新刊です。

東京叙情詩集 I LOVE TOKYO

日本文学館刊行 津守秀祐輝著 文庫判 価格 630 円(税込)

佃島、表参道、聖橋。世界に類を見ない巨大都市にぎっしりと詰まった地名を追っていると、この町がのっぺりした首都機能の所在地ではなく、人々の生活の集合体であることが実感できる。都会人の控えめな郷土愛が光る叙景詩集。(同社サイトより)
 
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「安達太良山の青い空――長沼智恵子に捧ぐ」という詩が載っている他、光太郎と関連のあった土地――千駄木、上野など――、関わった人物――森鷗外、黒田清輝、八木重吉、草野心平など――をモチーフにした作品もあります。
 
版元は日本文学館さん。自費出版系の出版社です。名前が似ていますが、駒場の日本近代文学館とは関係ありません。
 
自費出版系というと、ひところ「S舎」という出版社があり、盛んに書籍を刊行し、日本一の出版点数などと豪語していましたが、販売には全く力を入れず、とにかく出版することで著者から金をふんだくるという商法を展開していました。それが問題となり、訴訟も起こされ、結局つぶれました。他にも同じような出版社がたくさんあり、刊行されるものは玉石混淆――ほとんど「石」――の状態でしたが、最近はどうなのでしょうか。
 
【今日は何の日・光太郎】 9月6日

昭和26年(1951)の今日、『岩手日報』のために「岩盤に深く立て」という詩を書きました。
 
2日後のサンフランシスコ講和条約調印を題材にした作品です。この時期はメディアも混乱しており、旧仮名遣いと新仮名遣いが混ざっています。
 
  岩盤に深く立て
 
四ツ葉胡瓜の細長いのをとりながら1011
ずゐぶん細長い年月だつたとおもう。
何から何までお情けで生きてきて
物の考へ方さへていねいに教えこまれた。
もういい頃と見こみがついて
一本立ちにさせるという。
仲間入りをさせるという。
その日が来た。
ヤマト民族よ目をさませ。
口の中からその飴ちよこを取つてすてろ。
オツチヨコチヨイといわれるお前の
その間に合わせを断絶しろ。
その小ずるさを放逐しろ。
世界の大馬鹿者となつて
六等国から静かにやれ。
更生非なり。
まつたく初めて生れるのだ。
ヤマト民族よ深く立て。
地殻の岩盤を自分の足でふんで立て。
 
写真は花巻郊外太田村山口の山小屋前にあった畑で撮影されたもの。胡瓜ではなくキャベツですが(笑)。