一昨日、昨日に続き新刊紹介です。 

谷根千のイロハ

2020年2月19日 森まゆみ著 亜紀書房 定価1,300円+税

なつかしい街並みが残る谷根千を、古代から現代まで通して語る地域の歴史

現在も路地や商店街が続き、外国からの観光客にも人気が高い谷中・根津・千駄木。
弥生式土器が発掘された弥生町、江戸将軍家の菩提寺・寛永寺と上野、加賀の屋敷跡が東京大学になった千駄木、遊郭があった根津と権現様……。

幸田露伴、森鴎外、夏目漱石、岡倉天心、高村光太郎、三遊亭圓朝といったゆかりある著名人も取り上げながら、谷根千を歩いて語る。

本を片手に谷根千を歩いてみたくなる一冊!

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目次
 序文 次の世代に伝える
 (1) 古代から江戸時代までの谷根千
 (2) 明治時代の谷根千
 (3) 大正時代の谷根千
 (4) 昭和の谷根千
 あとがきにかえて

かつて地域雑誌『谷中根津千駄木』を刊行されていた森まゆみさんの新著です。一昨年、千駄木のKLASSさんで開催された森さんの連続講義を元にされているようです。

「(3) 大正時代の谷根千」の章に「高村光太郎」という項がある他、「(2) 明治時代の谷根千」の章には「高村光雲と平櫛田中」という項があります。また、「団子坂不同舎と太平洋美術会」では智恵子に触れられ、さらに「「パンの会」「方寸」の人々」、「千駄木で『青鞜』創刊」、「林町の住人たち」といった項もあります。

同じ森さん著の『「谷根千」地図で時間旅行』、『『青鞜』の冒険 女が集まって雑誌をつくること』などと併せて読まれることをお勧めします。

「あとがきにかえて」に拠れば、「町について学び、町の声に耳をすませてきた地域の暮らしの歴史を、次の世代に伝えることができたら、これに過ぎる喜びはありません」とのことで、なるほど、その通りですね。

ぜひお買い求めを。


【折々のことば・光太郎】

何といつても世の中でいちばんうまい飲み物は、山へ行つて崖から湧き出る石清水をのむ時のうれしさだ。ビールなど足もとへもおよばない。実際水ほどうまい物はまたとなからう。

散文「ビールの味」より 昭和11年(1936) 光太郎54歳

好物の一つだったビールについて、自己の留学時の体験などを延々と書いてきて、最後にどんでん返し(笑)。身も蓋もありません(笑)。しかし、ほぼほぼアルコールを飲まなくなった当方としては、実に納得の行く言葉です。