東京都町田市の町田市民文学館ことばらんどさんで開催中の企画展示です。
野田宇太郎、散歩の愉しみ-「パンの会」から文学散歩まで-
会 期 : 2017年1月21日(土曜日)から3月20日(月曜日)場 所 : 町田市民文学館ことばらんど 東京都町田市原町田4丁目16番17号
時 間 : 10時から17時
休館日 : 毎週月曜日(ただし、3月20日は開館)、毎月第2木曜日
料 金 : 無料
野田宇太郎は、若き日には九州・久留米を舞台に詩人として活躍し、上京後は文芸書の出版で定評のあった小山書店をはじめ、第一書房、河出書房で文芸誌の編集に携わりました。この間、編集者として多くの作家や芸術家と親しく交わります。昭和20年10月、終戦から僅か2カ月後、敬愛した木下杢太郎の死に接した野田は、近代日本文学を専門とする研究者人生をスタートさせます。戦争によって、がらりと表情を変えた東京の町を歩きながら、彼が街並みのそこかしこに見出していたのは、かつての古き佳き東京の面影と失われつつある文学の痕跡でした。やがて、野田は「文学散歩」を通じて発見した文学の痕跡から、時代を遡行することで明治末期の文芸運動<パンの会>を見出します。それは、隅田川にフランスのセーヌ川を重ねたかつての<パンの会>の青年詩人や画家たちと同様に、旺盛な創造力を駆使した野田の新たな文芸復興運動ともいえるでしょう。
本展は、文学に「散策する愉しみ」を拓いた野田宇太郎の仕事を、彼が散策の途上で「見つめていたもの」を通じて再考する試みです。
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関連イベント
2月11日(土曜日) 川本三郎講演会「近代文学の復興者・野田宇太郎のまなざし」
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2月25日(土曜日) 文学散歩「掃苔しましょう!文士たちの眠る場所」
3月4日(土曜日) 文学散歩「馬込文士村を歩く」
3月5日(日曜日) 文学散歩「江戸・東京、水辺の文化圏-日本橋界隈を歩く」
3月11日(土曜日)
山田俊幸講演会「散歩の達人・野田宇太郎-<雑誌>が繋ぐ文芸ネットワーク-」
3月18日(土曜日)
文学散歩「知っているようで知らない町田探検ツアー、春を探して-町田駅前文学散歩」
1月24日、2月7日、2月26日、3月20日、ギャラリートーク(展示解説)
サブタイトルにある「パンの会」は、明治41年(1908)から45年(1912)にかけ、浅草周辺で開催された新興芸術運動。光太郎も欧米留学からの帰国(明治42年=1909)と同時にその狂躁に巻き込まれ、後には発起人にも名を連ね、数々のエピソードを残しています。
福岡小郡出身の詩人・野田宇太郎は、文学史研究の分野でも大きな足跡を残し、雑誌『文学散歩』を主宰したり、「パンの会」当時の研究をしたりもしています。昭和24年(1949)には『パンの会』という書籍を刊行、同26年(1951)には改訂増補版として『日本耽美派の誕生』を上梓しました。


雑誌『文学散歩』では、昭和36年(1961)10月号で、「特集 十和田湖」を組み、草野心平や谷口吉郎らの寄稿を仰いで光太郎最後の大作「乙女の像」を紹介しています。表紙はその歿後に光太郎がアトリエを借りて「乙女の像」を製作した、水彩画家・中西利雄が描いた十和田湖周辺の絵です。
『パンの会』は光太郎にも贈られ、光太郎からの礼状も残っています。

光太郎と関わる展示もありそうです。ぜひ足をお運びください。
【折々のことば・光太郎】
土壌は汚れたものを恐れず 土壌はあらゆるものを浄め 土壌は刹那の力をつくして進展する
詩「五月の土壌」より 大正3年(1914) 光太郎32歳
立春も過ぎ、南関東では土の匂いにも春が感じられるようになってきました。今日は珍しく雪が舞っていますが。

この雪も土壌に吸いこまれ、草木の糧となってゆくのでしょう。