あどけない話 003
 
 智恵子は東京に空が無いといふ、
 ほんとの空が見たいといふ。
 私は驚いて空を見る。
 桜若葉の間に在るのは、
 切つても切れない
 むかしなじみのきれいな空だ。
 どんよりけむる地平のぼかしは
 うすもも色の朝のしめりだ。
 智恵子は遠くを見ながら言ふ、
 阿多多羅山の山の上に
 毎日出てゐる青い空が
 智恵子のほんとの空だといふ。
 あどけない空の話である。
 
右の画像、以前も使いましたが、二本松の智恵子生家です。
 
東日本大震災後、この「あどけない話」に出てくる「ほんとの空」の語が、一種のキーワードのように使われています。派生的に「ほんとうの空」という語も。
 
いずれ光太郎智恵子の歿後年譜的なものの中に、「平成23年(2011) 東日本大震災発生。詩「あどけない話」中の「ほんとの空」の語が復興支援のキーワードとなり、広く使われる」といった記述がなされそうな気配です。
 
さて、近々あるイベント、テレビ放映から「ほんとの空」がらみをご紹介します。 

「ほんとの空☆星空を見上げてみよう!」

夏の夜空を見上げてみよう!福島市の街なかで005、星空観測会が開催されます。
参加は無料です。
綺麗な星空を眺めてみましょう(^O^)

「街なか観望会」
開催日:6月29日(日)雨天中止
時 間:19:00~20:30
会 場:街なか広場
・一番星を見つけよう/土星観察/火星観察/
 北極星をさがそう
 
「板垣公一氏 講演会」
開催日:6月30日(月)
時 間:13:00~14:30
    (先着100名 記念品もあります)
会 場:福島テルサ FTホール
演 題:豆と超新星発見のかかわり
講 演:山形大学名誉博士・超新星ハンター 板垣 公一氏
入 場:無料

【お問い合わせ】 福島市浄土平天文台
0242-64-2108

★日本で一番星空に近い天文台「浄土平天文台」。手を伸ばすと届きそうな満天の星空を楽しんでみては♪
 
昨秋も同様のイベントで「ほんとの空」の語が使われていました。
 

 
続いてテレビ放映情報ですが、ただし、高知県限定です。

「ほんとの空」

高知さんさんテレビ 2014年0066月22 (日)  15:25 ~ 16:05 (40分)
 
 高齢者や外国人に対する排除、不利益な扱い、同和問題や原発事故に伴う風評被害の問題、これらに共通する根っこの部分は、誤った考え方や思い込み、偏見という「意識」である。
誰もが他者の排除や差別がよくないことは理解している。その一方で、自分や身近な人に関わる出来事には敏感に反応するが、それ以外のことは他人事のように感じたりする。また、自分や家族の生活を守るために、あるいは誤解や偏見に気づかず、他者を排除したり傷つけたりしがちである。
誤解や偏見に気づき人と深く向き合うこと、他者の気持ちを我がこととして思うこと。すべての人権課題を自分に関わることとしてとらえ、日常の行動につなげていくようにと訴える。
 
出演 白石美帆 鳥羽潤 湯浅美和子   浦上晟周 石川大樹 他
 
兵庫県人権啓発協会さんが企画、県教委の協力で、東映さんが製作したものです。もともとは自治体主催のイベントや学校で上映するためにつくられたのではないでしょうか。
 
東映イー・ヴィ・エスさんでDVDを市販していますが、価格が80,000円+税。ちょっと高いですね。兵庫県人権啓発協会さんでは無料レンタルを行っているようです。ただ、個人貸し出しではなく、やはり自治体や学校、企業での使用に限るとのこと。


 そちらのページからあらすじを抜粋させていただきます。
 
 向井弓枝は、パート先のスーパーで、高齢の客のおぼつかない行動に不快感を持つ。自宅のマンションのエレベータでも、高齢の人や障害のある人に対してイライラを募らせる。弓枝は、面倒な人が多く住むこのマンションではなく、一戸建てや新築マンションに引つ越したいと、夫の勇に訴える。
 
 弓枝の一人息子の輝は、空オタクだ。いつも空や雲のことを考えていて友だちもいない。カメラを抱えた輝が自宅に帰つてくると、隣の部屋のドアが開き、見知らぬ外国人が引越をしている。外国人に対して偏見を持つている弓校と勇の話を聞き輝も「みんな不法滞在なんだから送り返せばいいJと言う。
 
 輝がマンションの屋上に行くと、同じ年頃の少年 龍太が空にカメラを向けていた。空好きの二人は意気投合し、輝は龍太を家に招く。夕食をいただいたお礼にと 龍太の母の美里が、故郷福島の草木染めの布を持つてくる。最初は喜ぶ弓枝だつたが、パート仲間の意見もあり 放射能への恐ろしさから布を捨ててしまう。そしてそれを、龍太がゴミ置き場で発見する。
 
 学校からの帰り道、輝は、龍太が同級生たちから放射能のことでいじめられているのを見つけ加勢するが、二人とも投げ飛ばされる。同級生を非難する輝に、「お前も同じだろ」と龍太は叫び、「草木染めをなぜ捨てたのか」と詰め寄る。それを同じマンションの高齢者、千代子とタイ人ロークが止める。帰宅した輝は母を責め、家を飛び出す。
 
 輝を探す弓枝と勇。輝は、隣のタイ人夫婦□―クとノイのところにいた。夫婦はタイ料理店で働いていて、店を持ちたいので試食してほしいと申し出る。皆で食卓を囲みながら、ノイの思いを知つた輝は、廊下の鉢植えを割つたことを謝り、勇も偏見を持つていたと告げる。握手をする勇と□―ク。その様子を笑顔で見つめる弓枝は ふと台所の隅に 自分が捨ててしまった草木染めがあることに気づく。
 
 ノイから 草木染めを譲つてもらった弓枝は 美里の家に。そして自分の気持ちを伝えようとするが……。
 
このたび高知さんさんテレビさんでオンエアされます(もしかすると以前にも全国どこかでテレビ放映されたかもしれません)。
 
高知の皆さん、ぜひご覧下さい。
 
【今日は何の日・光太郎 補遺】 6月18日

平成6年(1994)の今日、青森十和田湖畔の裸婦像かたわらに、詩「十和田湖畔の裸像に与ふ」を刻んだ詩碑が除幕されました。
 
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この年、損傷の目立った裸婦像の補修工事が行われ、それにともなって、光太郎肉筆原稿から文字を起こし、新たにこの碑が付設されました。
 
  十和田湖畔の裸像に与ふ

銅とスズとの合金が立つてゐる。
どんな造型が行はれようと
無機質の図形にはちがひがない。007
はらわたや粘液や脂や汗や生きものの
きたならしさはここにない。
すさまじい十和田湖の円錐空間にはまりこんで
天然四元の平手打をまともにうける
銅とスズとの合金で出来た
女の裸像が二人
影と形のやうに立つてゐる。
いさぎよい非情の金属が青くさびて
地上に割れてくづれるまで
この原始林の圧力に堪へて
立つなら幾千年でも黙つて立つてろ。