兵庫県のギャラリーでの展示情報です。 

井上よう子展 ―言葉がくれたもの―

期 日 : 2019年12月7日(土)~12月18日(水)
会 場 : 
ギャラリー島田 神戸市中央区山本通2-4-24リランズゲートB1F・1F
時 間 : 11:00-18:00 ※最終日は16:00まで
料 金 : 無料


小学時代「アンネの日記」に衝撃を受け、中3での姉の死から大きな喪失感を抱えた高校時代は、石川啄木「一握の砂」「悲しき玩具」、高村光太郎「智恵子抄」に、失われゆく自己・存在・命への愛おしさ、激しくはない静かな言葉にこそ宿る深淵な哀しみを共感していた。描き続けてきた絵には、そんな言葉達から受けた物が少なからず影響していると思う。
近年「言葉」に寄り添う依頼が重なり、不思議な気持ちでいる。
白石一文さんの小説への挿絵、後藤正治先生の「節義のために」「言葉を旅する」の装幀画…他。今年は村上春樹展や装幀画展、図書館での展示依頼。
変わらずブルーに塗れ、光を追いながら、言葉と共に…の展を構想しています。
井上よう子

30年前に出会い、すでに画ける人だった。そのころから青を基調にしていたが、誠実極まりない表現者としての深化を伴走できたことはこの上ない喜びだ。命あるものは必ず逝く。その哀切を抱きながら人は生きる。死や別離の降り積もる体験が抒情を削ぎ落とし、近作では荘厳の気配に満ちながら射し落ちる光が背筋を正す。日常でも画作においても「生きること」を飽まず問い続ける姿勢は、恩師、三尾公三の「完成度、インパクト、発想の斬新性、格調」の教えへのまっすぐな応答である。
島田誠

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『毎日新聞』さんの兵庫版に紹介記事が出ています。 

言葉の力、絵に添えて 西宮の井上さん個展 神戸・18日まで /兵庫

 青を基調にした風景画や室内画に取り組んできた西宮市在住の画家、井上よう子さん(61)の個展が、神戸市中央区山本通2のギャラリー島田で開かれている。18日まで。今回は「言葉がくれたもの」というテーマを掲げた。青の陰影や光の描写が深化した絵画40点が並ぶ2会場には、小説や随筆の一節が、所々に小さく掲示されている。学生時代に好きだったという高村光太郎の「智恵子抄」、青に言及される村山由佳の「ヘヴンリー・ブルー」……。 井上さんは「作家の陳舜臣さんのエッセーや白石一文さんの新聞小説の挿絵など、近年は言葉に引き寄せられる仕事に恵まれましました。振り返ると、学生時代からさまざまな言葉に有形無形に刺激を受けてきたので、展示に加えてみました。散文詩的に楽しんでもらえたら」と話す。
 入場無料。ギャラリー島田(078・262・8058)。

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「智恵子抄」からインスパイアされた作品も並んでいるとのことで、ありがたく存じます。

ご都合の付く方、ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

北原白秋さんの「邪宗門」が出版された時にはまつたく驚いた。日本語がこんなにも自由に、又こんなにも豊麗に使へるのかと思つた。

散文「あの頃――白秋の印象と思ひ出009――」より
 昭和18年(1943) 光太郎61歳


『邪宗門』は光太郎が欧米留学から帰国した明治42年(1909)に易風社から上梓されました。その後の光太郎詩にも大きく影響を与えていると言えるでしょう。

2年後の同44年(1911)には、版元を東雲堂書店に移し、第二版が刊行。光太郎が装丁、表紙絵を担当しました。

上記井上さんは青を基調としていますが、赤を効果的に使った光太郎の装幀も美しいですね。