皇室の名宝 ―皇室と九州を結ぶ美―
関連行事
日時:令和3年8月1日(日) 会場:九州国立博物館1階ミュージアムホール
望月規史(九州国立博物館主任研究員)
原田あゆみ(九州国立博物館文化財課長)
光太郎の父、光雲の手になる作が2点、出ています。
まず、宮内庁三の丸尚蔵館さん所収の大きな木彫「松樹鷹置物」(大正13年=1924)。
そしてブロンズの「萬歳楽置物」(大正5年=1916)。こちらは木彫原型が、光雲と、その高弟の山崎朝雲の作、螺鈿の施された台座部分の制作者は、由木尾雪雄という蒔絵師です。大礼(即位式)に際して貴族院から大正天皇に献上されました。
それぞれ拝見したことがありますが、共に逸品です。
その他、奈良時代から昭和までの、まさしく「名宝」がずらり。出品目録はこちらです。特に、今月、国の文化審議会から国宝指定の答申があった、「蒙古襲来絵詞」(13世紀)、伊藤若冲の「動植綵絵」など、タイムリーな作も出品されています。

これまで、こうした皇室所蔵の作は、慣例的に、文化財指定の対象外とされてきたところがありましたが、今回の答申から、そのタブーが取り払われました。
そうなると、光雲の「松樹鷹」なども、やがては、国宝とまではいかなくとも、重要文化財指定くらいは受けてもおかしくありません。
ただ、三の丸尚蔵館さんの収蔵品は1万点近くを数え、そのうち国宝や重要文化財級は約2,500点といわれていますので、少しずつ、ということになるのでしょう。
さて、コロナ感染にはお気を付けつつ、ぜひ足をお運び下さい。
【折々のことば・光太郎】
朝佐藤弘さん、配給の作業衣を届けてくれる。新製品にて大きさよろしく、品もわろくなし。250円にては安価也。
「佐藤弘さん」は、光太郎が蟄居生活を送っていた花巻郊外旧太田村の山小屋近くの開拓地に入植していた青年です。当時、開拓者には配給が多く、しかし、配給といっても無料ではありませんでした。そこで佐藤は買いきれないものを光太郎に廻していたようです。
当該の「作業衣」、これかな、と。