11月16日(月)、福島二本松から帰ったところ、注文した書籍が届いておりました。

井原市立田中美術館さんで開催中の特別展「没後110年 荻原守衛〈碌山〉―ロダンに学んだ若き天才彫刻家―」図録です。
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題名の通り、光太郎の親友だった彫刻家・碌山荻原守衛を中心に据えた展覧会ですが、親友ということで、光太郎ブロンズも展示されています。

代表作「手」。台東区の朝倉彫塑館さん所蔵のもので、数少ない光太郎生前の鋳造にして、台座も光太郎が自身で彫ったものです。
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光太郎が東京美術学校彫刻科を出た際の卒業制作「獅子吼」(明治35年=1902 東京藝術大学蔵)、父・光雲像を別として、初めてきちんと依頼されて造った肖像「園田孝吉像(大正4年=1915 碌山美術館蔵)」。
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横浜から逃げてきた水商売の少女をかくまい、代わりにモデルになってもらって造られた「裸婦坐像」(大正6年=1917 呉市美術館蔵)、「手」とほぼ同じ頃造られた「」(大正7年=1918 碌山美術館蔵)。
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造花を売り歩いて糊口をしのいでた元旗本の老人をモデルにした「老人の首」(大正14年=1925 東京国立博物館蔵)。東京美術学校での恩師を造った「黒田清輝胸像」(昭和7年=1932 東京藝術大学蔵)。
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その他、守衛はもちろん、「同時代の作家」ということで、ロダン、ブールデル、マイヨール、長尾杢太郎、中村不折、小山正太郎、柳敬助、齋藤与里、朝倉文夫、戸張孤雁、中村彝、鶴田吾郎、堀進二、中原悌二郎、石井鶴三、藤川勇造。それぞれの出品作画像と作品解説、略歴。

そして「生誕130年彫刻家高村光太郎」展でお世話になった同館学芸員・青木寛明氏による長文の解説「荻原守衛の生涯」が掲載されています。

届いた封筒を手にして「おっ」と思ったのですが、この手の図録には珍しい、コンパクトなA5サイズです。それで十分だな、と感じました。同館サイトに案内が出ていますが、現金書留で手配し、入手可能。定価1,000円+送料370円です。ぜひどうぞ。

また、展覧会としては今月29日(日)までの会期となっています。

【折々のことば・光太郎】

われの短歌に題して「馬盥」といふ。最もわが意を得たり。鉄幹先生のかゝる才は驚くべきものあり。

明治36年(1903)4月1日の日記より 光太郎21歳

自身の短歌が20首が掲載された雑誌『明星』を見ての感想です。20首の総題が「馬盥(ばだらい)」。日記に有る通り、与謝野鉄幹がその題を付けたとのこと。

「馬盥」は二種類の意味があり、まず字面通りに「馬を洗う大きな盥」、それから、それに似た大きな花器を指します。ここでは後者。20首中に「馬盥」の語は使われていないのですが、20首が「馬盥」に挿された花々のようだ、という連想から鉄幹が題したわけで、光太郎はそのセンスに感服しています。