10月8日(月・祝)、宿泊した福島二本松を後に、愛車を北に向け、東北道、山形道と乗り継いで、山形県天童市に参りました。
目指すは出羽桜美術館さん。こちらで「開館30周年記念所蔵秀作展 第二部「日本画と文士の書」」が開催中です。当方、見逃しましたが、10月7日(日)、NHKさんの「日曜美術館」とセットの「アートシーン」で取り上げられました。
蔵王の山懐を抜け、2時間程で到着しました。
美術館母体の酒造メーカー、出羽桜酒造さん。


その一角に美術館さん。瓦葺きの大きな屋敷と蔵を改装して美術館したそうで、実に趣のある佇まいです。







元々、亡くなった先代の社長さんが集めた、李朝陶磁や、「瞽女・明治吉原細見記」シリーズで有名な画家・斎藤真一の絵を中心にして設立されたそうです。それ以外にも書画の類もたくさん収蔵されており、今回はその展示です。

そして「書」。失礼ながら、実際に眼にするまで高をくくっていましたが、ビッグネームの優品揃いで、目を剥きました。すなわち、夏目漱石、正岡子規、芥川龍之介、會津八一、土井晩翠、斎藤茂吉、与謝野夫妻、尾崎紅葉、島崎藤村、幸田露伴、川端康成、吉井勇、北原白秋、高浜虚子、島木赤彦、堀口大学……。
そして光太郎。特に「撮影禁止」という表示がなかったので、撮らせていただきました。
「智恵子抄」に収められた詩「郊外の人に」(大正元年=1912)冒頭のワンフレーズで、「わがこころは今 大風の如く君に向へり」。智恵子と二人で過ごした千葉犬吠埼から帰り、自分のパートナーとなるべきはこの女性しかいない、と思い定めての「宣言」です。
筆跡的には戦後、花巻郊外旧太田村の山小屋(高村山荘)に逼塞していた時期のものと思われますが、「智恵子抄」の詩句を大きく書いたものは他に類例が確認できて居らず、貴重なものです。
書籍の見返しや扉に書いたものは以前から知られていました。それらを元に複製の色紙が作られたりもしています。また、昨年、川端康成のコレクションの中から扇面に揮毫したものも見つかっています。しかし、こちらは半切の紙で、大作といっていいでしょう。
おそらく戦後、あの太田村の山小屋で、何を思ってこの書の筆をふるったのか、興味深いところです。
「開館30周年記念所蔵秀作展 第二部「日本画と文士の書」」、10月21日(日)までの会期です。ぜひ足をお運びください。
【折々のことば・光太郎】
近代日本に天成の詩人があるか、近代日本に純粋と称し得る詩人があるか、近代日本に性情そのものに根ざす詩人らしい尖鋭の詩人があるかと人にきかれたら、即座に萩原朔太郎があると答へよう。
散文「希代の純粋詩人――萩原朔太郎追悼――」より
昭和17年(1942) 光太郎60歳
昭和17年(1942) 光太郎60歳
「尖鋭」の語が無ければ、当方は勿論「高村光太郎」と答えます。「尖鋭」さでは、やはり朔太郎ですね。