大阪から演劇の公演情報です

売り言葉

期   日 : 2017年8月25日(金)~27日(日)
会   場 : 大阪市立芸術創造館 大阪府大阪市 旭区中宮1丁目11−14
時   間 : 25日(金)20:00[S]  26日(土)12:00[A]/15:30[B]/20:00[A]
         27日(日)12:00[B]/15:30[S]
料   金 : 前売/2,500円、当日/3,000円(全席自由席)
主   催 : evkk(エレベーター企画)
出   演 : 一人芝居バージョン[S] >25日(金)20:00、27日(日)15:30  澤井里依  
         複数バージョン[A] >26日(土)12:00、26日(土)20:00
          佐々木穂香、澤井里依、他
         複数バージョン[B] >26日(土)15:30、27日(日)12:00
          宮下牧恵、澤井里依、他

高村光太郎の妻・智恵子の物語。裕福な家庭に生まれた彼女は、東京で高村光太郎と出会い、結婚。才気煥発な智恵子だったが、ふたりの関係は少しづつ変わってゆく。光太郎が芸術家として前進する一方、自分の絵は認められることはなかった。『智恵子抄』に描かれた「あなた」であらんとするため、必死でもがく智恵子-本当に、私はこんなにも綺麗に死ぬことが出来るのかしら。

作・野田秀樹 演出・外輪能隆 上演時間・約1時間30分(休憩なし)

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「売り言葉」は、平成14年(2002)、野田秀樹氏の脚本、主役・大竹しのぶさんで初演されました。登場人物は智恵子のみの一人芝居です。

翌年に新潮社から出版された野田さんの脚本集『二十一世紀最初の戯曲集』に収められ、その後、プロアマ問わず、多くの公演で取り上げられています。

モラハラともいえる光太郎の芸術至上主義の犠牲となった智恵子、という観点で、徐々に壊れていくその描写が秀逸でした。

今回、「複数バージョン」という試みが為されるそうで、元来が一人芝居であるものを、どう複数で演じるのか、興味のあるところです。

お近くの方、ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

生きた言葉の美しさ。 利害を絶した天の声こそ まことに此世をせいせいさせる。  
 商量思念に我を持つ言葉は 結局あはれな陳列物。 自然と涌いてあやまたない、 さういふ言葉を語る人に 雲のやうな無限がある。

詩「或会議に列して」より 昭和16年(1941) 光太郎59歳

「或会議」は、光太郎も議員として出席した第一回中央協力会議。大政翼賛会中央本部で開催されました。終了後、同じく議員だった菊池寛、尾崎士郎と行った座談会の筆記が雑誌『モダン日本』に掲載されています。冒頭の光太郎の発言。

今日あたり聴いてゐて、人のしやべる欲望の物凄さを感ずるですね。自分でしやべつてゐて、頭がわるくなつてしまふのか、同じことを五人も六人も話したことを忘れて、やつぱりちつともやめないんですね。

それが「商量思念に我を持つ言葉」「結局あはれな陳列物」ということなのでしょう。何だか、どこぞの国の国会や閉会中審査なる会議のようですね(笑)。

しかし、三人とも、議長を務めた後の内務大臣、海軍大将の末次信正については賞賛しています。

尾崎 しかし僕はあの議長は非常に立派だと思つたですね。あの人が変つたら、何か感じが少し変りは
    しない
かと思ふ。(略)僕はちょっと眠つちやつたけれども、気がつくと、末次さんが眼をギ
    ラギラしてやつてゐ
るので、何か壮烈な感じがしたですね。
菊池 長くなつた人なんか遠慮しないで「簡単に願ひます」なんてやつてゐた。
尾崎 はつきり処理しながら、なかなか思ひやりもあつて、情義兼ね備はつてゐるね。
高村 ゆつたりやつてゐるから、面白いですね。

当方も人前で話す機会が結構あるのですが、「自然と涌いてあやまたない、 さういふ言葉」を心がけようと思います。