいらしてますよ」。「ありゃま」でした(笑)。

昨11月5日(日)、千葉県木更津市へ。同市中央公民館で開催された「第116回 房総の地域文化講座 没後100年、画家・柳敬助の生涯」を拝聴して参りました。同市に隣接する君津市出身の画家で、家族ぐるみで光太郎夫妻と交流の深かった柳敬助を取り上げる講座でした。
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講師は渡邉茂男氏 (君津市文化財審議会委員)。
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柳の生涯に関しては、アウトライン的なところは頭に入っていましたが、詳しくは存じませんで、「へー、なるほど」の連続でした。光太郎智恵子と知り合う以前の話や、熊谷守一や新井奥邃など、光太郎とも関わりのあった人物とやはり交流があったという件など。

光太郎智恵子にも随所で触れて下さいました。
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日本女子大学校での智恵子の先輩・橋本八重と結婚し、付き合いが悪くなった(?)柳を非難するというか、揶揄するというか、そんな詩「友の妻」も光太郎は発表しました。執筆は明治45年(1912)7月21日、『スバル』への寄稿は大正に改元された後の8月でした。
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光太郎はこの時点では既に柳夫妻から智恵子を紹介されていました。しかし、父・光雲の庇護下を離れて独立独歩でやっていこうと決意したころなので、貧窮するに決まっている生活に智恵子を巻き込む気にはならず、結婚までは考えていなかったと思われます。それが変わるのは、8月末から9月頭、銚子犬吠埼に写生旅行に来ていた光太郎を智恵子が急襲(笑)してからです。その意味では、「友の妻」は、「俺は柳みたいに結婚してデレデレしないぞ」という意思表明だったかもしれません。ちなみに同じく明治45年(1912)に書かれた小品「泥七宝」の中にも「妻もつ友よ/われを骨董のごとく見たまふことなかれ/ひとりみなりとて」という一節があります。これも柳にあてたものでしょう。

その他、柳・光太郎共通の親友、碌山荻原守衛についてもかなり詳しく。
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なかなかに充実した内容でした。

柳自身は、大正12年(1923)に若くして病死。その年に日本橋三越で開催された回顧展の開幕日が関東大震災と重なり、多くの作品が焼失しました。そのためもあり、現在では忘れ去られつつある画家の一人です。

講師の渡邉茂男氏 (君津市文化財審議会委員)、来春『不運の人ー柳敬助の評伝ー』という書籍を刊行なさるそうです。まとまった柳の評伝はこれまで一冊もないとのことで(確かに見かけた記憶がありません)、これはぜひゲットしなければ、と思っております。

さて、関係の皆様の今後の活躍を祈念いたします。

【折々のことば・光太郎】

静かな駒込林町も今日は空襲の主戦場となり四辺姿をあらためるほどの状態となりました。それにつけ所持のいろいろのものを諸方の友人知人の許に分散いたしたく近日のうちに智恵子の切抜絵を貴下にお贈りして御所有願ひたく御迷惑ながら御承引願上げます。自宅に置いて煙にしてしまふのも心無きわざと思ひますので此事切にお願いたします。


昭和20年(1945)3月10日 真壁仁宛書簡より 光太郎63歳

3月10日といえば、いわゆる東京大空襲の日です。この日の空襲では駒込林町は大きな被害を逃れましたが、その後も空襲は断続的に続き、光太郎自宅兼アトリエは4月13日の空襲で灰燼に帰します。

そうなる前にと、智恵子の紙絵、光雲遺作、そして自分の作品も一部、郊外に住むほうぼうの友人知己のもとに疎開させることにしました。結果的には正しい判断でした。

招待状を頂いており馳せ参じる予定なのですが、このサイトでご紹介するのを失念していました。というか、紹介したつもりでいたら「しまった、書いてなかった!」状態でした。すみません。

福成紀美子ソプラノリサイタル~作曲家 朝岡真木子とともに~

期 日 : 2023年11月4日(土)
会 場 : 王子ホール 東京都中央区銀座4-7-5
時 間 : 14:00開演(13:30開場)
料 金 : 4,500円(全席自由)

予定プログラム : 朝岡真木子作曲作品
 秋です      詩:西岡光秋
 しだれ桜     詩:岡崎カズヱ
 露草 〈初演〉      詩:こわせ・たまみ
 海の待宵草    詩:こわせ・たまみ
 きつねのよめいり 詩:野上彰
 金木犀の秋〈初演〉詩:冨永佳与子
 冬が来た〈初演〉    詩:高村光太郎
 組曲「みだれ髪」〈改訂初演〉短歌:与謝野晶子
 さんまのうた   詩:大竹典子
 だんごむし    詩:矢崎節夫
 うめぼし     詩:浅田真知
 黒豆のなっとう  詩:中野惠子
 おにぎりのうた  詩:柏木隆雄
 わすれない    詩:星乃ミミナ    ほか

出 演 :
 福成紀美子(ソプラノ)、朝岡真木子(作曲・ピアノ)
 特別ゲスト 下野 昇(テノール)
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作曲家・朝岡真木子氏。平成13年(2001)、組曲「智恵子抄」のうち「人に」「あどけない話」「千鳥と遊ぶ智恵子」「レモン哀歌」の4曲を作曲され、初演。令和元年(2019)に「値ひがたき智恵子」を加えて完成版として初演。共にソプラノの伊藤晶子氏の歌唱でした。

昨年には同組曲を含む楽譜集『朝岡真木子歌曲集2』が刊行され、メゾソプラノの清水邦子氏が全曲演奏、さらに今年に入ってCD化もなされました。その前後、清水氏や他の方の歌唱で、様々な機会に抜粋の演奏がくり返されていますし、今年の第67回連翹忌の集いでも「人に」を清水氏の歌唱、朝岡氏のピアノでご披露いただきました。連翹忌と言えば、渡辺えりさんの無茶振りで(笑)えりさんの朗読のBGMも朝岡氏にお願いしました。

その朝岡氏が新作として「冬が来た」を作曲なさり、今回のコンサートで初演が為されます。ありがたし。歌唱は福成紀美子氏、ピアノはこうした場合にほとんどそうですが、朝岡氏ご自身です。

もう明日になってしまいましたが、ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

思ひきつて静養にゆかれた事をよろこびます、十分効果のあるまで落ちついて滞在せられるやうに申進めます、小生は地下霊泉の信仰者で、地底ふかき所から自然が人間に贈るこの無類の霊気は必ず人の身体と精神とを健康に導くものと確信してゐます、


昭和19年(1944)12月4日 宮崎稔宛書簡より 光太郎62歳

健康を害して福島の湯岐温泉に湯治に出かけた宮崎に宛てた書簡から。光太郎の温泉好きは若い頃からでしたが、単に「温泉はいいですよ」ではなく「小生は地下霊泉の信仰者で、地底ふかき所から自然が人間に贈るこの無類の霊気は必ず人の身体と精神とを健康に導くものと確信」。笑えます。

当方も昨日まで花巻南温泉峡・大沢温泉さんに2泊し、光太郎も浸かった露天風呂を朝に晩に堪能して参りました。帰って来てもそれほど疲労を感じていないのは温泉の効用かも知れません。

その花巻レポート、明日は書かせていただきます。

岡山県から演奏会情報です。

岡山市民合唱団鷲羽 第50回記念定期演奏会

期 日 : 2023年10月29日(日)
会 場 : 岡山シンフォニーホール 大ホール 岡山県岡山市北区表町1丁目5-1
時 間 : 14:30開場 15:00開演
料 金 : 前売1,500円 当日2,000円

曲 目 : 
 Ⅰ.混声合唱とピアノのための「信じる」 谷川俊太郎作詞 松下耕作曲
   指揮・大森紀美子 ピアノ・平わか
 Ⅱ.「智恵子抄 三章」岡山市民合唱団鷲羽 第50回定期演奏会記念作品 
   高村光太郎作詞 上月明作曲 指揮・上月明 ピアノ・松原久美子

 Ⅲ.第50回記念定期演奏会特別ステージ 
   皆様と共に振り返る「鷲羽」の半世紀~あの名曲を再び
   Memory 浜辺の歌 案山子 ほか

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存じ上げない方ですが、上月明氏という方の作曲で「智恵子抄 三章」。「第50回定期演奏会記念作品」とあるので、委嘱初演なのでしょうか。また、同じ岡山の作曲家・青木省三氏にやはり「智恵子抄 三章」という合唱曲と、それを編曲した独唱曲(平成29年=2017に千葉県の柏で拝聴しました)があるのですが、何か関連はあるのでしょうか。

お近くの方、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

尚つひでに「某月某日」を同封いたしました、おんつれづれの時にでも御披見下さい。

昭和18年(1943)7月27日 高祖保宛書簡より 光太郎61歳

『某月某日』は、この年4月に『智恵子抄』版元の龍星閣から刊行された光太郎の随筆集。草野心平主宰の詩誌『歴程』に載った同題の半連載などを集めたものです。
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加藤昌則氏作曲の歌曲「レモン哀歌」をレパートリーの一つにして下さっている、カウンターテナーの藤木大地氏。

「レモン哀歌」がプログラムに入ったコンサート/リサイタルがたてつづけに開催されます。

まず、カウンターテナーお三方と、ピアノで加藤氏によるコンサート。

Hakuju Hall 20周年記念 カウンターテナーの饗宴

期 日 : 2023年10月19日(木)
会 場 : Hakuju Hall 東京都渋谷区富ヶ谷1-37-5
時 間 : 19:00 (開演)18:30 (開場)
料 金 : 5,000円(全席指定)

出 演 : 米良美一 藤木大地 村松稔之(以上、カウンターテナー) 加藤昌則(ピアノ)
曲 目 : 
 [村松ソロ]
  J.A.ハッセ:オラトリオ「聖ペトロとマグダラのマリア」より “我が苦しみよ、急げ”
  G.F.ヘンデル:歌劇「リナルド」より “私を泣かせてください”
  G.ロッシーニ:歌劇「タンクレーディ」より “この胸の高鳴りに”
 [藤木ソロ]
  武満徹(詞:谷川俊太郎):死んだ男の残したものは
  寺島尚彦(詞:寺島尚彦):さとうきび畑
  村松崇継(詞:Miyabi):いのちの歌
 [米良ソロ]
  久石譲(詞:宮崎駿):もののけ姫 
  美輪明宏(詞:美輪明宏):ヨイトマケの唄
 [加藤昌則 作品]
  加藤昌則(詞:千家元麿):落葉 [村松]
  加藤昌則(詞:高村光太郎):レモン哀歌 [藤木]
  加藤昌則(詞:山之口貘):ミミコ三部作 [米良]
 [三重唱]
  加藤昌則編:日本の歌メドレー
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実は先々週くらいに取り上げようとしたら、すでにチケット完売(ただ、キャンセル等があるかも知れません)とのことでした。そこで下記の藤木氏単独リサイタルと併せて、今日、ご紹介します。

で、藤木氏の単独リサイタルが2件。名古屋と東京で2日連チャンです。

藤木大地カウンターテナー・リサイタル

期 日 : 2023年10月31日(火)
会 場 : メニコンHITOMIホール 愛知県名古屋市中区葵3丁目21番19号
時 間 : 18:45 (開演)18:15(開場)
料 金 : 一般:¥4,000(前売り)¥4,500(当日)
      高校生以下:¥2,500(前売り・当日ともに)

出 演 : 藤木大地 マーティン・カッツ(ピアノ)
曲 目 : シューベルト:水の上で歌う
      ブラームス:永遠の愛
      フォーレ:月の光
      マーラー:連作歌曲集「さすらう若人の歌」
      ブリテン:流れは広く
      加藤昌則:レモン哀歌  ほか
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藤木大地カウンターテナー・リサイタル

期 日 : 2023年11月1日(水)
会 場 : 浜離宮朝日ホール 東京都中央区築地5-3-2
時 間 : 19:00(開演)18:30(開場)
料 金 : 全席指定:一般 6,500円、U30 2,000円(税込)

出 演 : 藤木大地 マーティン・カッツ(ピアノ)
曲 目 : F.シューベルト:水の上で歌う
      J.ブラームス:永遠の愛
      G.フォーレ:月の光
      R.アーン:わたしの詩に翼があったなら
      G.マーラー:連作歌曲集「さすらう若人の歌」
      V.ウィリアムズ:リンデン・リー
      B.ブリテン:流れは広く
      加藤昌則:レモン哀歌
      R.シューマン:連作歌曲「女の愛と生涯」
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それぞれ、ご都合の付く方、ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

この二十二日から少国民文化協会の連中と上州の方へ二三日間まゐります。


昭和17年(1942)3月19日 三ツ村繁蔵宛書簡より 光太郎60歳

上州行きは前年の真珠湾攻撃で戦死した「軍神」岩佐直治中佐顕彰のためでした。3月22日には前橋市群馬会館で開催された「少国民文化宣揚講演会」で岩佐らを謳った詩「特別攻撃隊の方々に」を朗読、翌23日には岩佐の遺族を訪問しています。

その際のレポートを「天川原の朝」として4月6日の『読売新聞』に寄稿。さらに岩佐家訪問の際に贈られたと推定される色紙写真版が翌年に岩佐遺族が私刊した『特別攻撃隊軍神岩佐海軍中佐』に掲載されました。
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作曲家の西村朗氏の訃報が出ました。

「共同通信」さん配信記事。

作曲家の西村朗さん死去 オペラ「紫苑物語」

005 オペラ「紫苑物語」など多くの作品を残した作曲家の西村朗(にしむら・あきら)さんが7日午後8時12分、右上顎がんのため東京都内の病院で死去した。69歳。大阪市生まれ。葬儀は近親者で行った。喪主は妻優子さん。
 NHK・Eテレ「N響アワー」の司会、いずみシンフォニエッタ大阪や草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルの音楽監督を務めた。東京音楽大の教授として後進の指導にも尽力した。
 1977年、エリザベート王妃国際音楽コンクール作曲部門大賞。2013年紫綬褒章。
 19年には、新国立劇場の委嘱で作曲した新作「紫苑物語」が話題を集めた。

『朝日新聞』さん。

作曲家の西村朗さん死去 現代音楽で世界的活躍、N響アワー司会も

 現代音楽の作曲家で、「N響アワー」などの司会でも広く知られた西村朗(にしむら・あきら)さんが7日、右上顎(じょうがく)がんで死去した。69歳だった。葬儀は近親者で営んだ。喪主は妻優子さん。
 大阪市生まれ。東京芸大で矢代秋雄、野田暉行に師事。西洋音楽の語法に立脚しつつ、音高やリズムのずれによって多層的な響きを紡ぐ「ヘテロフォニー」の手法を確立した。
 代表作にインドネシアやモンゴルなど、アジア各国の民族の感性を縦横に採り入れた「2台のピアノと管弦楽のヘテロフォニー」など。クロノス・カルテットなど世界的なアーティストから新作委嘱を受け、ウィーン・モデルン音楽祭などで演奏されてきた。2019年、新国立劇場で石川淳の短編を原作にした新作オペラ「紫苑(しおん)物語」が大野和士の指揮で初演され、世界的な話題を集めた。
 武満徹作曲賞など数多くの審査員を歴任した。いずみシンフォニエッタ大阪、10年から草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルの音楽監督も務めた。軽妙な語り手としても知られ、NHK教育「N響アワー」の司会を09年から12年まで務め、現在もNHKFM「現代の音楽」の解説を務めていた。
 東京音大教授。エリザベート国際音楽コンクール大賞、尾高賞など受賞多数。
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西村氏、平成20年(2008)に関西合唱団さんの依嘱で「混声合唱とピアノのための組曲「レモン哀歌」」を作曲、同団の第73回定期演奏会で演奏がなされました。翌年には全音さんから楽譜が出版されています。

その後、平成30年(2018)の全日本合唱コンクール第71回大会高校Bグループ(33人以上の大編成)に出場した九州地区代表・鹿児島高等学校音楽部さんが第3曲「レモン哀歌」を歌われました。同部は一昨年の第74回大会では第1曲「千鳥と遊ぶ智恵子」でみごと銀賞に輝きました。

YouTube上に同部の演奏がアップされています。


楽譜集巻頭の氏による「作品解説」。

 関西合唱団の委嘱により作曲。この組曲は、私としては初めて高村光太郎の詩をテキストとして作曲した合唱曲です。ここに用いた詩はいずれも有名なもので、かなり以前から読み親しんでいたものですが、最近になって急に感ずるところが強く深まったものでもあります。ようやくにして詩境に理解が近づいたということかもしれません。
 光太郎(1883~1956)の生涯は日本近代の激動期とも重なっており、伝記などが示すとおり、一人の芸術家としてはその社会的な実生活環境と個人的な内的精神生活の両面において、特異なまでに複雑困難な一生を送ったと言えるでしょう。おそらく、その魂は一生を通じて安息の時を得ることはなかったと思われます。詩集「智恵子抄」(1941)、「典型」「智恵子抄その後」(1950)などには光太郎の魂の孤独と悲哀と絶望が鋭く表現されています。これらは単なる抒情詩集ではありません。より厳しく生と死と人間存在の孤独を描いたものです。晩年、敗戦後の虚脱を経ての隠遁生活のなかで、あるいは、かつてのその清らかな心を病んで先に旅立っていった愛妻、智恵子の思い出だけが老詩人の魂を救い、一点のレモンのように純化されていったのかもしれません。
 光太郎の没後半世紀、「心の時代」と言われて久しい今日ですが、しかしながら「時代の心」は一層貧しくなっているかにも思えます。光太郎の「レモン」は私たちの魂を救ってくれるのでしょうか。
 第1曲は海辺の風光の中での夢幻的な魂の孤独。異界からの千鳥の声と智恵子の遠景。第2曲は峻険な山塊のように残酷に分断されていく二つの意識。魂の呻くような叫びの断章。そして第3曲、レモン哀歌。祈り。


「混声合唱とピアノのための組曲「レモン哀歌」」、歌い継がれていってほしいものです。

謹んで氏のご冥福をお祈り申し上げます。合掌。

【折々のことば・光太郎】

大層あたたかくなりました、皆様おかはり無い事と存じます、小生も元気で毎日仕事してゐます、先日病院へまゐりましたが今月も智恵子に会はずにかへりました、興奮するといけないと思つて案じられます、春先になるといつも悪くなるやうに思ひます、


昭和13年(1938)3月24日 長沼セン宛書簡より 光太郎56歳

かつて智恵子が千鳥と遊んでいた九十九里浜に暮らす、智恵子の母宛の書簡から。

「家族との面会は興奮状態を引き起こすので控えてほしい」的な指示が智恵子入院先のゼームス坂病院の医師からあったのは確かですが、それにしても光太郎、面会する頻度が極端に落ちました。変わり果てた智恵子の姿を見るにしのびなかったのでしょうか。九十九里で療養していた昭和9年(1934)には、ほぼ毎週、見舞いに訪れていたのですが……。

智恵子は心の病以外にそれ以前から罹患していた結核も進み、余命約半年です。

全日本合唱連盟さん主催の全日本合唱コンクール。今年は第76回となり、全国大会は10月から11月にかけ、小学校部門で福岡県、中高部門は香川県、大学職場一般部門が新潟県で、それぞれ開催されます。
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7~8月に都道府県大会、9~10月には支部大会(北海道、東北、関東……)があり、それぞれを勝ち抜いて全国への切符が手に入ることになります。
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やはり主催に入っている『朝日新聞』さんの各都道府県版で、都道府県大会の結果等が報じられ続けています。そのうち、神奈川大会高校部門について。

6団体が関東大会へ 県合唱コン、高校A・B /神奈川県

 第66回神奈川県合唱コンクール(県合唱連盟、朝日新聞社など主催)の高校A、B部門が19日、横浜市西区の県立音楽堂であり、計21団体が出場した。
 関東大会常連で全国大会出場全国大会出場を目指す日本女子大付属高校は、課題曲「Salve Regina」、高村光太郎作詩の「亡き人に」を歌った。部長の伊藤優梨愛さん(3年)は「課題曲ではラテン語に挑戦した。巻き舌や母音の時の口の開き方が日本語とは違って、難しかった。」
 金賞、そして関東大会出場権を得たが、「今日の歌は未完成。自由曲の方は、もっとみんなと歌詞の解釈を話し合って、関東大会ではより深みを出したい」と表情を引き締めた。
 高校部門では、系6団体が9月に水戸市で開かれる関東大会への出場を決めた。結果は次の通り(◎は県代表)。
 【高校A】金賞 ◎日本女子大、◎海老名、◎神奈川学園、◎清泉女学院、▽銀賞 多摩、鵠沼、相模女子大、青山学院横浜英和、中央大横浜▽銅賞 相模原中等教育、相模原弥栄、生田、洗足学園、麻生総合、慶応湘南藤沢▽奨励賞 法政二、麻溝台、大船、湘南台
 【高校B】金賞 ◎湘南、◎桐光学園

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画像は高校B部門(出演人数33名以上)金賞の湘南高校さんですが、同A部門(6名以上32名以下)では日本女子大付属高校さんが金賞。自由曲で「高村光太郎作詩の「亡き人に」を歌った」とあります。

「亡き人に」は、おそらく鈴木輝昭氏作曲の「女声合唱とピアノのための組曲 智恵子抄」と思われますが、違っていたらごめんなさい。この組曲は智恵子の母校・福島高等女学校の後身である県立橘高等学校合唱団さんの委嘱作品です。同団、全3曲のこの組曲から1曲ずつ自由曲として選曲し、平成21年(2009)から3年間、全日本合唱コンクール全国大会に出場し上位入賞しています。また、神奈川の清泉女学院さんも平成26年(2014)の同大会で「亡き人に」を自由曲に選定し出場、金賞を受賞されました。

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 雀はあなたのやうに夜明けにおきて窓を叩く
 枕頭のグロキシニヤはあなたのやうに黙つて咲く

 朝風は人のやうに私の五体をめざまし
 あなたの香りは午前五時の寝部屋に涼しい

 私は白いシイツをはねて腕をのばし 
 夏の朝日にあなたのほほゑみを迎へる

 今日が何であるかをあなたはささやく
 権威あるもののやうにあなたは立つ

 私はあなたの子供となり
 あなたは私のうら若い母となる

 あなたはまだゐる其処そこにゐる
 あなたは万物となつて私に満ちる

 私はあなたの愛に値しないと思ふけれど
 あなたの愛は一切を無視して私をつつむ

詩は智恵子が亡くなった翌年の昭和14年(1939)、雑誌『新女苑』に発表されました。
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光太郎の手元に残された控えの原稿によれば、制作日は7月16日。7年前の7月15日、智恵子は睡眠薬アダリンの大量服用で自殺未遂を起こしました。「今日が何であるか」はそのあたりに関わるような気もします。

グロキシニヤ」は、光太郎にとって、智恵子との様々な思い出を象徴する花ですね。詩の右に載せた画像は、当方自宅兼事務所のグロキシニア。今年6月に撮影した画像です。残念ながらもう花は散ってしまっています。

さて、合唱コンクール関東大会は茨城県の水戸市民会館さんで9月16日(土)の開催。日本女子大付属高校さんには、ぜひとも全国大会出場を果たしていただきたいものです。『朝日新聞』さん記事には「自由曲の方は、もっとみんなと歌詞の解釈を話し合って、関東大会ではより深みを出したい」とあり、こういう取り組みも大切だと存じます。そして、若い世代にも光太郎智恵子の世界が受け継がれていってほしいものです。

【折々のことば・光太郎】

此を書いてゐるうちにもちゑ子は治療の床の中で出たらめの嚀語を絶叫してゐる始末でございます、看護婦を一切寄せつけられぬ事とて一切小生が手当いたし居り殆ど寸暇もなき有様です、御無沙汰の失礼平におゆるし下さい、


昭和9年(1934)12月28日 中原綾子宛書簡より 光太郎52歳

半年あまり預けていた九十九里浜の母と妹夫婦の元から、心を病んだ智恵子を再び連れ戻しました。翌年2月末に南品川ゼームス坂病院に入院させるまで、光太郎にとって(智恵子にとっても?)地獄のような日々が続きます。

コロナ禍の最中にはそういうこともほとんどありませんでしたが、のんきにイベントに出かけ、さらにそのレポートを書いているうちに、書くべき事柄がたまってしまう、と、コロナ禍以前の状態が戻ってきています。

今週末のイベント等、2件、ご紹介します。

まずは邦楽系のコンサート。

元井美智子自作自演コンサート2023

期 日 : 2023年7月29日(土)
会 場 : 横浜市イギリス館 神奈川県横浜市中区山手町115-3
時 間 : 18:30~
料 金 : 2,500円

出 演 : 元井美智子(箏)
曲 目 : 智恵子抄より 青女 夏は来ぬ など

自作曲とアレンジ曲のプログラムでソロコンサートを開催します。あまりの暑さで外出をためらってしまう気候ですが、ぜひお越し下さい。よろしくお願いします。
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元井美智子さん。存じ上げない方ですが、通常の箏、十七絃、三味線などの演奏活動とレッスンをなさっている方だそうで。

プログラムに「智恵子抄より」とあります。SNSを拝見しましたところ、インスパイアを受けるため、今回のコンサートに先立ち花巻郊外旧太田村の高村光太郎記念館さんにも行かれたそうで、ありがたいことです。

会場が港の見える丘公園内のイギリス館さん。すぐ近くには神奈川近代文学館さんがあり、閲覧室はよく利用させていただいております。今回もそちらでの調べものを兼ねて、行ってこようと思っております。

もう1件。同日開始で映画の上演情報です。

生誕110年記念 映画監督・中村登――女性讃歌の映画たち

期 日 : 2023年7月29日(土)~9月1日(金)
会 場 : 神保町シアター 東京都千代田区神田神保町1-23
料 金 : 一般 ¥1,300 シニア ¥1,100 学生 ¥900 U29ペア割引 ¥2,200
      毎週水曜ファン感謝デー どなた様も1000円均一
      毎月1日映画サービスデー どなた様も1000円均一

■中村登(なかむら・のぼる)略歴■
 1913年東京・下谷に生まれ、36年東京帝国大学文学部英文科を卒業後、松竹大船撮影所に助監督として入社。41年に文化映画『生活とリズム』の後、同年『結婚の理想』で劇映画の監督デビューを果たす。51年のオールスター映画『我が家は楽し』が評判になると、スター女優が主演した文芸作品を数多く手掛けるようになり、63年の川端康成原作『古都』や66年の有吉佐和子原作『紀ノ川』などが高く評価され、松竹の屋台骨を支える巨匠として活躍した。79年、紫綬褒章受章。81年、日中合作映画『未完の対局』を準備中に闘病生活に入り、死去。
 生誕100年を記念して、2013年『夜の片鱗』がヴェネチア国際映画祭で上映、翌年のベルリン国際映画祭では『我が家は楽し』『土砂降り』『夜の片鱗』が上映され、今なお再評価の熱が高まる映画監督のひとりである。

上演作品 全作品ともに監督:中村登
 1.『智恵子抄』 昭和42年 カラー 
   出演:岩下志麻、丹波哲郎、平幹二朗、岡田英次、南田洋子、中山仁
 2.『春を待つ人々』 昭和34年 カラー 
   出演:佐田啓二、有馬稲子、岡田茉莉子、高橋貞二、桑野みゆき、佐分利信
 3.『鏡の中の裸像』 昭和38年 カラー
   出演:桑野みゆき、倍賞千恵子、池部良、神山繁、川津祐介、山本圭
 4.『爽春』 昭和43年 カラー
   出演:岩下志麻、竹脇無我、生田悦子、森光子、山形勲、市川好郎
 5.『明日への盛装』 昭和34年 白黒
   出演:高千穂ひづる、大木実、石浜朗、芳村真理、杉田弘子、杉浦直樹
 6.『恋人』 昭和35年 カラー
   出演:桑野みゆき、山本豊三、岡田茉莉子、南原宏治、桂小金治、大泉滉
 7.『紀ノ川』 昭和41年 カラー
   出演:岩下志麻、司葉子、田村高廣、丹波哲郎、有川由紀、沢村貞子
 8.『わが恋わが歌』 昭和44年 カラー
   出演:中村勘三郎、岩下志麻、竹脇無我、八千草薫、中村賀津雄(嘉葎雄)、緒形拳
 9.『我が家は楽し』 〈英語字幕付き〉 昭和26年 白黒
   出演:山田五十鈴、高峰秀子、笠智衆、岸恵子、桜むつ子、佐田啓二
 10.『河口』 昭和36年 カラー
   出演:岡田茉莉子、滝沢修、杉浦直樹、田村高廣、東野英治郎、山村聰
 11.『結婚式・結婚式』 昭和38年 カラー
   出演:岡田茉莉子、岩下志麻、田中絹代、伊志井寛、榊ひろみ、川津祐介、佐田啓二
 12.『二十一歳の父』 昭和39年 カラー
   出演:山本圭、倍賞千恵子、勝呂誉、山形勲、鰐淵晴子、高橋幸治
 13.『女の橋』 昭和36年 カラー
   出演:瑳峨三智子、田村高廣、藤山寛美、山本豊三、柳永二郎、佐藤慶
 14.『夜の片鱗』 昭和39年 カラー
   出演:桑野みゆき、平幹二朗、園井啓介、木村功、千石規子、菅原文太
 15.『暖春』 昭和40年 カラー
   出演:森光子、岩下志麻、山形勲、太田博之、乙羽信子、倍賞千恵子、桑野みゆき
 16.『日も月も』 昭和44年 カラー
   出演:岩下志麻、久我美子、大空真弓、中山仁、石坂浩二、笠智衆
 17.『土砂降り』 〈英語字幕付き〉 昭和32年
   白黒 出演:佐田啓二、岡田茉莉子、桑野みゆき、沢村貞子、山村聰、日守新一
 18.『斑女』 昭和36年 カラー
   出演:岡田茉莉子、芳村真理、倍賞千恵子、佐々木功、沢村貞子、山村聰
 19.『ぜったい多数』 昭和40年 カラー
   出演:桑野みゆき、田村正和、伊藤孝雄、吉村実子、石立鉄男、早川保、倍賞千恵子
 20.『辻が花』 昭和47年 カラー
   出演:岩下志麻、佐野守、中村玉緒、山口崇、岡田英次、松坂慶子、笠智衆

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昭和42年(1967)公開、岩下志麻さん、丹波哲郎さん主演の松竹映画「智恵子抄」がラインナップに入っています。7月29日(土)~8月4日(金)までの第1タームです。

5月にはラピュタ阿佐ヶ谷さんでの上映もありましたが、あまり取り上げられる機会の多くない作品です。重いテーマで、岩下さんの鬼気迫る演技が一つの見どころとなっています。

それぞれ、ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

雑誌“いづかし”拝受、大層頁数の多い立派な雑誌なので驚きました、これだけ編輯なさるのは一通りではなからうと思ひました、よき発展をいのります、 小生は九月まで海の旅に出かけます故しばらく失礼いたします、


昭和6年(1931)7月29日 中原綾子宛書簡より 光太郎49歳

『いづかし』は歌人・中原綾子主宰の雑誌。のちに昭和10年(1935)、心を病んだ智恵子を謳った初めての詩「人生遠視」も同誌に掲載されました。

海の旅」は『時事新報』に依頼されて紀行文「三陸廻り」を書くためのもの。8月9日に東京を発ち、石巻、女川、気仙沼、釜石、そして宮古までを1ヶ月かけてほぼ船で移動しました。おそらく東京-三陸間の行き帰りも、月に一度航行されていた直行便の船を使ったのではないかと思われます。この旅の間に、智恵子の心の病が誰の目にも明らかになるほど顕在化しました。

東京を発った8月9日を記念し、女川町ではこの日に「女川光太郎祭」が行われています。今年は令和元年(2019)以来、4年ぶりにコロナ禍前の規模で開催とのこと。詳細はまたのちほどご紹介します。

邦楽と西洋音楽のコラボです。

第二回 掬月会

期 日 : 2023年7月15日(土)
会 場 : 宝生能楽堂 東京都文京区本郷1丁目5-9
時 間 : 14:00開演 
料 金 : S席 8,000円 A席 7,000円 B席 6,000円 C席 5,000円 自由席 3,000円

ご挨拶 水上優
 第二回掬月会では様々な「うた」をテーマにお届けします。
 私は宮中の「歌合」が題材の能「草紙洗」を舞わせて頂きます。
 また、田崎隆三師に「通小町」を連吟で謡って頂き、長男達は大伴黒主が志賀明神となる舞囃子「志賀」、次男嘉は亡霊となった平忠度が、和歌の師である藤原俊成の元を訪ねる仕舞「俊成忠度」をそれぞれ勤めます。
 今回声楽家の紀野洋孝氏に「声楽作品と能」についてのお話と独唱を生田流箏曲家福田恭子様の伴奏で演奏して頂きます。
 和歌、謡曲、歌曲、古代から現代、東洋と西洋、様々な「うた」をお楽しみいただければ幸いです。

 お話と演奏 声楽作品と能 紀野洋孝
 演奏 テノール 紀野洋孝、伴奏(箏)福田恭子
  別宮貞雄作曲歌曲集《智恵子抄》より「晩餐」 平井康三郎作曲「平城山」
 舞囃子「志賀」 水上達 安福光雄 小寺真佐人 曽和伊喜夫 藤田貴寛
 仕舞「俊成忠度クセ」 水上嘉 
 連吟「通小町」 田崎甫 田崎隆三 小倉健太郎 辰巳和麿
 狂言「鬼瓦」 山本則孝 山本泰太郎
 能「草紙洗」 水上優 野口能弘 山本凜太朗 宝生和英 田崎隆三 他
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テノールの紀野洋孝氏。別宮貞雄氏作曲の歌曲集「智恵子抄」を複数の演奏会で積極的に演目に入れられたり、CDをリリースされたりなさっています。今回は、通常、ピアノでの伴奏を箏曲で。ご本人、ツイッターで「めちゃくちゃいい感じです!!!」とつぶやかれていました。別宮氏の「智恵子抄」が、日本語のフレーズを大切にした作曲なため可能なのでしょう。

ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

私はまだ多くの迷を持つ。まだ多くの燃えはじまらない炎のくすぶりを持つ。そのけむりは時として自分をさへ窒息させかねない。しかし息をとめてゐる事は私を殺さないで却て私の肺臓を容量多くするといふ事にも気がついた。 私は今猛烈に勉強してゐる。一方は自分を棄てる事に。一方は自分を獲る事に。棄ててから獲るのでない所に中世的の夢から一歩出てゐると信ずる。

昭和3年(1928)1月27日 中野秀人宛書簡より 光太郎46歳

何だか詩のような手紙ですね(笑)。悪い意味での「ポエム」ではなく。

昨日、6月24日(土)に都内で開催される演奏会等をご紹介しましたが、同日、愛知県でも。

歌とピアノとヴァイオリン ~そよ風にのせて vol.17~

期 日 : 2023年6月24日(土)
会 場 : 熱田文化小劇場 名古屋市熱田区神宮三丁目1番15号
時 間 : 14:00~
料 金 : <全自由席> 1,000円

出 演 : Sop. 加川文子 野瀬洋子 真野一技 山本みのり 兼子いのり
      Pf. 善利彩加 梶田奈津希 井上美帆 Vn. 加川由梨
曲 目 : 
【歌】朝岡真木子/組曲「智恵子抄」 高橋晴美/海よりも空よりも 小林秀雄/うつぎの花
   ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」より エリザベッタのアリア“世の空しさを知る神”
   他
【ピアノ】ベートーヴェン/ピアノソナタ第31番 Op.110 第一楽章
     ドヴォルザーク/スラブ舞曲より(連弾)
【ヴァイオリン】ブラームス/ヴァイオリンソナタ第1番ト長調『雨の歌』作品78より第一楽章

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朝岡真木子氏作曲の独唱歌曲、組曲「智恵子抄」がプログラムに入っています。

昨年、清水邦子氏の歌唱で全曲、それから同じく清水氏によって何度か抜粋でも演奏され(今年4月2日(日)の第67回連翹の集いでも)、さらに清水氏によってCD化(当方、ライナーノートを書かせていただきました)もされた作品です。

調べてみましたところ、今回同様、名古屋で一昨年に開催された「日本歌曲コンサート~朝岡真木子の歌曲を中心として~」でも抜粋での演奏がありまして、出演者の方がその際と一部かぶっています。おそらく同じ方が歌われるのでは、と思われます。フライヤーを見た限りでは、全曲なのか抜粋なのか明記されていませんが、特に「より」「から」などの但し書きがないので全曲でしょうか。まぁ、全曲でも30分弱なので。

今後とも全国の演奏会でどんどん取り上げていただきたいところです。

さて、お近くの方(遠くの方もですが)、ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

今日はわざわざ来て下さつたのに、昨夜徹宵したのと、今夜の夜警勤務の支度とのため、丁度寝たところで、とてもねむくてねむくて起きられなかったので、知りながら其のまま睡つてしまひ、失敬しました。


大正13年(1924)2月22日 龍田秀吉宛書簡より 光太郎42歳

夜警勤務」、おそらく前年9月の関東大震災に関わると思われます。同じ書簡の末尾には「今夜は此から明朝まで夜警小屋に出るのです」とあります。

都内から同日開催の演奏会系情報を2件。

まずは練馬、クラシック系です。

齊藤恵ソロコンサート にほんのうた

期 日 : 2023年6月24日(土)
会 場 : 光が丘美術館 東京都練馬区田柄5-27-25
時 間 : 14:00~
料 金 : 一般3,000円 小学生以下1,000円

「にほんのうた」と題しまして、前半は童謡・唱歌に素敵な伴奏を付けたもの、後半は高村光太郎の詩に別宮貞雄が曲を付けた歌曲集「智恵子抄」を全曲歌います。
「智恵子抄」は数年前に抜粋で演奏したことがあり、いつか全曲をやりたいと思っていたものです。Ⅰ 人に Ⅱ 深夜の雪 Ⅲ 僕等 Ⅳ 晩餐 Ⅴ あどけない話 Ⅵ 人生遠視 Ⅶ 千鳥と遊ぶ智恵子 Ⅷ 山麓の二人 Ⅸ レモン哀歌 の9曲から成り、光太郎の智恵子への愛が存分に感じられる曲集です。
「50歳を過ぎたら日本歌曲をしっかり勉強しよう」と思っていたのですが、その歳を過ぎても遅々として進まない状況ですが、今回思い切って企画しました。まだまだ拙い演奏ですが、ぜひご来場いただき、ご高評をいただきたく存じます。よろしくお願いいたします。

出 演 : 齊藤恵(ソプラノ) 野入葉子(ピアノ)
曲 目 : 
 どこかで春が 百田宗治作詞 草川信作曲 伊藤康英編曲
 うみ~唱歌ファンタジー~
  われは海の子 文部省唱歌
  うみ 林柳波作詞 井上武士作曲 伊藤康英編曲
 村祭 文部省唱歌 伊藤康英編曲
 冬景色 文部省唱歌 伊藤康英編曲
 赤とんぼ 三木露風作詞 山田耕筰作曲 伊藤康英編曲
 あわて床屋 北原白秋作詞 山田耕筰作曲 伊藤康英編曲
 宵待草 竹久夢二作詞 多忠亮作曲 伊藤康英編曲
 歌曲集『智恵子抄』 高村光太郎作詞 別宮貞雄作曲
  Ⅰ 人に Ⅱ 深夜の雪 Ⅲ 僕等 Ⅳ 晩餐 Ⅴ あどけない話 Ⅵ 人生遠視
  Ⅶ 千鳥と遊ぶ智恵子 Ⅷ 山麓の二人 Ⅸ レモン哀歌
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「智恵子抄」は数年前に抜粋で演奏したことがあり」というので調べてみましたところ、平成27年(2015)に、青山の草月ホールさんで開催された「日本の音楽展(XXXVII)」で、確かに4曲抜粋で歌われていました。今回ピアノを担当される野入さんという方も、同じ演奏会で別の曲の伴奏をなさっていました。

故・別宮貞雄氏の「智恵子抄」、テノールの紀野洋孝氏が積極的に取り上げられ、他にもぽつりぽつり色々な方が歌って下さっています。非常に抒情的かつ、日本語のフレーズを大切にした作曲です。

今回は美術館さんでコンサート。何とも優雅ですね。

もう1件。一転してジャズ系です。

ノスタルジックな世界

期 日 : 2023年6月24日(土)
会 場 : 名曲喫茶ヴィオロン 東京都杉並区阿佐谷北2-9-5
時 間 : 19:00~
料 金 : 1,000円(1ドリンク付)

出 演 : MIHOE(朗読/歌) 藤澤由二(ピアノ)
      中山ふじ枝(クロマチック・ハーモニカ)

中原中也 寺山修司 智恵子抄 そしてオリジナル ノスタルジックな世界をJAZZ演奏と朗読で綴る小さな時間
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昨年8月にも同じ会場で、「智恵子抄」を扱って下さいました。それからツィッター投稿に「智恵子抄」の文字が無くて気づかなかったのですが、今年3月にも演(や)られていました。

継続して取り上げて下さるのは非常に有り難いところです。

それぞれ是非お伺いしたかったのですが(ハシゴも可能かな、と)、自分の市民講座「高村光太郎・智恵子と房総」がまさにその日でして(ちなみにおかげさまで定員に達したそうです。多謝)、残念ながら欠礼致します。

お近くの方(遠くの方も)、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

今度の災厄については市民一同いづれも悲痛な経験を負はされましたが、私自身として、柳君の遺作の事ほど切実に悲しまされた事はありません。身に近く、苦しい気がします。 あなたの御心持を推察する事は更に強い圧迫です。 けれど事実は二度とあともどりしない事を思へばどう考へてもどう為ようもなく又どう言ひやうもありません。 せめて友人間にまだ散らばつてゐる遺作をあなたの許に集め寄せる事が出来れば一つの慰めになるかと思ひました。

大正12年(1923)10月23日 柳八重宛書簡より 光太郎41歳

「今度の災厄」は、関東大震災。柳八重は画家の柳敬助夫人。柳夫妻は明治末、智恵子を光太郎に紹介するのに一役買ってくれました。

敬助はこの年5月に急逝。その遺作展が日本橋三越で始まったのがまさしく震災当日の9月1日で、集められた柳の遺作絵画38点、さらに具体的な作品名は不明ですが光太郎作品を含む、賛助出品された友人たちの作品64点すべてが焼失してしまいました。

兵庫県から演奏会の案内です。

初夏にうたう ~日本歌曲の夕べ~

期 日 : 2023年6月3日(土)
会 場 : 兵庫県立芸術文化センター 兵庫県西宮市高松町2-22
時 間 : 14:00~
料 金 : 全席自由 2,500円

出演(50音順)・主な曲目
 歌唱
  新井俊稀  あどけない話(野村朗「智恵子抄」より)
  石津雅恵  思い出すために(信長貴富)
  門林裕佳子 しあわせよカタツムリにのって(信長貴富)
  喜多美幸  はっか草(千原英喜)
  鈴木萌   六月の歌(前田佳世子)
  辰田由紀子 はなやぐ朝(中田喜直)
  長太優子  赤いかんざし(貴志康一)
  速海ちひろ すずらんの祭(高田三郎)
  藤井友子  サルビア(中田喜直)
  藤島一子  夢みたものは……(木下牧子)
  松浦優   花の春告鳥(小林秀雄)
  吉村ひろ子 澄月集(山田耕筰)
 ピアノ 
  石田瑞枝 前川裕介

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名古屋ご在住の野村朗氏が作曲された「連作歌曲「智恵子抄」~その愛と死と~」から、第2曲「あどけない話」がプログラムに入っています。

歌唱担当は新井俊稀氏。平成29年(2017)には「連作歌曲「智恵子抄」~その愛と死と~」全曲を含むCD「日本の抒情歌 赤い花 白い花」をリリースされていますし、同じ年にドイツのハイデルベルグで同曲のコンサート「liederabend mit schauspiel 智恵子抄 Für CHIEKO」もなさった方です。他に都内でも

その他、個人的には自分が以前に合唱で歌ったことのある信長貴富氏作曲「思い出すために」(寺山修司作詞)、木下牧子氏作曲「夢みたものは……」(立原道造作詞)が入っていて、「独唱版もあるんだ」という感じでした。もっとも、独唱版が先で後から合唱に編曲されたのかも知れません。そのあたりは詳しくありませんで……。

閑話休題、お近くの方(遠くの方も(笑))、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

今日新聞で広岡浅子刀自のなくなられた事を知り非常に感動を受けました 先達て頂戴した一週一信をよんで はじめて刀自の真生活を知つたばかりの時 此の訃音に接して残り惜しい心に堪へません


大正8年(1919)1月16日 小橋三四子宛書簡より 光太郎37歳

広岡浅子は、智恵子の母校・日本女子大学校の設立にも協力した女性実業家。平成27年(2015)に放映された朝ドラ「あさが来た」(今週月曜までBSトゥエルビさんで再放送が為されていました)の主人公のモデルですね。

智恵子と浅子は面識がありました。智恵子卒業後の明治43年(1910)、同窓会である桜楓会総会中の分科会・社会部大会で智恵子が自らの絵画修行について発表し、その智恵子の発表の前に浅子が講話をしていました。
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また、遡って明治40年(1907)の智恵子卒業時の集合写真には、浅子も写っています。
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「一週一信」は、大正7年(1918)に刊行された浅子の随筆集。日本女子大学校同窓会の仕事もしていた小橋の編集です。
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都内から邦楽系の演奏会情報です。

東京インターアーツ目黒 第20回記念公演 和草(にこぐさ)コンサート

期 日 : 2023年5月20日(土)
会 場 : 中目黒GTプラザホール 東京都目黒区上目黒2-1-3
時 間 : 14:00~ 17:00~
料 金 : 一般 4,000円 学生(小中高校生)1,000円 親子ペア券(一般+小中高校生)4,500円

邦楽と洋楽のコラボレーションコンサート。朗読付き作品やミニレクチャーコーナーもあります。

曲目
 三宅一徳:祝宴 組曲「竹取物語」より  F.シューベルト: アヴェ・マリア
 宮城道雄:春の海  平岡吟舟:猩々   琴古流本曲:巣鶴鈴慕
 中島はる:智恵子抄 人に 樹下の二人 千鳥と遊ぶ智恵子 レモン哀歌
 間・かけ声・所作:魅力の宝庫 邦楽囃子の世界 ゲスト島村聖香さんを迎えて
 宮田耕八:豊年太鼓

出演
牧原くみ子(箏)、寺井奈美(箏)、富緒清律(箏・三絃)、大江美恵(箏・17絃)
武松洋子(朗読)、芦垣皋盟(尺八)、野村浩子(ソプラノ)、金井由里子(ピアノ)
高橋章子(フルート) 【ゲスト】島村聖香(邦楽囃子)
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故・中島はる氏作曲の、ピアノと箏、尺八の伴奏による独唱歌曲「智恵子抄」全4曲がプログラムに入っています。

同曲、平成4年(1992)に初演が為されています。歌唱はテノールの森田澄夫氏、ピアノが渡辺一史氏、箏で砂崎知子氏、尺八に山本邦山氏というラインナップでした。当日のパンフレットには、当会顧問であらせられた故・北川太一先生のお言葉。
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作曲者、中島氏のお言葉も。
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当方、これは聴いたことがなく(上記パンフレットは北川先生から頂きました)、楽譜も未見です。どんな感じかぜひ聴いてみたいもので、日程的に都合がつけば拝聴に伺いたいと思っております。

皆様もぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

今までこんなに全体の抱和した芸術を日本でみたことのない気がします、私はまだ詩について何事も公けに言はない時に居ますが後に詩の事について書く時、この集が実に重要なものである事を感じます。


大正6年(1917)3月(推定)『感情』第2年第4号所収書簡より 光太郎35歳

この集」は、萩原朔太郎の『月に吠える』。我が国の口語自由詩の確立における功績という意味では、光太郎の『道程』(大正3年=1914)と双璧を為すものですね。

そしてどちらかというと「述志」の詩篇で成り立つ『道程』、白秋系の芸術至上的な色合いの『月に吠える』と、ベクトルが異なる二つの巨峰がこの時期に相次いで上梓されたことは、非常に興味深いところです。

神戸から演奏会情報です。

合唱コンクール課題曲コンサート2023~藤木大地を迎えて~

期 日 : 2023年4月23日(日)
会 場 : 神戸文化ホール 大ホール 兵庫県神戸市中央区楠町4-2-2
時 間 : 14:00開演
料 金 : [全席指定]一般:2,000円 U25(25歳以下):500円

プログラム
 2023年度NHK全国学校音楽コンクール(Nコン2023)課題曲
  ♪ 小学校の部「緑の虎」 廣嶋玲子 詞/村松崇継 曲
  ♪ 中学校の部「Chessboard」 Official髭男dism 制作/横山潤子 編曲
  ♪ 高等学校の部「鳥よ空へ」 劇団ひとり 詞/信長貴富 曲

 2023年度全日本合唱コンクール 課題曲より
  ♪ 花々と木々(「光に寄す」から)サンサーンス 詩・曲
  ♪ Ⅰ―空と涙について― (「恋の色彩」から)古今和歌集より/田畠佑一 曲
  ♪ Salut, Dame Sainte(「アッシジの聖フランチェスコの四つの小さな祈り」から)
    プーランク曲
  ♪ 街路灯(「街路灯」から)北岡淳子 詩/三善晃 曲
 藤木大地独唱ステージ
  ♪ シャガールと木の葉(2022委嘱初演)木下牧子 曲/谷川俊太郎 詩
  ♪ 日々草 加羽沢美濃 曲/星野富弘 詩
  ♪ ぼくが死んでも 信長貴富 曲/寺山修司 詩
  ♪ レモン哀歌 加藤昌則 曲/高村光太郎 詩
 過去のNHK全国学校音楽コンクールより
  ♪ 気球に乗ってどこまでも(1974年度)東龍男 詩 平吉毅州 曲
  ♪ 生きる(1995年度)谷川俊太郎 詩 新実徳英 曲
  ♪ 手紙  ~拝啓 十五の君へ~(2008年度)アンジェラ・アキ  詩・曲
  ♪ ひとつの朝(1978年度)片岡輝 詩 平吉毅州 曲

出演
 指揮・ピアノ 佐藤正浩   ゲスト 藤木大地(カウンターテナー)
 合唱 神戸市混声合唱団
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合唱の二大コンクール、Nコン(NHK全国学校音楽コンクール)と、全日本合唱連盟さん主催の全日本合唱コンクール、それぞれの今年の課題曲が演奏されるコンサートです。

それだけでなく、ゲストにカウンターテナーの藤木大地氏を迎え、独唱のステージも。その中で、加藤昌則氏作曲の「レモン哀歌」が演奏される予定です。

藤木氏、同じ「レモン哀歌」を、横浜と広島で開催された演奏会「藤木大地&みなとみらいクインテットコンサート」で歌われましたし、同コンサートは来月、新潟市民芸術文化会館さん、奈良県大和高田市さざんかホールさんでも開催予定で、「レモン哀歌」も予定曲目に入っています。詳細は追ってご紹介します。

加藤昌則氏作曲の「レモン哀歌」は、バリトンの宮本益光氏の歌唱で、何度かコンサートで演奏されたりCDに収録されたりもしています。

ちなみに今回の会場は神戸文化ホールさん。昭和48年(1973)の竣工で、外壁には智恵子紙絵をあしらった神戸市民の花・紫陽花の巨大壁画が。そのホールで「レモン哀歌」。いいですね。
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ところで、全日本合唱コンクール課題曲のうちの一曲が三善晃氏作曲の女声三部「街路灯」。作詞者が北岡淳子氏で、「ありゃま」と思いました。北岡氏、日本詩人クラブさんの会長を務められていて、昨年行われた同会12月例会では当方が「2022年の高村光太郎――ウクライナ、そして『智恵子抄』――」と題して講演をさせていただき、非常にお世話になりました。また、過日の第67回連翹の集いにもご出席下さっています。

音楽方面でも光太郎、さらにいろいろと取り上げ続けていただきたいものです。

【折々のことば・光太郎】

気候のよろしき為めか彫刻の感興抑へがたくいつぞやちよつと御覧に入れたるお姉様の肖像をいぢり始めてつひ半日又半日と重なりて意外の我儘をいたしあなたの御心配のほどに今日思ひ及びまことに恐縮 ひたすら恥ぢ入り候


大正元年(1912) 3日(年代推定 月不詳) 
長沼セキ宛書簡より 光太郎30歳

セキは智恵子のすぐ下の妹。したがって「お姉様の肖像」は智恵子像です。光太郎、複数の智恵子像を制作しましたが、残念ながら、すべて現存が確認できていません。例外は生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」ですが、純粋に「智恵子像」というわけでもありません。

写真だけ残されている智恵子像、左は大正5年(1916)、右は昭和2年(1927)です。
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訃報を2件、ご紹介します。

まずは言わずと知れた世界の坂本龍一氏。共同通信さん配信記事から。

世界的音楽家の坂本龍一さん死去 YMO、環境・平和活動も

004 音楽ユニット「イエロー・マジック・オーケストラ」(YMO)のメンバーで、世界的な音楽家として知られた坂本龍一(さかもと・りゅういち)さんが3月28日、死去した。71歳。東京都出身。葬儀は近親者で行った。
 1978年に細野晴臣さん、高橋幸宏さんとYMOを結成し、キーボードを担当。シンセサイザーを駆使したテクノ・ポップ・サウンドで一世を風靡した。
 大島渚監督の映画「戦場のメリークリスマス」に出演し、音楽も担当。映画「ラストエンペラー」の音楽で、米アカデミー作曲賞、グラミー賞を受賞した。
 環境問題や平和問題にも関心が深く、近年は脱原発で積極的な発言を続けた。

坂本氏、NHKEテレさんの「にほんごであそぼ」内でくりかえし使われ続けている「道程」の作曲を手がけられました。
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「道程」の最終詩形は短いものですので(雑誌への初出発表形は102行ありましたが、詩集『道程』収録時にばっさりカットして9行になりました)、通常、他の作曲家等の方々は全9行に曲をつけられます。しかし、坂本氏は冒頭2行「僕の前に道はない/僕の後ろに道は出来る」だけを抽出。しかも、ある意味、ポジティブな内容の詩ですからこれも他の作曲家等の方々はドゥア(長調)で作曲されるところを、坂本氏は哀愁漂うモール(短調)で。しかし、それが何ら不自然ではなくこの上なくぴったりはまっていて、この短い曲一つとっても、坂本氏の類い希な才能のほどがわかります。

東日本大震災があった次の年の平成24年(2012)に公開収録が行われ、翌年オンエアされて、さらにDVD化もされた「にほんごであそぼ 元気コンサート in 福島」では、おん自らピアノ伴奏。
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坂本氏の貴重なかぶりものショットです。

ちなみにこの際の歌唱チームの一員で、他の機会にはソロでも「道程」を歌われていた、おおたか静流さんも昨年亡くなりました。

坂本氏と光太郎、もう1件。

やはり東日本大震災翌年の平成24年(2012)、光太郎ゆかりの地・宮城県女川町で開催された第21回女川光太郎祭の会場が、当時、女川町の仮設住宅敷地内の、坂本氏が資金を出して作られた巨大テントを張ったコミュニティスペース「坂本龍一マルシェ」でした。
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震災の復興支援、原発問題、環境問題などにも並々ならぬ関心を寄せられ、さらに発信を続けられていた氏の姿勢が、こういうところにも表れています。こういうイベントがあったというのは、ご本人はあずかり知らぬところでしょうが。

それにしても、坂本氏の訃報が出たのが、第67回連翹忌の4月2日(日)。不思議な縁を感じます。

もうお一方、今日の朝刊に出た訃報です。評論家の芹沢俊介氏。やはり共同通信さんから。

評論家の芹沢俊介さんが死去 家族、宗教、幅広いテーマ論じる

007 家族や教育、犯罪、宗教など、幅広いテーマを論じた評論家の芹沢俊介(せりざわ・しゅんすけ)さんが3月22日午後7時12分、脳出血のため千葉県我孫子市の病院で死去した。80歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は妻美保(みほ)さん。
 評論家の吉本隆明さんに師事し、雑誌「試行」などで原稿を発表。「鮎川信夫」などの文芸評論のほか、宗教集団信者の集団失踪を論じた「『イエスの方舟』論」で注目を集めた。ひきこもりの問題のほか、宮崎勤元死刑囚による幼女連続誘拐殺人事件や秋葉原無差別殺傷事件など、家庭や養育、若者の犯罪などについて積極的に論陣を張った。

当会顧問であらせられた故・北川太一先生の盟友だった故・吉本隆明氏の弟子筋に当たられた方です。オウム事件以降、いろいろあって表舞台にはあまり出て来られなくなられていましたが、かつては師の吉本氏同様、光太郎論にも取り組まれました。昭和57年(1982)には、筑摩書房さんから『高村光太郎』という書籍を刊行なさっています。
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また、令和元年(2019)、文治堂書店さんから刊行された北川先生の『光太郎ルーツそして吉本隆明ほか』PR用の冊子『トンボの眼玉』№9に、「北川太一とその仕事」という一文を寄せられました。
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坂本氏、芹沢氏、それぞれ謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

【折々のことば・光太郎】

Tant de Japonais admirent votre art, cher  Maître, c'est bien naturel.


明治45年4月20日 アンリ・マティス宛書簡より 光太郎30歳

邦訳は「かくも多くの日本人があなたの芸術を賞讃するのは、親愛なる画伯、ごく自然のことなのです」。光太郎自身も含め、光太郎も関わった白樺派の面々を指しての言です。

マティスからは「あなたとお近づきになれますよう、近々パリに戻られますことを願っております。そのときを待ちつつ、御手紙に厚く御礼申し上げます」的な返信を受け取っています。残念ながらそれは実現しませんでしたが。

光太郎最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」の立つ、青森県十和田市で地域おこし的な活動されている「とわこみゅ」さんからご連絡を頂いていたのですが(1月に「We Love Towada 2023 卓上カレンダー」を購入させていただいた関係でしょう)、紹介すべき事項が多く、後回しになっていました。すみません。

十和田愛を表現した楽曲が完成しました。

 青森県十和田市の市民団体「インバウンド十和田」(会長:米内山和正)では「街なかに賑わいを!十和田市の魅力を音楽で発信!」と題し、音楽文化の<創造・交流・発信>に取組み、地域の愛を表現したオリジナル音楽の制作を通じ、地域を盛り上げる企画者や 参加者(プレイヤー)人口の創出を目的とした事業を行いました。
 楽曲アイデア応募のあった中から、青森県十和田市出身で県外在住の小山田佳苗さんと中野憂さん、2人の共作「色彩は永遠にせせらぐ」を基本とし、他に応募のあったアイデア案を盛り込み制作されました。編曲は、十和田市在住のシンガーソングライター桜田マコトさんが担当し、演奏には同企画の演奏者募集へ応募のあった方など15名が参加されました。
 PV(プロモーションビデオ)の映像制作には、市民団体「インバウンド十和田」米内山和正会長が行い、十和田市の観光名所など1年を通じ撮影された映像と楽器演奏者の映像を盛り込み制作されました。
 完成した楽曲「色彩は永遠にせせらぐ」(しきさいはとわにせせらぐ)は、離れて思い出す故郷(ふるさと)十和田の情景を歌った曲で、青森県十和田市の春夏秋冬を感じ取れる内容となっています。
 また、同企画で生まれた「十和田永久賦」(作詞作曲・向山重考さん)、「Towada Machi」(作詞作曲・チャーリー永井さん)、2つの曲と共に、計3曲の十和田愛溢れる楽曲が発表されました。

「色彩は永遠(とわ)にせせらぐ」、早速、Youtubeで拝見。
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歌詞では「乙女の像」には触れられていませんが、映像にはばっちりと。
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十和田湖や、十和田湖から流れ出る奥入瀬渓流も。
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その他、四季折々の十和田市の風景や、イベント、街の皆さんの営み等がふんだんに。
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タイトル、それから歌詞にも使われている「永遠(とわ)」、「十和田」の「とわ」と掛けているのでしょう。明るく軽快な曲調でありながら、聴いていて不覚にもうるっと来てしまいました(笑)。


「乙女の像」登場は2:02頃と3:22頃です。

全国の町おこし団体や自治体の皆様、ご参考までに。

【折々のことば・光太郎】

琅玕洞は一周年を期して、此の四月十四日を限りに一旦閉店する事に致しました。此は弟の就職と、小生の北海道移住問題と、巴里へ新しい店を出す計画との為めです。

明治44年(1911)4月4日 前田晁宛書簡より 光太郎29歳

このところこの項でずっと「琅玕洞」がらみですが、前年に光太郎が立ち上げた、ほぼ日本初の画廊です。名目上の店主に据えていた実弟・道利の不行跡(客に「あなたにこの絵は解りませんよ」と言ったり、閉店時間になれば客がいようがいまいが照明を落としたり)などもあって、経営的にはまるで成り立たず、わずか1年で譲渡。店は存続しますが、性格は変わっていきます。
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光太郎自身は北海道に移住して酪農で生計を立てつつの芸術制作を夢みていました。そしてゆくゆくはパリに店を出すという計画が語られています。この書簡を見つけるまで、そんな計画があったことはわかっていませんでした。

3月21日(火)、竹橋の東京国立近代美術館さんをあとに、銀座に向かいました。午後2時開演の「朝岡真木子歌曲コンサート第6回」拝聴のためです。

会場は王子ホールさん。昨秋開催された「えつ子とまき子のコンサート 2022秋」と同じでした。
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作曲家・朝岡真木子氏の歌曲作品を、7人の歌手の皆さんが歌われるというコンセプトで、基本、独唱ですが、二重唱あり、合唱ありと、飽きさせない構成になっていました。
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今回は「第6回」と冠されており、継続的に行うには、やはりアップデートが必要なのでしょう。初演の新作を含むプログラムでした。

歌詞は現役の詩人の皆様から提供を受けたものが多く、絵本作家としても活躍されているこわせたまみ氏、金子みすゞ顕彰でも名高い矢崎節夫氏など、作詞者の方々がほとんどいらしていまして、終演後に紹介されていました。詩の選択は書き下ろしなのか、朝岡氏が旧作からセレクトして使わせてもらっているのかまでは寡聞にして存じませんが。

というわけで、新作もあれば、二重唱や合唱なども盛り込まれていたため、歌い手さんたちはそれなりに練習が大変だったでしょう。それを言えば、ピアノは全て朝岡氏ご本人で、幕開けからカーテンコールまで出ずっぱり。そのあたりの大変さをお客様に気取られないようにされるあたり、プロですね。

で、プログラム中に、組曲「智惠子抄」から2曲、「千鳥と遊ぶ智恵子」「値ひがたき智恵子」。こちらは最近、メゾソプラノの清水邦子氏の持ち歌的な感じになっており、やはり清水氏の歌唱でした。

過日、ご紹介いたしましたが、清水氏、組曲「智惠子抄」CDをリリースされ、公的にはこの日が発売日でした。そこで、受付でコンサート自体のプログラムとともにフライヤーも配付されていました。
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清水氏と親しい、映画監督の水谷俊之氏(一昨年にNHK BSプレミアムさんで放映された「プレミアムドラマ山女日記3 #3 あどけない空・安達太良山」の監督もなさった方)、それから当方が書いたライナーノートの抜粋も印刷されています。恐縮至極。

オンライン販売も為されていますし、フライヤー裏面はFAXでの注文書になっていまして、必要な方は下記画像を印刷してお使い下さい。
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PXL_20230321_060411330開演前、第1部と第2部の間の休憩時間、それから終演後、ロビーに物販コーナーが設けられ、このCDも並びました。

わずかながら制作に協力させていただいた身としましては、売れ行き等気にかかるもの。少し離れた場所からチラ見しておりました(笑)。そこそこ売れていたようです。ただ、他の歌手の方がリリースされたCDも多数並んでいたため、「智惠子抄」のみが飛ぶように売れるというわけにはいかなかったようですが。「智惠子抄」を買われた方には「えらい!」と、心の中で賛辞を送らせていただきました(笑)。

日比谷松本楼さんで4月2日(日)開催の第67回連翹忌の集い会場内でCDの販売も致しますし、朝岡氏、清水氏には「智惠子抄」から抜粋で演奏していただく予定です。

ご参加なさる方、お楽しみに。また、これから参加したいという方、まだ受付中です。コメント欄(非公開設定可)からお申し込み下さい。

【折々のことば・光太郎】

濱田葆光氏作画展覧会 自二月十一日 至二月二十日
濱田葆光氏は、所謂「ヸルヂニテエ、デモオシヨン」を蔵する画家にして、熱心なる自然の真の探求者に御座候。今回、品川海岸の研究画を主として、氏の油画十数点の展覧会を弊堂に於て相催し候間幸に御抂駕御一覧の程偏に願上候 神田区淡路町一丁目一番地 琅玕洞

明治44年(1911)2月10日 水野葉舟宛書簡より 光太郎29歳

葉舟宛、というより広く送られた案内状と推定されます。

琅玕洞」は、前年、光太郎が開店した画廊。日本の画廊の中では最初期のものです。名目上の店主は、実弟の道利でした。ここでは正宗得三郎、柳敬助、斎藤与里、濱田葆光ら親しかった新進美術家の個展をたびたび開きました。濱田葆光は太平洋画会研究所に学び、中村不折、満谷国四郎に師事した画家です。「ヸルヂニテエ、デモオシヨン」は、「無垢な凄み」とでもいった感じでしょう。
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ニューリリースのCDです。一昨日、タワーレコードさん他のサイトに情報がアップされました。ちなみに旧字体の「惠」の字が使われているのは、制作サイドのこだわりなのでしょう。

清水邦子が歌う 組曲『智惠子抄』

2023年3月21日 ムジカフエンテ000
定価2,000円+税

詩:高村光太郎
作曲/ピアノ:朝岡真木子
歌唱:清水邦子

収録曲
 1 人に(6:02)
 2 あどけない話(3:06)
 3 千鳥と遊ぶ智惠子(3:59)
 4 値(あ)ひがたき智惠子(2:59)
 5 間奏曲 ~祈り~(4:19)
 6 レモン哀歌(7:19)

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作曲家・朝岡真木子氏が令和元年(2019)に作曲された組曲「智惠子抄」のみを収めたCDです。

昨年、メゾソプラノの清水邦子氏が旧東京音楽学校奏楽堂で開催された「清水邦子リサイタル 清水邦子が贈る朝岡真木子の世界」で全曲を歌われ、「ぜひCD化していただきたいものです」と申し上げたところ、とんとん拍子に実現してしまいました(笑)。その行動力、バイタリティーには脱帽です。と言っても、決してやっつけ仕事ではなく、清水氏の歌唱、朝岡氏のピアノ、ともに素晴らしい演奏ですし、ジャケット的なブックレットは全15ページ。こちらもハイクオリティです。

清水氏、どっぷりと「智恵子抄」の世界にはまられ、リサイタル後の11月には智恵子の故郷・福島二本松の智恵子生家/智恵子記念館などをご訪問、今回のブックレットにはその折の写真も多数掲載されています。
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001ちょうど生家二階の特別公開中でしたし、智恵子の「幻の花嫁衣装」の展示も為されている時でした。

その際に同行された、映画監督の水谷俊之氏が、今回のCDのライナーノートを書かれています。題して「三人の女が生み出した劇的なるもの」。「三人」とはもちろん、清水氏、朝岡氏、そして智恵子ですね。ちなみに水谷氏、一昨年にNHK BSプレミアムさんで放映された「プレミアムドラマ山女日記3 #3 あどけない空・安達太良山」の監督もなさっていて、「智恵子抄」とは浅からぬご縁をお持ちです。

ライナーノートと言えば、当方も書かせていただいております。CDの帯には当方執筆のライナーノートの抜粋も印刷して下さいました。恐縮至極です。

最上部にリンクを貼りましたが、オンライン販売が為されていますし、4月2日(日)に日比谷松本楼さんで開催予定の第67回連翹忌の集いにご参加下さる方は、会場内で販売しますので、そちらでお求め下さい。また、連翹忌の集いでは、清水氏、朝岡氏のお二人直々に、組曲から抜粋での演奏をお願いしてあります。ご参加下さる方、お楽しみに。

それに先だって、やはり抜粋での演奏が為される「朝岡真木子歌曲コンサート第6回」が、3月21日(火)、銀座の王子ホールさんで開催されます。その際にもCDの販売があるでしょう。

さらに、組曲「智惠子抄」全曲が収められた楽譜集『朝岡真木子歌曲集2』も刊行されています。併せてお買い求め下さい。

【折々のことば・光太郎】

祝入営  明治43年(1910)8月10日 長田秀雄宛書簡より 光太郎28歳


005親友・水野葉舟との連名で送った葉書。絵は光太郎でしょう。

長田秀雄は詩人、劇作家、小説家。光太郎も中心メンバーだった芸術運動「パンの会」のやはり主要な一人でした。

「入営」は徴兵によるものです。この年11月、「パンの会」の大会が日本橋大伝馬町の三州屋で開かれ、その際、画像にあるような幟が掲げられ、さらに光太郎がその周りに黒い縁取りをしたところ、訃報の黒枠のように見えました。そこに居合わせた『萬朝報』の記者が「けしからん」と翌朝の記事にし、今で言う「炎上」状態に。

ちょうど幸徳秋水らによるいわゆる「大逆事件」のあった時期で、当局も過敏に反応していましたし、「パンの会」自体、社会主義者の集まりで、「麺麭(パン)」を要求する団体かと警戒されていたそうです。

「智恵子抄」がらみの演奏会等情報を2件。

まずは都内から。

朝岡真木子歌曲コンサート第6回

期 日 : 2023年3月21日(火・祝)
会 場 : 王子ホール 東京都中央区銀座4-7-5
時 間 : 14:00開演
料 金 : 全席自由 4,500円

曲 目 
 「春を待つ歌」(新作初演) 詩:こわせ・たまみ 
 「わたしは魔女」( 〃 ) 詩:こわせ・たまみ
 「わたしが一番きれいだったとき」「吹抜保」 詩:茨木のり子
 「そのとき十八の春」「梅干し」 詩:岡崎カズヱ
 「きつねのよめいり」 詩:野上彰
 「春満開」 詩:柏木隆雄
 「海の宵待草」 詩:こわせ・たまみ
 「さくらと はなびら」 詩:まど・みちお
 組曲〈あなたへ〉より「あこがれ」「あなたへ」「夢とおく」 詩:星乃ミミナ
 組曲〈智惠子抄〉より「千鳥と遊ぶ智恵子」「値ひがたき智恵子」 詩:高村光太郎
 他

出 演
 木内弘子(ソプラノ) 黒川京子(ソプラノ) 品田昭子(ソプラノ)
 福成紀美子(ソプラノ) 前澤悦子(ソプラノ) 清水邦子(メゾ・ソプラノ)
 馬場眞二(バリトン) 朝岡真木子(作曲・ピアノ)

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作曲家・朝岡真木子氏の歌曲作品のコンサートです。

昨年9月、旧東京音楽学校奏楽堂さんにおいて行われた「清水邦子リサイタル 清水邦子が贈る朝岡真木子の世界」で演奏された「組曲 智惠子抄」から抜粋で「千鳥と遊ぶ智恵子」と「値ひがたき智恵子」が演奏されます。歌唱は同じく清水邦子氏、ピアノは朝岡氏ご本人です。

昨年11月には、今回と同じ王子ホールさんで「えつ子とまき子のコンサート 2022秋」が開催され、その際にはやはり清水氏が「組曲 智惠子抄」から抜粋の「あどけない話」と「レモン哀歌」を歌われました。

清水氏、すっかり「智恵子抄」の世界に嵌ってしまわれ、「組曲 智惠子抄」のみを収めたCDをリリースされます。ちなみに当方、ライナーノートを書かせていただきました。また改めてご紹介いたしますが、今回のコンサート会場で販売されるようです。また、日比谷松本楼さんで行う4月2日(日)の第67回連翹忌の集いにも朝岡氏、清水氏がご参加下さり、「組曲 智惠子抄」から抜粋で演奏をしていただきますし、会場内でCDの販売も行います。

もう1件。こちらはサブタイトルに光太郎詩「あどけない話」由来の「ほんとうの空」(本当は「ほんとの空」ですが……)の語を冠してくださっています。

第16回 声楽アンサンブルコンテスト全国大会 - 感動の歌声 響け、ほんとうの空に -

期 日 : 2023年3月16日(木)~19日(日)
      3月16日(木)中学校部門 3月17日(金)高等学校部門
      3月18日(土)小学生・ジュニア部門、一般部門
      3月19日(日)各部門金賞受賞団体による本選、表彰式
会 場 : ふくしん夢の音楽堂(福島市音楽堂) 福島県福島市入江町1-1
時 間 : 各日、開場9:30 開演10:00
料 金 : 各部門予選  前売り 1,500円 当日 2,000円 
      本選     前売り 2,500円 当日 3,000円
      4日間通し券 前売りのみ 8,000円

このコンテストは、音楽を創りあげるもっとも基礎となる要素「アンサンブル」に焦点をあて、全国からトップレベルの声楽アンサンブルグループが福島に集い、日本の合唱レベルの向上を図るとともに、音楽文化の振興発展に寄与し、歌うことの楽しさを全国に発信するコンテストです。
青く澄みわたる“ふくしまの空”に、皆さんの心のハーモニーを響かせてください。
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この大会、平成20年(2008)から行われているものですが、平成23年(2011)の第3回大会は東日本大震災のため中止。復活した翌年の第4回大会から、サブタイトルに復興の思いも込めてでしょう、「感動の歌声 響け、ほんとうの空に。」と冠して下さるようになりました。

その後、令和元年(2019)に第12回大会までは順調に開催。だんだん規模も大きくなり、海外からの参加やゲスト団体によるスペシャルコンサート、参加団体での交流会なども催されていました。ところが令和2年(2020)の第13回大会はコロナ禍のため中止、令和3年(2021)の第14回大会は無観客で規模を縮小して実施、昨年の第15回大会は、またもや直前に福島で起こった地震のため中止……。紆余曲折を経て今回に至ります。

コロナ禍からの復興という意味合いも含め、「感動の歌声 響け、ほんとうの空に。」を実現させてほしいものです。

【折々のことば・光太郎】

驚きて走せ帰りたり。今より信州に遺骨を訪ふつもり、そんな事でもせずては荻原君の死んだのが本当に思へず、奈良の感興もめちやめちやなり


明治43年(1910)4月25日 水野葉舟宛書簡より 光太郎28歳

光太郎の親友・碌山荻原守衛の死はこの年4月22日。光太郎はこの時、奈良に旅行中でした。もう一人の親友、水野葉舟も後から奈良で合流する予定でした。

その葉舟の回想「日記の中より(故荻原守衛氏に対する記憶)」から。

 明治四十三年四月二十三日。この日は自分たちにとつて、記憶すべき日となつた。荻原氏の逝かれたのは、後で聞いたのではたしか其の前日であつたと思ふが、自分が此の意外な報道を見たのは此日であつた。
 この朝、自分は平常のやうに目を覚した。この頃は自分の心の中(うち)に、奈良旅行の計画と、その為めに順序を立てゝある仕事とで、占領され尽して居た。
(略)
 この旅に一緒に行かうと約束をした高村光太郎君は、一週間も前に、既に東京を発つてしまつた。自分はたゞ自分の仕事の上で気が急けるばかりで、早くこの旅に出たいといふばかりで、その朝も眠りから覚めたのであつた。
 で、起きると枕元に置いてある新聞を取つて広げて見た。すると荻原守衛氏逝くと書いた標題が目に入(い)つた。
 自分はまだ寝起きの極めてぼんやりした心持に、尚ほ微かに茫然とした。実に思はざる事だ!……
 暫くその標題を見詰めて居たが「偽だ!」と言ふやうな心持が、反抗的に胸に起つた。急いで、ありたけの新聞を広げて見たが、どれにも、明かに氏の逝かれたと言ふ事が書かれてあつた。とも角この三四十時間前に、此一芸術家が此世から去たと言ふ事が事実であつたらしい。
 自分はすぐ床を出た。そして書斎に入つて来ると、前夜までに仕かけた仕事が、ちやんと机の上に置いてある、それを見ながら、その前に坐ると、たゞ寞然と考へた。「荻原氏が死んだ!」と、はてしもなく考へた。
 先づ、第一に胸に起つたのは、奈良に行つて居る高村君はこの報道を聞くとすぐ引き返して来るだらう。吾々の奈良行きもこれで駄目だ……と言ふ事だつた。この考へがすぐ胸に来た。続いて、心が次第に氏の死なれたと言ふ事に集つて来た。
 道を歩いて居る人が倒れた。今迄、自分の目の前に確実(たしか)な足どりで道を歩いて居た人が、ばたりと倒れた。それと同時に、その人の思想も、手も、口も力が落ちた。自分は今、此偶然で、且驚く可き事実を眼前に見て居る。心が漸く沈んで深い暗いものに対して居るやうに思はれて来た。


予期せぬ急逝の報に接した場合の混乱がよく表されていますね。自分の生活は昨日までとまったく同じ延長線上にあるのに、他人の身の上に理不尽とも思える死が突然襲ってくる、という……。

当方も、1月に突然母を亡くしまして、同じような感懐を持ちました。

昨日も都内に出ておりました。行く先は初台の東京オペラシティさん。こちらのリサイタルホールにて、テノール歌手紀野洋孝氏のテノール・リサイタルを拝聴。
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ご本人がコロナ感染のため、昨年12月に予定されていながら延期となったもの。こういうと何ですが、逆に延期になったため日程の都合がつきまして、伺った次第です。ネットでチケットの予約をさせていただき、受付で当日精算しようとしたところ、「ご招待」扱いになっていて恐縮してしまいました。

前半はイタリアのトスティ、そして山田耕筰。
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久々にテノールの方の独唱を拝聴しましたが、やはり生で聴く演奏はいいですね。会場も大ホールではなく、さりとてこぢんまりというわけでもなく、適度な広さで、お一人で歌われるには丁度良いと思われました。あまりに狭い会場だと声や伴奏だけがストレートに飛んできますが、適正な広さのホールですと、しっかり残響がありますし、何というか、空間全体がある種の楽器のような感じがします。もちろん、紀野氏の確かな歌唱力あってのことですが。

後半が故・別宮貞雄氏作曲の「歌曲集 智恵子抄(改訂新版)」全9曲。
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楽譜を以前に入手、それを見ながらCDでは拝聴したことがありましたが、生演奏で聴くのは初めてで、興味深く感じました。

今回の演奏会パンフレットに引用されていた別宮氏の言葉によれば「高村光太郎のこの詩集は私の青春の愛読書のひとつ、いつかは作曲したいと思っていたのだが、周知のように、各篇長大で詩句も長く、扱いかねていた。しかしオペラ作曲の経験をへて、なんとかできるのではないかとおもうにいたり、一九八二年夏、三ヶ月ばかりかけて作った」とのこと。なるほど、確かにオペラ的要素が色濃く感じられました。

それはまず構成の妙。第1曲「人に」(「いやなんです あなたのいつてしまふのが――」で始まる「智恵子抄」巻頭の詩、大正元年(1912)の作)から第4曲「晩餐」までは、光太郎智恵子恋愛時代の詩。いわばまだ幸福だった時代。第5曲「あどけない話」(「智恵子は東京に空が無いといふ」のフレーズで有名な昭和3年(1928)の作)がターニングポイントとなって、後半は心を病んだ智恵子と、その死が謳われます。まぁ、この点は「組曲」として作曲されている多くの方々が同じようなことを考えられてはいるのでしょうが、中には後から後からどんどん曲を追加、というスタイルでやられている方もいらっしゃるもので……。

それから、昨年リリースされた紀野氏のCDのライナーノートに「オペラ作曲で得た、能の謡などを応用して日本語と西洋音楽を融合させる技術を用いた」とあり、なるほど、確かに「和」のテイストもふんだんに盛られているな、と感じました。

そういったもろもろを、紀野氏があますところなく表現され、聴いている方としては、至福の時間でした。

終演後のMCで、紀野氏、「日本人として日本語の歌曲をしっかり歌えるようでありたい」的なお話をなさいました。実は外国語の方が歌いやすかったりするもので、子音が立たず、アクセント等も平板な日本語はドラマチックな表現には不向きです。そこで昨今のJ-POP系の皆さんは、あえてそうしているのでしょう、鼻濁音という美しい日本語の伝統を捨て、がっつりと濁音の「ガギグゲゴ」。まぁ、これは音楽に限らずで、テレビ等、アナウンサー諸氏までもで、憂うべき事態だと思っています。もっとも、広い日本国内には鼻濁音というものがほぼ存在しない地域もあるそうですが……。

さて、紀野氏のリサイタル、3月6日(月)には紀野氏の故郷、大分での公演もあるそうです。お近くの方、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

多分四月頃スペインへ参りませう。グレコとヹラスケスとゴヤを見に参るのです。和蘭太や白耳義や独乙へは多分参りますまい。伊太利へも参れますまい。希朧も同様、埃及もポチポチ。

明治42年(1909)1月26日 南薫造宛書簡より 光太郎27歳

ロンドンで一緒だった留学仲間・南薫造にあてたパリからの書簡の一節。光太郎、スペイン旅行を企てていたことが記されています。しかし、これは実現せず、逆に「参れますまい」と書いているイタリアへ約1ヶ月の旅行に出、ルネサンス期の逸品の数々を眼にします。

埃及(エジプト)は、おそらく親友・荻原守衛が盛んにそのプリミティブな美を褒めそやしていた影響で興味を持ったものと思われます。光太郎、晩年には平凡社刊行の『世界美術全集』のエジプトの巻で実に的確かつ詳細な解説を書いています。

昨日は都内に出ておりました。

まずは六本木の国立新美術館さんへ。お世話になっている書家の菊地雪渓氏が出品なさっていた「東京書作展 選抜作家展2023」を拝見に。
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いろいろバタバタしていまして、最終日の観覧となってしまいました。
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菊地氏、たびたび光太郎詩を題材にされた作品を書かれ、各種展覧会で内閣総理大臣賞等を獲得なさったりしています。


今回の作は光太郎ではなく、漢詩。蘇軾の「漁父」だそうで。
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相変わらずお見事でした。

直接存じ上げない方ですが、「智恵子抄」所収の光太郎詩「梅酒」(昭和15年=1940)を書かれて出品なさった方も。
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ありがたし。

続いて、品川区大井町へ。

平成30年(2018)に開催された、花巻高村光太郎記念館さんでの企画展「光太郎と花巻電鉄」に際し、光太郎が彼の地にいた頃のジオラマ制作をお願いした石井彰英氏がミュージシャンでもあらせられ、お仲間の方々とご自宅でコンサートを開かれるということで参上しました。

ジオラマは花巻高村光太郎記念館さんで現在も展示中。
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氏のご自宅に伺う前、寄り道を。

大井町といえば、智恵子終焉の地、ゼームス坂病院があった場所。跡地には「レモン哀歌」(昭和14年=1939)詩碑が建っています。当方、何度も訪れた場所ですが、久しぶりに行ってみました。
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大井町駅方面からゼームス坂を下り、下りきる少し前を左に。
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ゼームス坂の由来を記した碑。

そしてその向かいに「レモン哀歌」詩碑。23区内では唯一の光太郎詩碑です。
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いつもレモンが供えられています。多謝。
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この碑、智恵子の推定身長と同じ高さ(150㌢ほど)だそうで。
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右上は、過日発見した光太郎智恵子の立ち姿写真です。智恵子が小柄だったことがよくわかります。

その後、石井氏邸に向かう道すがら、「お江戸鎧せんべい岩本米菓」さんへ。こちらでは智恵子にちなみ、「品川浪漫 レモン愛菓」というおかきを製造販売して下さっていますので、それをゲットしようと思いまして。
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しかし、残念ながら日曜定休でした。
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いずれリベンジを、と心に誓いました(笑)。

ちなみにすぐ近くでは、早咲きの桜もちらほら。
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つい4日前、マイナス9℃の世界にいたのが嘘のようで(笑)。

そして石井氏邸に到着、コンサートを拝聴。
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石井氏が制作された「高村光太郎ジオラマDVD」で、音楽やナレーションを担当なさった方々も多数ご出演。
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石井氏、人脈の広い方で、かの長嶋茂雄氏やファイティング原田氏などともご昵懇ですし、この日聴きにいらした方々も、一流レストランのシェフ氏、国民的アイドルのお母さま、「モンスター」と称されているボクシング選手の関係者の方などなど、実に多士済々でした。

最初の書道展の件を含め、皆様方の今後のさらなるご活躍を祈念いたします。

【折々のことば・光太郎】

About what you write in your leter on life, I understand quite clealy. Yes, one must conquer oneself first, as you say. But after conquered, one must put oneself at large. Like water, and like wind, free yet not disordered, ruled yet spontaneous, one must be. One must learn everything in life or in Art., and must forget everything. One must go up to the top of the mountain, and must go down again, One must see the sky when one look at the sea.


明治41年(1908)7月20日 バーナード・リーチ宛書簡より 光太郎26歳

ロンドンで知り合い、この後、来日して陶芸家となるバーナード・リーチ宛書簡から。

『高村光太郎全集』でのこの部分の翻訳は以下の通りです。

人生について君が手紙に書いていることは、僕にもよくわかる。そう、君の言う通り人はまず自分に勝たなければならない。でもその後で自分を解放することが必要です。水のように、風のように、自由でしかし乱れず、理法の支配は受けるが、しかし自然でなければなりません。あらゆることを人生において、芸術を学び、そしてすべてを忘れること。頂に登り詰めたら、またもう一度山を下るのです。海をながめるときには、空も見なければならないのです。僕はそう信じます。

英文の方は、歌詞にでもできそうな一節ですね。

ご本人がコロナ感染のため、昨年12月に予定されていながら延期となった演奏会、仕切り直して行われます。

紀野洋孝テノール・リサイタル 延期公演

東京公演
 期 日 : 2023年2月23日(木・祝)
 会 場 : 東京オペラシティ リサイタルホール 東京都新宿区西新宿3-20-2
 時 間 : 18:30開場 19:00開演
 料 金 : 前売 一般 3,000円 学生 1,000円 当日 一般 3,500円 学生 1,500円

大分公演
 期 日 : 2023年3月6日(月)
 会 場 : iichiko音の泉ホール 大分県大分市高砂町2番33号 
 時 間 : 18:30開場 19:00開演
 料 金 : 前売 一般 3,000円 学生 1,000円 当日 一般 3,500円 学生 1,500円

出 演 : 紀野洋孝(テノール) 森裕子(ピアノ)
曲 目 : 
 F.P.トスティ:〈薔薇〉〈祈り〉〈理想の人〉
 山田耕筰:〈この道〉〈かやの木山の〉〈六騎〉〈城ヶ島の雨〉〈みぞれに寄する愛のうた〉
 別宮貞雄:歌曲集《智惠子抄(改訂新版)》

2022年12月18日、23日に開催予定でした、紀野洋孝 テノール・リサイタルの延期公演!
パワーアップして望む予定です!! みなさま、どうぞよろしくお願い致します! 今度こそは!!!!!!!!!! 応援のほどよろしくお願い致します!!
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博士号取得とCD“別宮貞雄作品集「Be」”の発売を記念して」ということだそうです。「CD“別宮貞雄作品集「Be」”」についてはこちら

政府によるコロナ感染症5類への引き下げ云々の可否はまた別として、たしかにコロナ禍、だいぶ落ち着いてきたようではありますね。まだ予断を許さない状況とは思われますが。そのため、このように延期となった公演等のリトライが行われています。また近くなりましたら詳しくご紹介しますが、昨年11月に開催予定だった、大阪大槻能楽堂さんでの「至高の華 ~舞と語り~」も、改めて3月に振り替え公演があるそうです。

こちらも近々告知いたしますが、当会主催の連翹忌の集い(4月2日(日))も、3年間の中止を経て、4年ぶりに開催する予定です。よろしくお願いいたします。

【折々のことば・光太郎】

何にせよ、生れて二十余年、日毎にあたらしき経験の妙味と、苦味とを嘗め居り、人間としての修養上にも、此上なき好機会と、ひそかに喜び居り候次第に候。

明治39年(1906)5月15日 東京美術学校校友会宛書簡より 光太郎24歳

海外留学に出て3ヶ月あまり、まさに「日毎にあたらしき経験」の連続だったのでしょう。「苦味」は人種差別の洗礼を受けたことなどを指すと思われます。光太郎もがっつりやり返しましたが(笑)。

クラシック系の演奏会情報です。横浜、広島それぞれで、加藤昌則氏作曲の「レモン哀歌」がプログラムに入っています。

藤木大地&みなとみらいクインテット マチネ(昼公演)

期 日 : 2023年2月16日(木)
会 場 : 横浜みなとみらいホール 小ホール 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-6
時 間 : 13:30開場 14:00開演
料 金 : 単独券 3,500円 夜公演との通し券 6,000円

昼と夜でメンバーチェンジ! 歌手藤木大地のもとに豪華なソリストが集い妙技を競う白熱のコンサート

男性がファルセット(裏声)によって女性の声域を歌う。それが、カウンターテナーです。世界を代表するカウンターテナー藤木大地と名手ぞろいのピアノ五重奏による室内楽コンサート。ソリストたちの輝く音色が藤木の柔らかな声と響き合う極上の1時間をお届けします。昼と夜のコンサートでは曲目も出演者も入れ替わります。ぜひ、2公演通してお楽しみください。

横浜みなとみらいホールという音響の優れた室内空間を活かし、濃密なソロリサイタルのような瞬間も、合奏の響きとともに透き通るようなうたが染み渡る瞬間も楽しめる魅力的な編成です。

出演者
 カウンターテナー 藤木大地  ヴァイオリン 成田達輝 周防亮介  ヴィオラ 川本嘉子
 チェロ 中木健二  ピアノ 松本和将

予定曲目
 シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op. 44より 第3楽章
 シューベルト:魔王 D 328
 マーラー:私はこの世に忘れられた
 ラフマニノフ:ヴォカリーズ Op. 34 No. 14
 J. S. バッハ:主よ、人の望みの喜びよ
 ヴュータン:アメリカの思い出《ヤンキー・ドゥードゥル》Op.17
 加藤昌則:レモン哀歌
 木下牧子:鴎
 モリコーネ:ネッラ・ファンタジア
 平井夏美:瑠璃色の地球
 村松崇継:いのちの歌
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昼夜2公演だそうですが、夜公演は編成も曲目も異なり、「レモン哀歌」は曲目に入っていません。

昼の部と同じ編成、ほぼ同じ曲目で、広島県三原市での公演も。

藤木大地&みなとみらいクインテット 「藤木大地&みなとみらいクインテット」ネットワーク・プロジェクト

期 日 : 2023年2月18日(土)
会 場 : 三原市芸術文化センター ポポロ 広島県三原市宮浦2丁目1-1
時 間 : 13:15開場 14:00開演
料 金 : 一般 3,800円(ポポロクラブ会員3,300円)  ペア(2枚)7,000円
      25歳以下 1,000円

出演者
 カウンターテナー 藤木大地  ヴァイオリン 成田達輝 周防亮介  ヴィオラ 川本嘉子
 チェロ 中木健二  ピアノ 松本和将

予定曲目
 シューマン/ピアノ五重奏曲 第3楽章
 シューベルト/魔王
 マーラー/私はこの世に忘れられた
 ラフマニノフ/ヴォカリーズ
 バッハ/主よ人の望みの喜びよ
 ブラームス/聖なる子守唄
 木下牧子/鴎
 モリコーネ/ネッラ・ファンタジア
 平井夏美/瑠璃色の地球
 村松崇継/いのちの歌
 神ともにいまして(讃美歌)
 加藤昌則/レモン哀歌  他
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ちなみに5/3新潟県新潟市、5/21奈良県大和高田市、8/6神奈川県横須賀市での公演も予定されているとのこと。「レモン哀歌」がプログラムにはいるかどうか、不明ですが。

ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

「子供連へ」みんな達者で勉強してゐるだらうね。日本国は此から万歳で、進歩する許りだ。みんなも盛んにやる可し。御父さんや御母さんに世話を焼かせてはいけない。 僕も勉強して今にみんなを驚かせるよ。待つておいで。

明治39年(1906)4月13日 高村光雲様一同宛書簡より 光太郎24歳

欧米留学最初の目的地、ニューヨークからの書簡。「光雲様一同」となっていますが、弟妹に宛てた内容です。この後、世界最先端の芸術に触れる中で、日本の芸術的後進性を嫌と云うほど思い知らされ、日本人であることを恥じ入るようになりますが、未だその境地には至っておらず、「日本国は此から万歳で、進歩する許り」などと書いています。

智恵子の故郷・福島二本松に、現在の二本松工業高校さんと安達東高校さんが統合して今春開校する二本松実業高校さん。

昨年十二月には新しい校歌の歌詞等が発表され、光太郎詩「あどけない話」(昭和3年=1928)由来の「ほんとの空に」の語が4番まですべての結句に使われることになりました。現在の二本松工業高校さん、安達東高校さん両校の生徒さんから校歌に入れてほしい言葉を募り、両校の先生方で作る校歌制作委員会が作詞されたとのことです。作曲は、福島ともゆかりの大友良英氏。神奈川ご出身の同氏ですが、10代の頃、福島市で過ごされ、福島県立福島高等学校さんを卒業されているそうです。
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先月末、4月の開校式で披露するため、大友氏御指導のもと、校歌のレコーディングが為されたことが報道されました。

地元紙『福島民友』さん。なぜか2件の記事が出ていました。全県版と中通り版というところでしょうか。残念ながらどちらにも「ほんとの空」の語は入っていませんでしたが。

大友良英さんが指導、新校歌を録音 4月開校の二本松実高

 二本松工高、安達東高の両校生徒らは31日、二本松市で、2校が統合して4月に開校する二本松実業高の校歌を録音した。
 録音には生徒34人と、作曲した福島市ゆかりの音楽家大友良英さん、大友さんの楽曲の録音を担当しているエンジニア中村茂樹さんが参加。生徒は大友さんの指導を受けながら力強い歌声を響かせた。
 参加した安達東3年の結城南海さんは「歌詞に学校の近くの名所や通学路が入っているので、後輩たちに情景を思い浮かべながら歌ってほしい」と話した。録音した校歌は4月の開校式で披露される。
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心に残る歌詞と曲調 新設二本松実高の校歌、生徒34人録音に参加

 1月31日に二本松市民会館で行われた二本松実高の校歌の録音では、統合する二本松工と安達東の両校生徒が一緒に新校歌を歌い交流した。
 歌詞は生徒から取り入れてほしい言葉を募り、両校の教員でつくる校歌制作委員会が作った。「光」や「創ろう」など前向きな言葉が登場し、未来に向けた明るい内容に仕上げた。作曲は福島市ゆかりの音楽家大友良英さんが手がけ、歌詞に合わせた明るいポップスのような曲調で、親しみやすく、歌いやすいメロディーにした。大友さんは「卒業後も心に残るメロディーだと思う」と話した。
 録音では、生徒34人が大友さんの指導の下、何度も大きな声で歌い上げた。参加した安達東1年の渡辺拓実さんは「安達東の校歌を歌えなくなるのは寂しいが、それ以上に新しい校歌を歌えることにわくわくする」と話し、二本松工2年の藤井まなかさんは「ずっと残る校歌の録音に参加できてうれしい。統合して新しい友達ができるのが楽しみ」と笑顔を見せた。
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愛される校歌として歌い継がれてほしいものです。

【折々のことば・光太郎】

出発の歳は御見送り被下難有存じ候。 太平洋の嵐と「ロツキー」山の雪を見て二月廿七日に無事紐育へ着きました。其日早速美術館へ参り聊か驚きました。

明治39年(1906)3月5日 川崎安宛書簡より 光太郎24歳

3年半にわたる海外留学、最初の目的地であるニューヨーク到着を知らせる手紙です。「美術館」はメトロポリタン美術館でしょうか。

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