台湾の首都、台北から特別展情報です。

わかりやすくするために、『毎日新聞』さんの記事から。

台湾・故宮南院で日本美術展

008 台北の故宮博物院の分院である故宮南院(台湾嘉義県)で、東京国立博物館と九州国立博物館が所蔵する国宝や重要文化財などを展示した「日本美術の粋 東京・九州国立博物館精品展」の開幕式が12日、南院で行われた。訪台した国会議員を含む日台関係者数百人が出席した。

 来年3月5日までの期間中、国宝18件を含む絵画、彫刻、工芸など延べ151件を展示。縄文時代から明治時代まで日本美術を幅広く紹介しており、明治時代の木彫、高村光雲作「老猿(ろうえん)▽江戸時代の浮世絵、葛飾北斎筆「冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」=写真▽安土桃山時代の狩野(かのう)永徳筆「檜図屏風(ひのきずびょうぶ)」などが含まれる。東博の銭谷真美(ぜにや・まさみ)館長は「これだけ多分野にわたる名品の数々を日本国外で大規模に紹介するのは初めて。日本美術、日本文化全体を深く理解していただけると確信している」とあいさつした。【嘉義(台湾南部)】


というわけで、光太郎の父・高村光雲作の重要文化財「老猿」が海を渡って展示されています。

それでは、展覧会情報を。

日本美術の粋 東京・九州国立博物館精品展

期 日 : 2016年12月10日(土)~2017年3月5日(日) 月曜休館
会 場 : 國立故宮博物院南部院區 アジア芸術文化博物館
時 間 : 9:00~17:00 
料 金 : 一般 250台湾ドル 団体(10人以上) 230台湾ドル
      障害者とその介護者一名まで無料
      国際学生証/青年旅行カード所持者 150台湾ドル (1台湾ドル=3.62円)

國立故宮博物院は2014年、東京国立博物館、九州国立博物館と共同で、特別展「台北 国立故宮博物院-神品至宝-」を開催し、本院が収蔵する逸品を日本で初めて展示致しました。この展覧会は両国の文化交流の重要な一里塚となり、日本中で大きな話題となりましたが、今回は、東京国立博物館と九州国立博物館からの感謝の意として、本院の南部院區において、「日本美術の粋 東京・九州国立博物館精品展」を開催致します。両博物館が収蔵する作品のうち、国宝18件、重要文化財44件などを中心に、最も優れた計151件を精選した本展覧会は、規模・質ともに、台湾はもちろん、日本国外で行う日本美術の展覧会として過去最大・最高のものとなります。展示は「第1章 祭祀と生活」「第2章 皇権と佛法」「第3章 貴族の世界」「第4章 武家の文化」「第5章 市民の創造」「第6章 伝承と創造」の6章から構成されており、古代から近代までの、約5000年にわたる豊かで多様な日本芸術を紹介するものです。


009一昨年に東京国立博物館さんで開催された「台北・国立故宮博物院展」で、台湾の秘宝の数々を借りた返礼に、今度は日本の国宝や重要文化財をお貸ししよう、というコンセプトだそうです。

そこでいわば日本代表選手として(笑)「老猿」が選出され、喜ばしいことですね。彼の地の皆さんは、あれをどう見るのか、興味深いところです。光太郎の作も選出されていればなおよかったのですが……。

「国威発揚」というような浅はかな考え方でなく、純粋に「文化交流」として、歓迎したい試みです。

台湾に行かれる方、ぜひどうぞ。


【折々の歌と句・光太郎】

正次がうちし平鑿くろがねのうら砥ふまへて幾夜わが砥ぐ        
大正15年(1926) 光太郎44歳

「正次」は桜井正次。宮内省御用刀工にして、光雲と同じく帝室技芸員でした。「卍正次」として、日本刀の作が有名ですが、鑿(のみ)なども打っていたようで、それを光太郎が愛用していたわけですね。もしかすると、光雲から譲り受けたかもしれません。

光太郎が光雲から受けた教えとして、彫刻刀のたぐいはとにかくよく研ぐこと、というのがあったそうです。自分の体の一部であるように使いこなすためだそうです。そのため、光雲光太郎、ともに砥石にもこだわりを持っていました。