昨日に引き続き、光太郎彫刻が展示されている企画展の情報です。

状況をわかりやすくするために、地元紙『デーリー東北』さんの記事をご紹介します。

「旅と名所」テーマに 街かどミュージアムで5周年記念秋期展/青森・八戸

 青森県八戸市にある八戸クリニック街かどミュージアム(小倉秀彦館長)で、23日から5周年記念秋期展「旅と名所」が開かれる。時代ごとに変わる旅の楽しみや名所の捉え方にスポットを当て、全国各地の風景や名物を描いた浮世絵や木版画など195点を展示。観光名所として名高い十和田湖にある高村光太郎作「乙女の像」の習作「手」の石こうから鋳造されたブロンズ像も特別に公開する。11月12日まで。
  江戸時代、街道と宿場の整備により、旅は庶民の娯楽となり、それに伴い、さまざまな名所絵が描かれた。会場では、歌川広重の「狂歌入東海道五十三次」全56図をはじめ、歌川国芳、歌川国貞ら人気絵師が手掛けた名所絵を紹介。同館の小倉学学芸員は「和歌に詠まれた名所や、その土地にある伝説など、文学を織り交ぜた作品が多い」と特徴を解説する。
  明治時代になると、江戸や京都に限らず、全国津々浦々の名所が注目されるようになる。背景には、国民の郷土愛を培うとともに、外貨獲得や自然保護を目指す当時の政府の狙いがあった。その時代を反映した作品として、鳥瞰(ちょうかん)による旅行案内図を制作した吉田初三郎や、伝統的な浮世絵技術の復興と近代化を目指した「新版画」を確立した版画家川瀬巴水の作品などを中心に展示する。
  浮世絵や木版画を通して、時代の変遷とともに移り変わる人々の“旅情”が感じられる展示となっている。
  入館料は一般500円、高校生200円、中学生以下無料。開館時間は午前10時~午後5時。休館日は祝日を除く月・火曜日。
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というわけで、光太郎が「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」制作のために、習作として作った手の習作を鋳造したものが展示されています。

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本来は習作で、光太郎生前には鋳造はされなかったものですが、その歿後にブロンズが作られ、光太郎展的な企画展に展示されることがあります。平成25年(2013)に千葉市美術館さん、岡山井原市立田中美術館さん、そして愛知碧南の藤井達吉現代美術館さんを廻った「生誕130年彫刻家高村光太郎展」でも並びました。今回の八戸では、企画展自体のコンセプトとはあまり関係ないようですが、「特別公開」ということだそうです。

そちらの詳細がこちら。

5周年記念秋期展旅と名所――広重から北東北の新版画・鳥瞰図まで

期 日 : 2017年9月23日(土)~11月12日(日)
会 場 : 八戸クリニック街かどミュージアム 青森県八戸市柏崎1丁目8-29
時 間 : 10:00〜17:00
休館日 : 毎週月曜日・火曜日(祝日の場合は開館)
料 金 : 大人500(400)円 高校生200(100)円 
      ( )内10名以上の団体 中学生以下無料

江戸時代、街道と宿場の整備が進み、旅は人々の娯楽となりました。寺社詣を口実に、江戸や京都の名所を訪れ芝居や食事を楽しむ。浮世絵にはそんな彼らの姿と共に、旅に関連させ狂歌や伝説などを楽しむ文化が表れています。全国に鉄道網が敷かれる明治を経て、大正以後の経済発展により旅の大衆化が進み、国家も自然保護・外貨獲得・国民の保健休養教化の一環などの目的で関連政策を強化、近代の観光産業が成立していきます。そんな時代に鳥瞰図や新版画などが生まれ、その近代の新たな風景は人々に旅への憧憬を抱かせました。今回は、これらの作品を紹介し江戸から昭和初期までの旅を概観します。

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お近くの方、ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

おれは自己流謫のこの山に根を張つて おれの錬金術を究尽する。 おれは半文明の都会と手を切つて この辺陬を太極とする。

詩「「ブランデンブルグ」」より 昭和22年(1947) 光太郎65歳

詩の中に初めて「自己流謫」の語が使われました。「流謫」=「流罪」です。結局、公的には戦犯として処されることがなかった光太郎、だからといって「助かった」というわけではなく、己で己を罰することにしたのです。

具体的には花巻郊外太田村の山小屋での、自虐に等しい独居生活。しかし、ただここに住んでいるというだけでは不十分でした。そこで、光太郎は自らに考え得る限りの最大の罰を与えています。すなわち、天職と考えていた彫刻の封印でした。