最近出ました光太郎の文筆作品を収めたものをご紹介します。
まずは朗読CDです。
文豪とアルケミスト 朗読CD第二弾 高村光太郎
2017年11月29日 フロンティアワークス 定価2,160円(税込)朗読 森田成一

<トラック>
01 タイトルコール
02 冬が来た
03 道程
04 蟬を彫る
05 花のひらくやうに
06 人に
07 生けるもの
08 ぼろぼろな駝鳥
09 鯉を彫る
10 最低にして最高の道
11 金
12 レモン哀歌
13 雪白く積めり
14 月にぬれた手
15 オマケドラマ「緊急座談会その2~高村光太郎の詩を語る編~」
02 冬が来た
03 道程
04 蟬を彫る
05 花のひらくやうに
06 人に
07 生けるもの
08 ぼろぼろな駝鳥
09 鯉を彫る
10 最低にして最高の道
11 金
12 レモン哀歌
13 雪白く積めり
14 月にぬれた手
15 オマケドラマ「緊急座談会その2~高村光太郎の詩を語る編~」
「文豪とアルケミスト」は、DMM.comさんから配信されている、ブラウザゲームです。「様々な文豪と共に人々の記憶から文学が奪われる前に、侵蝕者から文学書を守りぬくことを目指す、文豪転生シミュレーションゲームです。また、本作品では実際にあった文豪同士の関係性を重視した内容を基調としており、それらが豪華声優陣によって現代に甦ります。」「近代風情が漂う平和な時代に、突如 として文学書が全項黒く染まってしまう異常現象が起きる。 それに対処するべく、特殊能力者“アルケミスト”と呼ばれる者が立ち上がり、文学書を守るため文学の持つ力を知る文豪を転生させる。 再びこの世に転生せし文豪たちが綴る、もうひとつの文学譚―」だそうです。
登場する「文豪」は、40名以上。光太郎もその一人です。

「常に穏やかな笑みを絶やさないクールな芸術家。文学の分野では詩人 として活躍しているが、その他にも彫刻や絵画、書道など多彩な才能を持つ。 武道の心得もある一方で戦いは悲しみを生むだけと考えており、侵蝕者と戦わなければ ならないことには少し複雑に感じているようだ。彫刻に適した木を見ると周りが見え なくなる。」とのこと。
実在の光太郎の特質をよく反映させた設定です。「武道の心得」は、柔道を指しているのでしょうか。当方、このゲーム自体はやっていませんのでよくわかりません。光太郎と柔道については、このブログの初期の頃に書きました。 光太郎と柔道(その1)。 光太郎と柔道(その2)。 光太郎と柔道、そして戦争。
ゲーム内で、光太郎の声を演じられているのが、声優の森田成一さん。その森田さんの朗読によるCDです。
渋い声で、詩の内容により読み方をいろいろ工夫されていて、ゲームとは無関係に純粋な朗読CDとして鑑賞できます。ただ、最後に中原中也(声・柿原徹也さん)、宮沢賢治(同・代永翼さん)とのミニドラマが入っていて、こちらはゲームの内容を下敷きにしているようです。
ゲーム自体は、たとえ荒唐無稽な設定であるとしても、二次創作としてそれもありだろうと思います。こうしたものを通し、各文豪に興味を持たれる方が増えてくれれば、という気がします。新潮社さんが協力に入っており、そうした考えからなのでしょう。また、調布市武者小路実篤記念館さん、菊池寛記念館さんでは、ゲームとのコラボ企画を行っています。
また、ネット上で著作権の切れている文学作品等の無料公開を行っている「青空文庫」さんにも好影響が出ているのでは、という話です。
少し古いのですが、今年6月のNHKさんのニュースから。
往年の「青空文庫」に異変 背景にイケメンゲームが?
著作権が切れた文学作品などをインターネットで無料で公開して人気を集めている「青空文庫」は、作品を入力する多くのボランティアが長年支えていますが、最近、ある異変が起きています。きっかけは、イケメンが多く登場するネットゲームだということですが…?青空文庫は、往年の名作を手軽に読むことができるようにと平成9年に富田倫生さんの呼びかけで設立され、著作権が切れたり、許諾が得られたりした作品について、ボランティアの人たちが文章の入力と校正を行い、インターネットで無料で公開しています。
宮沢賢治や芥川龍之介といった有名な作家から、数は少なくても熱狂的なファンがいる作家まで、掲載作品は1万4000点を超えています。呼びかけ人の富田さんが3年前に亡くなった後も、青空文庫は有志のボランティアが運営を続けています。
宮沢賢治や芥川龍之介といった有名な作家から、数は少なくても熱狂的なファンがいる作家まで、掲載作品は1万4000点を超えています。呼びかけ人の富田さんが3年前に亡くなった後も、青空文庫は有志のボランティアが運営を続けています。
ボランティアを高校生のころから続け、現在は運営にも携わっている翻訳家の大久保ゆうさんが、青空文庫の「異変」についてツイッターに投稿したのは先月30日のこと。
青空文庫ではこれまで比較的少なかった、例えば北原白秋に連なる作家たちの作品の入力や校正が増え始めたのです。
大久保さんはツイートの中で、「文アルの影響かどうかはわからないのですが/ご協力ありがとうございます」と述べました。
「文アル」とは、インターネットのゲーム「文豪とアルケミスト」のことです。
青空文庫ではこれまで比較的少なかった、例えば北原白秋に連なる作家たちの作品の入力や校正が増え始めたのです。
大久保さんはツイートの中で、「文アルの影響かどうかはわからないのですが/ご協力ありがとうございます」と述べました。
「文アル」とは、インターネットのゲーム「文豪とアルケミスト」のことです。
「文アル」は、芥川龍之介や太宰治など多くの文豪が「転生」したという設定のイケメンのキャラクターを育てながら、文学書を守る戦いを繰り広げるゲームです。人気声優たちが参加した話題性もあって女性ユーザーなどに人気を集め、運営会社によると、去年11月以降、プレーした人の数は30万に上るということです。
和歌山県新宮市にある詩人・佐藤春夫の記念館を訪れる若い女性がことしに入って増えるなど、その人気はゲーム業界にとどまりません。
和歌山県新宮市にある詩人・佐藤春夫の記念館を訪れる若い女性がことしに入って増えるなど、その人気はゲーム業界にとどまりません。
文豪の作品を数多く収録している青空文庫にも、当然、影響が現れました。
ツイッターなどでは、「出てくる文豪の作品読んでないことがもったいないと思って、青空文庫で毎朝毎晩読むことにしました」とか、「純文学とか近代文学が苦手だったけど、ちょっとずつ踏破してるから文アルと青空文庫は偉大だ」など、ゲームに夢中になるあまり青空文庫の利用を始めたという人たちが現れ、中には、「青空文庫の入力ボランティアを始めた」という投稿もありました。
ツイッターなどでは、「出てくる文豪の作品読んでないことがもったいないと思って、青空文庫で毎朝毎晩読むことにしました」とか、「純文学とか近代文学が苦手だったけど、ちょっとずつ踏破してるから文アルと青空文庫は偉大だ」など、ゲームに夢中になるあまり青空文庫の利用を始めたという人たちが現れ、中には、「青空文庫の入力ボランティアを始めた」という投稿もありました。
翻訳家の大久保ゆうさんによりますと、青空文庫のボランティアの中でも作品の入力や校正を完成まで続けられる人は少ないということです。
「ひとりでも新たに加わっていただけるのは本当にありがたいです。入力や校正の作業はひとりでこつこつ進めることが多く、根気のいる作業です。入力に取り組んでいることをツイッターなどで発信して、同じ作家のファンに応援してもらえればモチベーションの向上にもなるのでは」と話しています。
人気ゲームをきっかけに広がりを見せ始めた、青空文庫。自分たちの作品が現代の若い女性たちに急に読まれ始めたことを文豪たちが知ったらさぞ驚くことでしょう。
「ひとりでも新たに加わっていただけるのは本当にありがたいです。入力や校正の作業はひとりでこつこつ進めることが多く、根気のいる作業です。入力に取り組んでいることをツイッターなどで発信して、同じ作家のファンに応援してもらえればモチベーションの向上にもなるのでは」と話しています。
人気ゲームをきっかけに広がりを見せ始めた、青空文庫。自分たちの作品が現代の若い女性たちに急に読まれ始めたことを文豪たちが知ったらさぞ驚くことでしょう。
こうした動きが一過性のものでなく、発展していって欲しいものです。
しかし、苦言を一つ。先述の通り、ゲーム自体は、たとえ荒唐無稽な設定であるとしても、二次創作としてそれもありだろうと思います。ところがCDは、あくまで光太郎作品の朗読ですので、正確性を期していただきたかったと思いました。詩句の漢字の読み方で「これは絶対に違う」と断言できる箇所があったり(通常、「絶対に」という断言はなかなか出来ないのですが)、ミニドラマの部分でも光太郎詩に関し、事実と異なる内容があったりしました。どこが、という具体的な指摘は避けますが、或る程度の光太郎ファンなら気づくでしょう。これは朗読されている森田さんの責任ではなく、制作サイドの責任ですね。ゲーム同様、新潮社さんが「協力」にクレジットされていますが、それでも防げなかったかと、残念です。そうした玉に瑕を差し引いても、よい出来映えですが。
もう1点、書籍です。
詩人小説精華集 The Poetic Novels
2017年11月29日 彩流社 長山靖生編 定価2,400円 + 税北原白秋、萩原朔太郎、中原中也、立原道造、高村光太郎……詩人たちの「詩想」あふれる小説の世界!
「本書は二〇世紀前半に活躍した詩人たちが書いた小説・空想的散文のアンソロジーだ。いずれの作品も、詩人だけに言葉の選択はいずれも意外性を持っていると共に的確であり、今もまったく色あせていない。
優美・幻想・哀切・ユーモアを通して表現された時代と生活の諸相の表現は、的確であるばかりでなく、予言的ですらある。詩集を読む習慣のない人でも小説なら、彼らの魅力を読み取りやすいのではないだろうか。」(解説より)
これまであまり知られなかった瑞々しい小説の世界を読みやすい現代仮名遣いで!
「本書は二〇世紀前半に活躍した詩人たちが書いた小説・空想的散文のアンソロジーだ。いずれの作品も、詩人だけに言葉の選択はいずれも意外性を持っていると共に的確であり、今もまったく色あせていない。
優美・幻想・哀切・ユーモアを通して表現された時代と生活の諸相の表現は、的確であるばかりでなく、予言的ですらある。詩集を読む習慣のない人でも小説なら、彼らの魅力を読み取りやすいのではないだろうか。」(解説より)
これまであまり知られなかった瑞々しい小説の世界を読みやすい現代仮名遣いで!
目次
石川啄木…散文詩五題「廣野」「白い鳥・血の海」
石川啄木…散文詩五題「廣野」「白い鳥・血の海」

「火星の芝居」「二人連」「祖父」
上田敏…「渦巻」
山村暮鳥…「夕立」
木下杢太郎…「霊岸島の自殺」
野口雨情…「虹の橋」
北原白秋…「影」
平井功…「Headin, South」
正岡蓉…「青恋」
日夏耿之介…「源氏伝授」
左川ちか…「暗い夏」
中原中也…「我が生活」「散歩生活」「夜汽車の食堂」
立原道造…「花散る里」「物語」「眠つている男」「眠り」
上田敏…「渦巻」
山村暮鳥…「夕立」
木下杢太郎…「霊岸島の自殺」
野口雨情…「虹の橋」
北原白秋…「影」
平井功…「Headin, South」
正岡蓉…「青恋」
日夏耿之介…「源氏伝授」
左川ちか…「暗い夏」
中原中也…「我が生活」「散歩生活」「夜汽車の食堂」
立原道造…「花散る里」「物語」「眠つている男」「眠り」
「オメガ小品」
萩原朔太郎…「猫町」
小熊秀雄…「風刺短篇七種」
齋藤茂吉…「ヒットレル事件」
高村光太郎…「九代目団十郎の首」
【解説】「詩的生成と近代日本のあいだ」長山靖生
萩原朔太郎…「猫町」
小熊秀雄…「風刺短篇七種」
齋藤茂吉…「ヒットレル事件」
高村光太郎…「九代目団十郎の首」
【解説】「詩的生成と近代日本のあいだ」長山靖生
こちらも「青空文庫」さん同様、忘れられかけている作品に陽を当てている感があります。
光太郎の「九代目団十郎の首」は、智恵子没年の昭和13年(1938)、雑誌『知性』創刊号に掲載されたエッセイです。何度もその制作に挑戦し、最後は九分通り出来ていながら、結局、未完のままひび割れてしまった、九代目市川團十郎の塑像について述べています。
とにもかくにも、光太郎作品、さまざまな形で取り上げられ続けていってほしいものです。
【折々のことば・光太郎】
あなたの国のモネエなどといふ人の油画は、私の国の雪舟などとまるで同じ気持の画を画くではありませんか。九泉の下から雪舟を起こして、あんな画を見せたら、さぞ膝をうつて感嘆するでせう。
散文「木曜便」より 明治44年(1911) 光太郎29歳
「あなた」は、光太郎が仏語習得のため、パリ時代に日本語と仏語の交換教授をしていた「ノルトリンゲル女史」。従来、バーナード・リーチの紹介で知り合ったという程度しか分かっていませんでしたが、ジャポニズム学会所属桂木紫穂氏の調査により、『失われた時を求めて』で有名なマルセル・プルーストと親交のあった美術研究家・金属造形作家マリー・ノードリンガー(1876~1961)であることが判明しています。
「木曜便」は、パリ在住の「M――女史」(「マリー」の「M」です)にあてた書簡の形式で書かれていますが、テーマは、袋小路に入りこんでしまった日本画や、西洋の猿真似に過ぎない洋画がまかり通っていることへの警句です。