昨日は山梨県甲府市に行っておりました。山梨県立文学館さんで今日開幕の企画展「歿後30年 草野心平展 ケルルン クックの詩人、富士をうたう。」開会式にお招きいただき、馳せ参じた次第です。

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午後1時半過ぎ、到着。


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企画展会場の2階ロビーに特設会場がしつらえられ、午後2時から開会式が始まりました。

心平長男、故・草野雷氏夫人の智恵子さん。

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同館三枝館長。

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テープカット。

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このあと、内覧ということで、展示を拝見しましたが、予想以上の充実ぶりに驚きました。

「Ⅰ 誕生・少年時代」「Ⅱ 生きぬく詩人 日本と中国」「Ⅲ 躍動する詩の世界」で、心平の生涯を追い、さまざまな展示。

その中で、特に交流の深かった人物として「「天才」宮沢賢治」、「「巨人」高村光太郎」というコーナーも設けられていました。

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光太郎のコーナーでは、光太郎が寄稿した昭和2年(1927)の『銅鑼』第12号(連作詩「猛獣篇」第一作の「清廉」が収められています)、心平が編んだ鎌倉書房版『高村光太郎詩集』(昭和22年=1947)、創元選書版『高村光太郎詩集』(同26年=1951)、ガリ版刷りの『猛獣篇』(同37年=1962)、心平と光太郎の往復書簡1通ずつ(戦後、花巻郊外太田村に蟄居生活を送っていた光太郎に帰郷を促し、光太郎はその心づかいに感謝しつつも拒否)、さらに心平自筆の毛筆詩稿「高村光太郎死す」(同31年=1956)。

ちなみに「高村光太郎死す」は、当会顧問・北川太一先生の所蔵で、昨日は子息の北川光彦氏がいらしていました。

その他の部分でも、光太郎と心平は不即不離のような関係でしたので、いたるところに光太郎関連の展示物。光太郎が装幀や題字の揮毫、序文を手がけた心平詩集、二人の共同作業で世に出た『宮沢賢治全集』その他、光太郎が寄稿した心平編集の雑誌(『歴程』、『学校』など)やのアンソロジー等々。

それから、こんな000写真も大伸ばしでパネル展示されていました。昭和28年(1953)10月21日、光太郎最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」除幕式当日に撮影されたものだそうで、光太郎は写っていませんが、心平と佐藤春夫夫妻、さらに心平が足繁く通い、光太郎も足を運んだ新宿のバー「みちくさ」の女将・小林梅などが写っています。

それから、同じく心平が足繁く通った、川内村関連の展示も。そこで昨日は川内村から長福寺さんの矢内大丘住職もお見えでした。以前に川内村での「かえる忌」でご一緒させていただいた方で、久闊を叙しました。

ちなみに今夜、午前0時からNHK Eテレさんで「福島をずっと見ているTV vol.74 復興からその先へ~川内村の夏~」が放映されます。村での心平の住まい・天山文庫も紹介されるようです。ぜひご覧下さい。

そして「Ⅳ 富士をうたい、富士を愛す」。

心平は早くから富士山を詩作のモチーフとしていましたし、棟方志功との共同作業で詩画集『富士山』を出したり、自身でも富士山の絵を描いたりしました。また、自身の誕生祝いにと、昭和40年代から50年代に、たびたび富士山を訪れたそうです。そうした縁もあってか、山梨県立甲府南高校さんの校歌の作詞を手がけています。

そうした甲州との関わりがあって、今回の企画展が実現したわけですね。

内覧のあと、レセプション。

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アトラクション的に、詩人・いとうのぼる氏、声優の本間ゆかりさんによる心平詩の朗読。

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本間さんはさらにライヤーという竪琴的な楽器の演奏も。

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幻想的な音色が、心平詩の世界にぴったりでした。

お土産に、図録と館報をいただきました。いつもながらに同館の図録は充実の内容です。

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館報には同展に寄せた和合亮一氏の文章も載っており、興味深く拝読しました。

同展、今日から11月25日までの開催です。ぜひ足をお運びください。


【折々のことば・光太郎】

内にコスモスを持つものは世界の何処の辺遠に居ても常に一地方的の存在から脱する。内にコスモスを持たない者はどんな文化の中心に居ても常に一地方的の存在として存在する。岩手県花巻の詩人宮澤賢治は稀にみる此のコスモスの所持者であつた。彼の謂ふところのイーハトヴは即ち彼の内の一宇宙を通しての此の世界全般のことであつた。

散文「コスモスの所持者宮澤賢治」より 昭和8年(1933) 光太郎51歳

心平が編集し、光太郎も寄稿した『宮澤賢治追悼』に載った文章の一節です。今回の山梨県立文学館さんの企画展にも出品されています。

この後、折に触れ、光太郎は賢治を絶賛する文章や談話を発表しますが、その最初のものです。その結果、生前は無名だった賢治がどんどん世の中に認められて行きます。