今年1月のこのブログで、英国ヘンリー・ムーア・インスティテュートにおいて開催された「近代日本彫刻展(A Study of Modern Japanese Sculpture)」についてご紹介しました。

これは、日本の武蔵野美術大学美術館さんとの共同開催で、基本的に同じ内容を、先に英国で、のちに日本で開催するというものです。

そういうわけで、光太郎の木彫「白文鳥」とブロンズの「手」が、海を渡りました。

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その日本展が、今月末から、武蔵野美術大学美術館さんで始まります。 

近代日本彫刻展 −A Study of Modern Japanese Sculpture−

会 期 : 2015年5月25日(月)~8月16日(日)
会 場 : 武蔵野美術大学美術館 展示室5
休館日 : 日曜日、祝日 ※6月14日(日)、7月20日(月・祝)、8月16日(日)は特別開館
時 間 : 10:00ー18:00(土曜日、特別開館日は17:00閉館)
入館料 : 無料
主 催 : 武蔵野美術大学 美術館・図書館
監 修 : 黒川弘毅(武蔵野美術大学彫刻学科教授)

イギリス、ヘンリー・ムーア・インスティテュートの企画による本展では、森川杜園、高村光太郎、佐藤朝山、橋本平八、横田七郎の木彫など、日本の近代彫刻の特徴を示す自然物をモチーフにした彫刻約10点を紹介する。明治以降、彫刻史において独自のポジションを形成した近代日本彫刻の意義を検証すると同時に、その作品の魅力に迫る。

<出展作品>
・「手」 高村光太郎 1918年 ブロンズ、木彫(台座部分)
  東京国立近代美術館所蔵/台東区立朝倉彫塑館所蔵(注
・「白文鳥」 高村光太郎 1931年頃 木彫 個人蔵(フジヰ画廊)
・「冬眠」 佐藤朝山 1928年 木彫 福島県立美術館所蔵(横井美恵子コレクション)
・「石に就て」 橋本平八 1928年 木彫/「石に就て」 の原型となった石 個人蔵(三重県立美術館寄託)
・「静物」など5点 横田七郎 1928年~1929年 木彫 平塚市美術館所蔵
・(予定)「蘭者待 模刻」 森川杜園 1873年 木彫 東大寺所蔵

注) 台東区立朝倉彫塑館所蔵作品は全期間、東京国立近代美術館所蔵作品は5月25日から6月中旬までの展示を予定。いずれもブロンズ部分は「真土(まね)鋳造法」によるもの。高村光太郎によって作られたと推定され木製台座の形状は異型で、この2作品の同時展示は初の試みとなる

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おそらく木彫の「白文鳥」は、一昨年、千葉市美術館さん、岡山井原市田中美術館さん、愛知碧南市藤井達吉現代美術館さん、で開催された「生誕130年 彫刻家高村光太郎」展以来の展示です。

「手」に関しては、少し書きにくい問題があります。全国の美術館等に、いったいこれがいくつあるのか、当方も把握できていません。ブロンズの彫刻はそういうものが多く、かの有名なロダン作「考える人」も世界中に存在します。

重要文化財に指定されている荻原守衛の「女」にしてもそうです。ただし、「女」は石膏原型が残っており、厳密に言うと重要文化財に指定されているのは、この原型です。

ところが、「手」の原型は、おそらく昭和20年(1945)の空襲で、駒込林町の光太郎アトリエもろとも焼失してしまったと推定されます。

それでは、全国にあまたある「手」はどうやって作られたのかということになりますが、大正期に鋳造された初めの「手」から採った型で作られているのです。したがって、厳密に言えば複製です。

複製ではなく、大正期に鋳造されたものは、多分、竹橋の東京国立近代美術館さん所蔵のものと、台東区の朝倉彫塑館さん所蔵のもの,さらに高村家にも。他にも有るかもしれませんが、当方が把握しているのはこの3点のみ。そのうち2点が今回の武蔵野美術大学美術館さんに展示されます。

この2点には、木製の台座が付いています。この台座も、光太郎が彫ったものと推定されています。当方、ブロンズ部分を取り外した台座のみの写真を見せて貰ったことがあります。「白文鳥」などの木彫を手がけるようになったのは、この「手」の台座の制作が、一つの契機になっているのではないかという説もあります。

ところで、全国にあまたある「手」の台座は、木製ではなく樹脂製。やはりコピーなのです。

見に行かれる方、ぜひ、台座に注目して下さい。


当方、今日から3泊4日で、東北に行って参ります。

その前に、東京で高村達氏写真展「Botanical Garden~植物園」を拝見。 その足で東北新幹線に飛び乗り、今夜はまた鉛温泉藤三旅館さんに宿泊です。花巻の㈶高村光太郎記念会さんのご尽力で、昭和23年(1948)に光太郎の泊まった31号室に泊めていただくことになりました。有り難い限りです。

明日は光太郎が昭和20年(1945)から7年間を過ごした花巻郊外旧太田村の山小屋、高村山荘敷地にて第58回高村祭。記念講演を仰せつかっています。明日の宿泊は大沢温泉山水閣さん。こちらも光太郎が足しげく通った温泉宿で、光太郎が泊まった部屋を復元した「牡丹の間」に泊めていただきます。

その後、現地でいろいろと調査。そして17日(日)には仙台で、朗読の荒井真澄さん他による「無伴奏ヴァイヲリンと朗読「智恵子抄」 」を聴いて参ります。


【今日は何の日・光太郎 拾遺】 5月14日

昭和13年(1938)の今日、東京資生堂画廊で「岸田劉生十周忌回顧展覧会」が開幕しました。

同4年(1929)に数え39歳で早逝した岸田の回顧展です。そのパンフレットに光太郎執筆の「寸言-岸田劉生十周忌回顧展覧会」が掲載されました。