新刊です。  

空の走者たち

増山実著 2014/12/08 角川春樹事務所  定価 1600円+税
 
2020年4月18日――。通信社の若手記者・田嶋庸介は興奮していた。陸運から発表された東京オリンピック女子マラソン日本代表3名の中に、円谷ひとみの名があったからだ。田嶋が7年前にこの少女と出会ったのは、福島県須賀川市。そこは、1964年の東京オリンピックマラソンで銅メダルを獲得した円谷幸吉と、ウルトラマンの生みの親・円谷英二の故郷であった。当時の円谷ひとみは、陸上をやめ、自分のやりたいことが見えずに暗中模索中の高校2年生。なぜ彼女は、日本を代表するランナーへと成長できたのか。その陰には、東京オリンピックと「あどけない青空」によって結ばれた、不思議な出会いがあった……。須賀川、宝塚、東京、ハンガリー。どんなに雨が降り続こうとも、いつか必ず見えるはずの青空を思い、それぞれの空の下を懸命に駆け抜けた走者たちの物語。
 
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主な舞台は福島県須賀川市。光太郎の「智恵子抄」に収められた「あどけない話」が重要なモチーフになっています。
 
昭和39年(1964)の東京五輪・男子マラソン銅メダリスト円谷幸吉、「特撮の神様」・円谷英二。ともに須賀川の出身で、親戚だそうです。さらに『おくのほそ道』の旅で須賀川を訪れた松尾芭蕉や、東日本大震災で被災した架空の少女たちが織りなす物語。クライマックスは平成32年(2020)の2度目の東京五輪。平成25年(2013)、昭和40年(1965)、そして元禄2年(1689)。それぞれの須賀川をつなぐキーワードが「空」。さらにはマルセル・プルースト『失われた時を求めて』、坂本九、ゴジラ、ザ・ビートルズ、銭湯、大阪万博……。
 
スポ根的要素、SF的要素、昭和懐古的要素、震災復興支援的要素と、てんこ盛りの一冊です。
 
ぜひお買い求めを。
 
 
【今日は何の日・光太郎 拾遺】 1月8日

昭和28年(1953)の今日、終の棲家となった中野のアトリエで、煙突掃除をしました。
 
十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)を制作していた時期で、この日は午前中に手の試作を仕上げています。夕方から、詩人の藤島宇内に手伝ってもらって、煙突掃除。これはストーブからつながっていたものでした。
 
最近は、レンガ造りのイミテーションを除き、一般家庭で「煙突」という物体を見ることがほぼなくなりましたね。