日本女子大学校での智恵子の一級上で、卒業後に雑誌『青鞜』を創刊、その表紙絵を智恵子に依頼した平塚らいてう。学年は一つ上ですが、早生まれということもあって、智恵子と同じく今年が生誕130年にあたり、記念イベント等がいろいろ組まれています。

特に生誕130年とは関係有りませんが、智恵子も登場する新刊を一冊ご紹介します。

週刊 マンガ日本史 改訂版 89号 平塚らいてう 飛び立て「新しい女たち」

2016年11月15日 朝日新聞出版 
シナリオ・004氷川まりね  画・土方悠  
定価 500円(税込み)

新しい時代の「自由」を楽しんでいるかのような明治の女学生たち
しかし彼女たちも卒業すれば親の決めた相手と結婚し夫の家に尽くす日々が待っていた
そんな女学生のひとりだった平塚らいてうは月のように青白い顔をした世の女性たちに高らかに呼びかけた
――元始女性は太陽であった
それは因習から自らを解き放ち女性が「自分らしく」生きるための独立宣言だった

人物クローズアップ 太陽のように光り輝いた「新しい女」
河合敦 歴史コボレ話 平塚らいてうと与謝野晶子
時代スコープ 明治から大正へ 変わりゆく女性の暮らし
インフォメーション 平塚らいてうと女性解放運動をもっと知ろう!


平成22年(2010)刊行のものの改訂復刊です。

お茶の水高等女学校在学中から、日本女子大学校、卒業後に『青鞜』を刊行するまでのらいてうが描かれています。小学校高学年から中学生を対象としているので、漱石門下の森田草平との心中未遂(いわゆる「煤煙事件」)などはスルーされていますが、入門編としては非常にわかりやすく、よくできています。

かつての「歴史マンガ」的なものは、とても大人の鑑賞にたえるものではありませんでしたが、やはり日本の漫画のクオリティの高さが、こういう部分でも好作用をもたらしているようです。

日本女子大学校での智恵子が登場します。完全に悪役顔ですが(笑)。

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もう1件、舞台演劇の公演情報です。

SPIRAL MOON the 35th session「荒野ではない」

期 日 : 2016年11月23日(水・祝)~27日(日)
会 場 : 下北沢「劇」小劇場  東京都世田谷区下北沢2-6-6
時 間 : 11/23(水・祝) 19:30~ 11/24(木) 14:00~/19:30~
      11/25(金) 19:30~
   11/26(土) 14:00~/18:00~ 
      11/27(日) 14:00~
料 金 : 前売3,500円  当日3,800円 未就学児入場不可
主 催 : SPIRAL MOON

むかし、海賊になりたい少女がいた。
少女は生きて、恋をして、書き、子を産み、育て、死んだ。

少女は、ことばをつむぐ場所を用意した。
「青鞜」と名づけられたその雑誌に、多くの女性が集まった。
嘲笑され、痛罵され、石を投げられながら、息をするように、ことばを書いた。

――虐げられ、搾取される者は、ことばを知らねばならぬのよ、
わたしはここにいる、わたしはここにいるって、言つてごらん、
弱くて情けなくて寂しいものは、そうしなきゃ、生きることを許されない。

やがて冒険の果て、それぞれの生の軌跡が離れていくまでの、これは群像劇。
むかし、海賊になりたい少女がいた。

作   波田野淳紘  演出  秋葉 舞滝子

キャスト 河嶋政規 大畑麻衣子 坂田周子 塩見陽子 渡辺幸司 丸本育寿 印田彩希子 野村貴浩 秋葉舞滝子

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らいてうの名がありませんでしたが、問い合わせてみましたところ、やはりらいてうでした。ちなみに残念ながら智恵子は登場しないそうです。


先の米国大統領選挙でヒラリー・クリントン氏が敗北したことにより、「ガラスの天井」という言葉がまたクローズアップされました。性別や人種などを 理由に低い地位に甘んじることを強いられている不当な状態を指す言葉です(まぁ、クリントン氏の敗因は他にも色々あるのでしょうが)。

100年以上前の日本で、「ガラスの天井」に挑んだ人々の物語、もっと取り上げられてもいいような気もします。


【折々の歌と句・光太郎】

女等よ我にをしへよ何物にかへてもこのむ宝てふもの
明治42年(1909) 光太郎27歳

「てふ」は「という」の意。

この年7月、3年半に及ぶ欧米留学を終えて帰国した光太郎の目に映る日本女性は、欧米のそれと異なり、人として生きることに無自覚な、らいてういわくの「蒼白い月」でした。