昨日の『岩手日報』さんから。

光太郎の魅力広める起業 花巻・記念館で勤務した女性ら 活動充実へ合同会社 カレンダー販売や展示

 花巻市で暮らした彫刻家で詩人の高村光太郎(1883~1956年)の顕彰活動を続ける女性らが、合同会社「やつかのもり」(藤原正代表社員)を設立した。光太郎の食卓を再現した写真を使ったカレンダー販売や、道の駅はなまき西南(同市轟木)での展示、ブログ運営などを展開。本県を愛した光太郎の魅力を広く発信する。
 同社は同市太田の高村光太郎記念館で勤務した女性8人と「賢治と光太郎の郷(さと)」と銘打ち関連グッズも販売する道の駅の役員藤原代表社員(69)の計9人で組織。市内外で顕彰活動を進めようと4月に設立し、光太郎が過ごした山荘に自生するハンノキの方言「やつか」を社名にした。
 事業第1弾となるカレンダーは光太郎が宮沢賢治の家族に振る舞ったとされるアカシアの花の天ぷらなど、文献から推測して再現した料理の写真を掲載した。見開きA3判で500部作製し、800円。
 道の駅では賢治と光太郎に関連した展示を企画。月に1度販売する弁当「光太郎ランチ」の基となる資料提供も行う。
 光太郎ゆかりの場所を歩くブログ「こうたろう散歩道」を運営し、盛岡市でのイベント開催も検討する。
 藤原代表は「多くの人を巻き込み、郷土が誇る偉人の魅力を発信したい」と意気込み、記念館で30年勤務し、光太郎が校訓を贈った旧山口小学校に通った新渕和子副代表(69)は「校訓『正直親切』は、平和を願う気持ちそのもの。その精神をしっかり伝えていきたい」と誓う。
 カレンダーは道の駅などで販売。Eメール(kotarocafe30@gmail.com)でも申し込みを受け付ける。

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というわけで、昨年オープンした「道の駅はなまき西南(愛称・賢治と光太郎の郷)」さんを拠点に、さまざまな光太郎顕彰活動を事業化する会社「やつかの森LLC」さんが立ち上がりました。

まず、記事にある通り、光太郎の食卓カレンダー花巻まち散歩マガジンMachicoco(マチココ)』さんに連載中の「光太郎レシピ」に使われた写真を元に構成されています。
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こちらに10部贈って下さいまして、保存用を除いた残り9部をフェイスブックで「送料のみでお分けします」と書き込みましたところ、即日完売。購入して下さった方々から好評でした。

さらに、昨年から行われている「光太郎ランチ」。道の駅のテナント「ミレットキッチン花(フラワー)」さんとのコラボです。毎月15日、10食の限定販売だそうで、昨日の販売分がこちら。
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上記画像、後に写っているのは道の駅はなまき西南さんのインフォメーションスペース。光太郎、賢治に関する説明パネルがあり、さらに以前にはなかった光太郎詩「岩手の人」(昭和24年=1949)の書額。光太郎の筆跡ではなく、現代の方が書かれたもののようですが。

今後、さらにいろいろと事業が展開されていくようで、頑張っていただきたいものです。

【折々のことば・光太郎】

午前、二階で揮毫、「雨ニモマケズ」の後半を横にかく。一枚書き損じ、二枚書く。尚、板の小額に「彧彧」と書く。院長さん得意の文句。面白く書けたり。

昭和22年(1947)10月10日の日記より 光太郎65歳

花巻郊外旧太田村の山小屋を1週間程あけ、花巻町桜町の佐藤隆房(院長さん)邸に厄介になっていた時の記述です。

「雨ニモマケズ」後半の書はこちら。
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前日には前半も書いています。
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001これらは佐藤隆房邸、宮沢賢治詩碑近くの桜地人館さんで展示されています。

「彧彧」は右の画像。佐藤隆房の回想を引きましょう。

 私は杉の木の並び立つ姿を表現する最もよい字がないかと漢和大辞林を始めから終わりまでくって遂に「彧」の字を探し出しました。先生が山から来たとき私が
「いつかの『ちくちく』(矗々)の字は落第したようですから、漢和大辞林からこういう文字を探しました。」
と紙片に書いたのを出し
「『或』(あるいは)のひっさげ一本のところが三本になってい、これは『エキ』又は『イク』と読んで、『彡』で引くのです。玉蜀黍(とうもろこし)などが繁茂した姿で、『馥郁』の『郁』という字の古文字だそうです。これでどうですか。」
(中略)
「ホウ成程。面白いですね。イクイク、エキエキですか。ここではエキエキですね。その中(うち)書きましょう。」
 先生は墨痕あざやかにその額板にたてに書きました。私はそれをいただいて、潺湲楼の脇床の正面のなげしの上にかけました。先生は坐ってそれを眺めて
「これはよくできた。三本のひっかけは本当に玉蜀黍が風になびいているようだ。」

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こちらは佐藤邸の離れ(潺湲楼)にしばらく掲げられていましたが、現在は花巻高村光太郎記念館さんの所蔵となっています。