カテゴリ: 音楽/演劇等

3月21日(火)、竹橋の東京国立近代美術館さんをあとに、銀座に向かいました。午後2時開演の「朝岡真木子歌曲コンサート第6回」拝聴のためです。

会場は王子ホールさん。昨秋開催された「えつ子とまき子のコンサート 2022秋」と同じでした。
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作曲家・朝岡真木子氏の歌曲作品を、7人の歌手の皆さんが歌われるというコンセプトで、基本、独唱ですが、二重唱あり、合唱ありと、飽きさせない構成になっていました。
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今回は「第6回」と冠されており、継続的に行うには、やはりアップデートが必要なのでしょう。初演の新作を含むプログラムでした。

歌詞は現役の詩人の皆様から提供を受けたものが多く、絵本作家としても活躍されているこわせたまみ氏、金子みすゞ顕彰でも名高い矢崎節夫氏など、作詞者の方々がほとんどいらしていまして、終演後に紹介されていました。詩の選択は書き下ろしなのか、朝岡氏が旧作からセレクトして使わせてもらっているのかまでは寡聞にして存じませんが。

というわけで、新作もあれば、二重唱や合唱なども盛り込まれていたため、歌い手さんたちはそれなりに練習が大変だったでしょう。それを言えば、ピアノは全て朝岡氏ご本人で、幕開けからカーテンコールまで出ずっぱり。そのあたりの大変さをお客様に気取られないようにされるあたり、プロですね。

で、プログラム中に、組曲「智惠子抄」から2曲、「千鳥と遊ぶ智恵子」「値ひがたき智恵子」。こちらは最近、メゾソプラノの清水邦子氏の持ち歌的な感じになっており、やはり清水氏の歌唱でした。

過日、ご紹介いたしましたが、清水氏、組曲「智惠子抄」CDをリリースされ、公的にはこの日が発売日でした。そこで、受付でコンサート自体のプログラムとともにフライヤーも配付されていました。
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清水氏と親しい、映画監督の水谷俊之氏(一昨年にNHK BSプレミアムさんで放映された「プレミアムドラマ山女日記3 #3 あどけない空・安達太良山」の監督もなさった方)、それから当方が書いたライナーノートの抜粋も印刷されています。恐縮至極。

オンライン販売も為されていますし、フライヤー裏面はFAXでの注文書になっていまして、必要な方は下記画像を印刷してお使い下さい。
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PXL_20230321_060411330開演前、第1部と第2部の間の休憩時間、それから終演後、ロビーに物販コーナーが設けられ、このCDも並びました。

わずかながら制作に協力させていただいた身としましては、売れ行き等気にかかるもの。少し離れた場所からチラ見しておりました(笑)。そこそこ売れていたようです。ただ、他の歌手の方がリリースされたCDも多数並んでいたため、「智惠子抄」のみが飛ぶように売れるというわけにはいかなかったようですが。「智惠子抄」を買われた方には「えらい!」と、心の中で賛辞を送らせていただきました(笑)。

日比谷松本楼さんで4月2日(日)開催の第67回連翹忌の集い会場内でCDの販売も致しますし、朝岡氏、清水氏には「智惠子抄」から抜粋で演奏していただく予定です。

ご参加なさる方、お楽しみに。また、これから参加したいという方、まだ受付中です。コメント欄(非公開設定可)からお申し込み下さい。

【折々のことば・光太郎】

濱田葆光氏作画展覧会 自二月十一日 至二月二十日
濱田葆光氏は、所謂「ヸルヂニテエ、デモオシヨン」を蔵する画家にして、熱心なる自然の真の探求者に御座候。今回、品川海岸の研究画を主として、氏の油画十数点の展覧会を弊堂に於て相催し候間幸に御抂駕御一覧の程偏に願上候 神田区淡路町一丁目一番地 琅玕洞

明治44年(1911)2月10日 水野葉舟宛書簡より 光太郎29歳

葉舟宛、というより広く送られた案内状と推定されます。

琅玕洞」は、前年、光太郎が開店した画廊。日本の画廊の中では最初期のものです。名目上の店主は、実弟の道利でした。ここでは正宗得三郎、柳敬助、斎藤与里、濱田葆光ら親しかった新進美術家の個展をたびたび開きました。濱田葆光は太平洋画会研究所に学び、中村不折、満谷国四郎に師事した画家です。「ヸルヂニテエ、デモオシヨン」は、「無垢な凄み」とでもいった感じでしょう。
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ニューリリースのCDです。一昨日、タワーレコードさん他のサイトに情報がアップされました。ちなみに旧字体の「惠」の字が使われているのは、制作サイドのこだわりなのでしょう。

清水邦子が歌う 組曲『智惠子抄』

2023年3月21日 ムジカフエンテ000
定価2,000円+税

詩:高村光太郎
作曲/ピアノ:朝岡真木子
歌唱:清水邦子

収録曲
 1 人に(6:02)
 2 あどけない話(3:06)
 3 千鳥と遊ぶ智惠子(3:59)
 4 値(あ)ひがたき智惠子(2:59)
 5 間奏曲 ~祈り~(4:19)
 6 レモン哀歌(7:19)

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作曲家・朝岡真木子氏が令和元年(2019)に作曲された組曲「智惠子抄」のみを収めたCDです。

昨年、メゾソプラノの清水邦子氏が旧東京音楽学校奏楽堂で開催された「清水邦子リサイタル 清水邦子が贈る朝岡真木子の世界」で全曲を歌われ、「ぜひCD化していただきたいものです」と申し上げたところ、とんとん拍子に実現してしまいました(笑)。その行動力、バイタリティーには脱帽です。と言っても、決してやっつけ仕事ではなく、清水氏の歌唱、朝岡氏のピアノ、ともに素晴らしい演奏ですし、ジャケット的なブックレットは全15ページ。こちらもハイクオリティです。

清水氏、どっぷりと「智恵子抄」の世界にはまられ、リサイタル後の11月には智恵子の故郷・福島二本松の智恵子生家/智恵子記念館などをご訪問、今回のブックレットにはその折の写真も多数掲載されています。
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001ちょうど生家二階の特別公開中でしたし、智恵子の「幻の花嫁衣装」の展示も為されている時でした。

その際に同行された、映画監督の水谷俊之氏が、今回のCDのライナーノートを書かれています。題して「三人の女が生み出した劇的なるもの」。「三人」とはもちろん、清水氏、朝岡氏、そして智恵子ですね。ちなみに水谷氏、一昨年にNHK BSプレミアムさんで放映された「プレミアムドラマ山女日記3 #3 あどけない空・安達太良山」の監督もなさっていて、「智恵子抄」とは浅からぬご縁をお持ちです。

ライナーノートと言えば、当方も書かせていただいております。CDの帯には当方執筆のライナーノートの抜粋も印刷して下さいました。恐縮至極です。

最上部にリンクを貼りましたが、オンライン販売が為されていますし、4月2日(日)に日比谷松本楼さんで開催予定の第67回連翹忌の集いにご参加下さる方は、会場内で販売しますので、そちらでお求め下さい。また、連翹忌の集いでは、清水氏、朝岡氏のお二人直々に、組曲から抜粋での演奏をお願いしてあります。ご参加下さる方、お楽しみに。

それに先だって、やはり抜粋での演奏が為される「朝岡真木子歌曲コンサート第6回」が、3月21日(火)、銀座の王子ホールさんで開催されます。その際にもCDの販売があるでしょう。

さらに、組曲「智惠子抄」全曲が収められた楽譜集『朝岡真木子歌曲集2』も刊行されています。併せてお買い求め下さい。

【折々のことば・光太郎】

祝入営  明治43年(1910)8月10日 長田秀雄宛書簡より 光太郎28歳


005親友・水野葉舟との連名で送った葉書。絵は光太郎でしょう。

長田秀雄は詩人、劇作家、小説家。光太郎も中心メンバーだった芸術運動「パンの会」のやはり主要な一人でした。

「入営」は徴兵によるものです。この年11月、「パンの会」の大会が日本橋大伝馬町の三州屋で開かれ、その際、画像にあるような幟が掲げられ、さらに光太郎がその周りに黒い縁取りをしたところ、訃報の黒枠のように見えました。そこに居合わせた『萬朝報』の記者が「けしからん」と翌朝の記事にし、今で言う「炎上」状態に。

ちょうど幸徳秋水らによるいわゆる「大逆事件」のあった時期で、当局も過敏に反応していましたし、「パンの会」自体、社会主義者の集まりで、「麺麭(パン)」を要求する団体かと警戒されていたそうです。

「智恵子抄」がらみの演奏会等情報を2件。

まずは都内から。

朝岡真木子歌曲コンサート第6回

期 日 : 2023年3月21日(火・祝)
会 場 : 王子ホール 東京都中央区銀座4-7-5
時 間 : 14:00開演
料 金 : 全席自由 4,500円

曲 目 
 「春を待つ歌」(新作初演) 詩:こわせ・たまみ 
 「わたしは魔女」( 〃 ) 詩:こわせ・たまみ
 「わたしが一番きれいだったとき」「吹抜保」 詩:茨木のり子
 「そのとき十八の春」「梅干し」 詩:岡崎カズヱ
 「きつねのよめいり」 詩:野上彰
 「春満開」 詩:柏木隆雄
 「海の宵待草」 詩:こわせ・たまみ
 「さくらと はなびら」 詩:まど・みちお
 組曲〈あなたへ〉より「あこがれ」「あなたへ」「夢とおく」 詩:星乃ミミナ
 組曲〈智惠子抄〉より「千鳥と遊ぶ智恵子」「値ひがたき智恵子」 詩:高村光太郎
 他

出 演
 木内弘子(ソプラノ) 黒川京子(ソプラノ) 品田昭子(ソプラノ)
 福成紀美子(ソプラノ) 前澤悦子(ソプラノ) 清水邦子(メゾ・ソプラノ)
 馬場眞二(バリトン) 朝岡真木子(作曲・ピアノ)

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作曲家・朝岡真木子氏の歌曲作品のコンサートです。

昨年9月、旧東京音楽学校奏楽堂さんにおいて行われた「清水邦子リサイタル 清水邦子が贈る朝岡真木子の世界」で演奏された「組曲 智惠子抄」から抜粋で「千鳥と遊ぶ智恵子」と「値ひがたき智恵子」が演奏されます。歌唱は同じく清水邦子氏、ピアノは朝岡氏ご本人です。

昨年11月には、今回と同じ王子ホールさんで「えつ子とまき子のコンサート 2022秋」が開催され、その際にはやはり清水氏が「組曲 智惠子抄」から抜粋の「あどけない話」と「レモン哀歌」を歌われました。

清水氏、すっかり「智恵子抄」の世界に嵌ってしまわれ、「組曲 智惠子抄」のみを収めたCDをリリースされます。ちなみに当方、ライナーノートを書かせていただきました。また改めてご紹介いたしますが、今回のコンサート会場で販売されるようです。また、日比谷松本楼さんで行う4月2日(日)の第67回連翹忌の集いにも朝岡氏、清水氏がご参加下さり、「組曲 智惠子抄」から抜粋で演奏をしていただきますし、会場内でCDの販売も行います。

もう1件。こちらはサブタイトルに光太郎詩「あどけない話」由来の「ほんとうの空」(本当は「ほんとの空」ですが……)の語を冠してくださっています。

第16回 声楽アンサンブルコンテスト全国大会 - 感動の歌声 響け、ほんとうの空に -

期 日 : 2023年3月16日(木)~19日(日)
      3月16日(木)中学校部門 3月17日(金)高等学校部門
      3月18日(土)小学生・ジュニア部門、一般部門
      3月19日(日)各部門金賞受賞団体による本選、表彰式
会 場 : ふくしん夢の音楽堂(福島市音楽堂) 福島県福島市入江町1-1
時 間 : 各日、開場9:30 開演10:00
料 金 : 各部門予選  前売り 1,500円 当日 2,000円 
      本選     前売り 2,500円 当日 3,000円
      4日間通し券 前売りのみ 8,000円

このコンテストは、音楽を創りあげるもっとも基礎となる要素「アンサンブル」に焦点をあて、全国からトップレベルの声楽アンサンブルグループが福島に集い、日本の合唱レベルの向上を図るとともに、音楽文化の振興発展に寄与し、歌うことの楽しさを全国に発信するコンテストです。
青く澄みわたる“ふくしまの空”に、皆さんの心のハーモニーを響かせてください。
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この大会、平成20年(2008)から行われているものですが、平成23年(2011)の第3回大会は東日本大震災のため中止。復活した翌年の第4回大会から、サブタイトルに復興の思いも込めてでしょう、「感動の歌声 響け、ほんとうの空に。」と冠して下さるようになりました。

その後、令和元年(2019)に第12回大会までは順調に開催。だんだん規模も大きくなり、海外からの参加やゲスト団体によるスペシャルコンサート、参加団体での交流会なども催されていました。ところが令和2年(2020)の第13回大会はコロナ禍のため中止、令和3年(2021)の第14回大会は無観客で規模を縮小して実施、昨年の第15回大会は、またもや直前に福島で起こった地震のため中止……。紆余曲折を経て今回に至ります。

コロナ禍からの復興という意味合いも含め、「感動の歌声 響け、ほんとうの空に。」を実現させてほしいものです。

【折々のことば・光太郎】

驚きて走せ帰りたり。今より信州に遺骨を訪ふつもり、そんな事でもせずては荻原君の死んだのが本当に思へず、奈良の感興もめちやめちやなり


明治43年(1910)4月25日 水野葉舟宛書簡より 光太郎28歳

光太郎の親友・碌山荻原守衛の死はこの年4月22日。光太郎はこの時、奈良に旅行中でした。もう一人の親友、水野葉舟も後から奈良で合流する予定でした。

その葉舟の回想「日記の中より(故荻原守衛氏に対する記憶)」から。

 明治四十三年四月二十三日。この日は自分たちにとつて、記憶すべき日となつた。荻原氏の逝かれたのは、後で聞いたのではたしか其の前日であつたと思ふが、自分が此の意外な報道を見たのは此日であつた。
 この朝、自分は平常のやうに目を覚した。この頃は自分の心の中(うち)に、奈良旅行の計画と、その為めに順序を立てゝある仕事とで、占領され尽して居た。
(略)
 この旅に一緒に行かうと約束をした高村光太郎君は、一週間も前に、既に東京を発つてしまつた。自分はたゞ自分の仕事の上で気が急けるばかりで、早くこの旅に出たいといふばかりで、その朝も眠りから覚めたのであつた。
 で、起きると枕元に置いてある新聞を取つて広げて見た。すると荻原守衛氏逝くと書いた標題が目に入(い)つた。
 自分はまだ寝起きの極めてぼんやりした心持に、尚ほ微かに茫然とした。実に思はざる事だ!……
 暫くその標題を見詰めて居たが「偽だ!」と言ふやうな心持が、反抗的に胸に起つた。急いで、ありたけの新聞を広げて見たが、どれにも、明かに氏の逝かれたと言ふ事が書かれてあつた。とも角この三四十時間前に、此一芸術家が此世から去たと言ふ事が事実であつたらしい。
 自分はすぐ床を出た。そして書斎に入つて来ると、前夜までに仕かけた仕事が、ちやんと机の上に置いてある、それを見ながら、その前に坐ると、たゞ寞然と考へた。「荻原氏が死んだ!」と、はてしもなく考へた。
 先づ、第一に胸に起つたのは、奈良に行つて居る高村君はこの報道を聞くとすぐ引き返して来るだらう。吾々の奈良行きもこれで駄目だ……と言ふ事だつた。この考へがすぐ胸に来た。続いて、心が次第に氏の死なれたと言ふ事に集つて来た。
 道を歩いて居る人が倒れた。今迄、自分の目の前に確実(たしか)な足どりで道を歩いて居た人が、ばたりと倒れた。それと同時に、その人の思想も、手も、口も力が落ちた。自分は今、此偶然で、且驚く可き事実を眼前に見て居る。心が漸く沈んで深い暗いものに対して居るやうに思はれて来た。


予期せぬ急逝の報に接した場合の混乱がよく表されていますね。自分の生活は昨日までとまったく同じ延長線上にあるのに、他人の身の上に理不尽とも思える死が突然襲ってくる、という……。

当方も、1月に突然母を亡くしまして、同じような感懐を持ちました。

3月13日(月)は、光太郎の誕生日です。存命であれば満で140歳となります。

だから、というわけでもないのでしょうが、その日とその翌日に、「智恵子抄」系の朗読公演。

まずは大阪から。昨秋上演予定だったのが、関係者にコロナ感染が出たため、延期となっていたものです。

至高の華 ~舞と語り~<振替公演>

期 日 : 2023年3月13日(月)
会 場 : 大槻能楽堂 大阪府大阪市中央区上町A-7
時 間 : 18:30~
料 金 : S席 8,000円 A席 6,000円

演 目 : 語り「初代 梅若実」 桂南光(新作落語 本邦初演)
      舞踊詩劇「智恵子抄」 梅若実桜雪/藤間勘十郎/高橋惠子 ほか
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「舞踊詩劇 智恵子抄」。昭和32年(1957)初演の新作能「智恵子抄」をベースに、人間国宝の能楽師・梅若実桜雪氏と舞踊家の藤間勘十郎氏が光太郎智恵子として舞われ、女優の高橋惠子さんが朗読なさるそうです。

平成18年(2006)以来、何度か上演されたそうですが、当方、寡聞にして存じませんでした。今回は令和初の公演、「さらに進化した智恵子抄」だそうで。

続いて北海道札幌から。

マンスリー朗読ライブ VOL.26 智恵子抄を語る

期 日 : 2023年3月14日(火)
会 場 : 岩本珈琲 札幌市白石区栄通18丁目4-1 アン・ロワイヤル 1F
時 間 : 19:30~
料 金 : 1,800円(ワンドリンク付)

出 演 : 石橋玲(朗読)  つくね(音楽)
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せつなくも愛情たっぷりの「智恵子抄」から数篇をメドレーでお届けします✨」だそうです。

それぞれお近くの方(遠くの方も)、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

わざわざ例会の御案内にあづかりありが度く存上候。当日遺憾ながら約束事の為め欠席仕るべくこの段御返事まで


明治42年(1909)12月3日 森鷗外宛書簡より 光太郎27歳

例会の御案内」は、鷗外が自宅で開いていた観潮楼歌会のそれです。光太郎、一度だけ参加しましたが、その後は逃げ回っていました(笑)。同趣旨の断りの書簡があと三通、確認できています。

光太郎、東京美術学校時代の恩師でもある鷗外に対しては「敬して遠ざける」的な部分があり、それが後の「サーベルさせば鷗外だ」事件にもつながります。

この年8月に受けた、留学のため先延ばしにしてきた徴兵検査は、軍医総監だった鷗外が裏で手を回し、徴兵免除となったのに、です。

昨日も都内に出ておりました。行く先は初台の東京オペラシティさん。こちらのリサイタルホールにて、テノール歌手紀野洋孝氏のテノール・リサイタルを拝聴。
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ご本人がコロナ感染のため、昨年12月に予定されていながら延期となったもの。こういうと何ですが、逆に延期になったため日程の都合がつきまして、伺った次第です。ネットでチケットの予約をさせていただき、受付で当日精算しようとしたところ、「ご招待」扱いになっていて恐縮してしまいました。

前半はイタリアのトスティ、そして山田耕筰。
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久々にテノールの方の独唱を拝聴しましたが、やはり生で聴く演奏はいいですね。会場も大ホールではなく、さりとてこぢんまりというわけでもなく、適度な広さで、お一人で歌われるには丁度良いと思われました。あまりに狭い会場だと声や伴奏だけがストレートに飛んできますが、適正な広さのホールですと、しっかり残響がありますし、何というか、空間全体がある種の楽器のような感じがします。もちろん、紀野氏の確かな歌唱力あってのことですが。

後半が故・別宮貞雄氏作曲の「歌曲集 智恵子抄(改訂新版)」全9曲。
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楽譜を以前に入手、それを見ながらCDでは拝聴したことがありましたが、生演奏で聴くのは初めてで、興味深く感じました。

今回の演奏会パンフレットに引用されていた別宮氏の言葉によれば「高村光太郎のこの詩集は私の青春の愛読書のひとつ、いつかは作曲したいと思っていたのだが、周知のように、各篇長大で詩句も長く、扱いかねていた。しかしオペラ作曲の経験をへて、なんとかできるのではないかとおもうにいたり、一九八二年夏、三ヶ月ばかりかけて作った」とのこと。なるほど、確かにオペラ的要素が色濃く感じられました。

それはまず構成の妙。第1曲「人に」(「いやなんです あなたのいつてしまふのが――」で始まる「智恵子抄」巻頭の詩、大正元年(1912)の作)から第4曲「晩餐」までは、光太郎智恵子恋愛時代の詩。いわばまだ幸福だった時代。第5曲「あどけない話」(「智恵子は東京に空が無いといふ」のフレーズで有名な昭和3年(1928)の作)がターニングポイントとなって、後半は心を病んだ智恵子と、その死が謳われます。まぁ、この点は「組曲」として作曲されている多くの方々が同じようなことを考えられてはいるのでしょうが、中には後から後からどんどん曲を追加、というスタイルでやられている方もいらっしゃるもので……。

それから、昨年リリースされた紀野氏のCDのライナーノートに「オペラ作曲で得た、能の謡などを応用して日本語と西洋音楽を融合させる技術を用いた」とあり、なるほど、確かに「和」のテイストもふんだんに盛られているな、と感じました。

そういったもろもろを、紀野氏があますところなく表現され、聴いている方としては、至福の時間でした。

終演後のMCで、紀野氏、「日本人として日本語の歌曲をしっかり歌えるようでありたい」的なお話をなさいました。実は外国語の方が歌いやすかったりするもので、子音が立たず、アクセント等も平板な日本語はドラマチックな表現には不向きです。そこで昨今のJ-POP系の皆さんは、あえてそうしているのでしょう、鼻濁音という美しい日本語の伝統を捨て、がっつりと濁音の「ガギグゲゴ」。まぁ、これは音楽に限らずで、テレビ等、アナウンサー諸氏までもで、憂うべき事態だと思っています。もっとも、広い日本国内には鼻濁音というものがほぼ存在しない地域もあるそうですが……。

さて、紀野氏のリサイタル、3月6日(月)には紀野氏の故郷、大分での公演もあるそうです。お近くの方、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

多分四月頃スペインへ参りませう。グレコとヹラスケスとゴヤを見に参るのです。和蘭太や白耳義や独乙へは多分参りますまい。伊太利へも参れますまい。希朧も同様、埃及もポチポチ。

明治42年(1909)1月26日 南薫造宛書簡より 光太郎27歳

ロンドンで一緒だった留学仲間・南薫造にあてたパリからの書簡の一節。光太郎、スペイン旅行を企てていたことが記されています。しかし、これは実現せず、逆に「参れますまい」と書いているイタリアへ約1ヶ月の旅行に出、ルネサンス期の逸品の数々を眼にします。

埃及(エジプト)は、おそらく親友・荻原守衛が盛んにそのプリミティブな美を褒めそやしていた影響で興味を持ったものと思われます。光太郎、晩年には平凡社刊行の『世界美術全集』のエジプトの巻で実に的確かつ詳細な解説を書いています。

昨日は都内に出ておりました。

まずは六本木の国立新美術館さんへ。お世話になっている書家の菊地雪渓氏が出品なさっていた「東京書作展 選抜作家展2023」を拝見に。
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いろいろバタバタしていまして、最終日の観覧となってしまいました。
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菊地氏、たびたび光太郎詩を題材にされた作品を書かれ、各種展覧会で内閣総理大臣賞等を獲得なさったりしています。


今回の作は光太郎ではなく、漢詩。蘇軾の「漁父」だそうで。
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相変わらずお見事でした。

直接存じ上げない方ですが、「智恵子抄」所収の光太郎詩「梅酒」(昭和15年=1940)を書かれて出品なさった方も。
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ありがたし。

続いて、品川区大井町へ。

平成30年(2018)に開催された、花巻高村光太郎記念館さんでの企画展「光太郎と花巻電鉄」に際し、光太郎が彼の地にいた頃のジオラマ制作をお願いした石井彰英氏がミュージシャンでもあらせられ、お仲間の方々とご自宅でコンサートを開かれるということで参上しました。

ジオラマは花巻高村光太郎記念館さんで現在も展示中。
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氏のご自宅に伺う前、寄り道を。

大井町といえば、智恵子終焉の地、ゼームス坂病院があった場所。跡地には「レモン哀歌」(昭和14年=1939)詩碑が建っています。当方、何度も訪れた場所ですが、久しぶりに行ってみました。
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大井町駅方面からゼームス坂を下り、下りきる少し前を左に。
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ゼームス坂の由来を記した碑。

そしてその向かいに「レモン哀歌」詩碑。23区内では唯一の光太郎詩碑です。
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いつもレモンが供えられています。多謝。
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この碑、智恵子の推定身長と同じ高さ(150㌢ほど)だそうで。
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右上は、過日発見した光太郎智恵子の立ち姿写真です。智恵子が小柄だったことがよくわかります。

その後、石井氏邸に向かう道すがら、「お江戸鎧せんべい岩本米菓」さんへ。こちらでは智恵子にちなみ、「品川浪漫 レモン愛菓」というおかきを製造販売して下さっていますので、それをゲットしようと思いまして。
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しかし、残念ながら日曜定休でした。
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いずれリベンジを、と心に誓いました(笑)。

ちなみにすぐ近くでは、早咲きの桜もちらほら。
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つい4日前、マイナス9℃の世界にいたのが嘘のようで(笑)。

そして石井氏邸に到着、コンサートを拝聴。
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石井氏が制作された「高村光太郎ジオラマDVD」で、音楽やナレーションを担当なさった方々も多数ご出演。
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石井氏、人脈の広い方で、かの長嶋茂雄氏やファイティング原田氏などともご昵懇ですし、この日聴きにいらした方々も、一流レストランのシェフ氏、国民的アイドルのお母さま、「モンスター」と称されているボクシング選手の関係者の方などなど、実に多士済々でした。

最初の書道展の件を含め、皆様方の今後のさらなるご活躍を祈念いたします。

【折々のことば・光太郎】

About what you write in your leter on life, I understand quite clealy. Yes, one must conquer oneself first, as you say. But after conquered, one must put oneself at large. Like water, and like wind, free yet not disordered, ruled yet spontaneous, one must be. One must learn everything in life or in Art., and must forget everything. One must go up to the top of the mountain, and must go down again, One must see the sky when one look at the sea.


明治41年(1908)7月20日 バーナード・リーチ宛書簡より 光太郎26歳

ロンドンで知り合い、この後、来日して陶芸家となるバーナード・リーチ宛書簡から。

『高村光太郎全集』でのこの部分の翻訳は以下の通りです。

人生について君が手紙に書いていることは、僕にもよくわかる。そう、君の言う通り人はまず自分に勝たなければならない。でもその後で自分を解放することが必要です。水のように、風のように、自由でしかし乱れず、理法の支配は受けるが、しかし自然でなければなりません。あらゆることを人生において、芸術を学び、そしてすべてを忘れること。頂に登り詰めたら、またもう一度山を下るのです。海をながめるときには、空も見なければならないのです。僕はそう信じます。

英文の方は、歌詞にでもできそうな一節ですね。

ご本人がコロナ感染のため、昨年12月に予定されていながら延期となった演奏会、仕切り直して行われます。

紀野洋孝テノール・リサイタル 延期公演

東京公演
 期 日 : 2023年2月23日(木・祝)
 会 場 : 東京オペラシティ リサイタルホール 東京都新宿区西新宿3-20-2
 時 間 : 18:30開場 19:00開演
 料 金 : 前売 一般 3,000円 学生 1,000円 当日 一般 3,500円 学生 1,500円

大分公演
 期 日 : 2023年3月6日(月)
 会 場 : iichiko音の泉ホール 大分県大分市高砂町2番33号 
 時 間 : 18:30開場 19:00開演
 料 金 : 前売 一般 3,000円 学生 1,000円 当日 一般 3,500円 学生 1,500円

出 演 : 紀野洋孝(テノール) 森裕子(ピアノ)
曲 目 : 
 F.P.トスティ:〈薔薇〉〈祈り〉〈理想の人〉
 山田耕筰:〈この道〉〈かやの木山の〉〈六騎〉〈城ヶ島の雨〉〈みぞれに寄する愛のうた〉
 別宮貞雄:歌曲集《智惠子抄(改訂新版)》

2022年12月18日、23日に開催予定でした、紀野洋孝 テノール・リサイタルの延期公演!
パワーアップして望む予定です!! みなさま、どうぞよろしくお願い致します! 今度こそは!!!!!!!!!! 応援のほどよろしくお願い致します!!
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博士号取得とCD“別宮貞雄作品集「Be」”の発売を記念して」ということだそうです。「CD“別宮貞雄作品集「Be」”」についてはこちら

政府によるコロナ感染症5類への引き下げ云々の可否はまた別として、たしかにコロナ禍、だいぶ落ち着いてきたようではありますね。まだ予断を許さない状況とは思われますが。そのため、このように延期となった公演等のリトライが行われています。また近くなりましたら詳しくご紹介しますが、昨年11月に開催予定だった、大阪大槻能楽堂さんでの「至高の華 ~舞と語り~」も、改めて3月に振り替え公演があるそうです。

こちらも近々告知いたしますが、当会主催の連翹忌の集い(4月2日(日))も、3年間の中止を経て、4年ぶりに開催する予定です。よろしくお願いいたします。

【折々のことば・光太郎】

何にせよ、生れて二十余年、日毎にあたらしき経験の妙味と、苦味とを嘗め居り、人間としての修養上にも、此上なき好機会と、ひそかに喜び居り候次第に候。

明治39年(1906)5月15日 東京美術学校校友会宛書簡より 光太郎24歳

海外留学に出て3ヶ月あまり、まさに「日毎にあたらしき経験」の連続だったのでしょう。「苦味」は人種差別の洗礼を受けたことなどを指すと思われます。光太郎もがっつりやり返しましたが(笑)。

クラシック系の演奏会情報です。横浜、広島それぞれで、加藤昌則氏作曲の「レモン哀歌」がプログラムに入っています。

藤木大地&みなとみらいクインテット マチネ(昼公演)

期 日 : 2023年2月16日(木)
会 場 : 横浜みなとみらいホール 小ホール 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-6
時 間 : 13:30開場 14:00開演
料 金 : 単独券 3,500円 夜公演との通し券 6,000円

昼と夜でメンバーチェンジ! 歌手藤木大地のもとに豪華なソリストが集い妙技を競う白熱のコンサート

男性がファルセット(裏声)によって女性の声域を歌う。それが、カウンターテナーです。世界を代表するカウンターテナー藤木大地と名手ぞろいのピアノ五重奏による室内楽コンサート。ソリストたちの輝く音色が藤木の柔らかな声と響き合う極上の1時間をお届けします。昼と夜のコンサートでは曲目も出演者も入れ替わります。ぜひ、2公演通してお楽しみください。

横浜みなとみらいホールという音響の優れた室内空間を活かし、濃密なソロリサイタルのような瞬間も、合奏の響きとともに透き通るようなうたが染み渡る瞬間も楽しめる魅力的な編成です。

出演者
 カウンターテナー 藤木大地  ヴァイオリン 成田達輝 周防亮介  ヴィオラ 川本嘉子
 チェロ 中木健二  ピアノ 松本和将

予定曲目
 シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op. 44より 第3楽章
 シューベルト:魔王 D 328
 マーラー:私はこの世に忘れられた
 ラフマニノフ:ヴォカリーズ Op. 34 No. 14
 J. S. バッハ:主よ、人の望みの喜びよ
 ヴュータン:アメリカの思い出《ヤンキー・ドゥードゥル》Op.17
 加藤昌則:レモン哀歌
 木下牧子:鴎
 モリコーネ:ネッラ・ファンタジア
 平井夏美:瑠璃色の地球
 村松崇継:いのちの歌
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昼夜2公演だそうですが、夜公演は編成も曲目も異なり、「レモン哀歌」は曲目に入っていません。

昼の部と同じ編成、ほぼ同じ曲目で、広島県三原市での公演も。

藤木大地&みなとみらいクインテット 「藤木大地&みなとみらいクインテット」ネットワーク・プロジェクト

期 日 : 2023年2月18日(土)
会 場 : 三原市芸術文化センター ポポロ 広島県三原市宮浦2丁目1-1
時 間 : 13:15開場 14:00開演
料 金 : 一般 3,800円(ポポロクラブ会員3,300円)  ペア(2枚)7,000円
      25歳以下 1,000円

出演者
 カウンターテナー 藤木大地  ヴァイオリン 成田達輝 周防亮介  ヴィオラ 川本嘉子
 チェロ 中木健二  ピアノ 松本和将

予定曲目
 シューマン/ピアノ五重奏曲 第3楽章
 シューベルト/魔王
 マーラー/私はこの世に忘れられた
 ラフマニノフ/ヴォカリーズ
 バッハ/主よ人の望みの喜びよ
 ブラームス/聖なる子守唄
 木下牧子/鴎
 モリコーネ/ネッラ・ファンタジア
 平井夏美/瑠璃色の地球
 村松崇継/いのちの歌
 神ともにいまして(讃美歌)
 加藤昌則/レモン哀歌  他
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ちなみに5/3新潟県新潟市、5/21奈良県大和高田市、8/6神奈川県横須賀市での公演も予定されているとのこと。「レモン哀歌」がプログラムにはいるかどうか、不明ですが。

ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

「子供連へ」みんな達者で勉強してゐるだらうね。日本国は此から万歳で、進歩する許りだ。みんなも盛んにやる可し。御父さんや御母さんに世話を焼かせてはいけない。 僕も勉強して今にみんなを驚かせるよ。待つておいで。

明治39年(1906)4月13日 高村光雲様一同宛書簡より 光太郎24歳

欧米留学最初の目的地、ニューヨークからの書簡。「光雲様一同」となっていますが、弟妹に宛てた内容です。この後、世界最先端の芸術に触れる中で、日本の芸術的後進性を嫌と云うほど思い知らされ、日本人であることを恥じ入るようになりますが、未だその境地には至っておらず、「日本国は此から万歳で、進歩する許り」などと書いています。

智恵子の故郷・福島二本松に、現在の二本松工業高校さんと安達東高校さんが統合して今春開校する二本松実業高校さん。

昨年十二月には新しい校歌の歌詞等が発表され、光太郎詩「あどけない話」(昭和3年=1928)由来の「ほんとの空に」の語が4番まですべての結句に使われることになりました。現在の二本松工業高校さん、安達東高校さん両校の生徒さんから校歌に入れてほしい言葉を募り、両校の先生方で作る校歌制作委員会が作詞されたとのことです。作曲は、福島ともゆかりの大友良英氏。神奈川ご出身の同氏ですが、10代の頃、福島市で過ごされ、福島県立福島高等学校さんを卒業されているそうです。
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先月末、4月の開校式で披露するため、大友氏御指導のもと、校歌のレコーディングが為されたことが報道されました。

地元紙『福島民友』さん。なぜか2件の記事が出ていました。全県版と中通り版というところでしょうか。残念ながらどちらにも「ほんとの空」の語は入っていませんでしたが。

大友良英さんが指導、新校歌を録音 4月開校の二本松実高

 二本松工高、安達東高の両校生徒らは31日、二本松市で、2校が統合して4月に開校する二本松実業高の校歌を録音した。
 録音には生徒34人と、作曲した福島市ゆかりの音楽家大友良英さん、大友さんの楽曲の録音を担当しているエンジニア中村茂樹さんが参加。生徒は大友さんの指導を受けながら力強い歌声を響かせた。
 参加した安達東3年の結城南海さんは「歌詞に学校の近くの名所や通学路が入っているので、後輩たちに情景を思い浮かべながら歌ってほしい」と話した。録音した校歌は4月の開校式で披露される。
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心に残る歌詞と曲調 新設二本松実高の校歌、生徒34人録音に参加

 1月31日に二本松市民会館で行われた二本松実高の校歌の録音では、統合する二本松工と安達東の両校生徒が一緒に新校歌を歌い交流した。
 歌詞は生徒から取り入れてほしい言葉を募り、両校の教員でつくる校歌制作委員会が作った。「光」や「創ろう」など前向きな言葉が登場し、未来に向けた明るい内容に仕上げた。作曲は福島市ゆかりの音楽家大友良英さんが手がけ、歌詞に合わせた明るいポップスのような曲調で、親しみやすく、歌いやすいメロディーにした。大友さんは「卒業後も心に残るメロディーだと思う」と話した。
 録音では、生徒34人が大友さんの指導の下、何度も大きな声で歌い上げた。参加した安達東1年の渡辺拓実さんは「安達東の校歌を歌えなくなるのは寂しいが、それ以上に新しい校歌を歌えることにわくわくする」と話し、二本松工2年の藤井まなかさんは「ずっと残る校歌の録音に参加できてうれしい。統合して新しい友達ができるのが楽しみ」と笑顔を見せた。
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愛される校歌として歌い継がれてほしいものです。

【折々のことば・光太郎】

出発の歳は御見送り被下難有存じ候。 太平洋の嵐と「ロツキー」山の雪を見て二月廿七日に無事紐育へ着きました。其日早速美術館へ参り聊か驚きました。

明治39年(1906)3月5日 川崎安宛書簡より 光太郎24歳

3年半にわたる海外留学、最初の目的地であるニューヨーク到着を知らせる手紙です。「美術館」はメトロポリタン美術館でしょうか。

横浜から能楽の公演情報です。

企画公演「能役者 鵜澤久」

期 日 : 2023年2月5日(日)
会 場 : 横浜能楽堂 神奈川県横浜市西区紅葉ケ丘27-2
時 間 : 14:00~
料 金 : S席7,000円 A席 6,000円 B席 5,000円 全席指定

能役者・鵜澤久。女流という枠にとどまらず、確かな技術と曲に対する深い洞察力で、古典作品の上演だけでなく、現代演劇に参加するなど新しい試みにも積極的に取り組み続ける姿勢は、師である観世寿夫が追及した能役者の在り方というものを大いに感じさせます。本公演では、鵜澤久の身体を通じ、能の表現とは、そして能役者とは何かを問います。

演目
「プラティヤハラ・イヴェント」 鵜澤久 一噌幸弘 藤原道山
ジョン・ケージによってはじめられたチャンス・オペレーションの流れの中で、能の持つ不確定性に着目し、演奏家の「呼吸」の時間が演奏の速度や、間の長さを決めていくかたちで書かれた作品。1963年に一柳慧、高橋悠治、小杉武久、観世寿夫らにより演奏されました。

舞囃子「智恵子抄」
高村光太郎の詩集「智恵子抄」から10編の詩と一首の短歌を製作年代順に配列し、光太郎にとっての永遠の女性像としての智恵子と現実の狂気した智恵子、それを見守る光太郎を描いた新作能。1957年4月に構成・演出:武智鉄二、作曲・作舞:観世寿夫、出演:観世寿夫ほかにより初演され、その後は「千鳥と遊ぶ智恵子」を中心に舞囃子として繰り返し上演されています。
 智恵子:鵜澤光  光太郎:梅若紀彰
 笛:松田弘之  小鼓:田邊恭資  大鼓:佃良太郎
 地謡:山本順之 清水寛二 西村高夫 長山桂三 川口晃平

能「卒都婆小町」(観世流)
高野山に住む僧が都へと向かう途中、一人の老女と出会います。老女が卒都婆に腰を掛けていたため、僧たちはそれを咎め、立ち去らせようとしますが、老女は僧と卒都婆についての問答を交わし、ついには言い負かせてしまいます。実は老女は、小野小町でした。かつては美貌を誇り、歌を詠む優雅な生活を送っていましたが、今は老女となって零落し、物乞いをして歩く毎日。そのようなことを語るうち、小町の声が変わり、「小町のもとに通おう」と言い出します。どうやら、かつて小町に恋をした四位少将の霊が憑依した様子。小町に憑いた少将の霊は、生前、小町のもとに九十九夜まで通い、思いを遂げる百夜を前に死んだ「百夜通い」の有り様を再現します。これも小町の驕慢が生んだ報いなのでした。
 シテ(小野小町)鵜澤久  ワキ(僧)森常好  ワキツレ(従僧)舘田善博
 笛:一噌庸二  小鼓:鵜澤洋太郎  大鼓:國川純
 後見:梅若紀彰 清水寛二 谷本健吾
 地謡:観世銕之丞  観世淳夫  西村高夫  柴田稔  馬野正基  浅見慈一  長山桂三  安藤貴康
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解説にあるとおり、ダイジェスト版の舞囃子として、武智鉄二作の新作能「智恵子抄」が演じられます。

一昨年には、今回、地謡で出演なさる山本順之氏、清水寛二氏、西村高夫氏がやはり吟じられた「連吟 智恵子抄」を含む「山本順之師の謡と舞台への思いを聴く会」がありましたし、さらに清水氏は現代アートのイベント「もやい展2021 東京」中のステージパフォーマンスでも「智恵子抄」朗誦をなさいました。

今回は舞囃子ということで、より原型に近いのではないでしょうか。

ちなみに「智恵子抄」の語が含まれていませんでしたが、『東京新聞』さんに鵜沢久氏の紹介を兼ねた予告記事が出ました。

<土曜訪問>捨て石よりダイヤに 性別超え評価 来月 横浜能楽堂で公演 鵜澤久(うざわ・ひさ)さん(能楽師)

002 長らく「男性の芸能」として発展してきた能の世界で、性差を超えて評価されているのがシテ方観世流(かたかんぜりゅう)の鵜澤久さん(73)だ。女性が初めてプロの能楽師と認められたのは一九四八年。今も女性の能楽師は少なく、「宗家」を継いでいるのは男性だけ。そんな男性中心の能楽界で、二月五日に横浜市で行われる横浜能楽堂企画公演「能役者 鵜澤久」は、「女流という枠にとどまらない」一人の能役者としてスポットライトを当てる。ここに至るまでにどのような日々があったのか、聞きたくなった。
 「能は男の人がやるものという概念が、いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいあって、闘うつもりはないけど、精神的には闘わないとやっていけなかったんです」。自宅にある舞台の端に座り、居住まいを正して淡々と語り始めた。
 シテ方は「シテ」と呼ばれる主役のほかツレ(シテに付き従って出てくる役)、地謡、後見、演出、舞台のプロデュースなどを幅広く担う。二十五歳で演能団体「銕仙会(てっせんかい)」に入り「性差は単なる個性の一つ。能という表現芸術に、男性も女性もない」と信じて研さんしてきたが、男性の能楽師がどんどん会の舞台に関わって経験を積むのに対し、自身は初めて研究公演に出るまでに十年以上かかった。「地謡や後見など、シテ方の男性が若い時から当然経験していることも、ずっとできなかった」。それならばと自身で、女性の地謡の会を開いたこともある。
 女性の能楽師を下に見る空気を感じ続け「ふらふらと片足立ちで生きてきたようだった」と振り返るが、目の前の壁を押し続けるつもりで進むうちに、二〇一八年、観世寿夫記念法政大学能楽賞を受賞。外部からの確固たる評価を得て「やっと両足を大地に着けて、能役者ですと言えるようになった」とほほ笑む。
 能に惹(ひ)かれたのは、自分にとって自然な流れだった。父はシテ方観世流の鵜澤雅(まさし)。謡の稽古の声を子守歌に育った。三歳で初舞台を踏み、十三歳で初シテ。父は稽古をつけてくれることもあったが「女なんかだめだ」と能楽師になることに反対し続けた。それでも「逆境ほど力が湧いてくる人間なので」。小学五年の作文で「男になりたい。能楽師になりたいから」と書いた。中学生のころ、父が弟子の発表会に女性能楽師を呼び、黒紋付きで舞台に上がる女性を間近に見た。「いくら反対されたって、憧れないわけないですよ」
 東京芸大邦楽科に進み、大学院も出ると、当時能楽堂を立ち見でいっぱいに埋めていた能楽界の寵児(ちょうじ)、観世寿夫(ひさお)さん(一九二五〜七八年)に習うことを切望。寿夫さんのいる銕仙会に入りたいと、反対する父をかわして何度も会の稽古能を見に行った。あるときいきなり父に襟首をつかまれ、会の中心である観世銕之丞(てつのじょう)家の座敷に連れて行かれた。「こいつを今日から銕仙会に入れますから。ほら、あいさつしろ!」。うれしいよりも、急展開に驚くばかりだった。「そこまでやりたいなら、と父も思ったんじゃないかな」
 そのまま寿夫さんに面接され、かけられた言葉は「能は伝統の厳しい世界。入っても一生舞台に立てないと思いなさい。捨て石になる覚悟でやりなさい」。当時は寿夫さんに習いたい一心で、深く考えずに飛び込んだ。「後になってから、どうせ石ならただの石ころでは終わらない、金剛石(ダイヤモンド)になってやると思いました」
 年を重ねた今、感じるのは、自由な自分だ。「重力にそって力が下に落ちてきて、上の方が自由になったというか」。体に余計な力を入れずに気力を充実させられるようになった。二月の横浜能楽堂では即興的な現代音楽の演奏に全身で挑むほか、高い技術と精神性が必要な「老女物」の一曲「卒塔婆小町(そとわこまち)」を演じる。同じく能楽師として活躍する長女、光(ひかる)も舞囃子(まいばやし)で出演。「光は、私がやらなかった内弟子も経験し、多くの舞台に出ている」と頼もしげなまなざしを送る。根が男性社会であることはそう簡単には変わらないだろうと思うが「秩序を保って良い能をつくる、それだけ考えていればいい」。 

智恵子役の方がお嬢さんなのですね。

というわけで、ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

朝おき上り食事、 夕方近く喀血、草野氏、関先生、大気先生 岡本先生くる

昭和31年(1956)3月29日の日記より 光太郎74歳

光太郎の命、あと4日です。

平成30年(2018)に初演され、昨年、北海道と岩手で公演があった演劇の都内と兵庫での巡回です。登場人物には光太郎も名を連ねます。

青年団第96回公演『日本文学盛衰史』吉祥寺・伊丹公演

文学とは何か、人はなぜ文学を欲するのか、人には内面というものがあるらしい。そして、それは言葉によって表現ができるものらしい。しかし、私たちは、まだ、その言葉を持っていない。この舞台は、そのことに気がついてしまった明治の若者たちの蒼い恍惚と苦悩を描く青春群像劇である。

高橋源一郎氏の小説『日本文学盛衰史』を下敷きに、日本近代文学の黎明期を、抱腹絶倒のコメディタッチでわかりやすく綴った青春群像劇。初演時に大きな反響を呼び、第22回鶴屋南北戯曲賞を受賞した作品の待望の再演となる。笑いの中に「文学とは何か」「近代とは何か」「文学は青春をかけるに値するものか」といった根本的な命題が浮かび上がる、どの年代でも楽しめるエンタテイメント作品。
[上演時間:約2時間40分(予定)・途中休憩なし]

吉祥寺公演
 期 日 : 2023年1月13日(金)~ 1月30日(月)
 会 場 : 吉祥寺シアター 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-33-22
 時 間 : 1月13日(金) 19:00  1月14日(土) 14:00 1月15日(日) 12:30 18:00
       1月16日(月) 18:30  1月17日(火) 14:00 1月19日(木) 19:00
       1月20日(金) 19:00  1月21日(土) 12:30 18:00  1月22日(日) 14:00
       1月23日(月) 19:00  1月25日(水) 13:30 1月26日(木) 19:00
       1月27日(金) 19:00  1月28日(土) 14:00 1月29日(日) 12:30
       1月30日(月) 13:00
 料 金 : 早割(1/13〜1/15)
        前売・予約 一般:3,500円 26歳以下:2,500円 18歳以下:1,500円
        当日    一般:4,000円 26歳以下:3,000円 18歳以下:2,000円
       通常料金(1/16〜1/30)
        前売・予約 一般:4,000円 26歳以下:3,000円 18歳以下:2,000円
        当日    一般:4,500円 26歳以下:3,500円 18歳以下:2,500円
伊丹公演
 期 日 : 2023年2月2日(木)~2月6日(月)
 会 場 : 伊丹市立演劇ホール  兵庫県伊丹市伊丹2-4-1
 時 間 : 2月2日(木) 18:30  2月3日(金) 18:30  2月4日(土) 12:30 18:00
       2月5日(日) 12:30 18:00  2月6日(月) 14:00
 料 金 : 前売・予約 一般:3,000円 26歳以下:2,000円 18歳以下:1,000円
       当日    一般:3,500円 26歳以下:2,500円 18歳以下:1,500円

原作:高橋源一郎 作・演出:平田オリザ
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脚本の平田オリザ氏へのインタビューから。

 取りあげられている時代は、明治の近代文学の黎明期ですし、そこでは言文一致がキーワードのひとつになっています。そのうえ、新たに生まれた自由民権の思想などが複雑に絡みあって日本の近代文学を展開させていく。その生みの苦しみが描かれていきます。
(略)
 1場が「北村透谷(1868〜1894年)の死」、2場が「正岡子規(1867〜1902年)の死」で葬式を描いているんですけど、ここまでは文学とか日本語の話。井上さんの言葉を借りれば「ひとつの言葉で政治の話もでき、裁判もでき、ラブレターも書け、喧嘩もできるような日本語を作ることが、近代国家にとっては必須のこと」であり、だから、北村透谷も、正岡子規もそうなんですけれど、二葉亭四迷(1864〜1909年)でさえも、反権力ではないんです。みんな日本のためを思ってやっている。要するに、この時期は、近代国家の成立という国家の夢と個人の夢が重なった、古き佳き時代なんです。
 それが徐々に変質していって、最終的に大逆事件があって……だから、幸徳秋水が大事なんですけど……そこに石川啄木が関わって、「夏目漱石(1867〜1916年)の死」で明治という古き佳き時代が終わる。そこまでを直球勝負で書きたいと思って構想しました。
(略)
 最後の4場「夏目漱石の死」(1916年)になると、そのころには本が売れるようになりますから、日本が金持ちになって、大衆が文学を手に取る。円本(1冊1円の全集シリーズ)みたいなものが出てくる。そして文壇が形成されていくわけですね。しかし、それらは最終的には、約20年後、戦争協力というかたちでほとんど破滅するわけですけれども、そこを予感させて終わるという構成になっています。

ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

晴、温、平熱 中西さん宅にて雑煮、桑原さんは見えず、 日向ぼっこ、 后高村武次さん美津枝さんくる、 夕方横臥、 夕食カニ玉、


昭和31年(1956)1月1日の日記から 光太郎74歳

光太郎が4月2日に歿する昭和31年(1956)の年明けです。「中西さん宅」は起居していた貸しアトリエ敷地内の大家さん。「桑原さん」は中西家と親しかった美術史家・桑原住雄、「美津枝さん」は光太郎実弟にして鋳金の人間国宝となる豊周の息女、「高村武次さん」はその夫。のちの岩波映画製作所社長です。たまたま同じ高村姓でした。

この年7月には、政府が経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言しました。朝鮮戦争による特需景気、その後の神武景気を経て、前年のGDPが戦前の水準を上回ったためです。国際的にも日ソ共同宣言が出され、シベリア抑留最後の引き揚げ船が到着、また、日本の国連加盟もありました。こうした年に光太郎が亡くなったというのも、何やら象徴的ですね。

ちなみにこの年の芥川賞は、石原慎太郎の「太陽の季節」。実弟の裕次郎主演で即刻映画化もされました。海外ではエルヴィス・プレスリーが人気を博していました。

追記 御本人がコロナ感染で延期だそうです。

まずは演奏会情報を。

紀野洋孝テノール・リサイタル

東京公演
 期 日 : 2022年12月18日(日)
 会 場 : 旧東京音楽学校奏楽堂 東京都台東区上野公園8番43号
 時 間 : 18:30開場 19:00開演
 料 金 : 前売 一般 3,000円 学生 1,000円 当日 一般 3,500円 学生 1,500円

大分公演
 期 日 : 2022年12月23日(金)
 会 場 : iichiko音の泉ホール 大分県大分市高砂町2番33号 
 時 間 : 18:30開場 19:00開演
 料 金 : 前売 一般 3,000円 学生 1,000円 当日 一般 3,500円 学生 1,500円

出 演 : 紀野洋孝(テノール) 森裕子(ピアノ)
曲 目 : 
 F.P.トスティ:〈薔薇〉〈祈り〉〈理想の人〉
 山田耕筰:〈この道〉〈かやの木山の〉〈六騎〉〈城ヶ島の雨〉〈みぞれに寄する愛のうた〉
 別宮貞雄:歌曲集《智惠子抄(改訂新版)》

博士号取得とCD“別宮貞雄作品集「Be」”の発売を記念して、東京と大分で『紀野洋孝テノール・リサイタル』行うことになりました!!! リサイタルの前半はお馴染みのトスティと山田耕筰の作品、後半は博士課程でも研究してた別宮貞雄の超大作《智惠子抄》を演奏します!! 《智惠子抄》は歌曲を超えたモノドラマのような作品で、涙なしには歌えない、聴けない、劇的で感動的な名作です! 別宮貞雄生誕100年没後10年の超特別メモリアルな今年聴いてほしいゴリゴリに押しに推しまくっている名作です!本当に沢山の方に知ってほしい、聴いてほしい、歌ってほしい作品です!
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故・別宮貞雄氏作曲の「歌曲集 智恵子抄」全曲が演奏されます。同曲は昭和57年(1982)の作品で、翌年に初演、昭和61年(1986)には音楽之友社さんから楽譜が刊行されています。

CDでは、故・永田峰雄氏による演奏で全曲が収録されたものが出ている他、抜粋で収められているものが数種類。紀野氏他、演奏会でもぽつぽつプログラムに入れて下さっている方もいらっしゃいます。共に男声、女声、双方が取り組んで下さっています。

他の作曲家の方の「智恵子抄」と較べ、別宮氏のそれは先に曲ありきではなく、本当に智恵子を思う光太郎の語り口が感極まってメロディー化したような、そういう感じに聞こえます。紀野氏曰く「歌曲を超えたモノドラマのような作品で、涙なしには歌えない、聴けない、劇的で感動的な名作」。なるほど、と思いました。

今回の演奏会はCD発売記念ということで、そのCD、注文しておいたのが昨日届きました。歌曲集「智恵子抄」ほか、別宮氏の作品を集めたものです。

Be -別宮貞雄 歌曲集-

2022年12月14日 Toneforest 定価3,000円+税

紀野洋孝(テノール) 森裕子(ピアノ)

歌曲集《智惠子抄(改定新版)》 詩:高村光太郎
 1. 人に002
 2. 深夜の雪
 3. 僕等
 4.晩餐
 5. あどけない話
 6. 人生遠視
 7. 千鳥と遊ぶ智惠子
 8. 山麓の二人
 9. レモン哀歌
歌曲集《淡彩抄》 詩:大木惇夫 
 10.泡001
 11. 蛍
 12. 入墨子
 13. 涼雨
 14. 別後
 15. 燈
 16. 天の川
 17. 青蜜柑
 18. 鷺
 19. 春近き日に
歌曲集《二つのロンデル》より 詩:加藤周一
 20.  さくら横ちょう

早速拝聴しましたが、紀野氏の歌唱、光太郎の魂が乗り移ったかのような、心の叫びがあますところなく表現されていました。

ぜひお買い求め下さい。

ところで、毎日更新しているこのブログサイトですが、紹介すべき事項が多く(もう今年いっぱいは書くことが決まっているような状況です)、失礼とは存じますが、クラシック歌曲系がらみで併せてもう1件。

今日の『朝日新聞』さん朝刊にバリトン歌手・坂本博士氏の訃報が出ていました。

坂本博士さん死去

 坂本博士さん(さかもと・ひろし=バリトン歌手、サカモト・ミュージック・スクール校長)3日、誤嚥(ごえん)性肺炎で死去、90歳。葬儀は近親者で営んだ。喪主は妻旦子(あさこ)さん。
 54年、東京芸大声楽科卒。57年に藤原歌劇団公演「ラ・ボエーム」のマルチェッロ役でデビュー。63年に始まったNHK「歌おうよ世界の友よ」に1年間レギュラー出演するなどメディアでも活躍。作曲家としても東日本大震災復興のための「絆三部作」など、歌曲、合唱曲、ミュージカルなどを幅広く手がけた。

坂本氏、昭和50年(1975)、キングレコードさんからリリースされた「なつかしの国民歌謡 NHK国民歌謡」というLPレコードで、光太郎作詞、飯田信夫作曲の「歩くうた」(昭和15年=1940)を歌われていました。
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謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

【折々のことば・光太郎】

三時半、北川太一氏くる、智恵子の原稿二枚持参、クツキーをもらふ、


昭和30年(1955)5月27日の日記より 光太郎73歳

宿痾の肺結核悪化により入院していた赤坂山王病院に、当会顧問であらせられた故・北川太一先生がお見舞いに行かれました。こうした機会に北川先生は光太郎本人へ、その生涯に関しての聞き取り調査を行い、「高村光太郎聞き書」(『高村光太郎全集』別巻所収)としてまとめられました。

「智恵子の原稿」は詳細不明ですが、おそらく北川先生、智恵子が雑誌に寄稿した散文の原稿を入手され、光太郎に見せたのでは、と思われます。懐かしい智恵子の筆跡を見たであろう光太郎、どのような感想を持ったのか、あいにく、日記には記されていませんが。

一昨日、昨日に続き、新刊系のご紹介を、と思っておりましたが予定変更で、演劇の公演情報です。気づくのが遅れ、5公演中1公演が終わっていました。

青年団第96回公演『日本文学盛衰史』北海道・岩手公演

原作:高橋源一郎 作・演出:平田オリザ

文学とは何か、人はなぜ文学を欲するのか、人には内面というものがあるらしい。そして、それは言葉によって表現ができるものらしい。しかし、私たちは、まだ、その言葉を持っていない。この舞台は、そのことに気がついてしまった明治の若者たちの蒼い恍惚と苦悩を描く青春群像劇である。

高橋源一郎氏の小説『日本文学盛衰史』を下敷きに、日本近代文学の黎明期を、抱腹絶倒のコメディタッチでわかりやすく綴った青春群像劇。初演時に大きな反響を呼び、第22回鶴屋南北戯曲賞を受賞した作品の待望の再演となる。笑いの中に「文学とは何か」「近代とは何か」「文学は青春をかけるに値するものか」といった根本的な命題が浮かび上がる、どの年代でも楽しめるエンタテイメント作品。
[上演時間:約2時間40分(予定)・途中15分の休憩あり]
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原作:『日本文学盛衰史』(講談社文庫刊)
高橋源一郎の長編小説。『群像』に1997年〜2000年にかけて連載。
日本近現代文学の文豪たちの作品や彼らの私生活に素材を取りつつ、ラップ、アダルトビデオ、伝言ダイヤル、BBSの書き込みと「祭」、たまごっち、果ては作者自らの胃カメラ写真までが登場する超絶長編小説。第13回伊藤整文学賞受賞作。

大空公演
 期 日 : 2022年 12月8日(木)
 会 場 : 大空町教育文化会館 北海道網走郡大空町女満別西3条4丁目1-11
 時 間 : 18:30~
 料 金 : 前売券(全席指定) 一般=2,000円  高校生以下=1,000円

幕別公演
 期 日 : 2022年 12月11日(日)
 会 場 : 幕別町百年記念ホール 北海道中川郡幕別町字千住180-1
 時 間 : 15:00~
 料 金 : 前売券(全席指定) 一般=3,500円  高校生以下=1,000円

富良野公演
 期 日 : 2022年 12月13日(火)
 会 場 : 富良野演劇工場 北海道富良野市中御料
 時 間 : 19:00~
 料 金 : 予約(全席自由)一般=3,000円 演劇工房会員=2,500円 小中高生=1,500円

江別公演
 期 日 : 2022年 12月15日(木)
 会 場 : えぽあホール 北海道大麻中町26-7
 時 間 : 19:00~
 料 金 : 予約(全席自由)一般=3,500円 学生=2,000円 小中高生=招待(要予約)

盛岡公演
 期 日 : 2022年 12月18日(日)
 会 場 : 盛岡劇場メインホール 岩手県盛岡市松尾町3番1号
 時 間 : 14:00~
 料 金 : 前売券(全席指定)一般=4,000円 U-25チケット=2,000円

初演は平成30年(2018)。原作は高橋源一郎氏。夏目漱石、島崎藤村、田山花袋、石川啄木、芥川龍之介、北原白秋ら、近代の文豪達の群像劇だそうで、光太郎も登場人物の一人に名を連ねています。

ただ、光太郎が登場人物の一人である旨が前面に押し出されておらず、今回も気づくのが遅れましたし、調べたところ「豊岡演劇祭2022」の一環として、9月には兵庫公演も行われていました。また、同じく9月には青年団さんではなく京都市の演劇セミナーでも取り上げられています。

それぞれお近くの方、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

午后草野君、関先生、岡本先生来り、病院行をすすめられ、山王病院といふに卅日入院ときまる、一日1,500円の由、


昭和30年(1955)4月28日の日記より 光太郎73歳

「関先生」「岡本先生」は共に医師。他の複数の医師ともども、いわば「チーム光太郎」を組み、光太郎の診療に当たっていました。

「智恵子抄」その他の光太郎詩にオリジナルの曲を付けて歌われている、シャンソン系歌手のモンデンモモさん。今年も「智恵子抄」がらみのコンサート等を京都都内で開催されてきましたが、今度は鳥取だそうです。

Art train 2022『藝術列車』プレイベントVol. 0.5

期 日 : 2022年12月4日(日)
会 場 : 日南町総合文化センター 鳥取県日野郡日南町霞785
時 間 : 12:30~
料 金 : 1,000円

日南町発の芸術の祭典が始まります。ピアノ・二胡 ・朗読とチェロ演奏・ビジュアル華道・パントマイム・シャンソン・イタリアオペラ・歌舞踊・神楽 など、 様々な藝術とのコラボレーションステージも予定しています。ユーチューブでのライブ配信も行います。
https://www.youtube.com/watch?v=2T0Df090SHk

第1部
 二胡演奏/山本佑佳 ヴィジュアル華道/Rosalia Belmondo パントマイム/魁士
 ピアノ演奏/中島巌 ヤングアーティストバレエ/岩佐久美子バレエスクール
 朗読とチェロで親しむ『徒然草』/和貝晴美・なりかわあきよ
第2部
 舞踊音楽劇 文藝ビジュアル『智恵子飛ぶ』
  歌舞踊/モンデンモモ ピアノ/田中幸子 チェロ/なりかわあきよ

第3部
 「シャンソン」 歌唱/松尾芳紀・森岡優子 ピアノ/田中幸子
 「わが太陽! カンツォーネ イタリアオペラの輝き」
   歌唱/若井健司 ピアノ/大山まゆみ

 ここに『たたら物語』生まれる!!
  歌舞踊/モンデンモモ ピアノ/中島巌 二胡/山本佑佳 日南神楽神光社
  華道/Rosalia Belmondo 
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お近くの方(遠くの方も(笑))、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

誕生日、 椛澤さんくる、クツ下、抹茶をもらふ、 カマクラの吉野秀雄さん夫人くる、ソーセージをもらふ、いろいろの話、 秋田の大野さんといふ女性くる、 奥平さんくる、ゐなりずしをもらふ、桑原さん加はり、三人と夜九時頃まで話、すしをくふ、ケーキをくふ、


昭和30年(1955)3月13日の日記より 光太郎73歳

明治16年(1883)生まれの光太郎、この日で満72歳となりました(すぐ上に「光太郎73歳」と書いているのは、数え年です)。しめしあわせてのことではないのでしょうが、ほぼ臥床している光太郎の見舞いを兼ねて、多くの人が誕生祝いに訪れました。

椛澤さん」は茶道家。「吉野秀雄さん夫人」は吉野登美子。元八木重吉夫人でしたが、八木が早逝した後、歌人の吉野秀雄と再婚しました。「奥平さん」と「桑原さん」は美術史家。「秋田の大野さん」だけは詳細が不明です。

プレゼントをいろいろもらい、しっかりバースデーケーキも食べたのですね(笑)。

追記 関係者にコロナ感染が出たため、延期だそうです。

大阪府から公演情報です。

至高の華 ~舞と語り~

期 日 : 2022年11月27日(日)
会 場 : 大槻能楽堂 大阪府大阪市中央区上町A-7
時 間 : 14:00~
料 金 : S席 8000円 A席 6000円

演 目 : 語り「初代 梅若実」 桂南光(新作落語 本邦初演)
      舞踊詩劇「智恵子抄」 梅若実桜雪/藤間勘十郎/高橋惠子 ほか
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新作落語と舞踊詩劇の二本立て。梅若実桜雪氏は人間国宝の能楽師、藤間勘十郎氏は舞踊家。「高橋惠子」さんは、「あの高橋惠子さん?」と思ったら、あの高橋惠子さんでした。梅若氏と藤間氏が光太郎智恵子として舞われ、高橋さんが朗読なさるのでしょう。何とも豪華なトリオですね。
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『毎日新聞』さん大阪版に案内記事が出ていました。

語り、舞 至高の一時 27日・大槻能楽堂 新作口演と舞踊詩劇 /大阪

 能の人間国宝、梅若桜雪(ろうせつ)さんの舞と落語家、桂南光さんの語りを中心とした特別公演「至高の華~舞と語り」が27日午後2時、大阪市中央区上町の大槻能楽堂で開かれる。落語作家、小佐田定雄さんの新作「初世梅若実」を南光さんが口演し、能と日本舞踊のコラボレーションによる舞踊詩劇「智恵子抄」を桜雪さんらが上演する。
 「初世梅若実」は維新の激動で能が衰微した明治初年、東京に残って孤塁を守り、その後の能楽発展の礎を築いた桜雪さんの曽祖父・初世実(1828~1909年)の生涯を描いた物語。ユーモア主体の落語ではなくストーリー中心の「語り」として小佐田さんが書き下ろし、桜雪さんの謡の門弟でもある南光さんが初演する。
 「智恵子抄」は詩人の高村光太郎が、心を病み52歳で早世した妻・智恵子への思いをつづった詩集を舞台化。女優、高橋恵子さんの朗読や能の謡、邦楽の演奏などに合わせて光太郎を桜雪さん、智恵子を日本舞踊宗家藤間流八世宗家の藤間勘十郎さんが舞う。2006年の初演以来、上演を重ねており、今回が令和初演になる。

近くなら拝見に伺いたいところですが……。

お近くの方(遠くの方でも)、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

原稿少し、原稿を書くと神経痛いたむ、


昭和30年(1955)1月30日の日記より 光太郎73歳

神経痛」は結核性の肋間神経痛です。ペンを執るだけで痛むというのですから、かなりの重症です。ただ、それも波があり、翌月にはおよそ半年ぶりに外出もできるようにはなりました。

神戸から演奏会情報です。

やすらぎコンサートin神戸「癒しの響き 鐘シンフォニー(和編鐘)への誘い」

期 日 : 2022年11月20日(日)
会 場 : 日本基督教団神戸聖愛教会 兵庫県神戸市中央区生田町1丁目1-27
時 間 : 15:00~17:00
料 金 : 前売 3,000円 当日 3,500円

出 演 : 有機音(ゆきね 和編鐘)  大山りえ(朗読)  
      則定まり & Fresh Green Sleeves(カリヨン・リコーダー)
      こだまひろこ(ウィメンズコミュニティ代表)
      小山弘明(高村光太郎連翹忌運営委員会代表)

曲 目 : 1部 鐘シンフォニー
       春と修羅 水の源 和編鐘・有機音 朗読・大山りえ
       トーク「津田梅子について」 こだまひろこ
       強く、美しく 和編鐘・有機音
      2部 響きあう
       トーク&リコーダー演奏 則定まり & Fresh Green Sleeves 
       トーク「光太郎智恵子と神戸」 小山弘明
       智恵子抄より 「愛はすべてをつつむ」抜粋版
        和編鐘・有機音 朗読・大山りえ   

今社会の動きに、疲れていませんか?? 和編鐘は癒しの鐘です。皆さんの様々な重荷をおろして響きの世界で心を安らげてください。全身の緊張がとれ、リフレッシュしますよ。音に包まれる癒しの時をぜひ!!!
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というわけで、出演させていただきます。有機音さんの演奏と、大山りえさんの朗読の前座で(笑)、せっかく神戸ですので、光太郎智恵子と神戸との関わりを中心に語る予定です。

そもそもなぜ当方が名を連ねているかというと、やはり「智恵子抄」朗読を伴った有機音さんのコンサートに2回(代々木能舞台さん/矢来能楽堂さん)お邪魔し、「ではそのうち光太郎智恵子について語って下さい」とのことで実現しました。

有機音さん、先月、NHK BSプレミアムさんで放映された「Core Kyoto」という番組にご出演。その回は「古都の祈りの鐘~こころ清める 音の宇宙~」というサブタイトルでした。
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和編鐘、そして有機音さんの紹介。
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「私のやり方」とは……
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これは確かに独特ですね。

そして……
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ちなみに京都下鴨神社さんでの奉納演奏の際のロケだそうです。

「自然を師としなさい」と語ったロダンに私淑した光太郎の精神にも通じるような気がしますね。

お近くの方(遠くの方も(笑))、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

よみうり記者来て新年の詩依頼、廿五日〆切、承諾す、

昭和29年(1954)12月17日の日記より 光太郎72歳

新年の詩」は、翌年元日の『読売新聞』に掲載された「新しい天の火」。宿痾の肺結核のため、外出もままならない状態でしたが執筆依頼を受けました。詩作は約10ヶ月ぶり。散文は意外と書いていましたが。

昨日は日本橋三越さん内の三越劇場さんにて、朗読劇『智恵子抄』東京公演を拝見して参りました。
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昨年も上演され、銀座ブロッサムさんでの公演に参上しましたが、今年はキャストも代わり、さらに劇伴がチェロとヴァイオリンの生演奏ということで、改めてパワーアップヴァージョンを拝見。
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当方、三越劇場さんは初めてでした。昭和2年(1927)の竣工と云うことで、レトロかつモダンな造り。テレビ東京さんの「新美の巨人たち」で取り上げられたほど特別なホールです。

開演前。
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PXL_20221110_050424776天井にはステンドグラス、壁面下部は天然大理石、上部は漆喰でしょうか。柵などはロココ調の装飾が見事です。

ステージはまるで額縁のように縁取られ、底部には三越さんの象徴とも云うべきライオン。一階正面玄関の有名なライオン像はロンドン・トラファルガー広場のライオン像の模刻で、普通のライオンですが、こちらは「ヴェネツィアの獅子」のような有翼の獅子です。一瞬、翼があるので日本橋欄干の渡辺長男による彫刻のように麒麟かと思ったのですが、ライオンでした。

材質的にはは石膏に着色しているようでした。気になったのでネットで調べてみましたが、作者に言及しているサイトは見つけられませんでした。

さて、開幕。
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オリジナルの脚本は、昭和32年(1957)、光太郎と交流のあった北条秀司が書いたもので、その年、初代水谷八重子さんによって上演されたもの。
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その後、水谷さんの再演がなされ、さらに藤純子さん(現・富司純子さん)、有馬稲子さんによる公演もありました。その都度、他の演目との兼ね合いなどで長かったり短かったりでした。

昨年の公演から、成瀬芳一氏構成と云うことで、オリジナルの脚本を75分ほどで上演出来るように改めたもので上演されています。ただ、今回の上演に当たっても、細部に少し手を入れられたそうですが。

キャストは、昨年に引き続き智恵子役に一色采子さん。こういうと失礼ながら、昨年は昨年で素晴らしかったのですが、今回はさらに智恵子になりきっていらしたと感じました。光太郎は昨年の横内正さんから松村雄基さんにバトンタッチ。若返った感じでした。
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さらに二反田雅澄さん、小川絵莉さんがそれぞれ複数の役を演じられました。終盤、お二人が光太郎蟄居先である花巻郊外旧太田村の村人役をなさいましたが、なんともナチュラルな東北弁。あれ? 東北のご出身なのかな、と思ったのですが、調べてみたところ、小川さんは東京、二反田さんにいたっては大阪のお生まれだそうで、驚きました。さすがプロですね。

そしてチェロとヴァイオリンのお二方。実にいい感じに雰囲気を作って下さっていました。

下記は終演後。
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明後日には、智恵子の故郷、福島二本松の旧安達町での公演もあります。楽屋口で一色さんに「二本松公演も頑張って下さい」とお声がけして、会場を後に致しました。

ところで、「朗読」「智恵子抄」というと、ついでのようになってしまって申し訳ありませんが、明日、京都でこんなイベントがあるとのこと。気づくのが遅れ、明日になってしまいました。

茶子 TeaTime 小さな朗読会 ~2022 秋~

期 日 : 2022年11月12日(土)
会 場 : 本屋ともひさし 京都市下京区烏丸通五条下る大坂町405
時 間 : 13:20~
料 金 : 500円

出 演 : Tea Time 茶子

小さな朗読会を開催します! 智恵子抄を8本程選ばせて頂きました。高村光太郎氏と智恵子さんの世界観をぜひお楽しみ下さい。
無題
ぽつりぽつりではありますが、いろいろなところで光太郎智恵子の世界を取り上げて下さり、有り難いかぎりです。

【折々のことば・光太郎】

ひる頃鯉淵より孟彦くる、生徒さんら6人つれてくる、暫時談話、


昭和29年(1954)11月14日の日記より 光太郎72歳

鯉淵」は茨城県の鯉淵学園、現在も鯉淵学園農業栄養専門学校として続いています。「孟彦」は光太郎実弟にして藤岡家へ養子に行った光雲四男です。鯉淵学園に勤務していました。

この頃、離れて暮らしていた弟妹の訪問が相次ぎます。すぐ下の弟・豊周が「兄貴もそろそろやばいかも」という連絡を廻したのではないかと思われます。どっこいこの後もまだ1年半近く、光太郎の命の炎は燃え続けましたが。





大分県から演奏会情報です。

「智恵子抄」~智恵子と高村光太郎の生涯をたどって~

期 日 : 2022年11月17日(木)
会 場 : iichiko音の泉ホール 大分県大分市高砂町2番33号
時 間 : 19:00~
料 金 : 無料

出 演 : 上田雅美(ソプラノ) 中村弘人(テノール) 中村仁 (テノール)
      星野美由紀(ピアノ)

歌曲の会特別企画演奏会ということで、第1部は「日本抒情歌曲への誘い」と題して山田耕筰や中田喜直といった作曲家の作品と、第2部では清水脩作曲の歌曲集「智恵子抄」(全曲)を演奏いたします。智恵子への愛を綴った詩に「取り付かれた」清水作品を3人で歌いあげていきます。どうぞお聴きください。
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大分県民芸術文化祭」参加事業の一つだそうです。001

故・清水脩氏作曲の「歌曲集 智恵子抄」全12曲が演奏されます。抜粋で演奏されることは多いのですが、全曲まとめてというのは、少なくともここ10年ほどの間では無かったように思われます。

清水氏、光太郎生前の昭和30年(1955)からこの歌曲集の作曲を始め、まず「あどけない話」など6曲(うち3曲はオケ伴)。続いて「あなたはだんだんきれいになる」他二曲が昭和34年(1959)、そして「晩餐」等2曲が昭和46年(1971)に加えられ、全12曲となりました。楽譜は昭和53年(1978)に音楽之友社さんから刊行されています。

アナログレコード、CDも抜粋のものが多くありますが、昭和47年(1972)、中村健氏の歌唱による全12曲収録のLPが日本ビクターさんからリリースされています。同じ音源と思われるCDも平成3年(1991)に発売されています。
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清水氏、これ以外にも男声合唱、混声合唱、さらには箏曲でも、「智恵子抄」詩篇に曲を付けた作品を複数作られていて、これだけ多く光太郎詩に曲を付けられたのは、ジャンルは違いますがシャンソン系のモンデンモモさんと清水氏とお二方だけです。

今回の演奏会では、ご出演されるお三方の歌い手さんが分担なさって全12曲を歌われるとのこと。なるほど、そういうのもありかな、と思いました。

そして何と入場無料。お近くの方(遠くの方でも)、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

小山書店の小山久二郎氏くる、「天平の彫刻」をもらふ、


昭和29年(1954)11月8日の日記より 光太郎72歳

天平の彫刻」は正しくは「天平彫刻」。光太郎が一部を執筆したもので、元版は戦時中の昭和19年(1944)に刊行されましたが、戦災で倉庫が焼け、ほとんど出回りませんでした。戦後になって昭和23年(1948)に復刊、さらにこの年、新たに図版を数多く入れた版が刊行されています。

昨日も都内に出ておりました。

まずは泉屋博古館東京館さんで、「生誕150年記念 板谷波山の陶芸-近代陶芸の巨匠、その麗しき作品と生涯-」を拝見のため、六本木へ。
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都内でも紅葉が始まっている感じでした。
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陶芸家・板谷波山。創立間もない東京美術学校彫刻科で光太郎の父・光雲に学んだという異色の経歴があります。そこでの教えが後の波山芸術バックボーンの一つとなっている点は確かに感じられました。

撮影可だった作品。
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紋様は描かれているだけでなく、浮き彫り風になっており、確かに彫刻のエッセンスが感じられます。1ミリにも満たない凹凸で感じられる立体感という意味では、智恵子の紙絵にも通じるものがあります。そういえば智恵子も太平洋画会で彫刻を学んだ経験がありました。

師・光雲の木彫が2点。波山に乞われて造ったという「瓜生岩子像」は、個人的な依頼に対して気楽に応じた、という感じでした。といってもいい加減に造っているわけではなさそうですが。もう1点の「三猿置物」は、きちっと「作品」として仕上げたという様相。拝見に行く以前に入手していた図録にサイズが記されており、「高24.2 幅27.2 奥行18.6」。その数値から「こんなもんか」というイメージを固めていたのですが、実際に拝見すると、その倍くらいに感じられました。

光雲にしても、光太郎にしても、優れた彫刻はやけに大きく見える傾向があります。現在、常設展で出ているトーハクさんの「老猿」にしても、実際に見たことがあるという方と話す中で「像高90㌢ほどですよ」という話をすると「え? 1㍍50㌢くらいと思ってましたが」ということがままあります。内部から迸るエネルギー的な物の発露がそういう錯覚を起こさせるのでしょうか。

003波山の木彫「元禄美人」にも驚きました。図録で見た時には「ふーん」という感じだったのですが、実物を見ると実にいいのです。特に驚いたのは、着物の柄を陰刻で彫ってあること。図録の画像もよく見ればそれが分かるのですが見落としていまして、実物を見て「うおー、こんなことをやっていたのか」と初めて気がつきました。波山の本業である作陶にも通じる技法ですね。

そしてメインの陶磁器(というかほとんど磁器)。当方、いわゆる「焼き物」にはあまり興味はないのですが、波山の葆光(ほこう)彩磁は以前から好きでした。多くの作をまとめて見たのは今回が初めて。目を奪われました。また、波山は焼き上がったものに少しでも納得が行かない点があると、叩き壊してしまうことで有名でしたが、その破片も数多く展示されていました。妥協を許さない芸術家の魂的な物を強く感じました。

ついでにというと何ですが(笑)、波山と交流のあった光太郎の「手」も出ています。どこから借りてきたものか不明なのですが、苦言を呈させていただければ、台座が稚拙なのが残念です。

ちなみに光太郎と波山。光太郎が美校に入学する前、旧制中学の課程を本郷にあった共立美術学館予備科で学びましたが、数学が苦手でどうにもならなかったそうです。そこで波山に頼み、数学を得意とする人物を紹介してもらって個人教授をお願いしたとのこと。それでも駄目だったようですが(笑)。

さて、拝観後、六本木を後に銀座へ。同じ都内でも下町方面を廻ることが昔から多いので、「ギロッポンからザギンって、俺らしくないな」などと思いつつ(笑)。

次なる目的地は王子ホールさん。こちらでは作曲家・朝岡真木子氏の作品が演奏される「えつ子とまき子のコンサート 2022秋」を拝聴して参りました。朝岡氏から招待状を頂いてしまいまして、馳せ参じた次第です。
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9月24日、旧東京音楽学校奏楽堂さんにおいて行われた「清水邦子リサイタル 清水邦子が贈る朝岡真木子の世界」で演奏された「組曲 智恵子抄」から抜粋で「あどけない話」と「レモン哀歌」。歌唱はその際と同じく清水邦子氏。情感たっぷりに歌い上げていらっしゃいました。

他の曲目も、9月の演奏会とは異なるものがほとんどでしたし、二重唱などもあって、合唱経験者の当方としては生で聴くハモりは心地よいものでした。

演奏中は撮影禁止でしたが、終演後。
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左から朝岡氏、清水氏、メインで歌われた前澤悦子氏、加賀清孝氏。

その後、ホワイエで朝岡氏、清水氏とお話をさせていただきました。清水氏、「智恵子抄」を歌われたことで光太郎智恵子の世界に非常に興味を持たれ、明日、二本松の智恵子生家/智恵子記念館に行かれるそうです。明日まで生家二階の特別公開、智恵子の花嫁衣装の展示が為されていて、そちらをご覧になりたいとのことでしたので、フライヤー等お渡ししておきました。

今週はもう1度、都内に出ます。10日(木)、三越劇場さんでの「朗読劇 智恵子抄」。主演の一色采子さんから「来なさい」という至上命令ですので(笑)。今月、というと、またのちほどご紹介しますが、20日(日)に神戸で和編鐘の有機音さんのコンサートに「応援出演」ということで行って参りますし(光太郎智恵子について語って参ります)、月末には高村光太郎研究会でまた都内。千葉の田舎から出て行くのはなかなか大変なのですが、「芸術の秋」ですから仕方がありません(笑)。というか、コロナ禍で自粛、中止が相次いでいた頃に較べれば、足を運べる催しが多いことは幸いと云うべきでしょう。ただ、「第8波が懸念」という報道もあり、まだまだ予断を許さぬ状況ですが……。

【折々のことば・光太郎】

火の車より使、清六さんからのマヒ茸松茸、ベニマス等もらふ、夜それをくふ、

昭和29年(1954)10月9日の日記より 光太郎72歳

火の車」は当会の祖・草野心平が経営していた居酒屋。「清六さん」は賢治実弟の宮沢清六です。

この頃の光太郎は、宿痾の肺結核で外出も出来ない状態でしたが、食欲だけは旺盛でした。

詩人で、朗読の活動もなさっている宮尾壽里子氏からご案内を頂きました。朗読系のイベントのようです。

満ちてゆく秋の午後 IN BON ART & 霜月 満月 一日遅れの誕生日

期 日 : 2022年11月8日(火)
会 場 : BON ART 東京都文京区本郷5-25-17
時 間 : 15:00~18:00
料 金 : 無料

軽食を頂きながら、みんなで歌って踊って語って楽しく過ごしませんか。一芸をプレゼントして下さい ♪
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昨年、フランスで刊行された仏訳『智恵子抄』・『Poèmes à Chieko』(当方が宮尾氏にお貸ししました)から、「山麓の二人」を朗読される方がいらっしゃるとのこと。

その他「詩人、役者、朗読者と賑やかな会」だそうです。また、「一芸をプレゼントして下さい ♪」だとのことですので、飛び入りも可なのでしょうか。

残念ながら、今月はあちこち顔を出す機会委が多く、当方は欠礼いたしますが、ご興味のある方、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

午后岡本先生くる、診察、血圧をはかる、二度はかりしが、115度くらゐとの事、かなり低し、今夕死んだ水爆患者、久保山氏は85度とのこと、 平熱、

昭和29年(1954)9月23日の日記より 光太郎72歳

水爆患者、久保山氏」は、アメリカがビキニ環礁で行った水爆実験に巻き込まれた第五福竜丸の無線長です。被爆から約半年後のこの日、亡くなったとのこと。

血圧の「115」とか「85」は、最高血圧でしょうが、「115」で「かなり低し」……「うーむ」という感じです。当方、最近測っていませんが、最高は100ちょっと、下手すると2桁、最低は70くらいです。

昨年上演されたものの、芸術祭参加作品としてパワーアップしての再演だそうです。

朗読劇『智恵子抄』

東京公演
 期 日 : 2022年11月10日(木)
 会 場 : 三越劇場 東京都中央区日本橋室町1-4-1
 時 間 : 14:30~ / 17:00~
 料 金 : 4,000円(全席指定)

福島公演
 期 日 : 2022年11月13日(日) 
 会 場 : 二本松市安達文化ホール 福島県二本松市油井字濡石1-2
 時 間 : 14:30~
 料 金 : 3,000円(全席指定)
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原作 : 高村光太郎の詩集「智恵子抄」
脚本 : 北條秀司  
構成・演出 : 成瀬芳一
 
配役 : 高村光太郎 松村雄基  高村智恵子 一色采子  柳敬助・草野心平 二反田雅澄
     柳八重 小川絵莉
 
<ヴァイオリン>桐山なぎさ   <チェロ>阿部雅士

【ストーリー】
 長沼智恵子は、福島県二本松の近在の酒造りの家の長女として生れ、土地の高等女学校を卒業してから東京目白の日本女子大学校家政科に入学、洋画に興味を持ち始め、卒業後東京に留まり油絵を学んだ。そして同級生の柳八重の紹介で高村光太郎を知り、激しい恋心を抱くようになった。一方光太郎は、明治の名工高村光雲の長男として生れ、父の伝統を受けて彫刻家となったが、新進詩人としても華やかな存在だった。彼は放蕩無頼の芸術家達と交わり、自堕落な生活を送っていたが、智恵子を知ってからは、彼女の清らかな美しさに洗い清められ、以前の退廃生活から救い出されていた。
 智恵子の愛によって清められた光太郎は美の世界にとびこみ、彫刻の道に骨身をけずり、妻に迎えた智恵子との愛の歓喜を歌った詩がほとばしるように生まれた。
 その後智恵子の実家は凋落し、家屋敷が人手に渡った。芸術的精神と物資に恵まれない家庭生活との板挟みとなるような月日が二人に重くのしかかっていた。智恵子は訪ねて来た八重に、画を捨てて世話女房になって高村をたすける事を告げたが、同時に幻聴が襲って来る悩みも打ち明けた。
 その後無残にも智恵子は精神分裂症になりはてていた。
 静養のため九十九里浜に転地した智恵子の症状はややもち直したが、その後南品川のゼームズ坂病院に入院した智恵子の病状は悪化していった。昭和13年光太郎の献身的な介抱むなしく、智恵子の肉体は遂にこの世を去った。
 昭和20年、戦争で東京の住居を焼かれ、心に智恵子を抱きながら光太郎は、岩手花巻の山中に山小屋を作り、一人で生活していた……。

智恵子役は昨年に引き続き、一色采子さん。お父さまの故・大山忠作画伯が智恵子と同郷の二本松ご出身で、智恵子をモチーフにした絵を複数残されています。

昨年の公演についてはこちら。
 「朗読劇 智恵子抄」。
 「朗読劇 智恵子抄」稽古拝見。
 「朗読劇 智恵子抄」銀座公演。
 「朗読劇 智恵子抄」関連。
 「朗読劇 智恵子抄」二本松公演報道。

一色さん以外のキャストは昨年と一新、さらに今年は劇伴を生演奏で行うと云うことで、ヴァイオリンとチェロの方が加わられるそうです。

一色さんからご案内を頂いております。
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コピーだとは存じますが、こう云われてしまうと参上せざるを得ないかな、というわけで(笑)、東京公演の方で申し込みました。

二本松公演に関しては、地元紙『福島民友』さんが報じています。

夫婦愛をドラマチックに 二本松、11月に朗読劇「智恵子抄」上演

004 詩人、彫刻家の高村光太郎の詩集「智恵子抄」を舞台にした朗読劇「智恵子抄」の二本松公演は11月13日午後2時30分から、高村智恵子の古里・二本松市の安達文化ホールで開かれる。
 朗読劇は、劇作家の北條秀司(1902~96年)が智恵子抄を基にまとめた戯曲が原作。構成・演出の成瀬芳一さんが「樹下の二人」や「あどけない話」など数編を織り交ぜ、光太郎と智恵子の夫婦愛を描いた。
 智恵子役は同市ゆかりの俳優一色采子さんが演じ、光太郎役を松村雄基さん、智恵子の同級生柳八重役を小川絵莉さん、いわき市出身の詩人草野心平役などを二反田雅澄さんが務める。
 二本松公演は、智恵子抄出版80年を記念した昨年に続き2度目。今年は、一色さんを除きキャストを一新したほか、劇伴にバイオリンとチェロの生演奏を採用した。一色さんは「光太郎が松村さんになり、昨年とは異なる智恵子を演じられると思う。新しい仕掛けもあり、よりドラマチックな舞台になる」とPRする。
 チケットは全席指定で3千円。市文化課や安達公民館、市民交流センターで取り扱う。問い合わせは主催・製作の新派アトリエの会(電話090・1617・3675)へ。

都内、二本松、いずれかに皆様もぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

〈(五月中旬来外出せず)〉

昭和29年(1954)8月29日の日記より 光太郎72歳

何気に書かれた一言ですが、宿痾の肺結核のため、もう三ヶ月以上、ほぼ臥床している毎日。この後もしばらくは起居していた中野の貸しアトリエから一歩も踏み出さない生活が続きます。ただ、翌年になると少し回復し、近所の散歩程度は出来るようになりました。

都内での演奏会情報2件、ご紹介します。

開催順に、まずクラシック系で、銀座。

えつ子とまき子のコンサート 2022秋

期 日 : 2022年11月6日(日)
会 場 : 王子ホール 東京都中央区銀座4-7-5
時 間 : 14:00開演
料 金 : 全自由席 一般¥4,500(当日¥5,000)

出 演 : 前澤悦子(ソプラノ) 朝岡真木子(作曲家・ピアノ)
ゲスト : 清水邦子(メゾソプラノ)、加賀清孝(バリトン)

演奏予定曲:
 朝岡真木子歌曲より
  歩こうよ(詩・戸張みち子)  ガラスのオルゴール(詩・今村佳枝)
  追憶の風(詩・木下宣子)   風といっしょに〔二重唱〕(詩・高木あきこ)
  黒豆のなっとう〔二重唱〕(詩・中野惠子)  組曲「あなたへ」(詩・星乃ミミナ)
  「智惠子抄」より あどけない話・レモン哀歌(詩・高村光太郎)
 〈初演〉ソプラノとバリトンのための「薔薇の園」(詩・岡崎カズヱ)
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作曲家・朝岡真木子さんによる歌曲のコンサートです。

先月24日、旧東京音楽学校奏楽堂さんにおいて行われた「清水邦子リサイタル 清水邦子が贈る朝岡真木子の世界」で演奏された「組曲 智恵子抄」から抜粋で「あどけない話」と「レモン哀歌」が演奏されます。歌唱は同じく清水邦子さん、ピアノは朝岡さんご本人です。

今回は、メインの歌い手さんは前澤悦子さんという方で、さらにバリトンの方も参加なさり、さまざまな朝岡さんの作品が演奏されます。

もう1件、原宿からシャンソン系で。

新・智恵子抄 智恵子飛ぶ

期 日 : 2022年11月7日(月) 11月8日(火)
会 場 : アコスタディオ 東京都渋谷区神宮前1丁目23-27 赤星ビル
時 間 : 11/7 19:00~  11/8 15:00~  19:00~
料 金 : 前売り4,000円 当日4,500円

出 演 : モンデンモモ(歌・舞踊) 田中知子(ピアノ) 伊藤耕司(チェロ)

本当に自分として 『これがわたしです!』という作品ができましたので、ぜひみなさまにご高覧頂きたくご案内を出させていただきました!!

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「智恵子抄」をはじめとした様々な光太郎詩に、ご自分でオリジナルの曲をつけて歌われているシャンソン系歌手のモンデンモモさん。他にミュージカルの監督的なこともやられたりなさっていて、そのあたりがお忙しかったのでしょう、ひさびさに智恵子抄系に特化したコンサートです。今回は舞踊系の要素も取り入れつつ、だそうで。


それぞれぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

午后山口村の田頭さん奥さんと難波田さん夫人とくる、レモンスカツシ風にソーダ水をつくりて進ずる、


昭和29年(1954)8月22日の日記より 光太郎72歳

山口村」は誤りで正しくは「太田村」、光太郎が昭和20年(1945)から同27年(1952)まで蟄居生活を送っていた岩手の寒村です。「田頭(たがしら)さん」は屋号で、当主は高橋雅郎元太田村長。「奥さん」はアサヨといい、夫妻で何くれとなく光太郎の世話を焼いてくれていました。息女の故・愛子さんは最近まで光太郎の語り部を務められていました。

難波田さん」は洋画家の難波田龍起。かつてあった駒込林町の光太郎アトリエ兼住居のすぐ裏手に住んでいました。その夫人と高橋アサヨがどういう伝手(つて)で知り合ったのかは不明です。たまたま同時刻に光太郎が起居していた貸しアトリエを訪れただけかも知れませんが。

レモンスカッシ風にソーダ水」、遠く大正初めの智恵子との結婚直後、既に光太郎がこれと同じか、似たようなものを作って来客をもてなしていたことが、詩人・歌人の上田静栄の回想に語られています。

新刊というか、ニューリリースというか、CDブックです。

心とカラダを整える おとなのための1分音読CDブック

2022年10月11日 自由国民社 定価1,800円+税

 おうち時間が増え、人との会話や声を出す時間が減ってしまった、という方も多いのではないでしょうか。
 文章を声に出して読む「音読」は、「気持ちが落ち着く」「やる気が出る」「ストレスが解消し、抵抗力がアップする」「脳が活性化する」「誤嚥性肺炎の予防に役立つ」といった健康効果があるといわれています。
 累計28万部突破の1分音読シリーズが「CD付ブック」になって登場!声の出演は平田満さん&宮崎美子さん。
 累計28万部突破の「おとなのための1分音読」シリーズは、おなじみの名作の中から1分程度で音読できる名文を多数収録。
 本作では、俳優の平田満さん、宮崎美子さんが音読するCDと冊子がセットになって発売されます。「手袋を買いに」「走れメロス」「ごんぎつね」ほか、気軽に楽しく読める44作品を収録しています。
 CDを真似して読んでみるのもよし、自分なりに工夫して読むのもよし。毎日の健康のために、音読を習慣にしてみませんか?

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CDには、光太郎詩「道程」(大正3年=1914)の朗読も含まれています。

担当されているのは俳優の平田満さん。
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平田さんと言えば、平成29年(2017)にWOWOWプライムさんで放映された「連続ドラマW 宮沢賢治の食卓」で、賢治の父にして、戦禍に遭った光太郎を花巻の自邸に疎開させてくれた政次郎役を好演なさっていました。

その賢治の代表作の一つであり、没後、光太郎が石碑の碑文を揮毫した「雨ニモマケズ」も、宮崎美子さんの朗読で収録されています。

ぜひお買い求めを。

【折々のことば・光太郎】

ひる頃モデルさん玄関まで、結婚せし由、品川の方にゐるとの事、


昭和29年(1954)7月4日の日記より 光太郎72歳

「モデルさん」は、生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」のモデルを務めた藤井照子。「プール・ヴーモデル紹介所」(現在も存続しています)に所属していましたが、結婚を機にモデル業はやめたようです。
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まだご存命なのかも知れませんが、その後の消息が分かりません。情報をお持ちの方はコメント欄等から御教示いただけると幸いです。

神奈川県鎌倉市から展示及びイベント情報です。

回想 高村光太郎と尾崎喜八 詩と友情 その9

期 日 : 2022年10月9日(日)~11月8日(火)の火・金・土・日曜日
会 場 : 笛ギャラリー 神奈川県鎌倉市山ノ内215
時 間 : 11:00~16:00
休 業 : 月・水・木曜日
料 金 : 無料

関連行事 : 高村光太郎と尾崎喜八の詩朗読会 10月16日(日) 15:00~
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会場の笛ギャラリーさん。光太郎のすぐ下の妹・しづのお孫さんにあたられる山端御夫妻が経営なさっている、カフェ兼ギャラリーです。

すぐお近くに、光太郎と交流の深かった詩人・尾崎喜八の令孫もお住まいで、両家に伝わる光太郎・喜八関係のさまざまな資料等を展示なさいます。昨年の様子はこちら

笛ギャラリーさんといえば、今年5月、NHKさんで放映された「鶴瓶の家族に乾杯 市川猿之助が鎌倉でがんばる人を探す旅&坂道を走る人を叱る」で、笑福亭鶴瓶さんがお店をご訪問。
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本当にアポ無しだそうで。まずはご主人。
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そこへ奥様も。
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そりゃ、いきなり鶴瓶さんがいらしたら驚きますわな(笑)。
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お世辞でなく、ここのコーヒーは本当に美味です(笑)。

近所の小学生が来店。
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子供たちが帰ったあと、御夫妻のなれそめ的なお話になり、その中で光太郎も。
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照れるご主人がとてもかわらいしく(笑)。
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これは存じませんでした。素敵ですね。

別の日の映像。先ほどの小学生も。
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こうした流れで、今回初めて、光太郎と喜八の詩の朗読会をやってみようということになったそうです。上記の通り、10月16日(日)です。4日前の時点で既に7名の出演申し込みがあったそうで。当日は当方、拝聴に参ります。
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まさにその通り。足を踏み入れるだけでほっこりさせられる空間です。

というわけで、ぜひ足をお運びください。北鎌倉・明月院さんから徒歩365歩です。
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【折々のことば・光太郎】

NHK録音班3人と秋山ちゑ子さんくる、録音、


昭和29年(1954)5月4日の日記より 光太郎72歳

平成28年(2016)に亡くなった、伝説的ラジオパーソナリティーの秋山ちえ子さん。この当時はNHKラジオで「私の見たこと、聞いたこと」という番組を担当なさっていました。どんな話題が出たのか、残念ながら録音が残っていないようで不明です。秋山さんの回想などにこの件が触れられていれば、と思うのですが……。

昭和40年(1965)封切りの日本映画「こころの山脈」(吉村公三郎監督、山岡久乃さん主演)。智恵子の故郷・福島県二本松市に隣接する本宮町(現・本宮市)を舞台にしています。東宝系で上映されましたが、製作は東宝さんではなく、「本宮方式映画製作の会」。当時としては画期的なシステムでした。現代のクラウドファンディングのように基金を募り、地域密着型の映画を作る、と、それが「本宮方式」。現代ではよくあるスタイルですが、その手のものの嚆矢として映画史に残る作品です。
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元々、本宮町では映画を教育に活用することが盛んで、町内の「本宮映画劇場」に小中学生が授業の一環として移動し、良質な映画を観るということをやっていたそうです。ところがそうした機会に子供たちに見せるに相応しいソフトが少ない→それなら自分たちで作ってしまおう、という流れでした。そこでキャストも地元の皆さんが大挙して動員されています。エキストラ的な出演だけでなく、準主役の少年も地元の素人でした。それだけに演技演技していなくて自然です。
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もちろん本職の俳優さんも。山岡さん以外には宇野重吉さん、吉行和子さん、殿山泰司さん、奈良岡朋子さん、大方斐紗子さんなどが脇を固めていました。
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さすがに皆さんお若いですね(笑)。

ただ、そういうコンセプトですから、ど派手なアクションシーンもなく、当時流行のエログロナンセンスなどももってのほか、もちろん怪獣も宇宙人も登場しません。したがって、その地味さのあまり、全国規模ではヒットしたとは言い難い結果でした。今で言う「親ガチャ」やネグレクトなども扱われ、内容的には心打たれるものですが……。

そうした「映画の街」としての歴史を語り継いでいこうと、本宮市ではNPO「本宮の映画文化を継承する会」が立ち上げられ、「こころの山脈」を含む内外の映画(意外と新しい話題作も)の上映を行う(しかも無料!)「カナリヤ映画祭」が行われています。当方、平成27年(2015)の第3回の際にお邪魔し、「こころの山脈」を拝見しました。

その後、「こころの山脈」が上映される年とそうでない年があり、また、ここ数年はコロナ禍。昨年は「こころの山脈」上映で9月に予定されていたのが中止となり、「やっぱりな」と思っていたところ、実は12月に延期で実施されていましたが、そちらには気づきませんでした。

さて、今年。

第10回カナリヤ映画祭

期 日 : 2022年10月2日(日)
会 場 : サンライズもとみや 本宮市矢来39-1
時 間 : 9:40~18:10
料 金 : 無料

上映作品
 10:10~ 「映画大好きポンポさん」(アニメーション) 日本/2021年 90分
 12:40~ 「Infection PiLia ~悩まされる現代~」
 本宮高等学校チームNEXUX/2022年 10分
 13:10~ 「夢」 本宮高等学校チーム叶える/2022年 10分
 14:20~ 「こころの山脈」 日本/1965年 104分
 16:20~ 「杜人」 日本/2022 101分

講演 『こころの山脈』を生んだ本宮の映画文化 新潟大学教授 柳沼宏寿氏 13:20~

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ところで書き忘れていましたが、「こころの山脈」、単に本宮町が舞台というだけでなく、光太郎の「智恵子抄」もモチーフとして使われています(そこでこのブログサイトでご紹介しているわけですが)。

阿武隈川にかかる昭代橋(下の橋)で、安達太良山を望みながら、産休補充教師の本間秀代(山岡久乃さん)が、教え子の清(当時の本宮小学校五年生)に「智恵子抄」の一節を語って聴かせるという場面。第10回カナリヤ映画祭のプロモーション動画に、ちょうどそのシーンが使われていました(2:07頃から)。

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上記はそのシーンのスチール写真です。

さらに、今年は第10回記念ということで、「こころの山脈」DVDの販売も為されるそうです。

というわけで、第10回カナリヤ映画祭、お近くの方(遠くの方も)、コロナ感染には十分お気を付けつつ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

午后三井銀行にゆき、納税等用をすませる、浅草にまはり映画を一館みる、大黒屋にて天丼、十一時かへる、


昭和29年(1954)3月11日の日記より 光太郎72歳

生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」制作のため、昭和27年(1952)に再上京する前、花巻郊外旧太田村蟄居時代も、折に触れて花巻町中心街で賢治実弟の清六らと一緒に、映画をよく観ていました。再上京後はさらにその頻度が増えています。この日観た作品は不明ですが、前月にはフランスのコメディー映画「Les Belles de Nuit」(夜ごとの美女)を鑑賞。ただし「あまりよしと思はず」と日記に書きましたが。

「こころの山脈」、光太郎にも観せたかったものです。

昨日は、久々に都内に出ておりました。上野公園の旧東京音楽学校奏楽堂さんで開催された「清水邦子リサイタル 清水邦子が贈る朝岡真木子の世界」拝聴のためです。
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奏楽堂さん、藝大美術館さん等に行く際に前を通過したことは数知れずでしたが、初めて中に入りました。
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昨日の演奏会では使われませんでしたが、ステージにはパイプオルガン。ほう、と思いました。

コロナ禍以来、各種演奏会自体減りましたし(だいぶ元に戻りつつありますが)、やはりコロナ禍ということもあって外出をできるだけ避けていたため、当方、この手の演奏会は久しぶりでした。
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ソプラノ歌手の清水邦子さんという方が、作曲家・朝岡真木子さんの作品を歌われるというコンセプト。ピアノ伴奏は朝岡さんご自身でした。
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二部構成で、第一部は各種組曲等からの抜粋。爽やかなイメージの曲、かわいらしい曲などが多めでしたが、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」に曲を付けた作品のみは、内容が内容だけに重厚で厳粛な感じでした。

終演後にご紹介がありましたが、作詞された星野ミミナさん、こわせ・たまみさん、それから岡崎カズヱさんも会場にいらしていました。与謝野晶子さんはいらしていませんでしたが(笑)。

第二部が「組曲 智恵子抄」全5曲。30分弱でしたが、光太郎智恵子の世界観が実によく表されていました。「智恵子抄」の詩にメロディーをつけたものは、クラシック系で独唱歌曲や合唱曲、オペラもありますし、他に伝統邦楽系やシャンソン系、J-POP系など、実に多くの方々がそれぞれの解釈で作曲なさっていまして、二番煎じにならず独自性を出すのも難しくなってきているように思われますが、朝岡さんの曲作りにはオリジナリティーが発揮されていたと思われます。

全体的には歌曲というよりオペラのアリアのような。そしてそれが清水さんの確かな歌唱力に裏付けられて、ぐいぐい引き込まれました。また、朝岡さんご自身が弾かれていたピアノ伴奏も実に効果的でした。

第1曲「人に」(大正元年=1912)。「いやなんです/あなたのいつてしまふのが――」で始まる、詩集『智恵子抄』の巻頭を飾る詩。この詩の書かれた前年に二人は知り合いました。「――それでも恋とはちがひます」などと言いつつ、抑えきれない智恵子への思い。十六分音符の連続、5連符や6連符も交じりで、一種早口言葉のような部分もあったりでした。しかし、光太郎の熱情のほとばしりが頂点に達した部分では長いフレーズで「サンターーーマリーアーー」。なるほど、と思いました。

続いて「あどけない話」(昭和3年=1928)。結婚し、それなりに充実した生活を送っていた光太郎智恵子。しかし、智恵子の実家の造り酒屋が傾きはじめ(不動産登記簿によれば、この詩が書かれた前日に家屋の一部が福島区裁判所の決定で、仮差し押さえの処分を受けています。翌昭和4年(1929)には、全ての家屋敷は人手に渡り、実家の家族は離散、智恵子は帰るべき故郷を失います)、さらに生涯の道と思い定めたはずの油絵制作もうまくゆかず、「東京には空が無い」という心境に。触れれば崩れそうな不安定な智恵子の内面がよく表現されていました。

そして毀れてしまった智恵子を謳った「千鳥と遊ぶ智恵子」。Aモール、アレグロ、センプレスタッカートで「タタッタ タタッタ タタッタ タタッタ」と、ピアノの左手。緊迫した情景です。そこにタイトル通りに千鳥と遊ぶ智恵子、「ちい、ちい、ちい」という千鳥の鳴き声が被さっていきます。終末近く、「人間商売さらりとやめて……」では、一転、バラード調。そうかと思うと、最後のフレーズ「二丁も離れた防風林の……」以下はメロディー無しのセリフ。そしてレントで静かに終わります。

第4曲「値(あ)ひがたき智恵子」。基本、8分の5拍子です。調和のとれた3拍子、4拍子、または8分の6拍子などでは夢幻界に彷徨(さまよ)う智恵子が表現できないということでしょうか。

ここで、4月に刊行された『朝岡真木子歌曲集2』には収録されていない、インストゥルメンタルの「間奏曲」。「あれっ」と思いました。もの哀しくも、メロディアス。この曲だけでも「智恵子抄」の世界観がよく表されていました。

そしてアタッカで終曲「レモン哀歌」に突入。一転してドゥア。予定調和的な。「そんなにもあなたはレモンを待つてゐた」……。うるっと来てしまいました。ちなみに昨日の都内は台風のため、開演前は雨でしたが、この「レモン哀歌」の演奏中くらいに、窓から陽光が差し込みはじめました。智恵子の魂が天上へと誘(いざな)われていくようなイメージでした。

終演後のお二人。
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やりきった感が溢れていますね。

さらに全てハネたあとの入り口付近。お二人がお見送り。
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朝岡さんが当方の知り合いの知り合いだったため招待券を頂いて伺ったので、お礼かたがたお二人とお話をさせていただきました。来春にはコロナ禍も収まっていることを改めて願いつつ、連翹忌の集いへのお誘いも。

今後とも、お二人のご活躍を祈念いたします。

【折々のことば・光太郎】

奥平さんの帖に揮毫、リンゴの画を切紙でつくる、洋モク、ペルメルの赤い包紙でつくる、

昭和29年(1954)2月18日の日記より 光太郎72歳

奥平さんの帖」は、「有機無機帖」。交流のあった美術史家・奥平英雄のために書いた書画帖です。「ペルメル」は「ポールモール(PALL MALL)」。赤いパッケージが特徴的なアメリカのタバコで、現在でも日本で販売されているでしょう。「洋モク」という語は、現代の若者には通じないかもしれませんね(笑)。当方、若い頃、ジタン(庄野真代さんの「飛んでイスタンブール」にも登場します)やらゴロワーズやらを気取って吸っていた時期もありました(笑)。
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そして千疋屋の包装紙なども使って紙絵を作った智恵子へのオマージュ。泣けますね(笑)。

ラジオ番組の紹介です。

ビバ! 合唱 合唱で聴く詩人の世界(13)~高村光太郎の世界

NHK FM 2022年9月24日(土) 午前6時00分~ 午前6時55分

世界中の様々な合唱曲をお届けする、ファン必聴のコーラス専門番組。あなたの知らない美しいハーモニーが見つかるかも。リクエストも大募集です。

「智恵子抄より 「或る夜のこころ」」
高村光太郎:作詞 清水脩:作曲
(合唱)東京リーダーターフェル、(ピアノ)三浦洋一、(指揮)清水脩
(8分08秒)<ユニバーサルミュージック CZ28-9094>

「女声合唱とピアノのための 組曲「智恵子抄」から 第2曲「亡き人に」」
高村光太郎:作詞 鈴木輝昭:作曲
(合唱)福島県立橘高等学校合唱団、(ピアノ)鈴木あずさ、(指揮)大竹隆
(6分38秒)
<日本アコースティックレコーズ NARD-5033>

「混声合唱とピアノのための組曲「レモン哀歌」から 第3曲「レモン哀歌」」
高村光太郎:作詞 西村朗:作曲
(合唱)鹿児島高等学校音楽部、(ピアノ)桃坂寛子、(指揮)片倉淳
(6分20秒)<ブレーン BR-35018>

「女声合唱とピアノのための「冬が来た」 第2曲「冬が来た」、第4曲「冬の奴」」
高村光太郎:作詞 三好真亜沙:作曲
(合唱)女声アンサンブルJuri、(ピアノ)五味貴秋、(指揮)藤井宏樹
(8分02秒)<ジョバンニ GVCS-11410>

「「愛のうた-光太郎・智恵子-男声合唱とフルート、クラリネット、弦楽オーケストラのために」から  第4曲「レモン哀歌」、第5曲「元素智恵子」」
高村光太郎:作詞 新実徳英:作曲
(合唱)慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
(管弦楽)ザ・オペラ・バンド (指揮)佐藤正浩
(13分13秒) ~東京芸術劇場コンサートホール(2022年1月10日)~

出演 戸崎文葉(合唱指揮者) 鷹羽弘晃(作曲家) 
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合唱の専門番組です。特定の国にスポットを当てた回(先週のオンエアは「合唱の旅~チェコ」)、一人の作曲家の作品を紹介したり(先々週が「モーツァルト~若き日の合唱曲(2)」)しています。また、唱歌の合唱版や、定番合唱曲の特集の回もありました。そんな中で、「合唱で聴く詩人の世界」。作詞、というか詩人の詩に曲を付けた合唱曲ということで、毎回一人の詩人を取り上げています。直近は大手拓次、その前が高田敏子、萩原朔太郎の回もあったようです。

そして次回が光太郎。ありがたし。002

ラインナップとしては、まず、故・清水脩氏作曲の「或る夜のこころ」。男声合唱で、東京リーダーターフェルさんの演奏。慶應義塾大学ワグネルソサエティー男声合唱団さんの依嘱で、昭和40年(1965)6月の東京六大学合唱連盟の演奏会において初演されました。東芝EMIさんからリリースされたCD「合唱名曲コレクション21(男声合唱) 月光とピエロ」に収められています。清水氏はこの他、独唱歌曲、混声合唱、さらに箏曲でも光太郎詩に曲を付けられました。特に「智恵子抄巻末のうた六首」が有名です。

003続いて鈴木輝昭氏作曲で「女声合唱とピアノのための 組曲「智恵子抄」から 第2曲「亡き人に」」。智恵子の母校・福島高等女学校の後身である県立橘高等学校合唱団さんの委嘱作品です。同団、全3曲のこの組曲から1曲ずつ自由曲として選曲し、平成21年(2009)から3年間、全日本合唱コンクール全国大会に出場し、上位入賞しています。また、神奈川の清泉女学院さんも同コンクールでこの曲を自由曲に選定し出場、金賞を受賞されました。今回放送されるのは、橘高校合唱団さんの演奏で、CD「鈴木輝昭 合唱の地平」(日本アコースティックレコーズさん)収録のものです。

0043曲目は「混声合唱とピアノのための組曲「レモン哀歌」から 第3曲「レモン哀歌」。西村朗氏の作曲です。こちらは鹿児島高等学校音楽部さんの演奏が放送されますが、平成30年(2018)の全日本合唱コンクール第71回大会でのライブ録音です。この曲、昨年には東京混声合唱団さんもコンサートで演奏されています。平成21年(2009)には全音楽譜出版さんから出た楽譜集にも収録されています。初演は平成20年(2008)、関西合唱団さんの依嘱でした。

4曲目、5曲目は、三好真亜沙さん作曲「女声合唱とピアノのための冬が来た」から、 第2曲「冬が来た」、第4曲「冬の奴」。平成26年(2014)の初演「The Premiere Vol.3 〜夏のオール新作初演コンサート〜」を、当方、紀尾井ホールで拝聴して参りました。第4曲「冬の奴」は、やはり全日本合唱コンクールで演奏されたこともあります。東京の豊島岡女子学園高等学校コーラス部さん。みごとに銀賞に輝きました。今回の放送は、初演の際のライブ録音をCD化したものから。楽譜はカワイ出版さんから出ています。
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最後に「「愛のうた-光太郎・智恵子-男声合唱とフルート、クラリネット、弦楽オーケストラのために」から 第4曲「レモン哀歌」、第5曲「元素智恵子」」。新実徳英氏の作曲で、合唱は慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団さん。管弦楽がザ・オペラ・バンドさん(指揮・佐藤正浩氏)。今年初演されたばかりの新作です。やはり初演の際のライブ録音が放送されるようです。楽譜DVDが出ています。
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リアルタイムのラジオ放送、さらにNHKさんの「らじる★らじる」でパソコンやスマートフォンから放送を聴くことができるようです。ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

午前安倍能成氏くる、岩波の胸像のこと、


昭和29年(1954)1月21日の日記より 光太郎72歳

「岩波」は岩波書店の創業者・岩波茂雄。昭和21年(1946)に歿しました。生前は光太郎と関わりが深く、その胸像制作を光太郎に依頼するプロジェクトがあり、光太郎も乗り気だったのですが、いかんせん健康状態がそれを許しませんでした。もし実現していたら、文化人の胸像として日本を代表する作品となっていたはずで、残念です。

胸像といえば、つい最近、何やらとんでもない人物の胸像制作プロジェクトが進んでいると、嘆かわしい報道がなされていますが(笑)。

光太郎第二の故郷・花巻からの情報を書くつもりでしたが、予定変更。昨日開幕し、今日は中日(なかび)、明日には閉幕という彫刻個展です。

特別企画 秋川雅史 木彫展

期 日 : 2022年9月17日(土)~9月19日(月・祝)
会 場 : 靖山画廊 東京都中央区銀座 5-14-16 銀座アビタシオン 1F
時 間 : 11:00~17:00
料 金 : 無料

究極の声を追い求めて歌をうたう。思い描くイメージを一本の木から彫り出していく。どちらもやり直しはきかない。このたびテノール歌手秋川雅史が、ジャンルを超えた芸術家として初の個展を開催致します。3年の歳月をかけ制作した「木彫楠公像」など、魂が込められた作品をご覧ください。

※場合によっては、入場制限させて頂く可能性もございます。

テノール歌手の秋川雅史さん。仏師の関侊雲氏に師事して木彫にも取り組まれ、昨年の二科展では、光太郎の父・光雲が主任となって作られた皇居前広場の楠木正成像の模刻作品により、彫刻部門で入選を果たされました。当該作品、さらに今年の二科展入賞作品も展示されるとのこと。秋川さんご本人によるプレス対応を、報道各社さんがニュースにしています。

『東京スポーツ』さん。

秋川雅史は木彫で二刀流 歌手活動回復し「最近彫れないストレスがあって…」

 テノール歌手・秋川雅史(54)が17日、東京・中央区の「靖山画廊」で初の個展「秋川雅史 木彫展」(19日まで)の開催に伴い、取材に応じた。
 大ヒット曲「千の風になって」で知られる秋川だが、趣味で木彫を始め、個展の開催が決定した。
 コロナ禍の影響で、コンサートなどは中止や延期となり、木彫を制作。最近は状況が徐々に回復傾向で、歌手としての活動も戻ってきており、秋川は「最近彫れないストレスがあって…。テレビ番組収録の楽屋で彫っています。、待ち時間が長いので」と明かした。
 歌手と木彫の二刀流については「歌手はメインの本業。お客様が求める以上のパフォーマンスをするというプレッシャーがあって、歌の練習ってつらいことが多いけど、彫刻の練習は楽しいですね。自分なりに自分のレベルで成長していけたら」と語った。
 個展では、昨年の第105回二科展彫刻部門で入選した木彫楠公像(楠木正成像)などを展示。同像の制作は、皇居外苑国民公園にある楠木正成像を見てかっこいいと思ったことがきっかけだという。
 同像を前に「これが彫りたくて、最終目標と思って彫り始めて3年。最初は四角い木で、遠い道のりでした」と振り返った。
東スポ
『中日スポーツ』さん。

「歌手は辛いことも多いが…彫刻は楽しいことばかり」秋川雅史が自身初の個展「これからも二刀流で」  

 テノール歌手の秋川雅史(54)が17日、東京・銀座の靖山画廊で自身初の個展「木彫展」の取材会を行った。
 昨年の「二科展」彫刻部門で入賞した「楠木正成像」や「金剛力士 仁王像」など、この11年間に彫りためてきた木彫刻11点を19日まで同画廊で展示。さらに今年の二科展で入賞した「木彫龍図」は二科展終了後の19日に披露する。
 念願だった個展に秋川は「10年前の作品を見ると、未熟だなと思います。人間はいつまでも成長するんだなとも思いました。11年の成長の過程を見てほしいです」とアピール。2年連続での二科展入賞には、「昨年とは違って、今回はアーティストとしてちゃんと作っているか、ということを見られた結果だと思うので、昨年以上にうれしいです。来年から? どうしましょうかね。また頑張って作ります!」と笑顔を見せた。
 木彫刻を始めたのは、故郷愛媛県西条市に伝わる西条だんじり彫刻の魅力に触発されたのがきっかけだったという。彫刻教室にも通い、1年に一作のペースで作品を仕上げてきた。「本業の歌手はプレッシャーがあって辛いことも多いです。でも、彫刻は楽しいことばかり。のめり込める時間がいいです」。今後には「歌と木彫刻、これからも二刀流で数々の記録を打ち立てていきたい」と力を込めた。
中日スポーツ
『サンケイスポーツ』さん。

歌手、秋川雅史が木彫の初個展を開催 「1日5、6時間。彫れない日はストレスで」と〝二刀流〟を宣言 二科展も2年連続入選 

 テノール歌手、秋川雅史(54)が17日、東京・銀座の靖山画廊で初の個展「秋川雅史 木彫展」(19日まで)を開いた。
 「彫刻を始めて11年。念願だった個展ができることになりました」と秋川は感激しきり。東京・新国立新美術館で19日まで開催中の「第106回二科展」彫刻部門で「木彫龍図」が2年連続の入選。個展では、昨年の彫刻部門で芸能界初の入選を果たした「木彫楠公像(楠木正成像)」を中心に、二科展出品中の最新作を除く過去の全作品12点や、代表曲「千の風になって」の歌詞をしたためた書などを展示する。
 出身の愛媛・西条市でだんじり祭りの彫刻に幼少期から「血が騒いだ」と言う。43歳で一念発起し、「彫刻、教室、東京でネットで検索して、一番上に出てきた先生に入門した」と笑って告白。「いまでは1日5、6時間、地方公演中やテレビ局の楽屋でも彫ります。彫り始めると止まらなくなる。彫れない日はストレスで」とのめりこむ。
 昨年の入選作のモデルとなった皇居外苑前の楠公像は「とにかくかっこいい。彫りたい!と思った」。埼玉・深谷市にある畠山重忠像にも心をひかれていると言い、「コンサートで全国に行くときも銅像をチェックしています。いま(山梨・JR甲府駅前の)武田信玄像を彫り始めたところ」と〝銅像シリーズ〟を今後のテーマに掲げる。
 二科展挑戦のきっかけは同じ事務所所属のモデル、押切もえ(42)の絵画での入選に「触発された」ことだったという。最後は「彫刻家と歌手という〝二刀流〟で数々の記録を打ち立てていきたい。大谷選手? 超えたいですねえ!」と取材陣への笑顔のリップサービスで締めくくった。
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日テレさん。

秋川雅史、彫刻家と歌手の二刀流“大谷選手を超え目指す”

 『千の風になって』の楽曲で知られる、テノール歌手の秋川雅史さん(54)が17日、これまで秋川さんが彫り続けた彫刻作品を集めた、自身初の個展イベントに登場。歌手と彫刻家の“二刀流”を宣言し、世界で活躍する”二刀流選手”超えの記録を目指すと語りました。
 木彫刻家としての顔も持つ秋川さんが、これまでの彫刻作品を集めた初の個展『秋川雅史 木彫展』を17日~19日までの3日間開催します。秋川さんの彫刻作品は、昨年の美術の展覧会『第105回 二科展』の彫刻部門で初入選し、今年の『第106回 二科展』でも2年連続となる入選に輝きました。
■秋川「ネットで調べて一番上のところに」彫刻の師との意外な出会い
 43歳から彫刻を始めたという秋川さんは、『第106回 二科展』で入選となった『木彫龍図』について「愛媛県の西条市出身で、だんじり彫刻を見て育ったので、彫刻を見ると血が騒ぐ。だんじり彫刻は、龍が見せ場なんで、自分だったらこういう龍を彫りたいとイメージがありました」と語りました。
 また、彫刻を始めるにあたり、教室に通ったそうで「インターネットで『彫刻、教室、東京』とキーワードを入れて一番上に出てきたところに行きました。そこの先生が超一級の先生でした」と、師匠となる先生との運命的な出会いを明かしました。
 歌手としても活動する秋川さんは今後について「彫刻もアートだし、歌もアート。広い意味でアーティストと。だけどその中で、歌手と彫刻家の二刀流で、数々の記録を打ち立てたい。大谷選手を超えたいですね」と、世界で活躍する“大谷選手超えの二刀流”を目指すと宣言しました。
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テレ朝さん。

秋川雅史、初の個展スタート「“二刀流”で数々の記録を」 

 テノール歌手・秋川雅史(54)が17日、東京・銀座の靖山画廊で初の個展「秋川雅史 木彫展」を開催(19日まで)。報道陣の取材に応じた。
 秋川は昨年の二科展彫刻部門に「木彫楠公像(楠木正成像)」で初入選。今年、「木彫龍図」で2年連続となる入選を果たした。
 個展では「木彫楠公像」をはじめ、これまで手がけた彫刻や書を展示。秋川は、「彫刻を始めて11年。念願だった個展が初開催出来ることになりました」と喜び、「成長の過程を見てもらえたら」と呼びかけた。
 地元・愛媛県西条市の「西条まつり」で彫刻を見て育ち、「彫刻を見ると血が騒ぐ」とルーツを明かす。1日5~6時間を彫刻に費やしているが、「のめり込める時間」と表現し、「歌手は本業で、求めている以上のものを提供しないといけない。歌の練習はつらいことが多いけど、彫刻は楽しいことばっかり」と笑った。
 今後の目標を聞かれると、「全国に格好良い銅像がある。その銅像を木で彫るのがテーマ。武田信玄像に手をかけ始めた」と掲げた。歌手と彫刻家の“二刀流”だが、「広い意味でアーティスト。その中の二刀流で数々の記録を打ち立てていきたい。大谷(翔平)選手を超えたいですね」とライバル視した。
テレ朝3
テレ朝 テレ朝2
今後とも、秋川さんのご活躍を祈念いたします。

【折々のことば・光太郎】

高村晴雲くる、玄関で。


昭和29年(1954)1月11日(火)の日記より 光太郎72歳

「高村晴雲」は、光雲の師・初代高村東雲の孫で、本名は東吉郎。かつては光雲に師事し、この時点では三代東雲を襲名していたのですが、光太郎はうっかり昔の号の晴雲と記録してしまったようです。しばらく北海道にいた三代東雲、光太郎に先立って昭和26年(1951)に帰京しています。

























京都から演劇の公演情報です。

演劇ビギナーズユニット2022(#28)修了公演XX文士(ハロゲンブンシ)「日本文学盛衰史」

期 日 : 2022年9月24日(土)・9月25日(日)
会 場 : 京都市東山青少年活動センター
時 間 : 9月24日(土)①13:30/②18:00 9月25日(日)③13:00
料 金 : 前売900円(日時指定でのご予約になります) 当日1,200円

6月から始まった初心者対象の演劇セミナーの修了公演です。今年で28回目の公演。演出を担当する岡本昌也さん(安住の地)と、演出補の中村彩乃さん(安住の地/劇団飛び道具)と初めて出会った17人の仲間が一緒に創作しました。ぜひご来場ください。
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「日本文学盛衰史」は、高橋源一郎氏の原作、平田オリザ氏が脚本を書かれ、平成30年(2018)に劇団・青年団さんによって初演されました。夏目漱石、島崎藤村、田山花袋、石川啄木、芥川龍之介、北原白秋ら、近代の文豪達の群像劇だそうで、光太郎も登場人物の一人に名を連ねています。

コロナ感染には十分お気を付けつつ、お近くの方(遠くの方でも)、ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

奥平さんの帖にウエルハアランの詩をペンでかきかける、


昭和29年(1954)1月2日の日記より 光太郎72歳
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奥平さん」は美術史家の奥平英雄。「」は、奥平に請われて書くことにした書画帖で、光太郎自ら「有機無機帖」と名付けました。全18面、途中で入院等もあり完成には2年以上かかりました。
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現在、目黒区駒場の日本近代文学館さんに所蔵されています。昨年、富山県水墨美術館さんで開催された「チューリップテレビ開局30周年記念「画壇の三筆」熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展」で展示させていただきました。

福岡から演劇公演の情報です。

椿エンタープライズ『百花繚乱』

期 日 : 2022年9月25日(日)
会 場 : シアターカフェ 愛と青春のふる~れ 福岡市東区箱崎1-33-9 ウインドウビル3F
時 間 : 14:00~
料 金 : 観劇¥3000【軽食&ワンドリンク付き】
      観劇+交流会¥6000【料理付き2時間飲み放題】 学生は¥1000引き

第一部 「朗読ミュージカル」和香奈/Ash/MIZUKI
第二部 「パントマイム」TEN—SHO
第三部 「智恵子抄」玄海椿ひとり芝居(朗読/長澤昭)
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福岡を拠点に演劇活動を行っていらっしゃる玄海椿さんによる一人芝居「智恵子抄」がプログラムに入っています。同作、玄海さんのレパートリーの一つで、時折、上演されています。『百花繚乱』は「マンスリー公演」だそうで、地元に根を張って毎月上演されている点は素晴らしいと存じます。

もう10年前になりますが、当方、福岡まで拝見に伺いました。黒子(くろこ)のような朗読の方がいらっしゃり、それ以外は玄海さんの一人芝居です。その意味では野田秀樹さん脚本の「売り言葉」に近い部分があるのですが、「売り言葉」は智恵子を追い詰めた光太郎を糾弾する要素がかなり強いのに対し、こちらはさまざまな行き違いから智恵子が壊れていく、という感じ。光太郎ディスり度は「売り言葉」ほど高くないように感じました。

お近くの方(遠くの方も都合がつけば)、コロナ感染には十分お気を付けつつ、ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

モチ切り(取手のもち)、 (入浴)夜在宅、 川鍋ラジオ店より受信機返却し来る、あまりこわれすぎてゐる由、 ラジオなどきく、 十一時頃ねる、

昭和28年(1953)12月31日の日記より 光太郎71歳

生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」を完成させ、除幕まで行われた昭和28年(1953)もこの日で終わり。

取手」は茨城県取手町(現・取手市)。智恵子の最期を看取った智恵子姪の春子が嫁いだ先で、餅は春子からの贈り物でした。ラジオは複数台持っており、そのうちの一台。1週間前に修理を頼んでいましたが、無理とのことで、壊れていないラジオの方を聴いたようです。

都内から演奏会情報です。

清水邦子リサイタル 清水邦子が贈る朝岡真木子の世界

期 日 : 2022年9月24日(土)
会 場 : 旧東京音楽学校奏楽堂 東京都台東区上野公園8番43号
時 間 : 13:30~
料 金 : 全席自由 4,000円

清水邦子が朝岡真木子の組曲『智恵子抄』全曲に挑みます。

曲 目 : 高村光太郎 組曲「智恵子抄」
       1.人に  2.あどけない話  3.千鳥と遊ぶ智恵子
       4.値ひがたき智恵子  5.レモン哀歌
      与謝野晶子 君死にたもうことなかれ
      茨木のり子 一人は賑やか
      星乃ミミナ 生命の彩り
      岡崎カズヱ 私に歌があればこそ
      こわせ・たまみ 秋風の中で
      矢崎節夫 しゃなりと あるく
      他

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朝岡真木子氏作曲の独唱歌曲を、清水邦子さんという方が歌われるコンサート。

組曲「智恵子抄」は、令和元年(2019)に全曲の改訂初演が行われましたが、その後、今年4月に刊行された『朝岡真木子歌曲集2』に収められています。その他、ぽつりぽつりと抜粋で各種演奏会のプログラムに入っていました。

名古屋二期会 日本歌曲コンサート~朝岡真木子の歌曲を中心として~
朝岡真木子 歌曲コンサート 第5回。

上記、あくまで当方の把握していた限りのもので、他にも演奏される機会があったかもしれません。

コロナ感染には十分お気を付けつつ、ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】001

午后五時万安にゆく、十和田委員会解散の会、谷口、草野、土方、菊池、藤島、余の六人、十時過ぎ終り、「好きな場所」に皆で立より、十二時かへる、


昭和28年(1953)12月28日の日記より 光太郎71歳

万安」は「万安楼」。現在は銀座タワーとなっている場所です。「十和田委員会」は、この年10月に除幕された光太郎生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」の在京建設委員会。その解散式という名目でしたが、気の置けないメンバーでもあり、忘年会的な要素が強かったように思われます。一応、これで「乙女の像」がらみの諸々は全て終了、ということにはなりましたが。

好きな場所」は、小説家武田麟太郎の未亡人・とめが経営していた酒場。武田は昭和14年(1939)に、「好きな場所」という短編小説で光太郎を登場させています。

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