信州安曇野の碌山美術館さんでの展示情報です。

夏季企画展示 高村光太郎編訳『ロダンの言葉』展 編訳と高村光太郎

期 日 : 2017年7月1日(土)~9月3日(日) 無休
会 場 : 碌山美術館 長野県安曇野市穂高5095-1 第二展示棟
時 間 : AM9:00~PM5:10
料 金 : 大人 700円(600円)  高校生 300円(250円) 小中学生 150円(100円)
        ( )内20名以上団体料金 
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日本近代彫刻の先駆・荻原守衛(碌山 1879-1910)が師と仰いだオーギュスト・ロダン(1840-1917)の歿後100年にあたり、高村光太郎編訳 『ロダンの言葉』 (1916年刊)を紹介する企画展を開催いたします。
書籍『ロダンの言葉』は、ロダンに関するさまざまな外国語文献を高村が翻訳・編集したものです。通常ありがちな芸術家の伝記ではなく、ロダンが芸術について話した言葉を集めたもので、意味深い名言にあふれています。「地上はすべて美しい、汝等はすべて美しい」「宗教なしには、芸術なしには、自然に対する愛なしには-此の三つの言葉は私にとつて同意味であるが-人間は退屈で死ぬだらう」「彫刻に独創はいらない、生命がいる」等々。これらは、芸術の真髄を言い得た金言であり、読む者の心をふるわせずにはおきません。『ロダンの言葉』を読んで、その感動から彫刻を志した者も少なくなかったといいます。刊行以来100年の月日を経ても今なお、芸術を見る者、考える者にとって、味わい深く、示唆に富む、大変魅力的な著作です。これを機に、一人でも多くの方が、ロダンの芸術館にふれるとともに、芸術とりわけ彫刻への理解を深めていただくことを願って本企画展を開催いたします。

展示書籍
Auguste Rodin,Les Catbédrales de Frame, Librairie Annand Colin,Paris,1914. / L'Art,Entretlens Rénnis par Paul Gsell,Bernard Êditeur,Paris,1911 / Camille Mauclair,Auguste Rodin,The Man-His Ideas-His works,trans.by Clementina Black, Duckworth and Co., London,1905 他

展示作家
 高村光太郎《腕》 戸張孤雁《男の胴》 中原悌二郎《老人》 荻原守衛(碌山)《坑夫》(石膏複製)
 カミーユ・クローデル《ロダン》 オーギュスト・ロダン《鼻欠けの男》(石膏複製) 他


同館では、昨夏、「夏季特別企画展 高村光太郎没後60年・高村智恵子生誕130年記念 高村光太郎 彫刻と詩 展 彫刻のいのちは詩魂にあり」を開催して下さいまして、当方、関連行事としての講演を務めさせていただきました。今回は「特別」がつかない企画展で、会場も第二展示棟のみ、昨年のものよりはこぢんまりと開催されます。関連行事、図録の発行もないようです。

光太郎とロダンがらみの資料で、展示にお貸しできるものをリストアップして同館に送りました。初版の『ロダンの言葉』正続(大正5年=1916、同9年=1920)、普及版の『ロダンの言葉』正続(昭和12年=1937の最終版)、評伝『ロダン』(昭和2年=1927)などなど。

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ところが、そのあたりの光太郎生前のものは館で所蔵しているため不要、逆に新しめのものを貸してくれとのことで、昭和34年(1959)の新潮文庫版『ロダンの言葉』正続、平成17年(2005)の沖積舎復刻正続合本『ロダンの言葉』、同19年(2007)の講談社文芸文庫版『ロダンの言葉』をお貸ししました。

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調べてみましたところ、新潮文庫版はもとより、平成の沖積舎版、講談社文芸文庫版すら既に絶版になっています。他に岩波文庫でも『ロダンの言葉抄』(初版・昭和35年=1960)が出ていましたが、そちらも版を断っています。

ということは、『ロダンの言葉』を入手したければ、もはや古書で購入するしかないわけで、なんだかなぁ、という感じです。昔の美術家の卵にはバイブルに等しい扱い、美術史上の金字塔的著作だったのですが、昨今の美大生などはもしかすると、「『ロダンの言葉』? 何、それ?」という状態なのかも知れません。

そういうわけで、とりわけ若い世代の方々にご覧頂きたいものです。

始まりましたらなるべく早く行って、レポートいたします。


【折々のことば・光太郎】

方式は簡単すぎて児戯に類する

詩「一艘の船が二艘になること」より 昭和6年(1931) 光太郎49歳

ロダンの芸術なども、「自然」に学ぶ抽象無視、という意味では、簡単すぎる方式です。しかし、ひねりにひねったり、やかましい様式の約束事に縛られたりで、かえって自然から離れ、生命観を喪失してしまっていた当時の芸術界においては、ロダン芸術の出現は、ある意味革命的でした。

その魂を受け継いだ光太郎や碌山荻原守衛、そしてさらに彼らの系譜を受け継いだ後身の作家たち。やはりそういう流れを理解することも大切だと思います。