共に小説家の故・吉村昭氏と奥様の津村節子氏の偉業を讃え、津村氏の故郷・福井県の福井県ふるさと文学館さんと、吉村氏を顕彰する荒川区吉村昭記念文学館さんが、「おしどり文学館協定」を結んだのが平成29年(2017)。1周年を迎えた平成30年(2018)には、合同企画展「津村節子~これまでの歩み、そして明日への思い~」が開催されました。その際には津村さん代表作の一つである小説『智恵子飛ぶ』に関する展示も行われました。

今年は5周年ということで、記念イベント等が両館で行われていますが、その一環として福井会場の方で『智恵子飛ぶ』関連の展示が始まります。

特集展示 津村節子「智恵子飛ぶ」~芸術家夫婦を描いて~

期 日 : 2022年12月23日(金)~2023年3月15日(水)
会 場 : 福井県ふるさと文学館タイムリースポット 福井県福井市下馬町51-11
時 間 : 平日 9:00~19:00 土・日・祝 9:00~18:00
休 館 : 月曜日(祝日の場合は翌日) 12月29日(木)~1月3日(火)
料 金 : 無料

平成29年11月5日に、吉村昭記念文学館と福井県ふるさと文学館は、おしどり文学館協定を締結しました。この協定に基づき、展示等を開催します。荒川区とゆかりの深い芸術家夫婦の高村光太郎と高村智恵子の葛藤を描いた津村節子『智恵子飛ぶ』を紹介します。
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小説『智恵子飛ぶ』は平成9年(1997)、講談社さんの刊行。平成12年(2000)には文庫化も為されています。津村氏は同作で芸術選奨文部大臣賞を受賞されました。

智恵子の生涯を描いた長編小説ですが、光太郎智恵子と同じく夫婦同業の芸術家夫妻であった津村氏ならではの視点で、智恵子の苦悩や、苦悩だけでない喜び、しかし刀折れ矢尽きて毀れてしまった智恵子の姿がかくあったろうと思わせられる描写がされています。

やはり平成12年(2000)には、智恵子役・片岡京子さん、光太郎役が故・平幹二郎さんで舞台化(新橋演舞場さん)。翌年の京都公演では、光太郎役は近藤正臣さんでした。

004ついでというと何ですが、つい最近、新橋演舞場さんでの初演の際の台本を入手しました。この手のものは公刊されるわけではなく、スタッフやキャストの皆さんに配られるもの。そこでそれらの方などが売りに出さない限り市場に出回ることはありません。案の定、ちょい役で出演されていた女優さんの名が表紙にうっすらと鉛筆で書き込まれていました。

驚いたのは書き込みの多さ。その女優さん、ご自分の登場シーンのみならず、おそらく同じ事務所の先輩女優さんと思われる方のシーンでもマーカーを引いたり、鉛筆で書き込みをしたりなさっていました。また、稽古の途中でセリフや動きが追加・変更されたり、場面の順番が入れ替わったりということが随分とあったようで、それらの訂正や、追加で配られたと思われるコピーの貼り付けなどもかなりの箇所で為されており、一つの舞台を作り上げるにも並々ならぬ苦労があったんだな、というのが偲ばれました。

ちなみにこの手の台本類、やはり舞台のもの、映画のもの、テレビドラマのもの等々各種取り添えております。展示等で必要な場合にはお声がけ下さい。

閑話休題、福井県ふるさと文学館さんの展示、ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

賢治全集推せん文2枚清書、


昭和30年(1955)8月20日の日記より 光太郎73歳

「賢治全集」は筑摩書房版。翌年から刊行が始まりました。光太郎は装幀、題字揮毫も手がけています。