昨日に引き続き、福島ネタです。

シンポジウム「ほんとの空が戻る日まで-福島の復興と地方創生-」

日 時 : 2015年11月8日(日) 13:00~17:30
会 場 : 一橋大学一橋講堂(東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター内)
参加費 : 無料

 象 : 一般市民、大学関係者、学生、行政職員、福島県から避難している方 他
主   催 : 国立大学法人福島大学、公立大学法人福島県立医科大学
後   援
 : 文部科学省 復興庁 福島県 双葉地方町村会 公益社団法人経済同友会 福島民友新聞社
      日本放送協会福島支局 福島テレビ 福島中央テレビ 福島放送 テレビユー福島
      ラジオ福島 ふくしまFM 朝日新聞 讀賣新聞 毎日新聞 日本経済新聞 福島民報社
協 力 : 国立大学法人一橋大学、伊藤園

【プログラム】
Ⅰ部 特別鼎談 「未来を拓く開拓者たち~復興と人づくり・地域づくり~」
  登壇者
   小泉進次郎氏 衆議院議員・ふたばの教育復興応援団
   糸井重里氏  ほぼ日刊イトイ新聞主宰
   開沼 博   FURE特任研究員
Ⅱ部 福島の現状報告
   報告者
    うつくしまふくしま未来支援センター活動報告  中田スウラ FUREセンター長
    福島県立医科大学報告  谷川攻一 福島県立医科大学副学長
    FURE食・農復興支援担当報告  小山良太 FURE副センター長
    FURE放射能汚染対策担当報告  塚田祥文   FURE部門長
Ⅲ部 パネルディスカッション 「福島の復興と地方創生」
    モデレーター  
      山川充夫氏 帝京大学教授(福島大学名誉教授)
    パネリスト
      清水潔氏  明治大学特任教授・元文部科学事務次官
      齋藤喜章氏  特定非営利活動法人ふくしま飛行協会理事長
      髙島宏平氏  オイシックス株式会社代表取締役社長
      竹之下誠一   福島県立医科大学復興担当理事
      本多環    FUREこども・若者支援部門特任教授
    FURE=福島大学うつくしまふくしま未来支援センターの略
※シンポジウムの妨げになる行為がある場合は、ご退場いただくことがあります。

福島で起きている災害弱者の孤立化、震災関連死等の問題は、今後、少子高齢化社会が激化する中で日本各地に出現する諸問題と共通性を持っている。これまで地方が内包してきた第一次産業の衰退や少子高齢化等の問題は、今後、日本各地で激化する深刻な問題だが、そうした諸問題が、福島では東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故を契機に急速に表面化した。福島の地域復興の現状を把握し復興を進めるとともに、その復興過程で得られる経験(工夫・知恵)を、復興のみならず今後の地方復権・創生につなげ、「復興知・支援知」として活かし発信していくことは重要である。その為に、私たちは大震災・原発事故から何を学び何から始めなければならないのか、市民、学生など参加者にこの課題を提起し探究する。

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3月に京都で行われた同趣旨のシンポジウムは、なかなか参加者が集まらず、締め切りを過ぎても追加募集がかけられていましたが、今回は申し込みが多く、既に募集を停止しています。こういうイベントもあるよ、ということでのご紹介ということでよろしくお願いいたします。


もう1件、昨日、川内村での草野心平を偲ぶ集い「かえる忌」について書いた後、川内村関連で調べていたら、次のような情報を得ました。

「藤村記念歴程賞」に川内村 詩を尊ぶ村民の姿勢評価

 同人詩誌「歴程」は9日、第53回「藤村記念歴程賞」に川内村を選んだ。同賞は年に一度、優れた詩集や文芸評論などに贈られるが、自治体が受賞するのは初めて。同誌は1935(昭和10)年にいわき市出身の詩人草野心平らによって創刊され、現在も年5回発行されている伝統ある同人誌。
  同村では、村内の平伏(へぶす)沼に生息するモリアオガエルをきっかけに、「蛙の詩人」として知られる心平と交流を深めており、心平を顕彰する天山文庫を建設、毎年恒例として「天山祭り」を開催してきた。原発事故後も祭りを続け、今年7月には50回記念の祭りを開くなど、震災に向き合い詩を尊ぶ村民たちの精神が評価された。賞金50万円と「草野心平日記」(全7巻)が村に贈られる。
 選考委員も務めた「歴程」発行人の新藤凉子さんは「めげることなく、全国に勇気や元気、希望を発信した村のありようそのものが詩的で、受賞にふさわしい」と評価。受賞を受け、遠藤雄幸村長は「天山祭りは今年50回を迎え、草野心平さん本人がいなくても祭りを続けたことが評価されたのではないか。名誉ある賞を頂くことができ光栄。あらためて草野心平さんや歴程の皆さんに感謝したい」と喜びを語った。
(2015年10月10日 『福島民友』)

『歴程』の皆さん、なかなか粋な計らいですね。記事中にある第50回天山祭についてはこちら


【今日は何の日・光太郎 拾遺】 10月30日

昭和24年(1949)の今日、連作詩「智恵子抄その後」を清書しました

六篇から成る連作詩で、翌年元日発行の雑誌『新女苑』第14巻第1号に発表されました。


  元素智恵子 
000

智恵子はすでに元素にかへった。
わたくしは心霊独存の理を信じない。
智恵子はしかも実存する。
智恵子はわたくしの肉に居る。
智恵子はわたくしに密着し、
わたくしの細胞に燐火を燃やし、
わたくしと戯れ、
わたくしをたたき、
わたくしを老いぼれの餌食にさせない。
精神とは肉体の別の名だ、
わたくしの肉に居る智恵子は、
そのままわたくしの精神の極北。
智恵子はこよなき審判者であり、
うちに智恵子の睡る時わたくしは過ち、
耳に智恵子の声をきくときわたくしは正しい。
智恵子はただ嬉々としてとびはね、
わたくしの全存在をかけめぐる。
元素智恵子は今でもなほ
わたくしの肉に居てわたくしに笑ふ。


001  メトロポオル

智恵子が憧れてゐた深い自然の真只中に
運命の曲折はわたくしを叩きこんだ。
運命は生きた智恵子を都会に殺し、
都会の子であるわたくしをここに置く。
岩手の山は荒々しく美しくまじりけなく、
わたくしを囲んで仮借しない。
虚偽と遊惰とはここの土壌に生存できず、
わたくしは自然のやうに一刻を争ひ、
ただ全裸を投げて前進する。
智恵子は死んでよみがへり、
かくの如き山川草木にまみれてよろこぶ。
変幻きはまりない宇宙の現象、
転変かぎりない世代の起伏、
それをみんな智恵子がうけとめ、
それをわたくしが触知する。
わたくしの心は賑ひ、
山林孤棲と人のいふ
小さな山小屋の囲炉裏に居て
ここを地上のメトロポオルとひとり思ふ。


  裸形003

智恵子の裸形をわたくしは恋ふ。
つつましくて満ちてゐて
星宿のやうに森厳で
山脈のやうに波うつて
いつでもうすいミストがかかり、
その造型の瑪瑙質に
奥の知れないつやがあつた。
智恵子の裸形の背中の小さな黒子まで
わたくしは意味ふかくおぼえてゐて、
今も記憶の歳月にみがかれた
その全存在が明滅する。
わたくしの手でもう一度、
あの造型を生むことは
自然の定めた約束であり、
そのためにわたくしに肉類が与へられ、
そのためにわたくしに畑の野菜が与へられ、
米と小麦と牛酪とがゆるされる。
智恵子の裸形をこの世にのこして
わたくしはやがて天然の素中(そちゆう)に帰らう。


007  案内

三畳あれば寝られますね。
これが水屋。
これが井戸。
山の水は山の空気のやうに美味。
あの畑が三畝、
いまはキヤベツの全盛です。
ここの疎林がヤツカの並木で、
小屋のまはりは栗と松。
坂を登るとここが見晴し、
展望二十里南にひらけて
左が北上山系、
右が奥羽国境山脈、
まん中の平野を北上川が縦に流れて、
あの霞んでゐる突きあたりの辺が
金華山沖といふことでせう。
智恵さん気に入りましたか、好きですか。
うしろの山つづきが毒が森。
そこにはカモシカも来るし熊も出ます。
智恵さん斯ういふところ好きでせう。


  あの頃008

人を信ずることは人を救ふ。
かなり不良性のあつたわたくしを
智恵子は頭から信じてかかつた。
いきなり内懐に飛びこまれて
わたくしは自分の不良性を失つた。
わたくし自身も知らない何ものかが
こんな自分の中にあることを知らされて
わたくしはたじろいだ。
少しめんくらつて立ちなほり、
智恵子のまじめな純粋な
息をもつかない肉薄に
或日はつと気がついた。
わたくしの眼から珍しい涙がながれ、
わたくしはあらためて智恵子に向つた。
智恵子はにこやかにわたくしを迎へ、
その清浄な甘い香りでわたくしを包んだ。
わたくしはその甘美に酔つて一切を忘れた。
わたくしの猛獣性をさへ物ともしない
この天の族なる一女性の不可思議力に
無頼のわたくしは初めて自己の位置を知つた。

009
  吹雪の夜の独白

外では吹雪が荒れくるふ。
かういふ夜には鼠も来ず、
部落は遠くねしづまつて
人つ子ひとり山には居ない。
囲炉裏に大きな根つ子を投じて
みごとな大きな火を燃やす。
六十七年といふ生理の故に
今ではよほどらくだと思ふ。
あの欲情のあるかぎり、
ほんとの為事は苦しいな。
美術といふ為事の奥は
さういふ非情を要求するのだ。
まるでなければ話にならぬし、
よくよく知つて今は無いといふのがいい。
かりに智恵子が今出てきても
大いにはしやいで笑ふだけだろ。
きびしい非情の内側から
あるともなしに匂ふものが
あの神韻といふやつだろ。
老いぼれでは困るがね。