新宿中村屋さん。パン屋の老舗で、明治34年(1901)創業です。
 
創業者の相馬愛蔵・黒光夫妻は、光太郎の朋友の彫刻家・荻原守衛と親しく、欧米留学から帰った明治41年には新宿にアトリエを構えました。翌年には中村屋さんが新宿支店を現在地に移転、本店とし(それまで本店は本郷だったそうです)、守衛を中心に、やはり帰国した光太郎、中村彝、柳敬助、戸張孤雁、中原悌二郎、中村不折らの美術家が集う「中村屋サロン」が形成されました。
 
その中村屋さんが、新宿の再開発に伴い、新たに「新宿中村屋ビル」を建設、来週、グランドオープンです。内部には「中村屋サロン美術館」が開設され、オープン記念に下記の企画展が行われます。 

中村屋サロン美術館 開館記念特別展「中村屋サロン―ここで生まれた、ここから生まれた―」

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会 期 : 2014年10月29日(水)~2015年2月15日(日)
 間 : 10:30~19:00(入館は18:40まで)
休館日 : 毎週火曜日(火曜が祝祭日の場合は開館、翌日休館)、1月1日
料 金 : 一般300円
 
中村屋サロン美術館の記念すべき第1回展覧会は「中村屋サロン―ここで生まれた、ここから生まれた―」です。明治末から大正、昭和初期にかけて中村屋には多くの芸術家・文化人たちが集い、後に中村屋サロンと呼ばれるようになりました。本展では中村屋サロンが生まれたまさにこの場所に、そこに集った芸術家たちの作品が集結します。
 

第1章「中村屋サロンの胎動 碌山:穂高~海外時代」

第1章では、荻原守衛(碌山)が米・仏留学中に出会い、交流を深めた芸術家たち(柳敬助、戸張孤雁、斎藤与里、高村光太郎、中村不折)の作品を紹介いたします。彼らは各々帰国をしてからも、荻原や相馬夫妻を核に強く結びつき、やがて誕生する中村屋サロンの基盤をつくりました。

主な展示作品
荻原守衛《女》
柳敬助《順子》 1920年 公益財団法人 碌山美術館蔵
高村光太郎《手》 1918年 個人蔵 
 

第2章「中村屋サロンの躍動 碌山:新宿時代~」

第2章では、帰国後の荻原のもとに集った芸術家たち(中村彝、鶴田吾郎、中原悌二郎、堀進二、保田龍門)や守衛のブロンズを鋳造した山本安曇、相馬夫妻の長男の教師であった會津八一などの作品を紹介いたします。荻原は帰国後約2年で亡くなりますが、その芸術観は中村屋サロンのメンバーに引き継がれ、中村彝を中心に更なる発展を見せます。彼らは厳しい時代において、悩み、苦しみ、命を削りながら、それでも自らの芸術の高みを求めて制作活動に打ち込んでいったのです。
主な展示作品
中村彝《小女》 1914年
鶴田吾郎《盲目のエロシェンコ》 1920年
會津八一《林下十年夢 湖邊一笑新》 1949年
開館記念講演会「中村屋サロンの芸術家たち」
(抽選)
高階秀爾氏(公益財団法人 大原美術館館長)
美術史家で新宿区の名誉区民でもある高階秀爾氏をお招きし、「中村屋サロン」について学ぶ講演会です。日本近代美術史における中村屋サロンや、その代表作家についてわかりやすく解説していただきます。中村屋サロンに対する知識や興味が深まり、開館記念特別展をより深く楽しめる企画です。皆様のご応募をお待ちしております。
 
 日 2014年12月1日(月)18:00~19:30
場 所 新宿文化センターホール(東京メトロ副都心線・都営大江戸線東新宿駅A3出口より徒歩5分)
費 用 無料(ただし中村屋サロン美術館の入場券またはその半券の呈示が必要です)
参加方法 
 参加ご希望の方は往復ハガキに〒住所・氏名・年齢・電話番号・人数(2名まで)を明記の上、11月10日必着で 下記へご応募ください。抽選結果を返送いたします。
※当日、中村屋サロン美術館の入場券またはその半券と事前にお送りする受講票をお持ちください。
応募宛先 〒107-0062 港区南青山2-18-20南青山コンパウンド502 中村屋サロン美術館講演会係
 
 
一昨日には、美術館の内覧が行われ、報道もされています。 

中村屋サロン美術館が開館。荻原守衛ら「中村屋サロン」の芸術家作品集う

1世紀に渡り親しまれてきた新宿の老舗食品メーカー「中村屋」が、新宿本店ビルの建て替えにあたり、新たに「中村屋サロン美術館」を開館する。10月29日のグランドオープンに先駆けた内覧会では、開館記念特別展「中村屋サロン―ここで生まれた、ここから生まれた―」がお披露目された。
 
新宿中村屋ビル3階に設えられた中村屋サロン美術館は、展示室と多目的スペースを備えた約240平方メートルの文化芸術施設としてオープンする。白と赤の壁、木製の什器とレトロなランプが落ち着いた雰囲気。開館記念展は、中村屋から広まった近代日本の芸術潮流であり、また館名の由来ともなった「中村屋サロン」にスポットを当てる。荻原守衛、中村彝、高村光太郎、會津八一、中原悌二郎ら関連する作家による絵画、彫刻および書など約50点を集め、明治から昭和に掛けての芸術家達の文化交流の様相を提示した。
 
中村屋の創業者である相馬愛蔵・黒光夫妻は芸術に深い理解を示した文化人である。愛蔵と同郷の彫刻家・荻原守衛(碌山)を中心に、中村屋には多くの芸術家達が自然と集い、その様子がさながらヨーロッパのサロンのようであったことから、夫妻のもとに開花した芸術潮流は「中村屋サロン」と呼ばれた。同館の染谷省三館長は、「ここ新宿中村屋で生まれ、発信された芸術文化は中村屋のアイデンティティーである。それを後世に伝え、また人々の文化的集いの場“サロン”となる美術館にしたい」と話す。
 
本展の目玉となる作品が、萩原守衛によるブロンズ彫像『女』だ。不安定な膝立ちのポーズに秘められた躍動感を感じる一作であり、その造形美は必見である。同館の太田美喜子学芸員は、「美術史上ではよく知られた“中村屋サロン”の一般認知度の低下を食い止めるとともに、若者にその存在をもっと知ってもらいたい」と言い、若い世代の鑑賞者に向けて、出品作の中から中村彝の油彩画『小女』を推薦した。
 
相馬夫妻の長女・俊子をモデルに描いた本作は、肺病に侵された画家とモデルの恋のエピソードで有名。俊子の強いまなざしときりりとした太い眉、頬にさす紅色の生命感が鮮烈で、どこか現代にも通ずる魅力を持った作品だ。
 
その他、高村光太郎の『自画像』や、鶴田吾郎の『盲目のエロシェンコ』など有名作が出品され、コンパクトながら見どころの多い展覧会にまとめられた。
 
かつて多くの企業美術館が立ち並んだ新宿。新たな新宿の芸術サロンとしての同館の今後に注目したい。

 
 
光太郎の作品として、ブロンズの「手」無題、油絵「自画像」が並びます。
 
 右の画像が「自画像」。昔、中村屋さんが発行していたテレホンカードです。
 
当方、一昨年の5月、信州安曇野の碌山美術館で開催された、守衛の忌日「碌山忌」の際、当時の中村屋さんのCSR広報室長・吉岡修一氏の講演「新宿中村屋の創業者 相馬愛蔵・黒光の商人道と中村屋サロン」を聴きました。
 
この「自画像」の話も出、各地の企画展などへの貸し出しが多く、光太郎は「中村屋一出張の多い男」だそうです(笑)。
 
ぜひ足をお運び下さい。
 
 
【今日は何の日・光太郎 補遺】 10月24日
 
明治36年(1903)の今日、智恵子在学中の日本女子大学校で、第三回大運動会が開催されました。
 
 
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上の画像はこの年発行された『日本女子大学校学報』第二号に載った運動会の様子です。どこかに智恵子や平塚らいてうがいるかも知れません。
 
同書によれば、当日のプログラムは以下の通り。
 
番外   テニス
第一   双球転々
第二   鞠体操(英国式)
第三   操鞠競走
第四   くらぶ体操(英国式)000
第六   風船競走
第七   綱引
第八   御給仕(米国遊戯)
第九   亜鈴体操(丁抹式)※丁抹=デンマーク
第十   白妙(和蘭遊戯) ※和蘭=オランダ
第十一  案山子競走
第十二  にんふ(希臘式) ※希臘=ギリシャ
第十三  輪抜競走
第十四  辰宿列張(米国遊戯)
第十五  亜鈴体操(仏国式)
第十六  容儀体操(デルサート式)
第十七  自転車
第十八  綱引
第十九  長竿体操(仏国式)
第二十  御手球
第二十一 旌旗翩々(日耳曼遊戯)※日耳曼=ゲルマン
第二十二 球竿体操(英国式)
第二十三 徒競走
第二十四 軽麗体操(西班牙式) ※西班牙=スペイン
第二十五 第二虹霓舞(仏国遊戯)
第二十六 自転車
第二十七 障害物競走
第二十八 あまぞん(羅馬式) ※羅馬=ローマ
第二十九 旦暮鈴(西班牙遊戯)
第三十  花売り(仏国遊戯)
第三十一 ばすけつと、ぼーる
第三十二 円舞

 
右上の画像、前列右が智恵子です。後列右端の女性がバスケットボールを持っています。おそらくこの写真も運動会の一コマでしょう。