毎年そうなのですが、芸術の秋ということで、この時期はご紹介すべきイベントが多く、また、それらのイベントに行ったレポートも書かねばなりません。いきおい、速報性があまり問われない、新刊書籍の紹介が後回しになっています。ことに出たてのものでなく、少し経ってから気づいて慌てて購入したものなどは、なおさら「旬」を逃したような気がして、いっそう後回しになってしまっています。

光太郎第二の故郷とも言うべき、岩手花巻系の出版物も、ご紹介していないものが4冊ほどたまってしまいました。今日明日で、2冊ずつご紹介します。

今日は花巻高村光太郎記念館さんに関わるものを。 

低反発枕草子

2017年1月15日 平田俊子著 幻戯書房 定価2,400円+税

東京・鍋屋横町ひとり暮らし。 三百六十五日の寂しさと、一年の楽しさ。 四季おりおりの、ささやかな想いに随(したが)いて……


著者の平田俊子さんは、詩人、劇作家、小説家。さらに立教大学さん他で教壇にも立たれています。また、光太郎にも触れた平成27年(2015)刊行の詩集『戯れ言の自由』で、第26回紫式部文学賞を受賞されました。

本書は、『静岡新聞』さんに、平成26年(2014)から翌年にかけて連載された同名のエッセイの単行本化です。

同書の中で「光太郎ファン」を自称され、随所に光太郎智恵子の名を出して下さっています。光太郎終焉の地・中野アトリエや、光太郎智恵子が婚約を果たした信州上高地などのゆかりの地も歩かれていますし、ことに花巻高村光太郎記念館さん・高村山荘が多く登場します。

ただ、執筆時期が、館のリニューアルオープン前、花巻市街のまなび学園さんに間借りしていた時期だったようで、現在の様子とは異なっています。リニューアル後に行かれたのかどうか、興味のあるところです。

その他、題名の通り清少納言さながらに、四季折々の随想、宮仕え(大学でのお仕事)の様子など、軽妙な文章で語られており、無聊の慰めとさせていただきました。

ぜひお買い求め下さい。


もう1冊。定期購読しています隔月刊の花巻タウン誌です。 

花巻まち散歩マガジン Machicoco(マチココ) vol.4

2017年10月20日 Office風屋 定価500円(税込み)

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裏表紙に連載「光太郎のレシピ」が掲載されています。花巻高村光太郎記念会さん、特に女性スタッフさんたちの協力で作られています。太田村での光太郎日記から、光太郎がどんな料理を作り、食べていたのかを紹介するものです。

今号は「オクラの種のスープ」「支那料理風甘酢あんかけ」「抹茶」。あんかけはレシピも詳しく載っています。ちなみにオクラやセロリといった西洋野菜は、光太郎が東京から種子を取り寄せ、この地に広めたそうです。

この連載も、出来るだけ長く続いてほしいものです。


明日も花巻系、特に宮沢賢治と光太郎のつながりについて書かれたものをご紹介します。


【折々のことば・光太郎】

まことの美を知る苦しめる者に幸あれ。 苦しみのためへし折れて をさな児の心にかへつた只の人こそ 天のものなる美を知るのだ。

詩「人間拒否の上に立つ」より 昭和25年(1950) 光太郎68歳

ロダンと共に、終生敬愛してやまなかったルネサンスの巨匠・ミケランジェロを題材にした長詩です。

晩年の光太郎は、むしろロダンよりもミケランジェロに傾倒していたようで、対談などでもその名が多く見られます。満で88歳まで生き、さらに老年期に入っても旺盛な制作意欲を見せたミケランジェロに、自らを重ね合わせていたように思われます。

まことの美を知る苦しめる者」「苦しみのためへし折れて をさな児の心にかへつた只の人」は、ミケランジェロであると同時に、かくありたいと願う光太郎自身の姿でしょう。