昨日の『朝日新聞』さんの記事です。元メジャーリーガー・野茂英雄さんに関して。

野茂の前に道はなかった

 果たして彼は日本の野球殿堂に入れるだろうか。野茂英雄だ。
 
 先日、米国野球殿堂にノミネートされた。落選したが、日本人で初めての候補者。名前が挙がっただけでも大変な名誉だった。
 
 日本の野球殿堂入りは17日に発表される。15年以上の野球報道経験を持つ記者が候補の中から最大7人まで投票し、75%以上の票を獲得した者が殿堂入りとなる。
 
 プレーヤー表彰の対象者は現役引退後5年以上経過した人で、野茂は今年が資格を得た1年目となる。1年目で選ばれるのは日本では非常に難しく、過去、スタルヒンと王貞治しかいない。長嶋茂雄でさえ、1年目は落選している。
 
 日本で78勝、メジャーで123勝、日米通算201勝が野茂の成績だ。野球殿堂入り選考の定義は「日本野球の発展に大きな貢献をした人」。彼の功績は数字だけでははかれるものではないだろう。
 
 野茂の前に道はなかった。彼の後ろに道はできた。ドジャース元監督のトミー・ラソーダは黒人初の大リーガーに例えて「野茂は日本のジャッキー・ロビンソンだ」といった。彼が橋を架けなければ、イチローも松井秀喜も、そして楽天の田中将大も海を渡ることは、できなかったかもしれない。
 
 日米の架け橋となり、パイオニアとして道なき道を切り開いていった野茂はまさに「日本の野球に大きな貢献をした人」といえるだろう。
 
 資格獲得1年目で野球殿堂入りなるか。17日の発表を日本中の野球ファンが、注目している。

1990年代、独特の「トルネード投法」を無題1ひっさげ、本場メジャーリーガーをキリキリ舞いさせて、「ドクターK」の異名を取ったた勇姿は今も目に焼き付いています。しかも、現在のように日米間の移籍制度がきちんと確立されていなかった時代、いわば身一つで挑戦し、そして見事に成功したことは本当に素晴らしかったと思います。まさに「野茂の前に道はなかった。彼の後ろに道はできた」ですね。
 
ちなみに元ネタは、言わずと知れた光太郎詩「道程」の「僕の前に道はない/僕の後ろに道は出来る」ですが、「高村光太郎の詩にあるように」といった枕詞がないのは、それだけ「道程」もメジャーだということでしょうか。しつこいようですが、今年、平成26年(2014)は「道程」執筆および詩集『道程』刊行100周年です。
 
ぜひとも野茂さんには殿堂入りを果たして欲しいと思います。その上で改めて「野茂の前に道はなかった。彼の後ろに道はできた」という賛辞を送りたいものです。
 
【今日は何の日・光太郎 補遺】 1月15日

昭和41年(1966)の今日、新潮社から『高村光太郎全詩集』が刊行されました。
 
A5判上製1,022ページ、重量1.63㌔㌘(函を含む)。この時点で把握されていた光太郎詩729篇を全て収録した書籍です。これ以前に筑摩書房から刊行された『高村光太郎全集』の詩の巻(第1~3巻)が完全な編年体で、制作順の配列だったのに対し、こちらは光太郎生前に刊行された単行詩集を中核にした配列です。
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すなわち、
 1 「道程」以前
 2 詩集「道程」
 3 「道程」時代
 4 「道程」以後
 5 「猛獣篇」
 6 「猛獣篇時代」
 7 詩集「大いなる日に」
 8 詩集「記録」
 9 「記録」以後
 10 詩集「をぢさんの詩」
 11 「をぢさんの詩」以後
 12 詩集「智恵子抄」
 13 詩集「典型」
 14 「典型」時代
 15 「典型」以後
という構成です。
 
よく「無人島に一冊だけ本を持って行けるとしたら」という命題が出されますが、当方、「一冊だけ」と言われたらこれを選びます。